構成可能モジュラー式コネクタを使用して、産業用機器の配備を簡素化する

著者 Bill Schweber氏

DigiKeyの北米担当編集者の提供

産業用アプリケーションの信号接続と電源接続の方法を考えると、一般にタイトな設定で行わなければならない電源接続、グランド接続、信号接続が多数存在します。設計者はさまざまなタイプのケーブルを指定する必要がありますが、相互接続の準備時間、利便性、およびスペースも重要な要素です。多くの産業用機器の設計はこのような状況で、技術者が手動で一度に1本ずつワイヤを接続する昔ながらのポイントツーポイント(2端点接続)「配線」に頼っています。

しかし、手作業による配線は、現場では非常に時間がかかり、ミスが発生しやすく、結果、コストがかかるのが実情です。特に、修理、拡張、再配置などの理由で切断/再接続が必要な場合は、時間のロス、復元作業の手間、ミスなどでコストがかかります。

このような効率性、コスト、スペース、信頼性の問題に対する解決策として、柔軟性があり、用途が広く、管理が容易なモジュラー式コネクタの使用があります。このようなコネクタには、多種多様なコネクタハウジングや取り付けフレームが付属しており、裸線、D-Subコネクタ、同軸ケーブル、さらには光ファイバや圧縮空気圧を使用して、電力、信号、データタイプを含む、各種の電気信号を処理するように設計され、設計者が選択可能なミックスアンドマッチのインサートとペアになっているものがあります。

この記事では、実例を出して、手作業的なアプローチの問題点を浮き彫りにしていきます。次に、HARTING社のHan-Modularシリーズ コネクタを基にして、より柔軟で効率的なアプローチを紹介し、多くの配線問題をどのように解決するかについて説明します。また、Han-Modularシステムを例に取り、最適なコネクタを素早く構築するのに役立つ付属のコンフィギュレータツールについても説明します。

ポイントツーポイント配線:迅速、簡単、しばしば厄介

基本的な相互接続をポイントツーポイント(2端点接続)配線で実装するほうが簡単なように思えますが、多くの場合、その選択を後悔することになるでしょう。スマートユニットと暖房システムコントローラの間に中間リレーを必要とする、単純なワンゾーンの「単細胞」サーモスタット配線をスマートなものにアップグレードする例を考えてみましょう。最初のゾーンの配線は行き当たりばったりで、ごちゃごちゃしているように見えましたが、設置はカタンですぐに動作しました。また、すべて24VACだったので、露出した配線や安全性にも問題はありませんでした。

しかし翌年、別の2つの暖房ゾーンをスマートサーモスタットにアップグレードすることになりました。追加のポイントツーポイント配線も「やっつけで」行われましたが、結果、見事な配線の巣ができました(図1)。機能はしますが、問題が発生した時のトラブルシューティングが非常に難しく、さらなる追加アップグレードは悪夢となるため、長期的には良いアプローチとは言えません。

ごちゃごちゃしたポイントツーポイント配線の画像図1:ごちゃごちゃしたポイントツーポイント配線。プロジェクトの計画性のなさや、ベースシステムへの追加機能のための配線の結果。この配線状態は、3ゾーンのスマートサーモスタットのアップグレードのためにリレーを追加したため。(画像提供:Bill Schweber)

この状況は、実用性、審美性、情報管理の点から受け容れがたかったため、スペードラグとネジ式端子台を使った配線によって、配置全体をクリーンアップして再配線することに決めました(図2)。これは、3つの専用コネクタ(ゾーンごとに1つ)を使用するよりも計画と実行にかける時間が少なくて済み、50以上の離散的な接続にもかかわらず、この場合は許容できる妥協案とみなされました。そして、この配線工事では、ポイントツーポイント接続の明らかな利点が実証されました。これらは、綿密な計画をあまり必要とせず(回路図や相互接続図で十分な場合が多い)、最小限の作業で済み、すぐに取りかかれます。

サーモスタットのアップグレード配線の画像図2:サーモスタットのアップグレード配線は、スペードラグとネジ式端子台を多用して再配線することで改善されましたが、50を超える接続を再配線するには、多接点コネクタを使用する場合に比べて大きなスペースを取りながらも、ミスを避けるために細心の注意が必要でした。(画像提供:Bill Schweber)

