産業用アプリケーションにおけるM12コネクタと代替品の比較

著者 Lisa Eitel(リサ・アイテル)氏

DigiKeyの北米担当編集者の提供

M12コネクタは、産業用設計、移動ロボット設計、さらには民生用設計で広く使用されているユビキタスな丸型ケーブル終端で、センシング、アクチュエータ、その他のコンポーネント(フィールドバスなど)を自動機械の制御やその他のシステムに接続するために使用されます。M12コネクタの正確な形状と導体の配置(多くの場合、PURジャケットケーブルまたはPVCジャケットケーブルの端)は、国際電気標準会議のIEC 61076-2-101規格によって定義されています。M12という名称は、ほとんどのコネクタのカップリングナットと嵌合レセプタクル(詳細は後述)のメートルネジが、基本的にM12ネジ山の直径12mmのファスナーであることに由来します。

設計エンジニアが機械や製品の設計に適した「コルセット」を指定できるように、数十種類の特化したオプションが用意されています。オプションには、以下のものがあります。

  • 直角型、直進型
  • オスとメス(一般的)のワイヤ側面ファスナー型
  • 内部シールドありと内部シールドなし
  • 完全統合型のケーブルセットとモジュラー式
  • 軽量版と装甲版
  • カップリングナットの多様なデザインと構造

シールド付きM12 QUICKON(IDC)コネクタは、設置者が機器の接続を現場で配線できるようにするM12コネクタの一種です。(ビデオ提供:Phoenix Contact)

M12規格のおさらい

M12コネクタは、少数のアプリケーション向けの7⁄8インチ、3ピンの非標準コネクタとして、1982年に初めてリリースされました。コネクタのユニークな特長は、カップリングナットでした(多くの場合、今でもそうです)。その構造は、ケーブル端のハウジングがケーブル端の上に軸方向に固定されていますが、自由に回転できるものです。そのため、レセプタクル側のオスまたはメスのファスナーに合わせてねじ込むことができます。最初のコネクタは、センサやアクチュエータで使用するためにIEC 61076-2-101で標準化されました。その後、数年にわたって規格が拡張され、いくつかのM12コード(ピン形状と機能のバリエーションを詳細に定義したもの)と、アクチュエータ、PLC、スイッチ、およびI/Oで使用するための2つの小さな形式が定義されました。この中には、M8コネクタ(IEC 61076-2-104で定義され、直径が8mmのファスナー)とM5コネクタ(IEC 61076-2-105で定義され、直径が5mmのファスナー)が含まれます。

M12、M8コネクタの形状標準化の画像図1:M12およびM8コネクタの形状を標準化することで、設置を迅速に行うためのツールの利用便など、多くのメリットがもたらされます。例を挙げると、ねじ込み式のラチェットドライバーは、従来の1/4インチアダプターに対応しており、作業者が種々のコネクタを素早く締め付けることができます。これには、丸型プラグインのM12およびM8コネクタ、およびカスタマイズ可能なM12F、M8F、M23のプラグとソケットが含まれます。(画像提供:Weidmüller

IEC 61076-2-010(2020)の最新版には、久しぶりに規格に大きな項目が追加されました。プッシュプル接続の公式定義のサポートです。この規格の開発に関わったケーブルメーカーには、MolexCONEC、Weidmüller、Phoenix Contact、HARTINGなどが名を連ねています。プッシュプルM12接続の主な長所は、以下のとおりです。

  • 組み立て時間の劇的な短縮(ナットをねじ込む必要がなく、加えられたトルクの確認が不要なため)。
  • 従来のM12コネクタよりもコンパクトな接続方式。

HARTINGのM12プッシュプルコネクタの画像図2:M12プッシュプルコネクタは、所定の位置にカチッとはまり、直立ソケットと凹型ソケットを結合します。IEC 61076-2-010の2020年版ではプッシュプル式M12規格が定義されており、すでに各社独自の形式で市場で成功を収めたプッシュプル式M12コネクタアプリケーションの後押しを目的としています。(画像提供:HARTING)

IEC 61076-2-010 2020では、メスのプッシュプルコネクタの内側のロック従属部品とオスのプッシュプルコネクタの外側のロック従属部品の形状が定義されています。これにより、ケーブル製品間の相互互換性が確保されます。

