EDIとAPIを併用した最適なサプライチェーン
技術の世界では、一般的に、新しい技術はこれまでの世代の技術を改良することで古い技術に取って代わるという法則があります。しかし、サプライチェーンのパートナー間でデータを共有するための統合技術においては、電子データ交換(EDI)とアプリケーションプログラミングインターフェース(API)のどちらも存在意義を持っているため、当面の間、共存し続けるものと思われます。賢明な組織なら、それぞれのメリットを活用する方法を見出すでしょう。
保守派と進歩派
1970年代にEDIが姿を現し、その30年後にAPIが登場しました。どちらも、サプライチェーンの中で独自の地位を占めるほど、よく理解され、広く使われています。
EDIは、大量のデータを同じような2つのシステム間で簡単かつ効率的に受け渡す機能です(図1)。これに対し、クラウド型APIは、少量のデータを取り込んで、システムからシステムへリアルタイムに転送する機能です(図2)。EDIはデータを標準化し、大量の物理的な文書(発注書、出荷指示書、ステータスレポート、インボイスなど)を電子化することを可能にするものです。ビッグデータへのリアルタイムアクセスが目的の場合には、APIが明白な優位性を示します。さらに、APIは多くの場合、人の介入を不要にします。
図1:EDIでは、送信側の企業は、共有するデータの量に応じて、AS2などのセキュアなインターネットプロトコル、EDIネットワークプロバイダ、または両方の手段を組み合わせることで、パートナーに直接接続します。(画像提供:EDI Basics)
図2:APIは、データ交換の詳細を記述する仕様と、2つのアプリケーション間の通信を実現するインターフェースという2つの主要コンポーネントで構成されます。(画像提供:Cleveroad.com)
メリットとデメリットの比較考量
もちろん、ある技術がビジネスニーズにどれだけ応えられるかは、そのニーズをどのように定義するかによって大きく異なります。つまり、EDIとAPIのいずれかのみで対応する方が適する活動もあるということです。
EDIが持つ明らかなメリットは、以下の通りです。
- 高いセキュリティとプライバシー保護:セキュアな接続で送信することにより、EDIは企業秘密や機密データを確実に保護します。誰がデータにアクセスできるかが明確になります。
- 手動処理の効率化:EDI技術により、従来の手作業に比べてはるかに短い時間でデータを収集し、送信することができます。
- 普及性:EDIは業界標準です。提携したい相手側企業の多くがこのシステムを既に知っているだけでなく利用し始めていることに、お客様は気づかれるでしょう。
これに対し、APIが持つ明らかなメリットは、以下の通りです。
- 電光石火のスピード:APIのパフォーマンスは、どのような物理的ドキュメントをシステムにアップロードするかによって制限されることはありません。APIはシステムに接続し、データを収集し、随時更新していきます。EDIシステムで何時間もかかることが、APIを使えば数分だけで済むかもしれません。集荷依頼が自動化されることで、正確な情報を予測担当者の手に届けることができます。
- シンプル:輸送管理システム(TMS)、倉庫管理システム(WMS)、企業資源計画(ERP)など、既に導入されているさまざまなシステムがAPIで接続されるので、データ収集のためにシステムをカスタマイズする必要がないだけでなく、ビジネスパートナーも通信を行うために同じバージョンを購入する必要がなくなります。
- 将来を見据えた技術:API技術は、新しいタイプの技術がサプライチェーンの可視性をさらに拡大するために出現した場合でも、そのような技術をサポートすることができます。たとえば、本稿を書いている間にも急速に進化しているブロックチェーンベースのシステムに対し、APIで接続することができます。
一方で、これらの技術にはそれぞれ限界があります。EDIは、コスト面でも、トレーニングや組み込みに必要な時間という面でも、高くつきます。また、EDIは2つの企業間のオープンチャンネルを作るだけです。さらに、双方の企業は同じバージョンを使用する必要があります(現在、3つのバージョンがあります)。
これに対し、APIによるアプローチはEDIほど普及が進んでいません。APIは、インターネット接続に依存するため、インフラが貧弱で不安定な地域では停電になって使えなくなるという問題があります。
少なくとも今のところ、EDIとAPIは、サプライチェーンにおける情報伝達に対する2つのアプローチとして最適に機能しています。組織は、両者を併用することで、ファイルベースのバッチ処理とリアルタイムのデータ共有の両方のメリットを享受すると同時に両者のデメリットを回避することができます。たとえば、組織は転送されるデータの種類に応じて異なる技術を選択することができます。たとえば、インボイスはEDIを利用して安全に送信する一方で、出荷ステータスなど時間的制約のあるデータはAPIを利用して送信することができます。組織は、両方を使うことで最良の結果が得られることにやがて気づくかもしれません。

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