昇降圧電源設計 - ウェアラブルIoT向けの実行可能なトポロジ
2020-07-28
編集者ノート:ウェアラブルIoT製品の設計に必要な対照的な選択肢は、信頼性の高い安定した電源システム設計のニーズを浮き彫りにしています。このような設計の具体的な考慮事項には、製品のコンパクトな物理的サイズ、ワイヤレス通信への依存性、効率的な電池駆動管理のニーズ、および規制遵守の課題といったウェアラブル製品の特性が含まれます。この記事では、昇降圧スイッチングレギュレータに基づく電源システム設計がこれらの設計課題に対処して解決する方法を説明します。これを実現するために、市販部品の動作仕様を考察します。LTEセルラートランシーバモジュールの電源要件、昇降圧スイッチングレギュレータの性能指標、およびタンタルコンデンサのディレーティング/ESR/静電容量がすべて提供されます。この記事の最終部では、電源システムトポロジおよび使用事例を提供することにより、ウェアラブルIoT製品の需要を満たすのに役立つ昇降圧レギュレータの実験的性能を示します。
紹介
セルラートランシーバの性能は、電源レールの信頼性と安定性に依存しています。設計上の選択により、十分な電力マージン、適切なグランドプレーン寸法、および十分に低減されたリップルを確保する必要があります。電池駆動のウェアラブル製品に設計が圧縮され、規制基準の対象となる場合、これらの選択はいっそう複雑になります。
この記事では、ウェアラブルIoTデバイス内で生じる一部の電源設計課題を取り上げ、市販部品を使用してこれらの課題に対処するための設計トポロジを提案します。全体を通して、重要な設計トレードオフについて説明し、推奨する軽減方法を提供します。この記事の最終目標は、ウェアラブルIoTデバイスの制約内で動作する効率的なソリューションを設計者に提供する、堅牢な電源設計トポロジを提示することです。
課題を定義する:信頼性と安定性
この記事の目的において、信頼性は、無線トランシーバ(この場合はセルラートランシーバ)の動作範囲内で電圧レールを提供する電源システムの機能として定義されます。この機能には、IoT製品で予想される標準電流消費とピーク電流消費の両方を満たすソース電流を含める必要もあります。
安定性は、デバイスの仕様内で電圧レールに存在するリップルとして定義されます。このリップルは、レギュレータのスイッチング特性による場合もあれば、電流需要の急上昇に対する過渡応答による場合もあります。原因にかかわらず、レギュレータの応答機能はその安定性を決定する基礎となります。
セルラートランシーバの電源
セルラートランシーバモジュールにより、前例のない採用レベルで大小デバイスへのワイヤレスコネクティビティが可能になったのは疑いの余地がありません。これらのデバイスはますます集積化され、オンボード電源レギュレータ、温度補償発振器、および高度なコプロセッサも組み込むようになっています。ただし、これらのデバイスはすべて主要な電力パラメータ、すなわち信頼性と安定性に依存したままです。
次の製品サンプルは、この後者の点を強調しています。これらの製品はいずれも市販されており、ウェアラブルIoT製品の基盤とするのに適切ですが、電源に関する考慮事項が引き続き不可欠です。別の言い方をすれば、適切に給電できないと、これらのデバイスが最高の性能や機能を発揮することは決してありません。
u-blox
表1は、MPCI-L201-02S-00セルラーモジュールの電力パラメータの高レベルビューを示しています。
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表1:u-bloxの電力パラメータ。
技術文書によると、u-bloxにはこのモジュールに給電するためのかなり厳しい要件があります。
VCCまたは3.3 Vauxピンに接続されたスイッチングレギュレータの特性は、VCCまたは3.3 Vaux要件に準拠するために次の必須条件を満たす必要があります。
- 電源能力:スイッチングレギュレータとその出力回路は、指定された動作範囲内でVCCまたは3.3 Vauxピンへの電圧値を提供できる必要があります。 また、TOBY-L2またはMPCI-L2シリーズのデータシートで指定された最大Tx電力での送信(Tx)バースト中に、最大ピーク/パルス電流消費を提供できる必要があります。
