モータ駆動軸の回生ブレーキ

著者 Lisa Eitel(リサ・アイテル)氏

DigiKeyの北米担当編集者の提供

産業用オートメーション機械において、回生ブレーキは、電気モータ(および、そのドライブ)が持つ既存の仕組みとエネルギーを、専用のサブコンポーネントとともに使用して、モータ駆動軸を減速し、停止し、再作動させる技術です。回生ブレーキ技術は、摩擦クラッチおよびブレーキの代替となる、極めて制御しやすく、エネルギー効率の良い(しかも小型の)機能を実現します。簡単に言うと、回生ブレーキに組み込まれた回路が、モータの回転するローターと付随する負荷からの動的な機械的エネルギーを電気エネルギーへと変換します。この電気エネルギーはパワーラインへと再供給されて、別の用途に使用されたり、放散されたりします。

回生ブレーキは、1900年代初頭に初めて自動車に使用され、1930年代には鉄道に使用されました。このモータエネルギーの再利用の仕組みはハイブリッド乗用車に搭載され、ブレーキのエネルギーによってオンボードのバッテリを充電するために使用され、その際に初めて回生と呼ばれるようになりました。現在、回生ブレーキは産業用途で広く使用されており、設計も多岐にわたっています。

Delta IA VFD-EL多機能ドライブの画像。高精度の電流制御を利用してACモータを駆動図1:高精度の電流制御を利用してACモータを駆動するVFD-EL多機能ドライブ。一般的なDCバスにより、サイドバイサイドの設置をシンプルに実現。また、ほとんどのVFD-ELドライブモデルは並列にグループ化して接続し、回生ブレーキエネルギーを共有。これにより、過電圧が防止され、DCバス電圧が安定(画像提供:Delta IA

1.回生エネルギーの使用形態の1つに、ダイナミックブレーキ (回生レジスタブレーキと呼ばれることもある)がありますが、これは本来の回生ブレーキとは異なるものです。システムドライブ(その機能の内容からインバータとも呼ばれます)はモータの回転エネルギーを廃熱を通じて放散させることによってモータを完全に停止させ、それ以外のことは実行しません。たとえば、自動化された機械において、電気モータの稼働中にモーション軸が突然停止する場合があります。通常、システムの摩擦は十分に低く、ローターを惰行させますが、この動作は本質的に制御できません。惰行は運動エネルギーが消費されるまで継続しますが、これにはかなり長い時間がかかる場合がある上に、機械が損傷したり人員が負傷したりするリスクがあります。ダイナミックブレーキは、ローターの運動エネルギーを電気エネルギーに変換し、モータをより早く停止させることによって、この問題に対処します。運動エネルギーから電気エネルギーへの変換は、エネルギーを熱として発散する電圧安定化抵抗器によって行われます。

多くのモータドライブ、特にデジタルサーボアンプは、ヒートシンクエネルギーの放散などのための、組み込みの抵抗器を備えています。ただし、回生エネルギーがドライブレジスタの組み合わせ定格を超えたことがモータ駆動軸で検知される場合は、外部の回生抵抗バンクが必要になる場合があります。この状況は、負荷とモータの慣性比率が大きい軸でよく発生します。

Panasonic MDDHT5540Eサーボドライブの画像図2:組み込みの回生抵抗器によって回生ブレーキを実現しているMDDHT5540Eサーボドライブ。回生抵抗器はエネルギーを放電し(垂直配列または高慣性負荷を停止することにより)、そのエネルギーをドライブに戻す。このシリーズのフレームA、B、GおよびフレームHモデルには回生抵抗器が搭載されていないため、オプションの回生レジスタを使用することが推奨される。このシリーズのフレームCからフレームFのドライブには組み込みの回生レジスタが1台組み込まれており、外部レジスタを追加することで回生機能の向上が可能(画像提供:Panasonic Industrial Automation Sales

回生ブレーキシステムでは外付けアドオンブレーキ抵抗器が採用されており、モータドライブターミナル間を接続します。これにより、システムチューニングソフトウェアはアドオン抵抗器とその熱シェディング機能を検出し、調査することができます。一般的な抵抗器の形態は、アルミのハウジング内に、素早い熱放散を目的とした高い熱伝導性の素材を配置するというものです。継続的にブレーキが使用される場合には、素早い熱放散が特に重要です。

Ohmite BAシリーズ BAB116025R0KEのアルミハウジングのブレーキ抵抗器の画像図3:高電力の回生ブレーキアプリケーションに適するBAシリーズのBAB116025R0KEアルミハウジングのブレーキ抵抗器。セラミックコアに巻かれたワイヤと、高誘電体特性に対応した雲母シートの絶縁で構成されている。組み込みの熱遮断スイッチにより、安全性アプリケーションで使用可能(画像提供:Ohmite

2.回生ブレーキは、機械によって生成された電気エネルギーを主電源または共通DCバスに戻して、以下のための回生エネルギーを維持するという点がダイナミックブレーキと異なります。

