電流プローブの理解、選択、効果的な使用

著者 Art Pini

Digi-Keyの北米担当編集者 の提供

編集者注:電流測定と電流プローブに関するこの記事は、プローブとその適切な使用法に関する3つのパートから成るシリーズのうち、パート3の記事です。 パート1では、高インピーダンスパッシブプローブについて説明しました。パート2では、シングルエンドプローブ、差動プローブ、および高電圧差動アクティブプローブについて説明しました。パート3では、電流測定と電流プローブについて説明します

オシロスコープを使用して電流を測定する場合、3つの一般的な手法があります。最初の方法では、測定対象の電流と直列の抵抗器(電流シャントと呼ばれることもある)を使用します。2番目の方法では、変流器を使用します。3番目の方法では、電流プローブを使用します。3つのすべての方法では測定対象の電流が測定センサを通過する必要があるため、これらのすべての方法は多少侵襲的です。

電流プローブは、はんだを剥がす必要なしに、導体の電流を測定できるため、最も侵襲性の低い方法です。ただし、最新のプローブ設計を最大限に活用するには、電流プローブの基本原理をいくつか理解する必要があります。

この記事では、電流プローブとその効果的な使用法を紹介する前に、さまざまな電流測定方法について説明します。

電流シャント

通常、電流シャントは、回路の試験装置または関連する試験装置のために設計されています。電流は、シャントの既知の抵抗を通した電圧降下を測定することにより特定されます。シャントの直列抵抗と電流測定の望ましい感度の間には技術的なトレードオフがあります。

回路のパフォーマンスに影響を及ぼすことなく、妥当な電圧降下を測定することが目的です。また、シャントの電力定格は、測定対象の電流に対して十分である必要があります。電流シャント抵抗器の例はRiedonRSA-10-100です。シャーシに取り付けられたこの抵抗器の抵抗値は0.01Ω、許容誤差は±0.25%、電力定格は1Wです。抵抗器の電力定格により、10Aの最大電流が設定され、100mVの出力電圧が発生します。オシロスコープを使用して、シャントの電圧を測定します。ほとんどのオシロスコープでは、その電圧を同等の電流に変換することができます(図1)。

Teledyne LeCroyのHDO4104オシロスコープのチャンネル設定の図(クリックしてフルサイズで表示)

図1:Teledyne LeCroyHDO4104オシロスコープのチャンネル設定。シャント抵抗器の値に基づいてアンペアでの垂直読み取りを可能にするリスケール設定を示しています。(画像提供:Digi-Key Electronics)

Teledyne LeCroyのHDO4104オシロスコープの入力チャンネル設定は、垂直データをリスケーリングできる多くの機器の典型的な例を示しています。リスケール制御により、単位(この場合はアンペア)と単位/ボルトのリスケール係数を指定できます。RSA-10-100の場合、「単位/ボルト」設定は抵抗値の逆数、つまり1/0.01 = 100です。また、オフセット電流を加算または減算することができ、これはアクティブなセンサに必要な場合があります。リスケール設定が入力されると、測定パラメータやカーソル読み取りなど、オシロスコープの入力チャンネルの垂直スケーリングがアンペアで直接読み取られます。

シャント抵抗器は、抵抗器の内部インダクタンスおよびキャパシタンスにより制限される帯域幅でAC電流とDC電流の両方に対応します。

標準フラット電流シャント抵抗器を補完するのは、同軸またはインパルス電流シャントです。これらのデバイスは、インダクタンスを最小限に抑えるためにシャント抵抗器を円筒形状に配置します。電圧接点は、適切な帯域幅の同軸コネクタに引き出されます。

同軸電流シャントは、抵抗値と最大定格電流に依存して、何100MHzまでもの帯域幅で使用できます。

同軸シャントのサイズは最大定格電流に比例し、従来のフラット電流シャントよりもはるかに大きくなります。

変流器

可能なもう1つの方法は、導体の電流の磁気検知です。磁気ベースの最もシンプルなセンサは変流器です(図2)。

導体の電流を検知する変流器の図

図2:変流器は、多重巻の二次巻線を使用したフェライト磁心の開口部を通る導体の電流を検知します。(画像提供:Digi-Key Electronics)