産業用はもっと複雑

産業用の場合は、これよりも改善された配線であっても、長期的には有害な影響を及ぼすことになるでしょう。これらすべての個別ワイヤを設置するには、物理的な整合性をチェックするだけでなく、各ワイヤの配置を図面と照らし合わせて何度もチェックする必要があります。各ワイヤのラベリングも重要で、通常は従うべきANSIおよびISOのラベリング規格があります。修理や移設のために機器を外す必要がある場合は、複雑な接続プロセスを元に戻さなければならず、再接続の際にはその逆プロセスを繰り返す必要があります。

明らかに、個別の配線済みケーブルと嵌合コネクタは、最初は魅力的な代替手段を提供します。これらは、配線を省略しつつ、制御された設定で事前に構築もテストもできますが、新たな懸念ももたらします。多くの設備では、さまざまな定格電流の低電圧と高電圧、センサ信号、多数のデータリンク、Ethernet、光ファイバ、さらには低圧空気圧(気送)などの信号タイプが混在しています。その結果、ケーブルやコネクタの種類が増え、パネルスペースをかなり占有するようになります。同じタイプのコネクタケーブルが複数ある場合は、キーイング(誤挿入防止)が必要になることもありますが、取り外し/接続には時間がかかります。

マルチケーブル/マルチコネクタのジレンマを解決しそうな解決策があります(少なくとも最初は)。標準コネクタは、共通のハウジング内に複数の電源接点および信号接点を備えています。しかしこれらは、2つの理由から、実際には部分的な解決策にしかなりません。第一にこれらは、電源用に2極、信号用に6極など、事前に定められた固定の接点番号とタイプのセットでしか使用できません。第二に、これらは基本的な低/高レベルの信号と電力レベル、および一部のデータ信号にのみ利用できるものであって、ギガビットEthernet(GbE)、プラスチックまたはガラス繊維光ファイバ、さらには低圧の気送(空気圧)接続には利用できません。

フルモジュール化:より良いソリューション

このような接点制約を回避するには、HARTINGのHan-Modularシリーズのコネクタがお勧めできます。これらのコネクタは、接点の数とその種類による組み合わせの柔軟性という点で最先端を行っています。設計者は、コネクタと接点のほぼあらゆる組み合わせを選択でき、それを終えたら適切なハウジングと一緒にその組み合わせを組み込むためのコネクタフレームを選択します(図3と図4)。

「ユーザー定義のモジュール化により、標準コンポーネントを使用したカスタムコネクタを作成できます」の画像図3:ユーザー定義のモジュール化により、標準コンポーネントを使用したカスタムコネクタを作成できます。(画像提供:HARTING)

コンパクトでフルカスタマイズされた密閉型コネクタアセンブリの画像図4:図3に示したプロセスの結果、コンパクトでフルカスタマイズされ、嵌合両面が合致する密閉型コネクタアセンブリが出来上がります。(画像提供:HARTING)

Hanモジュールは、数mAから200Aまでの電流、5,000Vまでの電圧、空気圧ホース、データライン、シールドバス信号、さらにはプラスチックまたはガラス繊維光ファイバケーブル用のコネクタと接点(オスとメス)をサポートしています。これは、他の多機能コネクタ/接点アセンブリにはない電気的・機械的な選択範囲を提供します。

これらのコネクタを使用すると、ケーブルと配線は事前設計されるタスクになります。設置場所ではなく、オフサイトで完全なハーネスとして設計・組み立て・テストを行うことができ、簡単かつ迅速に接続したり取り外すことができるようになります。(図5)。

「コネクタで終端されたケーブルは、オフサイトで組み立てられ、テストされます」の図図5:コネクタで終端されたケーブルは、オフサイトで組み立てられ、テストされた後、迅速に現場に設置され、必要に応じて外されます。2つの長方形のコネクタのそれぞれに結合された各種の配線、特に左側のコネクタに見える部分に注意してください。(画像提供:HARTING)

このシリーズの高度なモジュール性と柔軟性には、もう一つの利点があります。製品設計の現実世界では、プロジェクトが進むにつれて要件が変化し、進化します。Han-Modularシリーズでは、ベースとなるコネクタに別の内部モジュールを追加するだけで、これらの追加要求に対応できます。設計者は、最初から探し直す必要はありません。

範囲と汎用性を強調する例

Han-Modularシリーズには数多くのコネクタやコンタクトがありますが、その中からいくつかを簡単にご紹介します。

まず、コネクタモジュールを保持するフレームがあります。一例は、6つのモジュール用の09140240313ヘビーデューティヒンジ付きフレームです(図6)。個々の接続モジュールは、このフレームに挿入され、固定され、ロックされます。

