エレクトロニクス産業のサプライチェーンで現実的となるブロックチェーン
ブロックチェーンは、暗号資産および他の金融アプリケーションに不可欠な技術として普及してきました。エレクトロニクス産業のあらゆる相手先ブランド製品製造会社(OEM)がサプライチェーンの苦しみを抱える現在、ブロックチェーン技術は、これまで以上のトレーサビリティ、可視性、持続可能性をもたらすだけでなく、市場の莫大な成長を見込める最高の領域をエレクトロニクス産業のサプライチェーンに見出しました。
ブロックチェーンは、2017年に注目すべき技術として私の目にとまり、それを取り巻く誇大宣伝は当時から顕著でした。過去5年ばかりの間、サプライチェーンにおけるブロックチェーンの認知度(巷での話題など)は高かったものの、実際の採用はせいぜいまばらな程度でした。それが今、変わりつつあります。
ブロックチェーンの定義
多くの人にとってブロックチェーンの話題は、最も有名な暗号資産であるビットコインと密接に関係したものでした。それは、ビットコインがブロックチェーンに基づいているためです。ブロックチェーン自体は、ピアツーピアネットワークにおける各関係者間の取引を追跡する分散台帳です(図1)。
図1:ブロックチェーンの参加者は、中央集権的な決済機関を必要とせずに取引を承認できるため、さまざまな部品サプライヤ、ディストリビュータ、ロジスティクス業者、OEMを含むサプライチェーン全体にとって有益です。(画像提供: PwC)
ブロックチェーンはビットコインなどの暗号資産の使用を可能にしますが、その核心をなすのは、多数の存在が低コストで得られる信頼のもとで協調できることであり、サプライチェーンにおける業務プロセスを大幅に向上させる可能性を秘めています。新型コロナウイルス感染症(Covid-19)のパンデミックによって、この能力の重要性が際立ちました。
今や、より多くの企業がデジタルトランスフォーメーションへの実際の取り組みについて語るようになっただけでなく、エレクトロニクス業界のOEMも将来の予期せぬサプライチェーンの変化に対応するため、サプライチェーンに強靭性を持たせるプロジェクトに積極的投資を行っています。IDCのステイシー・スーフー氏のような市場調査担当者が、そうした動きと共に、激動の時代での生き残りをかけた問題として、サプライチェーンにおける製品と支払いの両方に関してブロックチェーンが提供する利点を指摘しているのを見ると勇気づけられます。
順調な成長
スーフー氏だけではありません。今では多くのアナリストが、今後5年間にわたってブロックチェーンへの支出が急増する可能性が高いという見方で一致しているようです。IDCは実際に、全世界でのブロックチェーンソリューションへの支出が2024年には190億ドル近くに上り、2020~2024年の年平均成長率(CAGR)は48%になると予測しています1。
サプライチェーンにおいては、その成長率がさらに劇的なものになるでしょう。Researchandmarkets.comは、ブロックチェーンサプライチェーン市場が2021~2026年に年平均成長率81.7%で成長する見込みと発表しました2。この成長率は、サプライチェーンにおける透明性および取引に関するセキュリティの必要性が高まるためとしています。Quince Market Insightsの予測も例外ではなく、やや控えめながらも目覚ましい成長を見せ、サプライチェーン市場におけるグローバルブロックチェーンは2021年に全世界で3億7,560万ドルに達し、2021~2030年の期間には年平均成長率69.5%で成長すると見積もっています3。
サプライチェーン全体において、ブロックチェーンへの支出は、一般市場を58%程度も上回るでしょう。私から見れば、これはサプライチェーンのブロックチェーンが概念から現実へと移行したことを示しています。組織がこれらのプロジェクトに現金をつぎ込みつつあるということです。OEMとそのパートナーが慎重に計画すれば、ごく近い将来、ブロックチェーンはサプライチェーンの成功に不可欠なものとなるでしょう。
エレクトロニクスOEMにブロックチェーンが必要な理由
私は、ブロックチェーンが利益を生み出していることに驚きません。それは、説明責任と、詐欺や偽造からの保護という、サプライチェーンで最大級の課題に取り組んでいるからです。コストの削減、出所の監視、簡素化された記録管理、在庫の追跡といった他の利点は、あれば良いという程度のものに過ぎません。
エレクトロニクスのサプライチェーンにおいては、ブロックチェーンの欠かせない使用例が少なくとも以下の4つあります。
