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市販の組み込みLinuxマルチコアプラットフォームを使用した組み込みワイヤレスIoT開発の加速化

著者 Stephen Evanczuk

Digi-Keyの北米担当編集者 の提供

高度な産業用、医療用、輸送用、および農業用モノのインターネット(IoT)アプリケーションには、より複雑な組み込みシステム設計が要求されます。そのような状況で過密スケジュールや予算の縮小に直面しているのにもかかわらず、開発者には性能、コネクティビティ、およびペリフェラル要件を満たすカスタム基板を構築する以外にあまり選択肢がありません。市販の基板も入手可能ですが、性能、電力、サイズ、フォームファクタ、および機能によりその使用が妨げられました。

しかし、ユビキタスIoTおよび産業用IoT(IIoT)の時代において、最も生産的なカスタム開発チームでさえも、ワイヤレスサブシステムの地域別認証要件による遅延を経験してきました。これにより、納期が遅くなり、市場機会が損なわれてきました。

この記事では、ワイヤレス対応組み込みボードを開発するか購入するかの問題について説明します。次に、包括的なソフトウェア環境を提供するDigiのターンキー開発プラットフォームおよび、事前認証済みのワイヤレスモジュールを備えた最適化されたハードウェアプラットフォームを紹介します。この記事では、開発者がより強力なコネクテッド組み込みシステムソリューションを迅速かつ簡単に提供するのを支援するために、キットをどのように使用できるかを示します。

組み込みボードを開発するか購入するかの問題

組み込みシステムの開発者にとって、エンドユーザーの期待と競争圧力は、市場投入までの時間を短縮して提供されるさらに優れた機能を備えた製品の需要を牽引し続けています。ユーザーは、接続、使用、および維持がより簡単なシステムを強く求めています。その結果、開発者は多方面で増大する課題に直面しています。ワイヤレスコネクティビティにおいて、短距離および長距離のワイヤレスソリューションは、その設計に関連する認証要件をもたらします。適切な表示機能の実装は、設計の複雑さとコストを増加します。また、これらのシステムの継続的信頼性および長期的可用性の確保は、過酷な条件に耐え、産業用または医療用アプリケーションによく見られる寿命サイクルの長期化にも対応できるソリューションを開発者が見つけるうえで挑戦となります。

一部のアプリケーションにおいて、適切なソリューションは、各サブシステムを最適化して要件を満たすカスタム設計アプローチに大きく依存しています。ただし、市販の設計ソリューションは、簡単に拡張して広範なアプリケーション分野の独自要件をサポートできるプラットフォームをますます提供しています。それでも開発チームは、純粋に開発コストの観点から、カスタム設計を一から構築するほうが既製の設計を購入するよりも低コストであると計算して、既製システムを購入するのではなく、カスタムソリューションを構築するという決定に達することがあります。

開発チームは実際、ワイヤレス認証、可用性、保守性、および他の寿命サイクル問題を含む他の考慮事項が全体のコストを増加させる可能性があることを理解できます。移り変わりの激しい市場において、カスタム設計を実装するのに必要な遅延は、市場シェアや収益計上までの時間をさらに悪化させ、最終的に新製品の収益性を制限してしまう可能性があります。

これらの問題に対処するため、DigiのCC-WMX8MN-KIT ConnectCore 8M Nano開発キットは、カスタム開発の効果的な代替手段となります。これにより、さまざまなアプリケーションにわたって性能およびコスト要件を満たすことのできるターンキープラットフォームを提供します(図1)。

DigiのCC-WMX8MN-KIT ConnectCore 8M Nano開発キットの画像図1:DigiのCC-WMX8MN-KIT ConnectCore 8M Nano開発キットは、HMI設計、オーディオ/ビデオ処理、エッジコンピューティング、および機械学習の増大する要件を満たすコネクテッドシステムの開発を始めるために必要なものをすべて提供します。(画像提供:Digi)