  • ブレーキの再利用
  • ブレーキがかけられた軸の再作動
  • システム上の他の軸への電力供給

産業用オートメーションの大半の回生ブレーキシステム(ライン回生と呼ばれることもあります)では、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)が採用されており、モータと電源間で双方向に電力を流すことができます。これは、ダイオードを使用した従来型のインバータでは不可能です。こうしたIGBTの使用は、トラクションドライブを基盤としている現在の一部の電気自動車アプリケーションとは対照的であることに留意してください。このような駆動用のSiC(シリコンカーバイド)などのワイドバンドギャップ半導体について、詳細は、このトピックに関するdigikey.jpの記事を参照してください。場合によっては、IGBTやその他のMOSFETよりも効率と電力密度に優れたSiCベースのデバイスによって、DC電力をモータ駆動のための3相のAC電力に変換することができます(そして、回生ブレーキエネルギーを、バッテリの充電のためにDCに戻すことができます)。

回生ブレーキにより、モータとローター間の機械エネルギーが電気エネルギーに変換されることから、トルクと回転の方向に対する指令が逆方向の場合、モータが実質的にモーション制御の速度トルクプレーンの2象限または4象限の発生器として動作するようになります。この状態が該当するのは以下の場合です。

  • 軸指令が逆であり、ローターがすぐに反対方向への回転を継続する
  • ローターの速度がモータの指示された同期速度出力を超えている

回生ブレーキを自動化された設計に統合する場合には、以下の点に注意が必要です。回生ブレーキは速度を落とすことができますが、停止したり負荷を保持したりすることはできません。軸はほぼ完全に停止しますが、発生器を駆動する(したがってモータが作動する)エネルギーがわずかに残ります。そのため、何らかの追加のブレーキまたはエレクトロニクスがない場合、残りの低速化および停止は惰行で行われます。また、過電圧による障害を発生させることなくエネルギーを標準のDCバスコンデンサに戻すエネルギー量には制約があります。したがって、回生ドライブを慎重に指定し、十分な量のAC電源をドライブに戻します。または、特別に設計されたコモンバスを使用してください。コモンバスは、エネルギーがドライブよって再利用される前に、電力をACからDCに一度だけ変換するため、特に効率的です。

回生ブレーキ専用に調整できるVFDの別の部分には整流器がふくまれています。整流器にはアクティブフロントエンドと呼ばれるものがあり、システム電流における高調波を最小化します。Delta ElectronicsのAFE2000シリーズのアクティブフロントエンドは、過剰なエネルギーを、主電源に戻すことができる再利用可能なエネルギーへと変換することにより、従来のブレーキ抵抗器を不要にしました。AFE200フロントエンドは、エネルギー効率を最大化するためのさまざまなアプリケーションのために設計されています。この製品やその他のドライブは、回生機能を備えていることに加えて、システム電流(特に低電力の場合)におけるさまざまな高調波歪みを解決して、EMI付近にあるエレクトロニクス(制御帰還用のものなど)を保護します。

3.電気モータブレーキ(場合によっては単にDCブレーキと呼ばれることもあります)を対象としたDC注入には、DC電流をACモータの1つまたは2つの巻線に入力するドライブエレクトロニクスがあります。わずかな違いはあるもの、大半のDC注入システムは、モータの磁場の回転が、リレーなどの制御スイッチによってオフに切り替えられている場合に動作するようになっています。すると、別のリレー、つまり電子ブレーキ制御(VFDのドライブ内)がシステムのDCバスからモータの巻線へのDC電力への供給を開始します。これらのコンポーネントは印加電圧を制御し、巻線内の電流をモータの最大定格内に維持しますが、高電流は、より高いブレーキ力を誘発します。

DC注入の結果、ステータからの非回転電磁場がローター(および関係する負荷)を停止し、所定の位置に保持します。

Omron SR125SMS45のモーション停止安全リレーの画像図4:Omron SR125SMS45モーション停止安全リレー。このリレーは、接続されたモータの完全な停止を追跡(モータ端子全体のEMFを再検知することにより)し、ゲートが設定された作業セルを開く。DC注入ブレーキなどの電気モータ制御と連携する(画像提供:Omron Automation and Safety)。

DC注入ブレーキの主な制限要因は、ブレーキが原因で発生する熱を、モータとそれに関連するエレクトロニクスが継続的な熱損傷を受けずにどの程度放散できるかということになります。この要因により、印可できるブレーキの電流の強度と時間が制限されます。DC注入ブレーキが、負荷の抑制やフェイルセーフブレーキシステムの保護に使用されることがほとんどないのも理由があったわけです。ゼロ速度センサを使用して、ローターが回転を停止したことが判明し次第電力をカットすれば、一部のDC注入システムにおける過熱を防止することができます。

回生ブレーキ、DC注入ブレーキ、ダイナミックブレーキ(または、その組み合わせ)の選択

設計者の多くは、通常の操作のいずれかまたは複数において、回生電力の効率性を利用することができます。ただし、自動化された機械における回生ブレーキが最も有用なのは、特定のモータ駆動軸においてです。

