化学抵抗性デバイスを使った正確なガス監視システムの設計

Digi-Keyの北米担当編集者 の提供

化学抵抗性センサは、産業用制御、HVACシステム、安全衛生などの用途で、さまざまなガスの濃度を測定する低コストの手段になります。化学抵抗性センサは加熱素子に依存しているため、開発者は、センサ抵抗の正確な測定の実現に加えて、加熱素子を制御して、適切な温度を維持する必要があります。

開発者は、両方の要件を満たすために、さまざまな手法を活用することで、設計の複雑さと測定精度をバランスよく調整することができます。

この記事では、化学抵抗性センサの特徴とさまざまな用途におけるその使用方法について説明します。次に、Integrated Device Technology(IDT)の化学抵抗性ガスセンサデバイスを紹介し、これらのセンサを使用するための要件のほか、センサの動作をサポートするアナログ設計のオプションに焦点を合わせて説明します。

最後に、一般的なMCUベースの設計アプローチの説明に加えて、ガスセンサ設計の評価と開発のための関連ボードとソフトウェアを紹介します。

化学抵抗性センサ

定性的検出と定量的測定は、特殊な用途と一般的な用途の両方で重要性がますます高まっています。メタン検出器は採掘作業時に重大な警告を出し、水素ガス測定によりバッテリの問題がユーザーに通知され、正確なガスセンサは医療用途で「電子鼻」として機能することができます。住居用および商用ビルでさまざまなガスのレベルを監視することにより、建物内の人々に有毒ガスを警告したり、火災の早期警報を発令したりできます。

利用可能なガスセンサの中でも化学抵抗性金属酸化物センサは、過酷な用途においても信頼性の高い結果を提供することができるコスト効率の良いソリューションです。これらのセンサでは、空気中のガス分子の濃度が変化すると、センサ抵抗が変化します。この抵抗の変化は、センサの動作範囲内で数桁にわたって変動する場合があります。センサ抵抗(RS)とガス濃度Cの関係は、追加の2つの定数係数(Aとα)のみが含まれる簡単な式で表されます。

式1

または、次のように同等の形式で記述されます。

式2

式2は、ガス濃度の対数とセンサ抵抗の対数間の直線関係を示しています。具体的に説明すると、この式では、低濃度時にはこれらのセンサが抵抗の急激な変化を示すが、高濃度時にはより緩やかな変化を示すことが表されています(図1)。

IDTのSGAS701水素センサがセンサ抵抗とガス濃度間の直線的な両対数関係を示しているグラフ

図1:IDTのSGAS701水素センサなどの化学抵抗性センサはセンサ抵抗とガス濃度間の直線的な両対数関係を示しますが、サポート回路では、測定結果に非線形性を含めることができます。(画像提供:Integrated Device Technology)

IDTの一連の化学抵抗性センサは、次のようなさまざまなガスを正確に測定することができます。

  • 水素(IDTのSGAS701センサを使用)
  • ホルムアルデヒド、トルエン、アセトン、アルコールなどの揮発性有機化合物(VOC)(SGAS707センサを使用)
  • 炭化水素、メタン、プロパン、天然ガスなどの可燃性ガス(SGAS711センサを使用)

IDTの4ピンデバイスは、センサ素子と一緒に抵抗素子を統合して、センサを最適な測定温度に加熱します。

開発者にとっての課題は、センサ抵抗の正確な測定を確保すると同時に加熱素子を適切な温度に保つことです。開発者は、両方の要件を満たすために、さまざまな手法を活用することで、設計の複雑さと測定精度をバランスよく調整することができます。

アナログのフロントエンド実装の考慮事項

化学抵抗性センサは抵抗デバイスとして、ガス濃度の変化に起因する抵抗の変化を測定するために、適切な励起の提供を必要とします。こうしたデバイスの場合、開発者は、次のような方法を使用して、センサ抵抗(RS)を測定することができます。

  • シンプルな電圧デバイダにセンサを配置
  • 定電圧源でデバイスを駆動
  • 定電流源でデバイスを駆動

開発者にとって、各アプローチの適格性は、設計のシンプルさと測定の正確性に関する用途の要件によって左右されます。たとえば、開発者は、シンプルな電圧デバイダの一部としてRSを測定して、最も簡単なソリューションを作成することができます(図2)。ただし、用途の要件によっては、このアプローチに内在する測定の制限が大きすぎる場合があります。