ターンキーソリューションによる多様な機能要件への対処方法

DigiのCC-WMX8MN-KIT ConnectCore 8M Nano開発キットは、システムの開発時間および市場投入までの時間を短縮するために設計された包括的なハードウェアプラットフォームを提供します。開発者はこのキットを使用することにより、ヒューマンマシンインターフェース(HMI)設計、オーディオ/ビデオ処理、エッジコンピューティング、機械学習などのさまざまなアプリケーションをサポートするために拡張可能なシステムを容易に実装することができます。DigiのConnectCore 8M Nano開発ボードに加えて、キットにはデュアルバンドアンテナ、コンソールポートケーブル、および電源が含まれているため、開発者はコネクテッドアプリケーションの作成をすぐに開始できます。

Digiが提供する他のCoreConnect開発キットと同様に、ConnectCore 8M Nano開発キットは、Digiの高度に統合されたシステムオンモジュール(SOM)ソリューションを活用しています。NXP Semiconductori.MXプロセッサファミリ製品に基づくDigiのConnectCore SOMは、一般的な組み込みアプリケーションに必要な他の機能に加えて、マルチメディア、セキュリティ、有線コネクティビティ、および事前認証済みのワイヤレスコネクティビティの機能を内蔵しています。広範なソフトウェア環境と組み合わせて使用されるこれらのSoMにより、組み込みシステムの開発が簡素化され、製品メーカーはカスタムハードウェアのアプローチで一般的に可能な水準よりも迅速かつ低リスクで、より高度な製品を提供できるようになります。

CC-WMX8MN-KIT開発キットにおいて、DigiのSOMは、クアッドのArm® Cortex®-A53およびArm Cortex-M7コアに基づくNXPのi.MX 8M Nanoプロセッサの機能を、最大8GBのフラッシュ、最大1GBの低電力ダブルデータレート(LPDDR)ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)、および多くの追加サブシステムと組み合わせます(図2)。

NXPのi.MX 8M Nanoマルチコアプロセッサに基づくDigiのSoMを示す画像図2:NXPのi.MX 8M Nanoマルチコアプロセッサに基づくDigiのSoMは、一般的な組み込みシステム設計に必要なメモリ、コネクティビティオプション、セキュリティ、および電源管理機能を内蔵しています。(画像提供:Digi)

SoMはサブシステムの1つとして、Microchip TechnologyCryptoAuthenticationファミリが提供するセキュリティデバイスを内蔵しています。これは、Arm Cortex-A53コアのTrustZoneセキュリティ機能を補完します。CryptoAuthenticationデバイスは、専用の暗号プロセッサ、高品質の乱数発生器、および保護されたキーストレージを組み合わせることにより、ハッシュおよび公開鍵インフラストラクチャ(PKI)アルゴリズムの高速でセキュアな実行を実現します。

SoMの内蔵コネクティビティオプションは、ギガビットEthernet(GbE)、事前認証済みの802.11 a/b/g/n/ac Wi-Fi、およびBluetooth 5をサポートしています。DigiのXBEEセルラーモジュールをCC-WMX8MN-KITボードの一連のXBEE対応コネクタに接続するだけで、開発者はセルラーおよび他のコネクティビティオプションを追加して、広域ネットワーキングの要件を満たすことができます。

SoMは標準ペリフェラルインターフェースのフルセットに加えて、複数のオーディオ、カメラ、およびディスプレイ用マルチメディアインターフェースをサポートしています。統合型グラフィックス処理ユニットおよび液晶ディスプレイインターフェース(LCDIF)コントローラにより、開発者はDigiのCC-ACC-LCDW-10といったオプションのLCDパネルを容易に追加して、組み込みアプリケーション向けのHMI設計を素早く開始できます。