ダイナミックブレーキ(コスト効率の良いブレーキ抵抗器を基盤とする)は、ブレーキや反転が時折必要とされる、低デューティの自動化された軸に最適です。

回生ブレーキは、以下のような動作を必要とする自動化された軸に適しています。

  • 頻繁な停止と始動
  • ローターの回転数がモータの速度を超える原因となるオーバーホール負荷(エレベーターやインラインコンベヤなど)の作動
  • 負荷が継続的である用途(継続的な負荷と見なされるのに十分な頻度の稼働が必要な用途を含む)
  • エネルギー節約が回生ドライブの初期費用を相殺できるシステム

上記で説明したとおり、DC注入ブレーキは単独で利用することができます。ただし、DC注入ブレーキは、回生ブレーキやダイナミックブレーキと組み合わせられることの方が一般的です。これは、DC注入ブレーキでは、回生ブレーキが減衰した際に軸がほぼ停止し、保持されることが必要となった場合にブレーキ機能が期待されるためです。このようなデュアルシステムブレーキの仕組みでは、極めて高性能な電子ブレーキのために複数の技術の長所が活用されており、過熱のリスクをほとんどなくすことができます。

回生ブレーキアプリケーションの例

回生ブレーキは、一連の動作による負荷を低速化し、制御すると当時に、それらの動作の運動エネルギーを別のシステムで利用するための優れたアプローチです。エネルギー効率に対する注目が高まっていることから、設計エンジニアの間では、潜在的なエネルギー再生の最適な機会がある用途において回生ブレーキを採用する動きが進んでいます。このような設計には以下のようなものがあります。

  • リフト、クレーン、エレベーター向けの垂直軸:たとえば、持ち上げられた荷物を対重を回避して降ろすには、安全かつ制御された下降のために、重力やモータのトルクが関係する。こうした状況では、主電力がカットされている場合でもブレーキシステムが機能することが重要。そうしないと、運動エネルギーの放出先がなくなるため、軸では自由落下または暴走の状態が発生する。また、バックアップまたは緊急用の発生器(独自の設計要件がある)を使用することもできる。発生器の電力を切り替える場合、多くのシステムでは一時期にドライブのエネルギー再利用機能が無効化される
  • 回転遠心分離機、テストスタンド、ファン:こうした設計には、前述した外付けアドオンのブレーキ抵抗器を必要とする、定デューティサイクル軸が多い
  • ウェブ張力付加およびウェブ処理:この場合は、AC誘導モータ(回生ブレーキのVFD機能と組み合わせられる)が一般的。これは、このようなモーションの設計では、印刷機の高速な高慣性軸および紙およびプラスチックのスプール処理が必要となるためである。
  • 軸の素早い加速および反転:回生ブレーキは、高性能のコンベヤ、鋸、重工業用ロボティクスなどにおけるこうしたモーションの効率を向上させるのに役立つ。これらは、ローターの速度およびトルクを、アプリケーションの需要に適合させることによってVFDベースのオペレーションの効果を高め、サーボアプリケーションで極めて一般的に使用される高回転軸を素早く停止させることができる

Panasonicのサーボドライブの図図5:Panasonicのサーボドライブでは、高度な技術が50W~5kWの広範なパワーレンジと組み合わせられている。このドライブは、共振周波数の振動を抑制し、パルス、アナログ、ネットワークベースの制御を100Mビット/秒の速度で実行する。FPWIN Pro7ソフトウェアを使用することにより、完全な構成とPLCコネクティビティのセットアップができる。このサーボドライブでは、オプションでブレーキ抵抗器の追加が可能(画像提供:Panasonic Industrial Automation Sales)

まとめ

特定の軸に適した技術を指定するには、DC注入ブレーキ、ダイナミックブレーキ、そして回生ブレーキの違いを理解することが重要です。また、これらの手段を利用することで、速度やトルクの制御に対応し、それを実現する電気モータおよびドライブ機能を選択するのにも役立ちます。ダイナミックブレーキは、一般に、ある程度のブレーキを必要とする中程度の要求の軸に非常に適しています。一方、回生ブレーキは、自動化された機械(サーボを含む)の非常に動的な軸や重要な機能を補完します。これらの手法と組み合わせて採用されることが非常に多いのが、電流注入用のシステムです。

DigiKey logo

免責条項:このウェブサイト上で、さまざまな著者および/またはフォーラム参加者によって表明された意見、信念や視点は、DigiKeyの意見、信念および視点またはDigiKeyの公式な方針を必ずしも反映するものではありません。

著者について

Image of Lisa Eitel

Lisa Eitel(リサ・アイテル)氏

Lisa Eitel氏は、2001年からモーション制御業界で働いています。彼女が注力する分野には、モータ、ドライブ、モーション制御、動力伝達、リニアモーション、センシングおよびフィードバックテクノロジが含まれます。彼女は機械工学の理学士号を取得しています。Tau Beta Pi工学名誉協会(全米最古の工学名誉協会)の新参会員であるほか、女性エンジニア協会会員、FIRST Robotics Buckeye Regionalsの審査員を務めています。motioncontroltips.comへの寄稿に加え、Lisaは業界誌Design Worldで四半期ごとにモーション制御問題の制作も指揮しています。

出版者について

DigiKeyの北米担当編集者