センサによるドローン編隊の衝突回避ソリューション
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2016-03-03
ドローン(公式には「無人航空機システム」と呼ばれます)は急速に普及しつつあるテクノロジで、個人や企業が購入でき、比較的自由に運用できます(ただし、どこでもどのような目的でも飛ばせるわけではありません)。 より現代的なシステムにはポッドマウントがあり、貨物を交換可能で、広範なセンサ、照明、ビデオリンクを装備することができます。
個別に操縦されるドローンが空中で衝突することはほとんどありませんが、ランダムで同期されていない編隊での運用が増えるにつれ、そのような事故が発生する可能性は増大します。 しかし、精緻なプログラミングと制御スキーマを使用すれば、複数のユニットを連携させ、貨物の輸送、消火剤の投下、救助作業、監視作業などを行うことが可能です。 このような場合、正確なリモート制御と、ローカルでの自律的な衝突回避テクノロジの両方が必要になります。
この記事では、ドローンに近接している外部の物体を局所的に感知および検出するソリューションについて解説します。 これらのセンサシステムにより、ローカルプロセッサ内に衝突回避の安全な保護レイヤを埋め込んで、メインの通信ラインが切断されたとき、ドローンを自律モードに移行させることができます。 ここで言及されているすべての部品、データシート、開発システムは、DigiKeyのウェブサイトに掲載されています。
近接テクノロジ
ドローンに近接している他のドローンや物体を、中央ハブとの通信なし、さらには隣接ドローン間の通信もなしに検出するテクノロジはいくつか存在します。 このようなテクノロジの1つが光学感知です。
IR光学エミッタは、特定の周波数、デューティサイクル、パターンのパルスを出力でき、光学検出器(フォトダイオードとフォトトランジスタを使用します)はそのパルスを使用して信号を抽出できます。 これらの信号は組み込みのコントローラへ送られ、コントローラは反射信号(自分自身の周波数)または他の周波数の信号を探します。 ID番号をエンコードして周波数のチャープパターンに埋め込み、ドローンの近くに誰がいるのかを認識することもできます。
エミッタと検出器は小型軽量なため、ドローンの周辺を囲むように設置することも現実的に可能です。 これは、エレベーターでドアを閉じてはいけない状況を検出するために使用される、光のカーテンで使用されるものとほぼ同じ方法です。 ただし、光のカーテンでは2次元の平面への侵入を検出するのに対して、ここでは3次元の情報が必要です。 何かが近くに存在することを認識するだけでは十分ではありません。 どの程度離れているのかも測定する必要があります。
これらのセンサ手法は低コスト、低消費電力(比較的低消費電力という話で、エミッタは多くの電流を消費する可能性もあります)、小型ですが、ドローン自体の反射性に依存します。 表面が平らな黒色で、見つかりにくいように設計されている場合、この方法では十分な結果が得られない可能性があります。 周辺に均等な間隔で反射体を配置する方法もあります。 また、上部と下部では異なるパターンの反射体が必要になる可能性もあることに注意してください。
この手法におけるもう1つの問題は、ドローンが機密の軍事用途に使用される場合には特に重要なもので、エミッタ自体がアンチドローン兵器のホーミング用ビーコンとして機能することです。 これによって敵は、低コストの自己誘導ミサイルを使用してドローンを撃墜できます。 また反射体のために、前方を向いているエミッタが明確に定義されたパターンで対象を染め上げることがあります。
このような欠点にもかかわらず、またほとんどの民間用途について、Silicon Labs製のSI1102-A-GMRなどの低コストで小型の光学反射体を使用するソリューションは非常にうまく機能します。 この場合、面実装の非金属を組み合わせた光学トランスミッタおよびレシーバ(図1)は、20インチ離れた反射信号を検出できますが、2.2〜5.25Vで400mAを消費します。 同社のSI1102EK評価ボードは、この製品および他のSilicon Labs QuickSenseファミリのメンバーを学習およびテストするために使用でき、製品トレーニングモジュールもDigiKeyのウェブサイトから入手できます。
図1:小型で面実装の光学トランスミッタおよびレシーバは、モノリシックなパッケージに密に統合されており、近接性検出ソリューションとして使用できます。
音波による手法
音波ベースの手法、特に超音波は、近接性および距離の測定に使用でき、この目的に使用するために多くの超音波トランスデューサが市販されています。 動作周波数の選択と調整を行い、緊密なフィルタ処理を行えば、別々のユニットが近くで稼働しても、干渉を減らすことができます。 光学的な手法の場合と同様に、パルス幅変調、または十分な機動周波数範囲が利用可能な場合、チャープのパターンにIDをエンコードして埋め込むことができます。
この手法には、Murata製のMA40S4Rなどの離散トランスデューサや、Honeywell製のSCN-1530SCなどの統合された距離測定ユニットをソリューションとして使用できます。 音声信号は、距離の増大に応じてより急速に散逸するため、この手法ははるかに局所化されたものとなり、長距離での検出は困難となる可能性があります。このため、軍事目的で自己誘導兵器からドローンを保護するため適しています。 背景ノイズは、特に戦場の状況では必ず存在するもので、組み込みのマイクロプロセッサが信頼性の高い信号を継続的に抽出する妨げとなる可能性があります。 また、モーターのノイズ(音響または電気)も、プロセッサが信頼性の高い信号を継続的に抽出する能力に影響する可能性があります。
光学的な近接性の手法と同様に、音波による範囲検出手法の副次的な利点は、開発システムや評価ボードを使用して、テクノロジをすぐにテストできることです。 たとえばAnalog Devicesは、音波による距離測定専用のEVAL-CN0343-EB1Zセンサ開発キットを提供しています。 またMaximも、自社の組み込みプロセッサをベースとしたMAXQ7667EVKIT-1#超音波距離測定評価キットを提供しています(図2)。

