安全インターロックに関する基礎知識

著者 Lisa Eitel(リサ・アイテル)氏

DigiKeyの北米担当編集者の提供

工場労働者の安全を守るには、機械が及ぼす危害・脅威から労働者の身体を保護する必要があります。安全工学のこのような分野は、産業リスク低減と呼ばれます。地域の法律と産業規格では、機械の危険な始動を防ぎ、人に危害を与える新たなリスクが発生した場合には安全にシャットダウンされるよう、自動化装置にさまざまな機械的安全機能を搭載すべきことが法的に義務付けられています。これらの安全システムの基礎となるのは、機械の周囲に明確に定義された境界(線)と、安全装置または機械保護用の部品です。

安全装置という言葉は、いくつかの文献では何気なく使われていますが、国際標準化機構(ISO)の規格や、増え続けるオートメーションコンポーネントサプライヤでは、安全装置を非常に具体的に定義しています。これらの権威ある業界筋は一般に、安全装置を、危険な可能性のある機器部分を囲む、以下のある部品やサブシステムに限定しています。

  • シートメタルハウジングと金網のフェンスまたはガラス製フェンス
  • スライドガラスパネル、ドア、スイングゲート
  • センサと光カーテン
  • その他の電子・物理設計の特殊バリアコンポーネント
  • 安全インターロック - これが本稿の焦点です。

防護対象の機械の境界はほとんどが固定された要素で構成されていますが、前述の可動セクションや貫通可能なセクション(ウィンドウシールド、カーテン、ドアなど)は、機械の手入れ、調整、点検のために、オペレータが要所要所にアクセスできるようにすることが可能です。これらの安全部品を簡単に分類する方法は、機械オペレータや他の工場関係者がその安全部品に直接物理的に接触する(光カーテンなどを使って)かどうか、または中間にある機械サブセクションがその安全部品に接するかどうかに基づいてグループ化することです。そのような機械サブセクションとしては、機械で作動する安全スイッチおよびセンサ、ならびにインターロックなどがあります。

画像:機械を始動する前にドアが閉まっていることを確認するリミットスイッチ図1:このマシンの各ドアに付いているリミットスイッチは、機械を始動する前にドアが閉じていることを確認します。(画像提供:Getty Images)

では、インターロックとはいったい何でしょうか?インターロックとは、機械的、電気的、または電気機械的な安全部品であり、その中核は近接スイッチまたは位置スイッチです。必ず、機械室内の可動式(貫通式)ゲートに設置されます。インターロックは、安全カーテンやオペレータスイッチとは異なり、可動式の機械や境界セクションの動きによって作動するものです。ただし、念のために申し上げておくと、安全インターロックは、境界セクションが作動した場合にも、あるいは手動で開かれた場合にも作動することがあります。安全インターロックの名称は、許可される安全コントローラの条件と境界ゲートの位置(開いている、閉じている、またはその中間かは問わない)をインター(相互に)ロックする(相互依存させる)ことに由来しています。つまり、インターロックとは、安全コントローラにフィードバックを与え、その結果、機械のガードの位置が決まれば正しい機械の状態を引き出すためのものです。

インターロックの搭載を規定した規格

画像:インターロックスイッチはさまざまな方向に対応できる(クリックして拡大)図2:インターロックスイッチはさまざまな方向に対応できます。国際安全規格では、インターロックはこのようなバリエーションに分類されています。(画像提供:Design World

現在、産業用オートメーションアプリケーションのインターロックを設計・統合するには、Conformitè Europëenne(CE)機械指令2006/42/ECを含む5つの規格すべてに適合する必要があります。ISO 12100(および採用されたISO 14119の節)では、インターロックを「保護区域へのゲートが開いているときに危険な機械操作を防止する装置」と定義しています。ガードロックロックゲートスイッチと呼ばれるインターロックは、さらに一歩進んだ、閉じられたゲートをラッチするためのものです。危険な作業室に閉じ込められた技師向けの脱出用ラッチを備えていることが要求されるなど、独自の要件に適合することが求められるのです。

一部の規格では、すべてのインターロックの中核にある位置スイッチや近接スイッチの技術に言及しています。また、電子的に作動する作業セルガードセクションが機器コントローラとどのようにネットワーク化するかに関する要件についても概説しています。この要件は通常、危険な可能性のある動作を減速または停止するように命令するためのものです。

機械が停止するまでの時間を見込む機能

最も信頼性の高いインターロックは、特定の軸停止間隔(定義:停止コマンドを発行してから、機械が安全な状態まで減速するまでにかかる時間)を見込んでいるものです。実際には、インターロックシステムは、この停止間隔だけでなく、停止コマンドが出されてから機械オペレータが危険な軸に到達する可能性が生じるまでの時間をも見込んでいます。インターロックの設置を最適化すると、以下が行われます。