最もシンプルな化学抵抗性センサ設計である電圧デバイダ構成の図

図2:この電圧デバイダ構成により、最もシンプルな化学抵抗性センサ設計が実現しますが、いくつかの制限が伴い、ガス濃度の正確な測定が要求される用途の要件を満たすことができない場合があります。(画像提供:Integrated Device Technology)

電圧デバイダでは、測定された出力VOUTが供給値Vbias(図2のVc)に到達することはありません。次の式に応じて、抵抗ネットワークは、VOUTをVbiasの何割かに制限します。

式3

センサの応答時間RFIXED/(RFIXED+Rs)のため、VOUT/Vbiasが1に到達することはありません。ただし、開発者は、センサのベースライン値(空気中で測定される値であるとみなされる)とセンサの1000ppmでのフルスケール応答の間にある有用な電圧範囲に到達するように抵抗値RFIXEDを設定することができます(図3)。

フルスケール応答 RFIXED [Ω] VOUT(空気中)[V] VOUT(フルスケール)[V]
0.75 210k 0.133 2.475
0.80 280k 0.175 2.640
0.90 630k 0.369 2.970
0.95 1.33M 0.693 3.135

図3:開発者は、3.3V供給(図2でVcとして示されているVbias)を使用する設計で、さまざまな値のRFIXEDを使用して、フルスケール応答とベースライン応答(空気中)の間にある目的の応答範囲に到達することができます。(画像提供:Integrated Device Technology)

このアプローチの非線形性から別の制限が発生します。この制限は、式1と式3を次の式にリファクタリングすることにより明らかになります。

式4

RS(つまり、A * C)がRFIXEDより大部分を占める低ガス濃度では、センサ応答とガス濃度が直線的な両対数関係を維持します。RFIXEDがRSより大部分を占める高ガス濃度では、この直線的な関係が失われ、ガス濃度が高くなると、応答の段階的変化が小さくなります(図4)。

電圧デバイダ構成でRFIXEDが大部分を占め始めているところを示すグラフ

図4:電圧デバイダ構成でRFIXEDが大部分を占め始めており、センサ応答とガス濃度間の両対数関係が非線形になっています。(画像提供:Integrated Device Technology)

残念ながら、結果でRFIXEDとRSの寄与を区別することができないため、開発者には、この非線形性への対応に関して適切な選択肢がほとんどありません。そのため、このアプローチは、正確な定量的測定ではなく、ガス検出に重点を置いた用途に適しています。これらの検出用途では、開発者は、一定のガス濃度のしきい値に対応した固定電圧レベルで切り替わるように設定されたアナログコンパレータをそのまま使用することができます。

向上した精度

設計者は、センサ励起のために定電圧源または定電流源を使用することにより、RFIXEDとその線形性に対する影響を排除することができます。一方で、これらのアプローチでは、全体的なシステム要件に影響を及ぼす著しく異なる設計要件が発生します。定電圧励起の場合、開発者は、シンプルなアナログフロントエンドを使用して、直線的な両対数応答を生成することができます(図5)。この場合、出力電圧には、RSENSORに対するシンプルな直接関係があります。

式5

オフセット補償と増幅を備えた定電圧センサ励起を提供する回路の図

図5:設計者はオフセット補償と増幅を備えた定電圧センサ励起を提供する回路を使用して、設計の複雑さと引き換えに、精度を高めることができます。(画像提供:Integrated Device Technology)

定電圧励起では、VOUTが、RSENSORと通過する電流の積になり、センサ応答がガス濃度に直接比例します。その結果、すべての動作範囲においてガス濃度の対数とセンサ応答の対数間で完全な直線関係が成立します。このアプローチはその範囲全体で抵抗の変化に実質的に影響を及ぼし、ガス濃度に応じた抵抗のより一貫した段階的変化をもたらします。

