ヘビーデューティコネクタの性質と産業用コネクティビティにおける使用例

著者 ジョディ・ムエラナー

DigiKeyの北米担当編集者の提供

産業用アプリケーションでは、ケーブルの接合部を介して電力、センサ信号、制御データなどをオートメーションコンポーネントへ入出力するために、さまざまなコネクタが使用されています。ヘビーデューティコネクタ(コネクタの製品名ではHDCと略されることもある)の性質は用途によって異なるため、ある程度相対的なものとなります。しかし、堅牢な産業用コネクタと、基本的なEthernetや軽負荷電力を用いたクリーンな屋内オートメーションのアプリケーションで使用されるライトデューティのRJコネクタやIECコネクタとの間には、明確な違いがあります。

ヘビーデューティコネクタには、全体的な堅牢性の向上だけでなく、異物浸入防止機能の強化、可燃性の低減、広い動作温度、インターロック、アースシールド、あるいは単純にポジティブロックによる接続信頼性の向上といった特徴があります。

ヘビーデューティのケーブルグランドとコネクタ

ケーブルグランド(コードグリップと呼ばれることもある)は、産業用制御盤および、シートメタルや硬質プラスチック製のエンクロージャ、コネクタ、コントローラなどの境界を通過するケーブルを包み込む機械部品が主となっています。ケーブルグランドには、3つの役割があります。それらは以下のとおりです。

  • ケーブルの固定
  • ケーブルの擦れやその他摩耗の防止
  • エンクロージャへの水分の浸入や吸い上げを防ぐために、ケーブル部分の周囲にシールを提供

ケーブルを固定するケーブルグランドは、ケーブルが引っ張られたり乱れたりしても、電気接点の損傷を防ぎます。ケーブルグランドは、エンクロージャに開けられた穴の鋭利な縁とケーブルのシースが擦れるのも防ぎます。グランド本体が縁に沿って入れられ、広がっているからです。ケーブルグランドがないと、少しでも動いたケーブルはエンクロージャの穴の鋭利な部分ですぐに切られ、外皮が完全に切り裂かれてしまい、ケーブルの芯がショートしてしまいます。

このケーブルグランド(ケーブルを囲むもの)とは対照的に、コネクタはケーブルを終端するものであり、通常は複数の部品やケーブルの接続、切断、再接続をより便利に行うことができます。一般的に、これらのコネクタのヘビーデューティバージョンには、耐久性をもたらす1つ以上の機能が含まれています。

ヘビーデューティなケーブルコネクタには、ユニバーサルケーブルグランド、ケーブルクランプ、シール、ねじれ防止デバイスといったケーブル貫通部の保護機能があります。機械的な形状を問わず、ケーブルを固定し、端子からの抜けを防止します。また、スタンドアロンのケーブルグランドと同様に、ケーブルの摩耗を防ぐことができます。なお、ラメラインサート(複数のフィンガーを持つグランド)は、中程度の耐久性を持つコネクタでは一般的ですが、異物侵入防止のためにはインサートを定期的に締め直す必要があります。ケーブルを挟み込むような連続したシールを持つグランドは多くの場合、ヘビーデューティな用途でより信頼性の高い選択肢となります。

ヘビーデューティケーブルコネクタのフードは、プラグの導線を囲み、絶縁と異物浸入防止を行いながら、コネクタの両側を保持するためのロックやラッチングスリーブ、レバーも備えています。

多くのヘビーデューティケーブルコネクタでは、オスインサートにオスピンがあり、導線の芯がピンに接触する部分にネジや圧着端子が付いています。このようなコネクタのメスインサートには、相補的なソケットが含まれ、導線の芯とソケットが接触する部分にレセプタクルまたは圧着端子が付いています。

ヘビーデューティケーブルコネクタの最も明確な特徴は、多くの場合絶縁性と異物浸入防止機能を備えた頑丈なハウジングです。アクセサリとしては、追加の保護カバーやピンコード用のガイドなどがあります。

図1:Han®シリーズ コネクタは、かなり過酷な環境条件に耐えるために、いくつかの補完的な機能を備えています。(画像提供:Harting

ヘビーデューティコネクタの異物侵入防止を表すIPコード

ヘビーデューティコネクタでは、流体や固体粒子の侵入を防ぐことがかなり標準的になっています。コネクタの異物侵入防止性能は、エンクロージャと同じ保護等級IPコードで評価されます。IPコードの1桁目は固形物からの保護を表し、0(保護なし)から6(完全な防塵構造)までの値を示します。IPコードの2桁目は流体に対する保護を示しており、0(保護なし)から8(水深1mでの継続的な保護)、さらには9K(高圧ジェットに対する保護)までの値があります。たとえば、IP67規格のコネクタは、埃の侵入や一時的な水没に耐えることができます。

