自動運転車両用のセンサ

著者 Jon Gabay

Electronic Products の提供

自動運転車両については、近年多くの討議が行われ、また文書に記載されています。 安全性を向上し費用を削減するための方法として、このテクノロジの開発には多くの労力が注ぎ込まれています。 これらは、もはや単なる未来の構想ではなく、BMW、Mercedes-Benz、Teslaなどの企業は、車がある程度の自動運転機能を持てるようになる車載用システムを既に公表したか、間もなく公表する予定です。

潤沢な予算を持ついくつかの企業は、自動運転車両のテクノロジに多大な投資を行っています。 Googleの自動運転車プロジェクトとそのテストについては、多くの方がご存じでしょう。[1] また、自動操縦のドローンを配達に使用するAmazonの計画もほとんどの人がご存じと思います。[2] しかし、Domino's Pizzaのような食品会社がピザを30分以内に配達するための電気自動車や[3]、ドローンをベースとしてピザを配達するシステムを精力的に開発していることはそれほど知られていません。[4] Walmartなどのメガストアも自動配達テクノロジへの投資を行っており、人間の介入なしに高速で信頼性の高い配達を行い、Amazonに対抗しようと計画しています。

この記事では、自律的車両を作り上げるために使用可能なセンサテクノロジと、リアルタイムおよび混合信号の組み込み要素の設計により、比較的安全で信頼性が高い自動運転システムを実現する方法について解説します。 この記事で言及されているすべての部品とテクノロジは、DigiKeyウェブサイトでご覧いただけます。

すべての基礎となるGPS

すべての自動運転車両では、センサが非常に重要です。 あらゆる自動運転システムで必要となる主なセンサテクノロジは、位置の特定です。 もちろん、ほとんどのスマートフォンにはGPSと地理情報テクノロジが既に組み込まれています。 これらのシステムは十分に信頼性の高いものですが、ハイウェイや主要道路で、人間が運転する自動車に混じって走る自動運転車両や車両の編隊の要求を満たすほど信頼性が高いわけではありません。

自分の経験から考えてみましょう。 GPSの示す位置が間違っていたり、効率さに欠けていたことは何回くらいあったでしょうか? 気象条件、電子的なノイズ源、マッピングの不整合により、人間が注意して補完しなければ破滅的な結果を招くことがあります。

もう1つの要素は分解能です。 今日のGPSはメートル単位の精度が必要な場合には十分かもしれませんが、センチメートル単位の分解能が必要な場合にはどうでしょうか? 1メートル以下の誤差により進路変更禁止の線を超えてしまった場合、正面衝突が発生する恐れがあります。 同様に、沿岸のハイウェイにおいては、1メートルの誤差により車が崖から転落するという恐ろしい結果を招く恐れがあります。

自律的自動車において、位置以外に主要なテクノロジは衝突回避です。 自動操縦車両は注意深く運転するようにプログラム可能で、会話、音楽、携帯電話などに注意をそらされることはありませんが、同じ道路には人間の運転する車が存在し、これらの車は安全運転をするとは限らず、さらには交通法規を遵守する保証もありません。 つまり、自動操縦車両は自分自身のことを考慮するだけでなく、人為的な失敗に対処する計画や方針も組み込まれている必要があります。

利用可能なソリューション

総合的な位置認識には、モジュール式のGPSソリューションが適切な選択肢です。 小型で低コストかつ低消費電力のGPSモジュールには、中国のBeiDou衛星ナビゲーションシステム、ロシアのGlonass、欧州連合のGNSS(Galileo Satellite Navigation Systems)、GPS(American Global Positioning System)テクノロジなどの国際的なプロトコルのサポートを含めることができます。 AntenovaのM10478-A3などのモジュールには広帯域幅のアンテナが搭載されており、前述のプロトコル標準すべてをサポートすると同時に、単純なUARTベースのインターフェースによって115.2Kビット/秒までの速度のデータ転送が可能なため、ほとんどの標準の組み込みマイクロコントローラと簡単に接続できます。

車載用途においてはサイズと消費電力は一般に制約事項とはなりませんが、感度と拡張温度範囲は制約事項になることに、設計技術者は注意する必要があります。 Antenovaのモジュールは–165dBという優れた感度を持ち、-40~+80℃の温度範囲で動作します。 更新レートは10Hz固定なので、地上で道路を比較的低速で移動する車両においては十分な速さで最新の位置情報を常に利用できます。

3.3ボルト、38mAのシールドされたモジュール自体は28ピン、13.8 x 9.5 x 1.8mmのSMT実装可能基板に取り付けられ、この基板は組み込みマイクロコントローラを含むメインマザーボードに直接リフロー可能です。 AntenovaのM10478-A3-U1の開発および評価ボードには簡単なUSB接続が搭載されているため、低いリスクと投資によってこのソリューションを迅速にテストおよび評価できます。