HARTIN G09140240313のヘビーデューティヒンジ付きフレームの画像図6:コネクタインサートを保持するためのフレーム製品の1つ、09140240313ヘビーデューティヒンジ付きフレームには、このようにモジュールを6つ保持するスペースがあります。(画像提供:HARTING)

最先端の産業用システムでは、GbEリンクのサポートが必要となる場合もあります。ここでは、オス接点を備えた09140083012ギガビットモジュールを追加できます(図7)。シールドコネクタの定格は10ギガビット/秒(Gbit/s)で、IEEE 802.3bt(PoE++)供電もサポートしています。

HARTINGのシールド09140083012 GbEコネクタの画像図7:このシリーズのシールド09140083012 GbEコネクタは、定格10Gbit/sで動作し、IEEE 802.3bt(PoE++)給電にも対応しています。(画像提供:HARTING)

同時に、コネクタは相当なACまたはDC電源をサポートする必要がある場合もあり、プレスインサート用の09332062648、6接点メスハウジングが良い選択となる場合があります(図8)。0.14mm²~2.5mm²(AWG 26~AWG 14)までのサイズの単線または撚り線を使用して、16Aで定格500Vのプレスインサートを扱うことができます。

HARTING 09332062648プレスインサート用6接点メスハウジングの画像図8:産業用設備では通常、かなりの量のACおよびDC電源を必要としますが、この09332062648プレスインサート用6接点メスハウジングを介して接続することができ、幅広い単線および撚り線のサイズに対応します。(画像提供:HARTING)

業界標準のRJ45 Cat 6A 8極モジュラープラグが必要な場合は、09454001520コネクタを利用できます(図9)。

HARTING 09454001520コネクタの図図9:Han-Modularシステムは、09454001520コネクタを使用して、広く使用されているRJ45コネクタにも対応します。(画像提供:HARTING)

Han-Modularシステムの際立った特長の1つは、幅広い電気接続オプションに加えて、低圧空気(空気圧)接続を簡単に提供できることです。たとえば、09140033501は、多くのフレームと互換性のある空気圧モジュールであり、適切なインサートの選択によって設定されるさまざまな径の低圧ラインに対応できるように構成できます(図10)。これらの中には、内径4mmチューブ用の09140006304オス金属インサート(図11)と09140006404メス金属インサート(図12)があります。

HARTING 09140033501制御モジュールの画像図10:Han-Modularは、電気のみの信号、データ、および電源を接続するだけではありません。低空気圧接続兼インサート用の09140033501などのモジュールを使用して空気圧制御にも対応できます。(画像提供:HARTING)

HARTING 09140006304オス金属インサートの画像図11:09140006304オス金属インサートは、内径4mmの気送管用に設計されています。(画像提供:HARTING)

「HARTING 09140006404金属インサートは、低圧空気用のメスコネクタです」の画像図12:09140006404金属インサートは、低空気圧用のメスコネクタであり、内径4mmのチューブ用でもあります。(画像提供:HARTING)

繰り返しになりますが、これらはHan-Modularシリーズで利用可能な多くのインサートとコネクタのごく一部にすぎません。

コンフィギュレータツールは使いやすさのカギ

Han-Modularシリーズは、多様な種類、機能、サイズのワイヤを接続する際に便利ですが、その選択肢は圧倒的であり、最適な構成は不可能と思われることもあります。しかし、HARTINGでは、無料のHan Configurator(Hanコンフィギュレータ)ツールを提供することでこれに対応しています。

このオンラインツールは、特定のアプリケーション用にカスタマイズされたHan-Modularコネクタを構築するプロセスを大幅に簡素化します。設計者は接続要件の詳細を入力するだけで、ツールがアプリケーションに最適なモジュール式インサートを呼び出し、技術詳細、3D図面、そしてさまざまなコネクタオプションのデータファイルを提供します。このツールは、すでにHanシステムに精通している設計者がいることも認識しており、ヘルプを一々参照することなく、インターフェース全体を直接構成できます。

コンフィグレータツールの使用は、終端となる最初の信号タイプを特定することから始まります(図13)。

HARTINGのコンフィグレータツールの画像図13:コンフィギュレータツールには、Han-Modularシステムでサポートされている基本的な接続タイプのリストが表示されます。設計者は、コネクタアセンブリに組み込むいくつかのタイプの中から1つを選んで開始します。(画像提供:HARTING)