- 低出力リップル:スイッチングレギュレータとその出力回路は、クリーンな(低ノイズ)VCCまたは3.3 Vaux電圧プロファイルを提供できる必要があります。
- 電圧降下は400mV以下である必要があります。
これらの要件内では、2つの重要な側面(信頼性と安定性)が強調されています。電源レールが適切な電圧範囲内であるだけでなく、リップルも最小化する必要があります。興味深いことに、この要件仕様では「リップル」が2つの異なるタイプ(スイッチングリップルと電圧降下)に分けられます。前者は、レギュレータのスイッチングと関連した高周波数リップルであると考えられます。後者は、より高い電流負荷に迅速に応答できない電源により発生した可能性が高い低周波数リップルです。これは、レギュレータの性能と関係している可能性がありますが、電源パス内の過剰な抵抗またはインダクタンスが原因の可能性もあります。
おそらく、セルラー開発キットの設計で使用されるレギュレータで十分ですが、ウォール駆動開発キットの設計は電池駆動のウェアラブルアプリケーションに適していません。さらに、設計の物理的スペースの削減はウェアラブル製品に必須ですが、電源パス内の寄生抵抗およびインダクタンスにも影響を与える可能性があります。この複雑な問題は適切なレギュレータの選択だけでは解決できない可能性がありますが、特にこれらの寄生抵抗機能が製品の規制遵守を脅かす場合、さらに軽減を図る必要があります。
Digi
表2は、XBC-V1-UT-001セルラーモジュールの電力パラメータの高レベルビューを示しています。
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表2:Digiの電力パラメータ。
以下で示されているように、技術文書によると、Digiにはこのモジュールに給電するためのかなり厳しい要件があります。
- 電源リップルは、75mV未満(ピークツーピーク)である必要があります。
- 電源は、3.3Vで最低1.5A(5W)を提供できる必要があります。低電圧で動作させるには、5W要件を実現するために電源からのより高い電流能力が必要であることに留意してください。
- XBeeのVCCピンに十分なバルク静電容量を配置して、突入電流中の電圧を最小仕様以上に維持します。セルラー通信の初期パワーアップおよびスリープモードからのウェイクアップの間、突入電流は約2Aです。
- より小さな高周波数セラミックコンデンサをXBeeセルラーモデムのVCCピンのすぐ近くに配置して、高周波ノイズを低減させます。
- 幅広い電源トレースまたは電源プレーンを使用して、それが最小電圧降下でピーク電流要件を処理できるようにします。Colorado Electronic Product Designは、軽負荷(~0.5W)と重負荷(~3W)間でXBeeのVCCピンの電圧が0.1V以上変化しないように電源とトレースを設計することを推奨しています。
同様に、他のセルラーモジュールにとっても、電源レールの安定性と信頼性は主要な考慮事項です。ただし、これらの指令はより具体的で、最大リップル電圧や予想突入電流を呼び出し、回路基板レイアウトに役立つヒントを提供します。
昇降圧電源トポロジ - 電池駆動IoTウェアラブル向けの安定した信頼性の高いソリューション
課題が明確になりました。以下の要件を満たす電源システムを設計します。
- 選択されたモジュールの動作範囲内で電源レールを提供します。
- モジュールの平均およびピーク電流需要の両方を満たす十分な電流を供給します。
- 最大リップル電圧を超過することなく、また電源レールで大幅な電圧ドループを許容することなく、前述の要件をすべて満たします。
- ウェアラブルアプリケーションに見合った限定的な物理的スペースでこれらすべてを実行して、この製品の使用事例に関連した規制基準を満たします。
前述のとおり、セルラーモジュールの電源システムには厳しい要件があります。限られた物理的スペース内でこれらすべてを満たすことができますが、製品の成功に導くためには、より高次の考慮事項を採用する必要があります。図1のトポロジは、推奨されるアプローチを示しています。