  • オペレータが危険な機械軸に触れたり近づいたりしかねなくなるよりもずっと前に、安全な状態を必ず実現
  • ロックダウン状態が長くなりすぎないようにすることで、機械の効率的な使用を実現

実際、ISO 12100では、インターロックで防護されたドアとパネルが、閉じた状態から、機械の動作を即座に再開する方法について詳しく規定しています。これに対し、緊急停止の場合は、より複雑な機械再始動シーケンスが必要となります。そのような規格のロジックは、インターロックの使用は定常業務の一部である(したがって、毎日の操作を妨げるべきではない)のに対し、緊急停止の使用はそうではないからというものです。

インターロックの中核技術と破壊可能性

自動化対象とする機械は、タイプA、B、場合によってはCの国際的安全要件を満たす必要があります。機能安全規格ISO 12100-1および、その他の、基礎となるタイプAの規格は、すべてのオートメーション機器に適用されます。ISO 12100に適合する電子コントローラが、電力源のメンテナンスが要求される状況を回避するには、予期しない機械の再始動を防ぐ必要があります。この目的を実現するのに許容できる解決策は、決して緊急停止でなく、むしろキーのインターロックです。

タイプBミッドレンジ規格としては、B1安全アプローチ規格(ISO 13849-1および62061を含む)と特定のB2安全システム要件(ISO 13850および13851を含む)があります。一方、タイプCは機械の種類に特異的な規格のため特に厳しいものであり、OEMが新規に機器を設計する際に最も多く採用されています。

インターロック固有の規格としては、ISO 14118 & 14119があります。

ISO 4118は、オペレータが機械の危険な作業スペースに入ったときに、(機械の電力を消費および切断することによって)機械の予期しない始動を防止する方法を詳しく規定しています。そのようなシステムで行うのは、電源の切断、モータの停止、流体動力アクチュエータの解放、機械の可動部分に残っている運動エネルギーの消費です。

ISO 14119は、この記事で言及している他の規格とは異なり、ガードのインターロックで要求される細目を次の方法で実現しています。

  • 他の安全規格のリスク分析手法を参考にする
  • 偶発的・意図的な安全対策破りを防止するインターロック機能を定義する

ISO 14119では、タイプ1のインターロックは、簡単に破壊できる機械的なヒンジやカムによる作動を用いた位置スイッチと定義されています。交換可能な(暗号化されていない)「半分」(後述)同士の間で、作動接触が発生します。タイプ1のインターロックの利点は、低コストと高い構成可能性です。

タイプ2のインターロック(DIN EN 1088で最初に規定されたインターロック)には、電力源のメンテナンスが要求される状況を回避することが難しい、機械的作動に基づく位置スイッチが搭載されています。前述の「半分」とは、暗号化され(て対になっ)たタングまたは(安全ガードロックの場合)トラップドキーのことです。トラップドキーは、コントローラが機械の始動を許可する前にオペレータがすべてのガードをロックするように強制します。キーの取り外しは、ガードがラッチされているときだけ可能です。完全に統合された境界コントローラの場合、オペレータへの強制ではさらに、キー付きHMI始動スイッチにおいて同じキーを使用することで、機械操作中にそのキーを保持するよう求めます。

ISO 14119では、暗号化された作動が行われない非接触式安全スイッチはすべてタイプ3のインターロックとして分類されています。最も簡単に破壊できるのは、光学、超音波、または静電容量式の作動を用いたインターロックです。誘導式や磁気式のインターロックはやや破壊しにくくなっています。破壊される可能性があることを受け入れがたい場合には、(RFID、磁気、光学技術のいずれをベースににしているかを問わず)、非接触操作で一致したか暗号化されたアクチュエータ同士を使用するタイプ4のインターロックが必要となります。

安全センサ搭載インターロックと境界スイッチ搭載インターロックとの比較

画像:ソフトタッチ静電容量式フィンガースイッチ図3:危険な機械加工の再開は、ガードインターロックが閉じただけでは行われず、次に示すソフトタッチの静電容量式フィンガースイッチのような、独立した二重機能付き制御インターロックまたは始動スイッチによって行われます。(画像提供:Getty Images)

画像:二重機能付きインターロックは、ガードロックとして機能するアクチュエータを搭載しています。図4:一部の二重機能付きインターロックは、ガードロックとして機能するアクチュエータを搭載しています。このインターロックは、デッドボルトや電磁アセンブリを備えた位置スイッチであり、防護されたロボットアームや機械が危険な動きをやめるまで、ドアを締めておくことができます。「インターロックはすべてガードロック式だ」と勘違いしている技術者がいるのは残念です。(画像提供:Omron

インターロックは、同じ中核技術を使用した他の安全定格フィードバック & センシング部品と類似しています。しかし、念のために申し上げておくと、それら他の部品は、インターロックのような機械の境界に関連するものではありません。また、現在の安全規格では、インターロックは何らかの修正・反転処理を経なければ、動作を再開させることはできないことになっています。