高度なプロセッサに基づく設計における電源管理

特にシステム設計がNXPのi.MX 8M Nanoなどの高度なプロセッサを内蔵する場合、複雑な組み込みシステムでの電源管理は大きな課題となります。このクラスの他のプロセッサと同様に、NXPのi.MX 8M Nanoは多くの異なるサブシステムを、コアプロセッサ(VDD_ARMおよびVDD_SOC)、GPU(VDD_GPU)、メモリ(VDD_DRAM、NVCC_DRAM)、セキュアな不揮発性ストレージ(NVCC_SNVS_1P8、VDD_SNVS_0P8)などの別個のパワードメインに分類します。開発者は各ドメインに適切な電源レールを提供するだけでなく、特定のタイミングシーケンスで各ドメインに電力を供給(および除去)する必要もあります(図3)。

NXPのi.MX 8M Nanoによるサブシステムの分配を示す画像図3:多くの高度なプロセッサと同様に、NXPのi.MX 8M Nanoは別個のパワードメインにサブシステムを分配します。これらのパワードメインは、起動時に特定のシーケンスで個別の電圧供給レールをターンオンする必要があります。(画像提供:NXP Semiconductors)

実際、DigiのConnectCore i.MX 8M Nano SoMは2つの電源入力のみを必要とし、ROHM SemiconductorBD71850MWV電源管理IC(PMIC)を使用して、i.MX 8M Nanoプロセッサや他のデバイスに必要な複数の電圧レベルを提供します。NXPのi.MX 8M Nanoプロセッサをサポートするために特別に設計されたROHM BD71850MWVは、プライマリVSYS 5V電源から電源レールの完全なセットを提供する複数の降圧レギュレータと低ドロップアウト(LDO)レギュレータを内蔵しています(図4)。

ROHMのBD71850MWV PMICの図図4:NXPのi.MX 8M Nanoプロセッサに給電するために特別に設計されたROHMのBD71850MWV PMICは、一般的な組み込みシステム設計のプロセッサや他のデバイスに必要な電源レールの完全なセットを提供します。(画像提供:ROHM Semiconductor)

BD71850MWVはプロセッサに求められる詳細なパワーアップおよびパワーダウンシーケンスを管理しますが、Digiは全体の消費電力を最適化してシステムの信頼性を維持するために設計されたさらに高いレベルの制御を追加します。SoMに内蔵されたDigi Microcontroller Assist(MCA)は、システムレベル電源管理にNXPのKinetis KL17 MKL17Z64VDA4マイクロコントローラ(MCU)を使用します。超低電力Arm Cortex-M0+コアに基づくNXPのKinetis KL17 MCUは、非常に低い電力の動作モードでわずか46μA/MHz、メモリおよびリアルタイムクロック(RTC)機能を維持する停止モードで1.68μAしか消費しません。

システムがスリープモードにある場合でもアクティブのままになるように設計されたMCAは、KL17 MCUで実行されるアップグレード可能なファームウェアを実行して、NXPのi.MX 8M Nanoシステムプロセッサをウェイクアップするための複数のオプションを提供します。たとえばDigiは、システムプロセッサのRTCを無効にするデフォルト設定を設定し、MCAファームウェアに実装されたより低電力のRTC機能を実現します。開発者はMCAの12ビットA/Dコンバータ(ADC)を使用して、外部イベントを監視したり、必要な時のみにシステムプロセッサをウェイクアップする割り込みを生成したりできます。逆に、MCAファームウェアは、外部動作用に3つのマルチチャンネルパルス幅変調(PWM)コントローラを実装します。MCAファームウェアはシステム全体の信頼性を確保するために、システム全体またはシステムプロセッサのみ(そのプロセッサ上で実行しているソフトウェアがハングする場合)をリセットするウォッチドッグタイマ機能も提供しますが、正常なソフトウェアの実行中はウォッチドックタイマの通常のメンテナンスを実行しません。

システム起動時に電力を受信すると、MCAはすぐに実行を開始します。MCAはプログラム可能遅延の後に、前述のi.MX 8M Nanoパワーアップシーケンスを実行するBD71850MWV PMICを起動します。システムリセットまたは低電力スリープ状態からの遷移は、PMICおよびプロセッサと電力復旧を調整するMCAと同じ方法で機能します。