- サプライチェーンファイナンス:このようなソリューションには、取引の透明性とセキュリティの両方を高めつつ、インボイスの効率と正確性を高める可能性があります。たとえば、スマートコントラクトソリューションならば、製品を納品して署名がなされると即時支払いを行う技術を使うことができます。
- サプライチェーンロジスティクス:OEMとそのパートナーは、最終製品の製造に必要な品物や、最終的に顧客の手に渡る品物の配送に関して、サードパーティのロジスティクス業者に大きく依存しています。ブロックチェーンを使用すると、サードパーティを入れずに取引の確認、記録、調整を自律的に行うことができるため、取引がよりシームレスでシンプルになります。統合的なデジタル文書管理方式の使用により、サプライチェーンのすべての参加者が貨物や製品の所在を追跡できます。さらに、この技術で提供されるデータにより、ほとんどの場合において、支払いに関する論争を排除できます。
- サプライヤへの支払い:エレクトロニクス産業の特質は世界規模であることですが、ブロックチェーンを利用すれば、取引をリアルタイムで確認できる暗号化された分散台帳を使用した、サプライヤへの直接支払いを実現できます。これにより、銀行や手形交換所のような仲介者が不要になり、その結果、効率が改善します。
- 認証と品質確認:ブロックチェーンにより、原材料の出所から最終製品まで、商品の追跡が可能になります。追跡は、商品の価値に応じてロットごとや単一商品について行い、材料の所在を監視するタグおよび、サプライチェーン内の関係者間のやりとりを用います。
図2:一般的なサプライチェーンでは、初期のブロックチェーンは主に製品の追跡やロジスティクスの用途で利用され、それに金融取引が続きました。(画像提供:The Centre for Blockchain Technologies)4
現在では、食品、医薬品、小売のサプライチェーンが既にブロックチェーン技術の応用に進んでいます。そこで得られた教訓から、私たちの業界において、より大きな成功をより短いプロジェクト期間で得られると期待しています。
すべての企業の参加促進
どんな新技術にも言えますが、標準規格のないことが採用の妨げになる場合があります。少なくとも一部では、サプライチェーンにおけるブロックチェーンの採用が比較的遅い理由として、これを挙げることができます。しかし、それが急速に変わりつつあります。IEEE Standards Associationは、多数のブロックチェーン規格を策定し、それにはeインボイスのための推奨実践事項、暗号資産の支払いおよび交換、データ形式の規格などが含まれています5。これは、上記の使用例を現実的なものにする上で大きな一歩となります。
ブロックチェーンについて何年も語ってきたため、それをエレクトロニクスサプライチェーンに応用する方法のアイデアを目にするのは嬉しいことです。ブロックチェーンは万能薬ではありませんが、透明性、セキュリティ、効率性に関する問題をある程度軽減します。規格の登場と理解の深まりによって、本年は、ブロックチェーンが大言壮語の世界からエレクトロニクスOEMでの使用に移る年になるかもしれません。これからの数年は、興味深い年になるでしょう。
リファレンス:
1 – International Data Corporation(IDC)、「世界のブロックチェーン向け支出ガイド」
https://www.idc.com/tracker/showproductinfo.jsp?containerId=IDC_P37345
2 – ResearchandMarkets.com、「ブロックチェーンサプライチェーン市場 - 成長、動向、COVID-19の影響、および予測(2021~2026年)」
https://www.researchandmarkets.com/reports/5239614/blockchain-supply-chain-market-growth-trends
3 – Quince Market Insights、「サプライチェーン市場におけるブロックチェーン」
4 – The Centre for Blockchain Technologies、「2010~2020年におけるサプライチェーンへのブロックチェーン採用の分析」
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fbloc.2021.610476/full
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