過酷な産業環境で柔軟性を維持しながらコネクタスペースを節約する方法
DigiKeyの北米担当編集者の提供
2022-12-22
産業環境において、有線接続されたデバイスは、配線やケーブルの取り外しや再装着を確実に行うことが難しいため、交換やアップグレードが困難です。同様に、新しいセンサやプロセッサなどの部品を追加すると、多くの場合、全交換や再配線が必要になります。
加えて、産業用デバイスは小型化が進んでおり、複数のコネクタを設置できるスペースも限られています。また同時に、パネル密度の優れた効率的なレイアウトには、単一のコネクタ内で複数の種類の接続を組み合わせられるような小型のコネクタが必要になります。
産業環境は、デバイスの完全性の維持に関して独自の課題をもたらします。液体や埃が侵入したり、デリケートな部品にダメージを与えたりしないようにすることが重要です。
コネクタ化は、ハードワイヤで接続されたデバイスをモジュラーコネクタに置き換えることで、これらの問題をすべて解決します。小型形状で入手可能なこれらのコネクタにより、複数の配線タイプを単一のコネクタにまとめることができます。モジュール形式では、デバイスやケーブルの交換を必要とせず、これらのコネクタを迅速に再構成して、変更や更新に対応することができます。また、環境的に強化されたモジュラーコネクタは、埃や液体に加え、滅菌用の高圧水噴射の衝撃もシャットアウトします。
この記事では、モジュラーコネクタの基礎を考察し、コネクタを選択して組み立て、活用する方法について紹介します。その中で、設計者が次の産業用システム設計に活用できるHARTINGの代表的なコネクタを紹介します。
モジュラーコネクタを使用したコネクタ化
産業用のデバイスやアプリケーションに電源、信号、デジタルデータを配線するには、2つの方法があります。
ケーブルは、ハードワイヤで恒久的に接続するか、コネクタを使用して取り付けることができます。その選択は、いくつかの要因に依存します。おそらく最も重要なのは、デバイスを取り外し、再接続することが必要な頻度です。ハードワイヤで接続されたデバイスの再接続が必要な場合、各ワイヤを丁寧に取り外して再接続する必要があります。これにより、多大な人件費がかかります。誤配線の可能性が高くなり、エラーを修復するためのトラブルシューティングに何時間もかかることがあります。
コネクタを使用すると、当初はコストがかかる可能性がありますが、一度決定すれば、再配線は配線ミスが起こりにくいプラグアンドプレイシナリオになり、熟練労働者の必要性が低減されます。そのため、ハードワイヤで接続されたケーブルの代わりにコネクタを使用する「コネクタ化」は、多くの長期的メリットをもたらします。
モジュラーコネクタを使用すれば、取り付けの柔軟性が高まります。電源、センサ、アナログ信号とデジタル信号、さらには空気圧まで対応するモジュラーコネクタについて考えてみましょう(図1)。さまざまなモジュールが入手可能です。この例は、RJ45およびUSBシリアルデータバス、ピン直径の異なる3種類の複数ピンモジュール、3本の空気圧ラインを備えたモジュールを示しています。
図1:モジュラーコネクタは、信号、電源、デジタル通信インターフェース、さらには空気圧まで、すべてを単一のコネクタで対応します。必要に応じて、モジュールを迅速かつ容易に交換できます。(画像提供:HARTING)
モジュラーコネクタの構成
モジュラーコネクタを構成する各種部品には、図2に示すような簡単な名称があります。
図2:HARTINGモジュラーコネクタの各部品の名称。フレームはモジュールを保持し、ハウジングやフードの中に収まるようになっています。コネクタは簡単に開くことができ、必要な変更のためにモジュールを再配置、追加、削除することができます。(画像提供:HARTING)
ベースコネクタの固定部分がハウジングです。可動部の嵌合端がフードです。フレームは、ハウジングやフードの中に収まり、モジュールを所定の位置に固定する役割を果たします。ダミーモジュールを使用することで、将来的な拡張のために追加のスペースを備えたコネクタ構成が可能です。2個の嵌合コネクタは、ネジまたはラッチレバーロックで固定されます。フードは、トップ、マルチトップ、サイド、マルチサイドケーブルのアクセスが可能です。ハウジングは上下どちらからでもアクセス可能です。
HARTINGが提供するモジュール、ハウジング、フード、その他のコネクタエレメントには多くの種類があるため、適切なオプションを選択することは複雑な作業となります。HARTINGは、モジュラーコネクタの選択と設計を容易にするオンラインコンフィギュレータにより、このプロセスを簡素化します(図3)。