測定対象の電流が流れる導体(IMeas)は、トランスの一次巻線を形成するフェライト磁心の中心を通ります。電流は、電流に比例した磁心の磁束を誘導します。N重巻の検出巻線を使用して磁束を検知します。二次巻線で誘導された電流は、巻線比(一次巻線の数と二次巻線の数の比。この場合は1/N)に比例します。

2次側電流は、最も一般的にはオシロスコープの50W終端の抵抗器に通すことによって電圧に変換されます。50W終端を使用する場合、入力チャンネルのリスケール設定はN/50A/Vに設定されます。変流器は、AC信号のみに対して機能します。直流の測定には使用できません。

測定対象の導体は磁心を通過する必要があることに注意してください。はんだを剥がして、導体を磁心に挿入する必要がある場合があります。一部の変流器では、測定対象の導体の挿入を容易にするために、分割磁心を使用しています。

電流プローブ

電流プローブは、電流を測定する便利な方法を提供するように設計されています。電流プローブには、変流器技術を使ったACカップルとAC/DCカップルがあります。どちらの場合も、はんだを剥がす必要なしに、電流が流れる導体を簡単に囲うための分割磁心形状を備えています。

Teledyne LeCroyのCP030は、50MHzの帯域幅で30Aまで測定できるAC/DC電流プローブの適切な例です(図3)。

Teledyne LeCroyのCP030電流プローブの図

図3:Teledyne LeCroyのCP030は50MHzで30Aまで測定できるAC/DC電流プローブです。ProBusインターフェースを使用してTeledyne LeCroyベースのオシロスコープと完全に統合されます。(画像提供:Teledyne LeCroy

CP030はハイブリッド技術を活用して、DCおよび低周波AC信号用のホール効果デバイスと高周波AC信号用の変流器の両方を使用しています(図4)。

Teledyne LeCroyのCP030 AC/DC電流プローブの機能ブロック図

図4:CP030 AC/DC電流プローブの機能ブロック図。(画像提供:Digi-Key Electronics)

CP030は、測定対象の電流が流れる導体をすばやく挿入できる分割フェライト磁心に基づいて製作されています。

また、磁心のギャップ内のホール効果センサとフィードバック巻線を組み込んでいます。ホール効果センサに適切にバイアスをかけると、磁心の磁束に比例した出力電流が生成されます。この出力は増幅され、フィードバック巻線を駆動して、磁心のゼロ磁束条件を取得します。この時点で、フィードバック巻線を通過する電流は、電流が流れる導体により、磁束に比例しています。

出力終端により、この電流が電圧に変換されます。ホール効果センサの出力は周波数の増大とともに減少するため、フィードバック巻線は変流器として機能し、測定された信号の高周波コンポーネントを正確に測定します。

CP030の感度は1V/Aです。プローブでは、ProBusインターフェースを使用して、この感度がオシロスコープに伝送されます。オシロスコープでは、プローブが接続されたチャンネルのスケーリングがアンペアでの読み取りに自動的に調整されます(図5)。

Teledyne LeCroyのHDO 4104オシロスコープのチャンネル設定のグラフ(クリックしてフルサイズで表示)

図5:CP030が接続されたTeledyne LeCroyのHDO 4104オシロスコープのチャンネル設定。プローブのエントリボックスで示されているように、プローブは自動的に認識されます。電流スケーリングは単位/Vのエントリに自動的に入力され、垂直単位はアンペアに設定されます。(画像提供:Digi-Key Electronics)

オシロスコープは、プローブ出力を検知およびスケーリングすることに加えて、プローブに関連するすべての制御を可能にするダイアログボックスを備えています(図6)。

CP030プローブの設定ダイアログボックスの図(クリックしてフルサイズで表示)

図6:CP030プローブの設定ダイアログボックス。プローブを消磁および自動ゼロイングするための制御が示されています。(画像提供:Digi-Key Electronics)