専用コネクタのバリエーション - 一般的である理由

ヘビーデューティコネクタは、メカニカルクロージャやガスケット機能に強く依存しているため、現在市場に出回っている多くの選択肢は、専用設計かアプリケーションに特化したコネクタのバリエーションとなっています。たとえば、Harting Hanシリーズの電源および制御接続用のヘビーデューティ長方形コネクタは、産業全体で標準となっています。実際、この商標のコネクタブランドは、ヘビーデューティコネクタの代名詞のようにも言われています。

図2:Hanシリーズのコネクタ(4ピンと26ピン)は、50~5,000V、3~200Aのさまざまなデータおよび電源接続の要件を満たす、業界標準のようなものです。ロック機構には、片手で簡単に操作できるシングルレバーのHan-Easy Lockと、より信頼性の高いロック、より高い耐圧性、ケーブル同士の接続に使用できるダブルレバーのHan-Easy Lockがあります。さらに、ネジロック式の堅牢なオプションもあり、最高の耐圧性と不正使用のリスク低減をもたらします。(画像提供:Harting)

Hanシリーズのコネクタでは、長方形のフード内に配置されたピンが、長方形のハウジング内の対応するソケットと嵌合します。コネクタには一般的にロックレバーが装備されており、設置作業者が簡単かつ確実にコネクタを嵌合することができ、かなりの張力がかかっても引き離すことができないようになっています。

フード(ボルトオン式のコネクタカバーシェル)は、電源ケーブルの終端に最もよく使われるもので、トップエントリ型とサイドエントリ型があります。ハウジングは、ネジ止め、表面実装、バルクヘッド実装が可能で、計測器や機械に接続することができます。また、ケーブルとケーブルを接続する際は、ハウジングでケーブルを終端することもできます。フードやハウジングは、一般的にダイキャスト合金で作られていますが、ステンレス鋼やプラスチック製のものもあります。いくつかのメーカーは、単一のフードやハウジングの中に、構成可能なコネクタをまとめています。これにより、異なるすべてのモジュール全体でピン数を増やすことができます。このようなコネクタは、MolexGWconnect HDCや、TE ConnectivityHDCなどのブランドで販売されています。

データケーブルとセンサ信号ケーブル向けに耐久性を備えたケーブルコネクタには、小さな違いがあります。ここでは、Mシリーズのコネクタがリードします。Ethernetをはじめとする各種データ接続や電力伝送に使用される堅牢なコネクタです。堅牢なMシリーズ コネクタは、PROFINET、フィールドバス、産業用Ethernetを使用してセンサ、スイッチ、PLCを接続する産業用ネットワークアプリケーションで最も一般的です。

以前のDigiKey記事で取り上げたように、Mシリーズのコネクタは、内部のピンとレセプタクルを包んで保護する標準的なメートルネジのスリーブを持つ、丸型のオスおよびメスのコネクタで構成されています。標準サイズには、5mmのM5、8mmのM8、12mmのM12、16mmのM16、23mmのM23コネクタが含まれます。ネジ付きスリーブは、簡単に引き離すことができない非常に堅牢で信頼性の高い接続を実現し、断続的な信号を最小限に抑えて非常に信頼性の高い電気的接続を保証します。また、このスリーブは、Mシリーズのコネクタに高レベルの浸入保護を与え、多くの場合、水流や腐食環境の中での使用も可能にします。最も一般的なサイズは、2、3、4、5、8、12ピンのM8およびM12コネクタです。一般的に、3または4ピンのMシリーズ コネクタはセンサと電源に、4または8ピンのMシリーズ コネクタはEthernetとPROFINETデバイスに、4または5ピンのMシリーズ コネクタはフィールドバス、CANバス、DeviceNetオートメーションデバイスに対応しています。

図3:Mシリーズのコネクタは、高強度のアルミニウム製で、片手で素早く確実にケーブルをカップリングできるラチェットネジを採用しています。(画像提供:LEMO

産業用アプリケーションで使用されるデータ接続には、Ethernet、Modbus TCP/IP、EtherCAT、Ethernet/IP、Profinetなどのほか、さまざまな専用フォーマットがあります。RJコネクタは、Ethernetのすべての実装に対して標準となっていますが、異物浸入防止機能はなく、堅牢性も高くありません。オス側のプラスチック製タブは、ソケットにカチッとはまる(コネクタの両側をまとめて固定する)ものの、かなりデリケートなため、少し引っ張るだけでプラグがソケットから抜けてしまいます。そのため、自動化された取り付けで動きや偶発的な誤りが生じる可能性がある場合は、Mシリーズのコネクタが優れた選択肢となります。