マッピングのメモリとデータは、Google Mapsのような国際的なマッピングソリューションを使用するようライセンスまたはパッチされており、GSMおよびインターネットへの接続を必要とすることがあります。 GSMソリューションには、GPS機能も含まれていることがあります。 たとえば、Maestro Wireless SolutionsM1003GXT48500 3G GSMモデムは、GSM機能とGPSのサポートを組み合わせ、ジオロケーションとGPSを使用できるようにしたものです(図1)。 これによって、セルタワーを使用するバックアップソリューションや、衛星による修正の取得が可能になります。

Maestro Wireless Solutions製のGSMおよびGPSモジュールの画像

図1:GSMとGPSの両方のモジュールを組み合わせることで、衛星と携帯電話接続の両方を使用して現在位置を識別できます。

衝突防止

衝突防止のための物体検出は、自動運転車両の安全要件の主要な部分となります。 各種の供給元から、さまざまなCCDイメージセンサやカメラがすぐに利用可能ですが、センサのアルゴリズムを迅速かつ効率的に開発するには、ビデオセンサと制御用プロセッサとの間の柔軟なプラットフォームを技術者が利用可能なことが必要です。

理想的なソリューションは、ビデオのストリーミングを直接サポートできるFPGAテクノロジを使用して、高速なハードウェアでエッジ検出、画像の強調、計算を実行し、近づいてくる物体の速度、方向、近接度を判定し、脅威の評価を実行することです。

理想的なソリューションの1つとして、Lattice Semiconductorは1080p、60fpsのビデオカメラ用に自社製のLFE3-70EA-HDR60-DKN開発システムを提供しています。 このプラットフォームには、同社のLCMXO2-4000HE-DSIB-EVN画像インターフェース基板およびLF-9MT024NV-EVN Nanovestaカメラヘッドボードで使用するためのリファレンス設計とIPが含まれています。

このテクノロジにより、2つの画像センサを結合して、1つのビデオデータストリームにし(図2)、深度認識やより正確な速度および位置センシングが可能になるとともに、ホワイトバランスの自動調整、2Dノイズの低減も行えます。さらに同社によれは業界最速の、最大16メガピクセル解像度サポートの自動露光機能が搭載されています。

2つのイメージセンサを1つのビデオデータストリームとして結合した画像

図2:2つの独立したカメラとビデオストリームをサポートすることにより、自動運転車両の重要な要素である深度認識が可能になります。

レーダ部品

車載業界では、小型化されたレーダが既に広く使用されています。 これらのレーダは、RFテクノロジを採用して近接度、範囲、速度、および物体の相対サイズを特定します。

車載業界は衝突回避および自動駐車システムにおいてこのテクノロジを推進してきたため、自動運転車両の設計用にレーダチップ、部品、開発システム、サブアセンブリがすぐに利用可能です。

車両ではいくつもの側面を監視する必要があるため、マルチチャンネルのレーダーシステムが既に設計され、使用中であることにも注目してください。 リフトゲートの検出システムなど、シングルチャンネルのレーダシステムも採用可能ですが、自律式車両の各側面、軸、および車両に対する脅威の可能性判別のためにいくつも配置する必要があります。 たとえば、前面と側面のレーダは歩行者を避けるには適切ですが、タイヤがパンクしたときなどに、路側溝があるのでここで停止するのは適切ではないということを判定するためには深度検出も必要になる可能性があります。

この分野で使用可能な部品には、Texas InstrumentsAFE5401TRGCTQ1などがあります。 これはモノリシックな4チャンネルのアナログレーダフロントエンドで、低ノイズのアンプ、イコライザ、プログラム可能なゲインアンプ、アンチエイリアシング、12ビット分解能のA/Dが内蔵されています(図3)。 特に注目すべきなのは、この1.8Vの部品はすべてのチャンネルを同時にサンプリング可能で、25Mサンプル/秒の速度を持ち、12ビットのCMOS互換パラレルバスによって取得したデータをローカルのホストコントローラへ迅速に転送可能なことです。

マルチチャンネルのモノリシックレーダの4チャンネルレシーバの図

図3:この4チャンネルレシーバのようなマルチチャンネルのモノリシックレーダデバイスは、自動運転車両向けの理想的なソリューションです。

Analog Devicesによって提供されるAD8285WBCPZ 4チャンネルフロントエンド12ビットADCも、同様なソリューションです。 この部品は、同社のAD8285CP-EBZ RXパスレーダ評価ボードでサポートされており、このボードは内蔵のSPI接続されたFIFOを使用して柔軟にデータを捕捉できます。

まとめると、自動運転車両を使用する自動配送は、最初の実装が高価で、困難な規制や義務という形でハードルに直面する可能性があります。 しかし、必要な技術的ソリューションは、特にセンサベースのモジュールやシステムの形で、設計技術者が今すぐ利用可能、またはもうすぐ利用可能になります。 GPS、レーダ、ビデオセンシングを活用した今日の高度な運転者補助システム(ADAS、たとえば適応走行制御や自動緊急ブレーキなど)により、自動運転車両が実際の道路で使用されるようになるのは、もはや可能性ではなく時間の問題だと言えるでしょう。

リファレンス:

  1. Googleの自動運転車両プロジェクト
  2. Amazon Prime Air
  3. Domino's Pizzaの配送車両
  4. Domino's DomiCopter

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