図1:高レベル昇降圧スイッチングレギュレータの図。(画像提供:Colorado Electronic Product Design)
このトポロジは、以下でも説明する一部の一般的な代替設計よりも優れた性能を発揮します。次の部分では、この推奨されたトポロジの各側面、それらに対応する設計上の課題、およびこれらの変化を軽減する方法について説明します。
バッテリおよびバッテリパックの抵抗
バッテリパックの内部抵抗は、バッテリ自体の抵抗よりも高くなります。これは、ウェアラブルアプリケーションのバッテリパックに内蔵される保護回路、相互接続ワイヤ、ヒューズ、および他の部品によるものです。表3は、ウェアラブルIoTデバイスにとって適切なモデルとなる、携帯電話で使用される平均的な小型リチウムポリマーバッテリパックの分析結果を示しています。
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表3:バッテリパックの抵抗(項目別)。(画像提供:Battery University Group)
1)セルラーモジュールをバッテリに直接接続する
一般的な電流消費の場合、この抵抗は重大な電圧降下を生成しません。ただし、ピーク負荷では、0.13V~0.33Vがバッテリの電圧から降下する可能性があります(電圧値は、提供されたセルラーモジュールで消費される最小および最大電流に基づいています)。この電圧降下により電源レールがモジュールの最小動作値以下になることはありませんが、これらのセルラーモジュールの仕様外の降下とリップルを生成します。性能が影響を受けるため、バッテリからモジュールに直接供給することは推奨されません。
2)より多くのバルク静電容量を使用する
この電圧降下を克服するための別の試みは、ローカルの静電容量をさらに追加することです。ただし、この静電容量は電流消費期間全体にわたって十分な電流を供給し、製品の動作温度範囲全体でそれを実行する必要があります。これ自体が、受動部品にとって実現するのが困難な要求です。
必要な静電容量の膨大な量を考慮すると、このアプローチはさらに複雑になります。コンデンサの電流方程式に基づいて、
式1
この式を解いて、特定の電圧、電流、および持続時間に必要な静電容量を計算することができます。
式2
u-blox部品をリファレンスとして使用すると、高電流パルスは0.6ミリ秒間(4.615ms/8)アクティブになることが分かります。
図2:u-bloxの電流消費プロファイル。(画像提供:u-blox)
では、0.26Vの電圧降下を克服するために、0.6ミリ秒間にわたって2Aを供給するには、静電容量はどれほど必要でしょうか?上記の式を使用して計算された値は、4.62mF(4.62 X 10-3ファラド)です。一般的に等価直列抵抗(ESR)が低いため最適とされる最大のセラミックコンデンサは約680μFで、一般的に面実装部品ではありません。これらの一部は並列に配置する必要があり、電圧ディレーティング、温度変動、および許容差もすべて考慮する必要があります。大きな値を持つタンタルコンデンサがありますが、これらを使用する場合、供給可能な電流量をESRが制限します。それで、部品の望ましくない寄生特性に対処するために、これらの一部は並列に配置する必要があります。
複数のコンデンサを使用する必要があるという事実により、すでに限られているウェアラブル製品の貴重な回路基板スペースが消費され、部品リストのコストが大幅に増加します。さらに、電源パス内でバッテリやその他の変更が生じるたびに静電容量を再設計する必要があります。これらの制限により、容量ソリューションは、この設計上の考慮事項を解決する上で問題のあるアプローチとなってしまいます。
昇降圧スイッチングレギュレータ
このレギュレータは、この電源設計トポロジの中核となります。このセクションでは、市販されている2つの昇降圧レギュレータを紹介します。これらはどちらも、ウェアラブルIoTアプリケーションに適した選択肢となります。ただし、これらの詳細を述べる前に、このようなレギュレータの必要性を説明するのに役立ついくつかの点を取り上げます。
1)降圧レギュレータでは不十分