これらの利点は、定電圧の手法に比べて増分的なより高い複雑性と引き換えにもたらされます。後者の手法と同じように、定電流のアプローチでは、オペアンプ段を使用して、基本的なドライバ回路を実装します。ただし、この場合、それらのオペアンプ段により、必要な励起電流レベルを生成するために追加されたMOSFETゲートが制御されます。定電流回路では、設計の複雑さが増分的に高まりますが、次に説明するように、MCUベースの設計に利点がもたらされます。

ヒータドライバ

センサ励起に使用するアプローチに関係なく、最適な結果を得るには、金属酸化物材料を特定の温度に加熱する必要があります。IDTセンサの場合、センサの動作温度は、SGAS707 VOCセンサが150°C、SGAS701水素センサが240°C、SGAS711可燃性ガスセンサが300°Cです。

センサと同じように、ヒータは、要求される温度を保つために定電圧源または定電流源を必要とする抵抗素子です。開発者は、センサの感度を変化させる可能性がある変動を防止するために、ヒータドライバ回路でその出力が制御されるようにする必要があります。

定電圧源の場合、設計者は、従来の線形電圧レギュレータを使用するだけで、電圧と電源の要件を満たすことができます。たとえば、Texas InstrumentsLM317は、各IDTセンサに必要な制御された特定の出力レベル(SGAS707に対して3.5V、SGAS701に対して5.4V、SGAS711に対して7.0V)を提供できるため、適切なソリューションを実現します。

開発者は、わずかの追加コンポーネントとLM317を使用して、ほとんどのガスセンサ用途の要件を満たすことができる定電圧源を作成できます(図6)。開発者は、適切にR2を選択することにより、VHEATERを必要な電圧レベルに設定することができます。

従来型のTexas InstrumentsのLM317線形レギュレータの図

図6:設計者はTexas InstrumentsのLM317などの従来型の線形レギュレータを使用して、ガスセンサヒータ向けの適切な定電圧源を作成することができます。(画像提供:Integrated Device Technology)

このソリューションは比較的シンプルですが、周囲温度や回路コンポーネントの変動のため、ガスセンサ用途で測定が不正確になります。

たとえば、前述のターゲットヒータ電圧レベルは、周囲温度が0°Cの環境で動作するセンサに要求されるレベルに対応します。図7に示すように、要求されるヒータ電圧は、温度との間で反比例関係があります。周囲温度の変化を補償するためのヒータ電圧調整に失敗すると、センサの感度やガス測定の精度が低下します。

要求されるヒータ電圧が温度との間で反比例関係を持つことを示すグラフ

図7:各IDTガスセンサの場合、要求されるセンサヒータ電圧は、周囲温度の変化と同じ割合で変化しますが、各センサタイプには特定のオフセット(ここで示すようにSGAS701に対して5.5V、SGAS707に対して3.8V、SGAS711に対して7.2V)が必要です。(画像提供:Integrated Device Technology)

開発者は、図6に示したシンプルな線形レギュレータ回路に基づいて構築し、フィードバックを追加して、ヒータの出力と温度を追跡することができます。ただし、設計者は、関連する複雑さに対処する代わりに、定電流源を使用したより簡単なソリューションを選択することができます。

定電流センサ励起の場合と同じように、定電流ヒータ回路はより柔軟なソリューションを提供します。IDTは、センサ励起とヒータ制御の両方に定電流回路を使用する方法を示した回路図を提供しています(図8)。

IDTが提供する回路の図(クリックして拡大)

図8:IDTは、SMOD7xx評価ボードで同じアナログ設計を使用して、センサとヒータに定電流源を提供する回路を示しています。(画像提供:Integrated Device Technology)

定電流センサ励起(図8、上部)の場合、IDTはLinear TechnologyLTC6081高精度オペアンプのペア(各アンプがDiodes Incorporatedの高効率DMC2700 MOSFETを駆動する)を組み合わせて、最終的に、TIのOPA2376AIDGKR低ノイズオペアンプを使用したセンサ電圧を実現しています。

センサヒータ回路では、同じようなアプローチを採用していますが、回路の9V電源(図8の下部)に対応可能なTexas InstrumentsのLPV511オペアンプを使用しています。