このツールは、接点の数、電流定格、電圧定格、ワイヤゲージ、終端手法など、電気信号関連する詳細データのプルダウンボックスで応答します。信号のタイプに応じて、さまざまなデータセットが表示されます(図14)。

「コンフィギュレータは、設計者に最上位のパラメータを指定するように要求します」の図(クリックで拡大)図14:次にコンフィギュレータは、信号タイプの最上位のパラメータを指定するように設計者に要求します。ここでは「電気」の選択です。(画像提供:HARTING)

次に、プルダウン/プルアップメニューを使用して、設計者はハウジング材料(図15)、組立状況(図16)、ロックのタイプ(図17)などの追加要件を指定することができますが、これも利用可能なコネクタに好都合です(ここでは「電気」を選択した場合)。

設計者のハウジング材料の好みの画像(クリックで拡大)図15:開始画面の下部では、設計者のハウジング材料の好みを尋ねてきます。(画像提供:HARTING)

選択したコネクタの組立状況の選択の画像(クリックで拡大)図16:開始画面の下部には、選択したコネクタの組立状況の選択も表示されます。(画像提供:HARTING)

必要なコネクタロック機構の画像(クリックで拡大)図17:別の選択肢には、コネクタのロック機構があります。(画像提供:HARTING)

次にツールは、他の提案ソリューションとともに最初の実行可能なソリューションを生成し、その構成は製品リストと一緒に3Dモデルとして表示されます(図18)。

「ツールは、完全なコネクタアセンブリを構築し、詳細な3Dイメージを提供します」の図(クリックで拡大)図18:必要な接続タイプ、パラメータ、および設定をすべて入力すると、このツールは完全なコネクタアセンブリを構築し、詳細な3Dイメージ、部品リスト、その他の必要なすべての情報を提供します。(画像提供:HARTING)

設計者は、好みの構成を選択するか、提案されたソリューションを変更して個々のコンポーネントを置き換えることができます。

Hanコンフィギュレータは、コネクタを指定する設計者が複数の目的を達成することができるので、設計プロセスのあらゆる側面を強化し、スピードアップを可能にします。

  • インタラクティブな3D視覚化でコネクタ設計の可能性を深める
  • ソリューションが実行可能であることを確認する
  • 他のチームメンバーとの共同作業が容易
  • カスタムコネクタのファイルの保存と共有
  • 標準CAD STPファイルとデータシートのダウンロード
  • 詳細な部品表(BOM)を自動的に作成

まとめ

産業用仕様のケーブルを終端するための適切なコネクタセットを選択するという作業課題は、技術者をイライラさせることがあります。HARTINGのHan-Modularシステムは、強力で直感的なコンフィギュレータツールでサポートされており、その高度な柔軟性、モジュール性、構成可能性により、最適なソリューションを簡単に得ることができます。その結果、ポイントツーポイント配線のアプローチを、最小限のスペースで利便性と接続の容易さを提供する最適化されたカスタマイズソリューションに置き換えることができます。

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著者について

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Bill Schweber氏

エレクトロニクスエンジニアであるBill Schweber氏はこれまで電子通信システムに関する3冊の書籍を執筆しており、また、発表した技術記事、コラム、製品機能説明の数は数百におよびます。これまで、EE Timesでは複数のトピック固有のサイトを統括するテクニカルウェブサイトマネージャとして、またEDNではエグゼクティブエディターおよびアナログエディターの業務を経験してきました。

Analog Devices, Inc.(アナログおよびミックスドシグナルICの大手ベンダー)ではマーケティングコミュニケーション(広報)を担当し、その職務を通じて、企業の製品、ストーリー、メッセージをメディアに発信する役割と、自らもそれらを受け取るという技術PR業務の両面を経験することになりました。

広報の業務に携わる以前は、高い評価を得ている同社の技術ジャーナルの編集委員を務め、また、製品マーケティングおよびアプリケーションエンジニアチームの一員でした。それ以前は、Instron Corp.において材料試験装置の制御に関するハンズオンのアナログおよび電源回路設計およびシステム統合に従事していました。

同氏はMSEE(マサチューセッツ大学)およびBSEE(コロンビア大学)を取得した登録高級技術者であり、アマチュア無線の上級クラスライセンスを持っています。同氏はまた、MOSFETの基礎、ADC選定およびLED駆動などのさまざまな技術トピックのオンラインコースを主宰しており、またそれらについての書籍を計画および執筆しています。

出版者について

DigiKeyの北米担当編集者