この時点で、セルラーモジュールをバッテリに直接接続するのは優れた設計選択肢でないことをすでに説明しています。ただし、このセクションではさらに一歩進んで、降圧レギュレータの使用はバッテリの直接接続よりも優れているものの、ウェアラブルIoTの使用事例の大部分に通用する設計選択肢ではないことを説明します。昇圧が必要になるのです。理由は以下で説明します。
図3:放電電流0.2C、0.5C、および1Cにおけるリチウム電池(3.7V公称)の放電曲線。(画像提供:Innovative Battery Technology)
バッテリの残りの充電量が20%の場合、バッテリの電圧は2.8V~3.7Vの範囲内になります。電圧が3.0V未満に下がると、不足電圧保護回路がバッテリを切断する可能性があります。これに基づいて、残りの容量が20%のバッテリの「実効」電圧範囲が3.7V~3.0Vであると想定します。この情報を降圧レギュレータには出力電圧と同じまたはそれ以上の入力電圧が必要であるという事実と組み合わせることにより、設計上のジレンマが明確になります。
VOUTが3.3Vに設定され、降圧レギュレータが使用される場合、使用可能な最低バッテリ電圧は、セルラーモジュールがそのピーク電流をプルする間にバッテリが維持できる値(3.3V以上に限る)になります。
数学的に、効率性は以下のように計算されます。
式3
この式を再整理すると、以下のようになります。
式4
降圧レギュレータの効率性を90%と想定すると、u-bloxモジュールが内蔵されている場合、3.3V * 2.5A = 8.25Wが得られます。これは、入力電力が8.25W/0.9 = 9.2Wであるという意味です。
この式を適用すると、以下のようになります。
式5
バッテリの公称値3.7Vでの入力電圧は2.49Aを提供する必要があることが分かります。ただし、これは、最初にバッテリパックの直列抵抗を通過してレギュレータに供給される電流です。したがって、実際のバッテリ電圧は、レギュレータの入力での電圧とバッテリパックの直列抵抗にわたって降下した電圧の合計である必要があります。3.7V + (2.49A * 0.13Ω) = 4.02V。よって、バッテリパックの直列抵抗に0.32Vの降下が実現します。
これは、このバッテリの使用可能な最低値が3.3V + VSeries_Resistance = ~3.62Vであるという意味です。バッテリパックの電圧がこれ以下に下がった場合、降圧レギュレータへの入力電圧はもはや出力電圧と同じまたはそれ以上ではないため、安定化は失敗します。この安定化の失敗により、セルラーモジュールの電源レールがドループし、リップル電圧およびドループ要件にも違反します。性能が損なわれてしまうのです。
2)その他の考慮事項
簡単に言えば、昇降圧レギュレータの昇圧部分により、システムはバッテリパック容量の最後の20%にアクセスできるようになります。昇降圧により、バッテリがレギュレータへの電力を維持できる限り、モジュールの電源レールは持ちこたえることができます。また、バッテリに充電が残っている間、早期に動作を停止することはありません。
昇降圧レギュレータにより、バッテリ充電の最後の20%がそれまでの80%よりも早く消費されることは注目に値します。これは、入力電圧が出力電圧の設定ポイント未満に下がった場合に必要な入力電流の増加によるものです。一方で、バッテリパックの最大放電電流を選択する際には、この電流の増加を考慮に入れる必要があります。
以下のグラフは、この部品の機能を示しています。この部品には、軽負荷動作から重負荷動作への自動切り替えがあります。これによる効果的な結果は、出力電流の全動作範囲にわたって効率性が向上することです。
図4:RenesasのISL91110の効率性対VIN。(画像提供:Renesas)
図5:RenesasのISL91110の0A~2Aの負荷過渡(VIN = 3.6V、VOUT = 3.3V)。(画像提供:Renesas)
4)製品例 – ON SemiconductorのFAN49103
この部品にも、軽負荷動作から重負荷動作への自動切り替えがあります。これらのパラメータは3.4V(3.3Vではなく)に設定された出力電圧用のものですが、この部品は当サンプルアプリケーションで機能します。