両方の回路は入力電圧を使用して電流レベルを設定し、MCUベースの通常のセンサシステムに大きな利点をもたらしています(図9)。

定電流回路がMCUベースのセンサシステムに対して特に効果的であることを示す図

図9:定電流回路は、MCUベースのセンサシステムに対して特に効果的です。MCUでは、デジタル〜アナログ変換回路(DAC)を使用して、プログラムでセンサとヒータ電圧を制御できるほか、アナログ〜デジタル変換回路(ADC)を使用して、ヒータ電圧を監視し、センサ出力電圧を測定することができます。(画像提供:Integrated Device Technology)

開発者は、MCUを使用して、デジタル〜アナログ変換回路(DAC)を制御することにより、センサとヒータに要求される制御電流レベルをプログラムで設定して、変化する条件に対応することができます。同様に、開発者は、MCUを使用して、アナログ〜デジタル変換回路(ADC)でセンサ出力を読み取り、必要な調整と補償を実行して、その結果を用途に適用することができます。

ヒータの場合、開発者はヒータ電圧出力を測定して、その結果をソフトウェアフィードバックループで使用することができます。このソフトウェアフィードバックループは、特定のセンサと周囲温度に適したレベルにヒータ温度を保つように設計されています。

IDTは、この同じデュアル定電流回路設計をSGAS701(SMOD701KITV1)、SGAS707(SMOD707KITV1)、SGAS711(SMOD711KITV1)向けのSMOD7xxデモキットで使用しています。SGAS7xxセンサの評価を容易にするように設計されているSMOD7xxボードでは、定電流回路と、個々のセンサ、TIのMSP430I2021 MCU、サポート回路が組み合わされています。

開発者は、SMODxxボードと連携するように設計されている個別のSMODアプリケーションソフトウェアプログラム(登録が必要です)を使用して、ガス検知用途のシナリオの調査をすぐに始めることができます。開発者は、SMODxxボードのセンサを目的のガス濃度に曝すことにより、SMODソフトウェアプログラムを使用して、センサ抵抗の変化を直接表示し、異なるガスや濃度に対するアプリケーションの応答を注視することができます(図10)。

IDT SMODアプリケーションソフトウェアプログラムの画像

図10:開発者は、IDT SMODアプリケーションソフトウェアプログラムをSMOD7xxボードと組み合わせて使用することで、異なる使用シナリオに応じたセンサ抵抗の変化を表示できます。(画像提供:Integrated Device Technology)

SMOD7xxキットとSMODソフトウェアパッケージの組み合わせは、実際の用途におけるガスセンサのパフォーマンスを理解するための重要なツールになります。複数の種類のガスが存在する産業環境では、ガスセンサが不注意な開発者に予期せぬ結果を提示する可能性があります。各化学抵抗性センサは特定の種類のガスに最適に反応するように設計されていますが、異なるガスの存在により結果の精度が低下する場合があります。

たとえば、SGAS701センサは水素ガス向けに最適化されていますが、SGAS707 VOCセンサやSGAS711可燃性ガスセンサを使用して最適に検出されるガスなど、他の種類のガスに反応します(図11)。また、湿度やその他の環境条件により、センサの反応が系統的に変化する可能性があります。開発者はIDT開発ツールを使用して、ガスセンサシステムの最終設計のかなり前に、アプリケーションに影響を及ぼす可能性のある要素を見つけることができます。

IDTのSGAS701水素ガスセンサの感度のグラフ

図11:通常、ガスセンサは、このSGAS701水素ガスセンサが示すように、他の種類のガスに対して一定レベルの感度を示すため、そのような環境に曝されるガスセンサ設計では、適切な補償や修正が必要になります。(画像提供:Integrated Device Technology)

結論

異なるガスの濃度を測定できる機能は、幅広い用途においてますます重要な機能になっています。IDTなどの会社の低コスト化学抵抗性センサは既製のソリューションを提供しますが、これらのデバイス固有の要件に対応するには、注意深い回路設計が必要になります。

開発者はさまざまな手法を活用することにより、回路の複雑さと測定精度をバランスよく調整して、独自の用途に固有の要件を満たすガス検知設計を作成することができます。

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