図2:超音波トランスデューサは、サイズが大きくなる可能性はありますが、一般に軽量で、近接性と距離を検出するための信頼性の高い方法として使用されてきました。 評価キットを使用して、特定のテクノロジをコミットする前に、低いコストとリスクでテストと学習が行えます。
GPSソリューション
非常に近距離での動作には、磁気およびホール効果デバイスを使用できます。ただし、より長距離の感知には一般に実用的ではありません。 銅のコイルを使用する必要があることから、このソリューションは高価でかさばったものになります。 また、長距離で信号を送信するには、コイルに多くの電力を供給する必要があります。
可能な用途としてビデオが挙げられますが、エッジを抽出し、局所化された物体をリアルタイムで判定するのは困難です。 さらに、抽出されたエッジ強調情報は概要を確認するためには十分だとしても、距離を簡単かつ正確に識別するために実用的でない可能性があります。 接近した小さな物体と、遠く離れた大きな物体とが同じ画像として示されることがあります。
可能な解決策の1つは、それぞれのドローンでGPSレシーバを使用し、自己編成のメッシュネットワークを保有して、隣接するドローンとの間に制御可能な距離を保つようにすることです。 GPSユニットはチップまたはモジュールとして利用可能で、十分に堅牢であり、いくつかの国際的に互換性のあるソリューションがGPS、GLONASS、GNSS標準をサポートしています。 さらに、多くの実績のあるGPSアンテナ製造業者では、信号を確実に取得するため、ドローンの上および周囲に最適の配置が可能になっています。 GPSシステムは受信専用なので、トランスミッタが存在せず、誘導ミサイルやドローンハンターに使用されることはありません。
単純なUART、SPI、またはIICシリアル制御およびデータアクセスにより、組み込みのマイクロコントローラとシームレスに統合するため適切です。 例として、GPS、GLONASS、GNSS標準用のTelit Wireless Solutions製のSL869GNS115T001汎用モジュールが挙げられます(図3)。 このユニットは、24ピンで1.8グラムの面実装LLCパッケージの部品で、3〜3.6Vで動作し、取得中には最大67mAを消費しますが、スタンバイ時にはわずか73uAしか消費しません。

図3:専用GPSモジュールへのシリアルプロトコルを使用してGPSを実装すると、小型で低コストのソリューションを、少ない設計時間で完成できます。 ドローンに対して、どこへ向かうのかだけを指示すれば、自律的にその場所へ移動します。
レーダー
スケールダウンした超小型のレーダーは、非常に現実的なソリューションとなり得ます。 RF手法はこの用途に理想的な場合があります。特に、非常に高い周波数ではアンテナやコンポーネントをごく小さなスケールに縮小できます。
もう1つの利点は、自動車産業がこのテクノロジの多くを推進しており、衝突回避レーダー、リフトゲートの近接性検出などの機能を生み出していることと、車にはいくつもの側面があるため、マルチチャンネルのレーダーソリューションやフロントエンドが利用可能なことです。
たとえば、Texas Instruments製のAFE5401TRGCTQ1はモノリシックな4チャンネルのアナログレーダーのフロントエンドで、低ノイズのアンプ、イコライザ、プログラマブルなゲインアンプ、アンチエイリアシング、および12ビット解像度のA/Dが内蔵されています(図4)。 この1.8ボルトの部品は、すべてのチャンネルを同時にサンプリングでき、25Mサンプル/秒の速度を持ち、12ビットのCMOS互換のパラレルバスによって取得したデータをホストコントローラへ迅速に転送できることに注目してください。

図4:この4チャンネルレシーバのような、マルチチャンネルのモノリシックなレーダーデバイスは、車載業界向けに開発されたものですが、ドローン用の近接性および衝突回避システムのテストと開発には理想的です。
衝突回避や他の用途のため、小型でコンパクトなレーダーがますます広く使用されるようになってきていることから、このテクノロジのテストと評価を行うためにAnalog Devices製のAD8285CP-EBZなどいくつかの優れたレーダー開発キットが利用可能です。
レーダーは、ジェスチャ認識インターフェースデバイスとしての使用のため小型化が進められていることから、注目に値するテクノロジです。 GoogleとInfineonとの提携で進められているProject Soliという計画では、レーダーテクノロジを使用して、この新しい相互連携センサを開発中です。 空間内での指の位置と移動を検出し、ドップラー効果によって速度までを検出することで、デバイスとの豊富な連携動作が可能になります。 Soliセンサは、人間の指のミリメートル以下の動作を、高速かつ正確に追跡できます。 このセンサはチップに搭載でき、大量生産が可能で、小型のウェアラブルデバイス内でも使用できます。 Project Soliチームは開発キットのリリースを計画しており、開発者はそのキットを使用して新しい連携動作やアプリケーションを作成できるようになります。
この記事で扱っている部品の詳細については、このページにあるリンクを使用して、DigiKeyウェブサイトの製品ページにアクセスしてください。
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