図6:ON SemiconductorのFAN49103の効率性対I負荷(mA)。(画像提供:ON Semiconductor)
図7:ON SemiconductorのFAN49103の0A~2Aの負荷過渡(VIN = 3.6V、VOUT = 3.4V)。(画像提供:ON Semiconductor)
ローカルコンデンサ
ローカルコンデンサには、2つの重要な機能があります。それは、ローカルでエネルギーを蓄積して負荷電流の急増に対応することと、性能に悪影響をもたらす可能性がある高周波過渡とリップル電圧を除去することです。
設計のレイアウト内で推奨されているコンデンサの配置は重要です。達成可能な最もクリーンな電圧レールによってセルラーモジュールが電力供給されるように配置する必要があります。これは、セルラーモジュールのすぐ隣にあるコンデンサのESRおよびESLを最も低くする必要があることを意味しています。実際の容量定格は、ピコファラドの範囲内になります。C0Gセラミックコンデンサが推奨されています。
小さな値を持つこれらのコンデンサは高周波フィルタリングを首尾よく達成しますが、エネルギー蓄積はほとんどありません。この目的のため、数百マイクロファラド範囲のより大きなタンタルコンデンサが、セルラーモジュールの電源ピンから最も離れた場所に配置されます。これは、タンタルコンデンサが非常に遠いという意味ではなく、単に前述のセラミックコンデンサほど近くはないという意味です。この大型コンデンサの別の重要な特長は、そのESRが予想される電流過渡の基本周波数において低いことです。100mΩ @ 100KHzのESRが推奨されています。
図8は、MPCI u-bloxセルラーモジュール向けに推奨されるレイアウトを示しています。
図8:u-bloxのMPCI-L2シリーズ向けに推奨されるローカルコンデンサレイアウト方式。(画像提供:u-blox)
図8で、C1~C3は値の低い、低ESR、低ESL、C0Gコンデンサです。C4~C5は、0.1~10μFの範囲内のセラミックコンデンサです。最後に、C6は過渡負荷電流の基本周波数で動作する低ESR向けの値の大きなタンタルコンデンサです。
ディレーティングを軽減するように定格電圧を選択することは非常に重要です。これは、セラミックコンデンサの場合に特に当てはまります。
このセクションの最後で、いくつかの市販コンデンサを紹介します。該当するパラメータが示されています。
1)KEMET
静電容量:330μF
許容差:20%
定格電圧:6.3V
ESR @ 100KHz:45mΩ
2)Panasonic Electronic Components
品番:6TPF470MAH
静電容量:470μF
許容差:20%
定格電圧:6.3V
ESR @ 100KHz:10mΩ
レイアウト設計の考慮事項
選択された各部品のデータシートには具体的なレイアウトの推奨事項が記載されていますが、効率的な低ノイズ性能の実現につながる一般的なレイアウトガイドラインがいくつかあります。
1)グランドおよび電源ポア
可能な限りポリゴンポアを使用します。これは、特に入力電圧、出力電圧、インダクタ、およびグランドノードへの接続に当てはまります。要するに、これらのプレーンは電流の流れ(スプリアス電流またはスイッチング電流を含む)に対して低抵抗および低インダクタンスのパスを提供するため、銅を惜しまないようにする必要があります。図9は、Linear TechnologyのLTC3113昇降圧レギュレータ向けに推奨される最上層レイアウトで、銅ポアが好まれることをよく示しています。
図9:Linear TechのLTC3113で推奨される最上層レイアウト。(画像提供:Linear Technology)
2)スナバ
寄生抵抗やインダクタンスを低減するためにさまざまな努力が払われていますが、ここではサイズに制約のあるウェアラブル設計の場合です。グランドおよび電源プレーンが必要以上に大きくなることはありません。このレイアウトの規定では、RCスナバ回路の配置を許容する必要があります。最初からこれらの部品を実装する必要はありませんが、放射を低減するのにこの回路が必要な場合、設計者はフットプリントの割り当てにより恩恵を受けることができます。