このダイアログボックスには、消磁および自動ゼロイングする制御が含まれています。消磁では、消磁信号を適用することにより、プローブの磁心の残留磁束が消去されます。最高の精度を確保するために、重要な測定の前に消磁を行う必要があります。自動ゼロイング制御では、電流が存在しないときに、プローブの出力のオフセットがゼロボルトに設定されます。オシロスコープでこれらの制御を設定すると、制御によって、プローブ本体またはインターフェースボックスのスペースが専有されないため、プローブが小さくなります。また、ダイアログボックスによりプローブが識別され、その顕著な仕様が提供されます。

電流プローブをより有用にする一般的な手法

微量電流を測定する場合、一次巻線の中を通して複数の巻線を巻きつけることにより、電流プローブの感度を上げることができます(図7A)。

プローブの磁心を通して複数の巻線を巻きつけた図

図7:プローブの磁心を通して複数の巻線を巻きつけることにより、電流プローブの感度を上げます(A)。プローブの磁心に複数の導体を通すことにより、差動測定を行います(B)。(画像提供:Teledyne LeCroy)

すべてのトランスでは、プローブの磁心を通る巻線の数が多くなるとプローブの感度が上がります。この図では、プローブの磁心を通る巻線が4つあり、感度が係数4で増大しています。この係数は、プローブのリスケール設定に手動で入力する必要があります。また、挿入インピーダンスは巻線の数の2乗で増大することに注意してください。この例では、インピーダンスは係数16で増大します。この測定は低電圧レベルを対象としているため、通常、このインピーダンスに対する電圧降下は低く、測定に及ぼす影響は最小限です。

複数の導体がプローブを通過する場合、オシロスコープでは、正味電流が読み取られます(図7B)。この方法を使用して、2つの導体の差動電流を測定できます。また、同等のDC電流を持つ導体を反対方向に通して、大きなオフセット電流をキャンセルするために使用できます。これにより、電流プローブの範囲を広げることができます。

サードパーティの電流プローブの使用

多くのメーカーが、専用のインターフェースを使用しない一般的なオシロスコープの市場を対象にした電流プローブを供給しています。これらのプローブは、電源に加えて、消磁とプローブDCオフセットの調整を行うための制御を備えています。1つの例は、Cal Test ElectronicsのAC/DC 40Aおよび1.5MHzスタンドアロン電流プローブであるCP6990O-NAです。

Cal Test ElectronicsのCP6990-NAスタンドアロン電流プローブの図

図8:Cal Test ElectronicsのCP6990-NAスタンドアロン電流プローブと関連アクセサリ(画像提供:Cal Test Electronics)

この電流プローブはバッテリ電源を使用し、付属のBNCケーブルでオシロスコープに直接接続します。また、このプローブは1V/Aと100mV/Aのデュアル感度範囲を備えています。Teledyne LeCroyのHDO4104のリスケールフィールドには、それぞれ1または10単位/ボルトを入力します。単位のフィールドで「A」を選択する必要があります。これで、選択したチャンネルの垂直スケールがアンペアで調整されます。

結論

オシロスコープを活用して、電流シャント、変流器、電流プローブを使った電流測定を行うことができます。使用するセンサに関係なく、電流の単位で直接読み取るようにオシロスコープのチャンネルをスケーリングすることができます。

電流プローブは、接続が簡単であるため、最も簡単に使用できる装置です。オシロスコープのメーカーが提供する電流プローブは、プローブを検知し、電流データを自動的にスケーリングします。

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著者について

Art Pini

Arthur(Art)PiniはDigi-Key Electronicsの寄稿者です。ニューヨーク市立大学の電気工学学士号、ニューヨーク市立総合大学の電気工学修士号を取得しています。エレクトロニクス分野で50年以上の経験を持ち、Teledyne LeCroy、Summation、Wavetek、およびNicolet Scientificで重要なエンジニアリングとマーケティングの役割を担当してきました。オシロスコープ、スペクトラムアナライザ、任意波形発生器、デジタイザや、パワーメータなどの測定技術興味があり、豊富な経験を持っています。

出版者について

Digi-Keyの北米担当編集者