図3:HARTINGが提供するHanコンフィギュレータのユーザーインターフェースは、モジュラーコネクタ部品の設計と選択を簡素化します。(画像提供:HARTING)
このコンフィギュレータは、コネクタに使用するワイヤ、データ、光、空気圧の各要素の選択を案内します。各エレメントは、ユーザーが意図した設計に合わせるための選択肢を提示します。
この例では、電気エレメントが選択されています。ユーザーは、ワイヤメディアの数や種類、通電要件、その他設計に関するいくつかの質問を入力します。コンフィギュレータは、いくつかの可能な構成を素早く表示し、部品をリストアップするとともに、アセンブリの等角投影図も示します(図4)。
図4:コンフィギュレータによる6ピンワイヤプラグとベースレセプタクル、および関連するベース、フード、ケーブルクランプのレンダリング。(画像提供:HARTING)
部品リスト、3Dモデル、データシート、タイプシート、製品宣言をダウンロードできるなど、設計に関するドキュメントが充実しています。
この例の質問には、ベースのタイプ、望ましいロック、導体の数、予想される最大電流と電圧レベル、環境が含まれていました。その結果、HARTING 09400060311パネルマウント型ベースを含む構成になりました。このベースは、ネジロックを採用したアルミダイカスト製で、過酷な環境に対応します。このベースには、HARTING 09140060371デュアルモジュールヒンジ式ヘビーデューティ保持フレームが組み合わされました。このフレームには、2個のモジュールに対応するスペースがあります。選択されたモジュールは、6ポジションのメスモジュールであるHARTING 09140063101でした。付随するシルバー圧着ピンソケットは、20 AWGワイヤ用のHARTING 09330006220です。
コネクタのケーブル側は、アルミダイカスト製のHARTING 19400060411コネクタフードと、それに付随するHARTING 09140060361ヘビーデューティデュアルモジュール保持フレームをベースにしています。このフレームは、HARTING 09140063001オスモジュールと、HARTING 09330006121 20 AWGシルバー圧着ピンに対応します。フードアセンブリは、HARTING 19000005090真鍮ケーブル9-16クランプで仕上げられています。ベースとフードには2個のモジュールを収納できるため、使用しない位置にはHARTING 09140009950のようなダミーモジュールを挿入できます。
環境保護
HARTING Han HPRシリーズの部品はすべて、-40℃~+125℃の温度範囲で動作し、最大IP68およびIP69Kの密閉・環境定格を備えています。
IEC 60529で定義された保護等級(IP)定格は、コネクタの部品が外部の影響からどの程度保護されているかを示します。外部からの影響としては、機械的衝撃、異物、湿度、埃および、水、燃料、洗浄液、クーラント、油などの液体があります。
IP定格の最初の数字は、固体に対する耐性です。この定格は、0~6で変動します。数字6は最高レベルの保護を表します。定格6のコネクタは防塵密閉され、固体粒子から完全に保護されます。IP定格の2番目の数字は、液体に対する耐性です。この数字は0~9の範囲です。定格8は、デバイスの防水性が高く、水圧から保護されることを意味します。定格9Kは、蒸気噴射式の圧力洗浄機や同様の圧力駆動液体に対する保護を示します。したがって、IP68またはIP69Kの定格は非常に優れています。
HARTING Han HPRシリーズは、厳しい屋外環境を想定しています。アルミダイカスト製のフードとハウジングは、エポキシ粉体塗装仕上げで耐腐食性に優れ、湿潤状態に対する密封性も備えています。また、金属部品であるため、優れた電磁両立性も実現しています。
同じコネクタを複数個取り付ける場合、このシリーズのコネクタは、コード化された最大16個のキーイング位置を提供して、正しいケーブル嵌合を確保します。また、HPRコンパクトシリーズは、対応するHPR標準コネクタと比較して最大25%軽く、軽量化と省スペース化を実現しています。
まとめ
接続の完全性、柔軟性、拡張性を確保しながら、フォームファクタの要件や産業環境の厳しさに適合させることは、設計者にとって困難な課題です。上述したように、高度に構成可能で小型のモジュール方式に基づくコネクタ化および、使いやすいオンラインコネクタ要素選択ツールにより、プロセスが大幅に簡素化されます。
免責条項:このウェブサイト上で、さまざまな著者および/またはフォーラム参加者によって表明された意見、信念や視点は、DigiKeyの意見、信念および視点またはDigiKeyの公式な方針を必ずしも反映するものではありません。