これらの寄生素子は、スイッチ電流内のリンギングに貢献します(図10)。
図10:インダクタ電流を切り替える降圧レギュレータ内のリンギング。(画像提供:ROHM Semiconductor)
すでに述べたとおり、スペース要件を満たすために、これは回避できない場合があります。図11のスナバ回路は、これらのスプリアスエネルギーをグランドに吸収します。これを実行しなくても、これらの発振は規制遵守の許容限度を超えて設計の放射をプッシュできます。スナバ回路は、スペースに制約のあるレギュレータを安定化させる便利なツールです。
図11:降圧レギュレータで推奨されるRCスナバの位置。(画像提供:ROHM Semiconductor)
3)フェライトビーズ
最後の推奨事項は、出力電力と共に伝導している永続的な高周波ノイズに対処することです。主要な周波数で適切に減衰するように選択した高電流フェライトビーズを、昇降圧レギュレータの出力と直列に配置します。これは、レギュレータの出力とバルク、バイパスコンデンサの間に配置する必要があります。
ケーススタディ - u-bloxのSARAモジュールに給電するLTC3113
SARAモジュール は、3Gセルラートランシーバです。前述のセルラーモジュールと同様に、このモジュールも大電流を猛烈に消費できますが、直列抵抗によりバッテリの電圧が低下します。図12に示すLTC3113昇降圧スイッチングレギュレータ向けの回路設計は、この設計において安定した信頼性の高い3.3V電源レールを維持するために使用されました。
図12:ケーススタディ用LTC3113昇降圧スイッチングレギュレータ回路。(画像提供:Colorado Electronic Product Design)
このレギュレータ設計を図12に示すように配列されたローカルバイパスコンデンサと組み合わせることにより、消費されるすべての動作電流において安定した電源レールが生成されました。図13のスコーププロットは、SARAにより消費される電流(青)、昇降圧レギュレータから来る3.3Vの出力電源レール(緑)、入力バッテリ電圧およびこのレール上のサグ(紫)、および出力電源レールで測定されたリップル電圧(橙)を示しています。
図に示されているように、この大電流スパイクは、安定化3.3V出力レール上でサグまたは重大なリップルを発生させません。ただし、入力レールの低下を発生させます。
図13:ケーススタディ用LTC3113昇降圧スイッチングレギュレータ回路、~0.9Aのモジュール電流を消費するSARAモジュール(青)、3.3V出力レール(緑)、バッテリ入力レール(紫)、および3.3V出力レールリップル(橙)。(画像提供:Colorado Electronic Product Design)
出力レールの安定性と信頼性は、堅固な3.3Vおよび最小リップル内で一貫しています。ただし、バッテリ入力レールは、SARAモジュールおよびこの文書内で言及した他のモジュールの仕様外である~0.32Vのサグを経験します。昇降圧レギュレータは、予想されるあらゆる条件下で、これらの電流スパイクに対応し、セルラーモジュールの動作に適切な電源レールを維持することができます。
まとめ
ウェアラブルIoT設計は設計エンジニアにさまざまな課題を提示し、電源システムはこれらの課題の多くが集中する場所に配置されています。昇降圧レギュレータトポロジは、セルラーモジュールの動作条件範囲で安定した信頼性の高い電源レールを提供することにより、これらの変化に直接対処します。これは、注意深い設計作業が必要でないという意味ではありません。むしろ、優れた設計プラクティスに従うなら、このトポロジが機能するという意味です。ウェアラブルIoT設計がますます小型化する中で、性能に対する期待も高まっています。小型で高性能のウェアラブルIoT設計に電力供給するための、この堅牢なトポロジを検討してください。
謝辞:Linear Tech、Analog Devices、およびCEPD(Colorado Electronic Product Design)の経営陣およびスタッフに深く感謝いたします。
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