しかし、ここにはもう1つの注意点があります。標準のMシリーズ コネクタは、産業用コネクタ として適切な選択肢ですが、信頼性の高い接続(および異物侵入防止レベルの定格)を得るには、技術者がコネクタのネジを正しく締めることが必要です。このような問題を解決するために、コネクタメーカーの中には、自動的にロックされるプッシュフィットコネクタを販売しているものもあります。おそらくその中で最も認められているのが、標準的なM12コネクタの直接的な代替品である、MolexのBradシリーズのコネクタです。信頼性の高いプッシュトゥロック機構のため、ネジ付きスリーブはありません。コネクタの両側を押し合うだけで完全にロックされ、信号の断続や切断の心配なく信頼性の高い接続が可能です。これらのコネクタは、さまざまな構成で用意されており、IP65保護等級のプッシュオンコネクタとプルオフコネクタが含まれます。

図4:Ultra-Lockコネクタは、Oリングを使用したプッシュトゥロック方式の製品で、確実な接続とIP69Kの異物侵入防止を実現しています。(画像提供:MOLEX)

Ethernetアプリケーションに使用する場合、MシリーズおよびMolexのBradコネクタは、さまざまなレベルの帯域幅と電力容量をサポートするために、オルタナティブA、オルタナティブB、および4PPoEという3つの構成でPoE(Power over Ethernet)規格を使用して電力を供給することができます。

高電力要件に対応するIEC電源コネクタ

国際電気標準会議(IEC)は、家庭用、商業用、工業用に使用される電源コネクタの各種規格を定めています。たとえば、IEC 60320は、電圧が250V、電流が16Aまでのノンロックコネクタを対象としています。これには、コンピュータの電源やサーバのエンクロージャなど、産業用の電子機器によく使われるC13/C14およびC19/C20カプラが含まれます。これらは大型ですが頑丈ではありません。これらのカプラは通常、ヘビーデューティコネクタとはみなされません。

一方、IEC 60309のロック式コネクタ、1,000V、800Aまでの電圧・電流が流れる産業用ケーブルに使用することを想定した頑丈な作りになっています。IEC 60309のロック式コネクタはすべて、ある程度の異物侵入防止性を備えており、標準的な構成において、防滴IP44、防水IP67、または防噴流・防水IP66/67の保護を実現しています。

また、この規格では、インターロックされた配線用差込接続器も認められています。この機能を持ったコネクタは、プラグを差し込まないと通電せず、電源を切らないとプラグを取り外すことができません。以下の色分けは、コネクタの許容電圧と周波数範囲を示しています。

  • 黄色は、IEC 60309の電源コネクタが、50または60Hzで100~130Vの電圧を流すのに適していることを示しています。
  • 青色は、IEC 60309の電源コネクタが、50または60Hzで200~250Vの電圧を流すのに適していることを示しています。
  • 赤色は、IEC 60309の電源コネクタが、50または60Hzで380~480Vの電圧を流すのに適していることを示しています。多くの場合、三相構成です。

図5:赤で色分けされたヘビーデューティコネクタは、380~480Vを供給するためのIEC 60309規格を満たしています。(画像提供:Wikimedia Commons

結論

ヘビーデューティコネクタは、さまざまな要件を満たす必要があります。コネクタには、衝撃荷重による潰れや引っぱりへの耐久性が必要か。埃や水に対する異物侵入防止性能は必要か。コネクタはどのくらいの温度に耐える必要があるか。ヘビーデューティコネクタは、可燃性が懸念される環境に設置されるか。

また、ピンの数、それぞれのピンにかかる電圧と電流、そしてケーブルの挿入方向とケーブル保護のレベルも考慮しなければなりません。ケーブルやそのコネクタが動くような自動機では、適切なグランドやケーブルクランプを設けなければなりません。また、ねじれ防止デバイスを使用することも賢明です。

比較的軽い電気負荷であっても、過酷な環境下で使用される場合は、Mシリーズ コネクタおよびその派生品が適していることが多くあります。より高い電気負荷には、長方形コネクタの方が適しているかもしれません。特に長方形コネクタは、さまざまなケーブル挿入方向や取り付け方法、モジュラー構造など、複雑な要求にも対応できるようになっています。また、単相または三相交流電源への単純な電源接続には、IEC 60309のロック式産業用コネクタが(唯一ではないにしても)有力な選択肢となります。

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著者について

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ジョディ・ムエラナー

ジョディ・ムエラナー博士は、製材所や医療機器の設計、航空宇宙製造システムの不確実性への対応、革新的なレーザー機器の開発などに携わってきたエンジニアです。同氏は、数多くの査読付き専門誌や政府の概要資料に寄稿しています...また、Rolls-Royce、SAE International、Airbusのための技術報告書も書いています。現在は、電動自転車を開発するプロジェクトを率いています。詳細はbetterbicycles.orgをご覧ください。また、同氏は脱炭素化技術に関する動向もカバーしています。

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