すぐに使用可能な組み込みLinuxソフトウェア環境

DigiのCC-WMX8MN-KIT開発キットは、広範なハードウェアベースを使用して、オープンソースのDigi Embedded Yocto(DEY)を実行するすぐに使用可能なソフトウェア環境を提供します。Yocto Projectの人気のある組み込みLinuxディストリビューションに基づくDEYは、Digiハードウェアプラットフォームをサポートするために特別に設計された追加のボードサポートパッケージ(BSP)機能でそのベースラインディストリビューションを拡張します(図5)。

Digi Embedded Yoctoの図図5:Digi Embedded Yoctoは、Digiハードウェア用ボードサポートパッケージ(BSP)拡張でベースラインYocto Project Linuxディストリビューションを拡張します。(画像提供:Digi)

LinuxカーネルへのBSP拡張の中でも、DigiのTrustFenceはLinuxデバイス用のセキュリティフレームワークを提供します。認証およびID管理機能を使用するTrustFenceサービスは、内部および外部I/Oポートの低レベルアクセス制御から、検証済みファームウェア画像を使用したセキュアネットワーク接続およびセキュアブートの高レベルサポートまで広範囲にわたります。DigiのTrustZoneはConnectCore 8M Nanoモジュールで当初サポートされていませんでしたが、今後のDEYリリースで利用可能になります。

大規模なIoTアプリケーションには個々のデバイスレベルでのセキュリティおよび管理の採用に加えて、IoTデバイスのフリートを監視および管理する機能が必ず必要です。これらの要件に対応するため、Digi Remote Managerは、デバイスヘルスモニタリング、構成管理、およびファームウェアアップデートをサポートするように設計されたクラウドベースサービスを提供します。モバイルアプリまたはデスクトップソフトウェアにより、開発者はDigi Remote Managerを使用して、フリートヘルス、アラート、接続ステータス、および信号強度を含むデバイスフリート動作の詳細を表示できます(図6)。

Digi Remote Managerクラウドベースサービスの画像(クリックして拡大)図6:Digi Remote Managerクラウドベースサービスにより、開発者は大規模なIoT展開をデスクトップまたはモバイルデバイスから監視および管理できます。(画像提供:Digi)

監視機能に加えて、Digi Remote Managerにより、開発者はコマンドラインを対話的に使用して、またはサービスのアプリケーションプログラミングインターフェース(API)をプログラムで使用して、データ、接続、およびデバイスソフトウェアをよりアクティブに管理できます。これらの機能を使用することにより、開発者はデバイスを再起動してファイルをアップロードし、一般的なコネクテッドデバイスに必要なフリート全体にわたる大量のファームウェアおよびソフトウェアアップデートを容易に実行できます。ただし、大規模展開ではしばしば物流的に困難になります。

結論

産業用、医療用、輸送用、および農業用市場セグメントにおけるより高度なアプリケーションの需要によって、より複雑なIoT指向の組み込みシステム設計の要件が推進されています。関連ワイヤレスサブシステムの地域別認証要件も問題を複雑にし、設計を遅延させてきました。

これらの問題に対処するため、Digiの開発キットは、包括的なソフトウェア環境および事前認証済みのワイヤレスモジュールを備えた最適化されたハードウェアプラットフォームを提供しています。前述のとおり、このキットにより、開発者は強力なコネクテッド組み込みシステムソリューションをより簡単かつ迅速に提供できます。

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著者について

Stephen Evanczuk

Stephen Evanczuk氏は、IoTを含むハードウェア、ソフトウェア、システム、アプリケーションなど幅広いトピックについて、20年以上にわたってエレクトロニクス業界および電子業界に関する記事を書いたり経験を積んできました。彼はニューロンネットワークで神経科学のPh.Dを受け、大規模に分散された安全システムとアルゴリズム加速法に関して航空宇宙産業に従事しました。現在、彼は技術や工学に関する記事を書いていないときに、認知と推薦システムへの深い学びの応用に取り組んでいます。

出版者について

Digi-Keyの北米担当編集者