他のコネクタオプション

M12プッシュプルとの混同に気をつけるべき別の丸型コネクタがあります。それは、通信機器や産業用HMI周辺機器で使用されているミニチュアDINコネクタです。このDINとは、Deutsches Institut für Normung(ドイツ規格協会)の略で、ケーブル端子内の構造と接続を定義するドイツの国家標準化団体です。DINコネクタは、アセンブリ時にレセプタクルに差し込まれた状態を維持するのに、ケーブル端のスリーブ間の締まり嵌め(摩擦)に依存しています。9.5mm(3/8インチ)のミニDINコネクタには、3、4、5、6、7、8、または9個の電気コネクタがピン配列されており、見た目が似ているミニDINケーブル同士の偶発的な誤接続を防ぐように配置されています。多くの場合、サプライヤは、ケーブル端と装置側のレセプタクルに独自の色分けを追加して、2者の接続部の位置合わせをし、取り付けを容易にします。

ミニDINとM12コネクタには、それぞれが得意とする明確な用途があります。しかし、市場には多くの非標準ミニDINコネクタが存在し、設計の自由度を高めると同時に混乱も招いています。ミニDIN固定スリーブの締まり嵌めは、素早い着脱を可能にします。対照的に、M12コネクタのネジ取り付けは、結合に多少時間がかかりますが本質的により安全です。

M12のピン数とコード化(標準化)されたピン位置

「M12コネクタには、様々なピン数とコード化(標準化)されたピン配置があります」の画像図3:M12コネクタには、様々なピン数と標準化(コード化)されたピン配置があります。一部のセットでは、カップリングナット(ケーブル端に軸方向に挟まれれている)がオス部品側のレセプタクルにねじ込まれています。M12コネクタは、元々は3ピンまたは4ピンでしたが、現在では5ピン、6ピン、8ピン、12ピンもあります。(画像提供: EE World

ピン数の他に、M12コネクタはコードバージョンでも標準化されています。嵌合不良を防ぐためのピン配置、チャンネル、ノッチ、電磁シールドの設計が定義されています。

AコードのM12コネクタはたくさんあり、DC電源で動作するセンサやその他の小型デバイスのネットワークに今でも使用されています。BコードのM12コネクタは、PROFIBUSで使用されるのが一般的です。Cコードのデュアルキー溝(M12電源)コネクタは、小型オートメーションコンポーネントにAC電源供給を必要とする設計に優れています。DコードのM12コネクタは、PROFINET接続だけでなく、100MbsのEthernetもサポートします。

新しいM12コードバージョンには、それぞれAC電源とDC電源の供給をサポートするKコードとLコードのコネクタが含まれています。同様のオプションとして、Sコードのコネクタ(ACモータを動かすために690Vまで給電可能)とDC電源用のTコードのコネクタがあります。しかし電源供給用には、XコードのM12コネクタが、10Gbsの産業用Ethernetや、Power over Ethernet 802.3at(PoE+)接続を利用するステップモータなどのアクチュエータへの給電をサポートするために、劇的に使用が増加しています。後者は、様々なアクチュエータをフルパワーで動作させるのに十分なワット数を提供します。

まとめ

オートメーション化された機械のケーブル配線や物理ネットワークは、電気技師が何百時間もかけ、導管に通した裸線を手作業でよじったり、絶縁したり、テストしていた時代は終わりました。今日のM12コネクタ(急増するコード化された特殊な配列、ケーブル配線やその他のイノベーションを含む)は、必要に応じて簡単に交換できる迅速かつ安全で障害のないセットアップを可能にしながら、設置を実行する専門技術者を必要としないようになってきています。実際、M12コネクタは、シンプルでモジュール式の非専売のソリューションへと向かう機械による自動化やFAの大きなトレンドの一部になりつつあります。

DigiKey logo

免責条項:このウェブサイト上で、さまざまな著者および/またはフォーラム参加者によって表明された意見、信念や視点は、DigiKeyの意見、信念および視点またはDigiKeyの公式な方針を必ずしも反映するものではありません。

著者について

Image of Lisa Eitel

Lisa Eitel(リサ・アイテル)氏

Lisa Eitel氏は、2001年からモーション制御業界で働いています。彼女が注力する分野には、モータ、ドライブ、モーション制御、動力伝達、リニアモーション、センシングおよびフィードバックテクノロジが含まれます。彼女は機械工学の理学士号を取得しています。Tau Beta Pi工学名誉協会(全米最古の工学名誉協会)の新参会員であるほか、女性エンジニア協会会員、FIRST Robotics Buckeye Regionalsの審査員を務めています。motioncontroltips.comへの寄稿に加え、Lisaは業界誌Design Worldで四半期ごとにモーション制御問題の制作も指揮しています。

出版者について

DigiKeyの北米担当編集者