初期の成果が示す、AIが調達分野で成果を上げている実態

人工知能(AI)というテーマは、不安と興味が入り混じった感情を呼び起こします。しかし、調達担当者は、この取り組みに積極的に取り組む姿勢を示しており、初期の成果は概ね良好です。これは特に大企業において顕著ですが、中小企業の技術導入に向けた道筋も示唆しています。私たちは、AIがサプライチェーン全般、特に調達活動において重要かつ戦略的な要素となる未来を見据えています。

爆発的な成長

Market.us 1の調査によると、調達分野におけるAIは比較的初期段階にあり、ソフトウェアとサービスを合わせた世界市場規模は約30億ドルと推定されています(図1)。同社は今後8年間、力強く着実な成長を予測しています。機械学習(ML)、自然言語処理(NLP)、ロボティックプロセスオートメーション(RPA)といった先進技術を活用することで、AIは調達チームが拡大する業務範囲全体において効率性と正確性を向上させ、よりスマートで機敏な組織へと進化させます。AIは、コスト管理、サプライチェーンのレジリエンス強化、サプライヤ関係最適化といった主要目標の達成を組織に可能にします。

図1 : 調達分野におけるAIの世界的な導入規模は、2023年の19億ドルから2033年には226億ドルへと爆発的な成長を遂げると予測されており、年間平均成長率は28%を超える見込みです。(画像提供:Market.us)

2023年の売上高ベースでは北米が市場全体をリードし、世界シェアの38%以上を占めました。同地域では、急速な導入と技術進歩を背景に、約7億ドルの収益を生み出しました。

高まるAI人気

調達部門は以前から、AIが業務を支援する方法を模索してきました。初期の成果が明らかになりつつありますが、端的に言えば、調達部門はAIを導入し、その効果を高く評価しています。実際、ProcureAbilityの最新の報告によれば、予算規模2億5,000万ドルから10億ドルの調達部門を対象とした調査では、回答者の92%が現在の調達におけるAIソリューションに満足していると回答しています2。調査対象者のうち、16%が現在のAIソリューションに非常に満足していると回答し、76%はやや満足していると回答しました。

一方、やや不満と回答したのはわずか8%でした。興味深いことに、完全に不満と回答した調達部門は1つもありませんでした。さらに掘り下げると、不満を報告した回答者の4分の3が、機能性や性能に関する限界を指摘しており、これは業界が早急に取り組んでいる課題です。半数は、セキュリティ上の懸念とAIの意思決定に関する透明性不足を指摘しました。

明らかに、AIは効率性に焦点を当てた初期の導入段階を越え、調達部門の運営方法を変革し、測定可能な価値をもたらすより戦略的なアプローチへと進化しています。ProcureAbilityの調査では、回答者に導入プロセスの進捗状況を尋ねたところ、43%が高度な方法でAIを活用していると回答しました。一部では、技術革新の領域にさえ到達しつつあります(図2)。

図2 : 大企業は一般的に、調達部門におけるAIの導入が概ね中程度から高度な段階まで進んでいます。(画像提供:ProcureAbility)

能力の追求

AIが補完または支援し得る調達活動は多岐にわたります(図3)。生成AIが調達業務に最も即効性のある影響を与えている領域は、発注書処理、支出分析、電子調達などです3。パイロットプログラムでは、契約ライフサイクル管理、カテゴリ管理、高度な分析への応用が模索されており、顧客サポートや電子調達(e-sourcing)への応用が次なる展開となる見込みです。約半数の部門では、すでに使用しているソリューション(CoupaやSAPの調達アプリケーションなど)内のAI機能を活用しています。さらに30%はMicrosoft Copilotのようなカスタム構築ツールや汎用ツールに依存しています。この後者の結果は驚くべきことではなく、ベンダーがより高度なAI機能を含むようソリューションを更新するにつれ、調達アプリケーションの提供サービスへの流れがますます強まると推測されます。

図3:調達部門がAIを活用するための業務の近代化を実装、試験運用、あるいは少なくとも調査する中で、調達プロセスは全体的に進化しています。(画像提供:The Hackett Group)

AIが拓く調達の未来

AI導入のペースが加速するにつれ、調達活動におけるAIの役割も進化し、より深いものになると予想されます。特にAI導入に適した分野は以下の通りです4

  • 高度な分析:AIは膨大な量のデータを容易に処理できるため、公開データと組織内データを組み合わせて分析する高度な分析能力が実現されるでしょう。これにより、購買担当者は予測的(何が起こるか)および処方的(それに対して何をすべきか)な洞察の両方を獲得できます。包括的な目標は、実用的な知見を捉えることにあります。
  • インテリジェントな自動化:単調で時間のかかり、ミスが発生しやすい業務は、RPAやAI搭載ボットによって遂行されるケースが増加していくでしょう。購買担当者は、データ入力、発注書処理、契約管理といった業務を行う代わりに、価値を創出する戦略的な役割に注力できるようになります。
  • NLPと会話型AI:NLPは、調達担当者からの自然言語による問い合わせに応じて、サプライチェーン全体のシステムと対話できる仮想アシスタントを支えます。こうした仮想アシスタントは、対話形式のプロンプトを用いて、必要な情報を取得する手段として、ますます活用されるようになるでしょう。
  • ブロックチェーン技術:AIとブロックチェーンを組み合わせることで、調達業務全体における透明性とトレーサビリティを強化できます。AIは契約の締結、履行を自動化し、ブロックチェーンは安全なデータ共有を実現します。

AIは調達業務のあり方を急速に変革しており、この傾向は今後数年にわたり続く見込みです。効率性、コスト最適化、戦略的意思決定が極めて重要となる現代において、AIと調達の連携は極めて大きな利点をもたらすでしょう。

参考

1:https://market.us/report/ai-in-procurement-market/

2:https://procureability.com/news/benchmarking-report-ai-development/

3:https://www.thehackettgroup.com/insights/embracing-the-future-how-generative-ai-is-revolutionizing-procurement-in-2025/

4:https://tipalti.com/blog/artificial-intelligence-in-procurement/

著者について

Image of Hailey Lynne McKeefry

ヘイリー・リン・マッキーフリーは、特に電子部品業界のサプライチェーンを中心に執筆活動を行っているフリーランスライターです。「サプライチェーン専門家が集う第一級のオンラインコミュニティ」である「EBN」の元編集長であるヘイリーは、キャリアを通じて様々な編集上の貢献を行うとともにリーダーとしての役割を担ってきました。彼女は、教会の助祭という聖職への取り組みと死別カウンセリングへの取り組み、それに仕事への取り組みとの間でバランスをとる生活を送っています。

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