産業用安全センサとして提供されている部品は、(通常、非接触の誘導性または光電性の手段を介して)機械要素や加工物の位置を確認し、報告された条件に適した応答をコントローラが指示します。これに対し、産業用安全スイッチは、機械要素や加工物の位置を検知して電源をリセットするものです。このスイッチは、再開位置を確認すると、該当する機械セクションへの電力供給を停止または再開するよう求めてきます。一般的な近接スイッチをインターロックとして使用するだけでは、もはや十分ではなくなりました。というのも、IEC 60947の要件では、インターロックとして使用される部品には、破壊やその他の不具合を防ぐための非常に特異な安全関連機能が要求されるようになったからです。

また、安全システムには、電気(電力)接点を直接開閉するリレーもあり、最も一般的な配置では、小さな指令電圧を前方に伝達し、指令した電力接点に大きな電流を最終的に流すようになっています。インターロックが相互依存性をもたらす2つの代表的な機能である、工作機械におけるモータ駆動スピンドル開始と防護ドア開放について考えてみましょう。これらの機能同士を相互依存させることで、フライス盤が自身のサブシステムを損傷したり、オペレータが怪我をしたりする可能性は低くなります。この点で、インターロックは動作シーケンスにおいてスイッチの役割を担っているのです。

最もまれなのは、危険な機械の軸をロックするために、軸上でアームが旋回する機械的カム式インターロックです。より一般的なのは電気機械式や電子式のインターロックであり、コスト効率の良い安定性を実現し、再構成もできる回路やマイクロプロセッサを採用しています。その一例である、境界のドアに付いているヒンジ付き電気機械式インターロックには、ヒンジ付きガードと一緒に開く機械式エルボやレバーアームがあります。設定されたスイッチング角度を超えると、境界が設定された機械を停止させるコマンドがトリガされます。ドアは、再び閉じる際、自身の力により、最終的に、インターロックのソレノイドに回路を再び閉じるように要求します。

インターロックにおける代表的な配線とソレノイドの種類

画像:革新的な接続方法(クリックして拡大)図5:近年、革新的な接続方法が登場したことで、マルチガード設置の信頼性は向上の一途を辿っています。この図では、インターフェースモジュールが、Tアダプタネットワークを介して他の安全部品に接続されています。(画像提供:Banner Engineering

インターロックは、回路が閉じているときだけ機械が作動するように、NC(ノーマリクローズ)ロジック向けに配線されるのが最も一般的です。多くの安全規格では、エラーやイベントの検出の信頼性を最大限に高めるために、安全回路の部品を(許容されるセンサ総数まで)直列に配線することが求められています。このセンサ数を超えると、設計の性能レベル(PL)が低下し、故障時の自己回復が行われる可能性が高くなります。

安全インターロックは、スプリングで作動するNCスイッチ(位置スイッチとリミットスイッチのいずれも可)を一つ使用し、ガードを開くとインターロックのスプリングが圧迫されて電気接点が離れる、積極的な遮断を通常行います。これに対し、より信頼性の高いツインスイッチインターロックは、ガードが開いたときに作動するスイッチと、ガードが閉じたときに電気接点同士が離れて広がるスイッチを使い分けます。短絡の電子的自動報告(通常、2つの入力チャンネル間の電位差を監視することによる)は、せん断、腐食、過温度によるワイヤの切断を検出するための補完的な機能です。

プランジャとコイルで構成されるソレノイドの動作が安定しているため、ソレノイドを使用した安全部品は、生命に関わるインターロックアプリケーションに適しています。通常、電気的な入力により、リニアプランジャの出力が行われます(電源切断時にはスプリングリターンが行われます)。ソレノイドは、防護用およびデッドボルト用のインターロックに組み込むと、ラッチ機構の入力源となります。また、ソレノイドを使用した他のこのような設計でも、正しい機械的動作を保証することができます。たとえば、機器の取っ手や、ベルトに乗った加工物を扱う場合でも、コンベアが一定速度で走行することを保証します。ソレノイドを用いた冗長化(位置確認のための直列配線スイッチと二(重)極スイッチによる)により、インターロック信号の誤送信を最小限に抑えることができます。

まとめ

インターロックは、機械の境界の状態を安全コントローラと相互に依存させます。実際、このようなコントローラへの今日のインターロックのフィードバックにより、機械のさまざまなドア開閉位置に対する非常に高度な機械応答を行うことができます。最も高度なインターロックは、従来の産業用スイッチやセンサの能力を超える安定した作業、フェイルセーフエッジコンピューティング、およびIIoTで使用することができます。ただし、主な注意点は、ガードのインターロックが機械のオペレータにとって扱いにくいものであってはならないということです。最も頻繁にアクセスされる防護ドアの自動機能と条件付きロック解除により、検出されない故障を最小限に抑え、機能性を向上させることができます。

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著者について

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Lisa Eitel(リサ・アイテル)氏

Lisa Eitel氏は、2001年からモーション制御業界で働いています。彼女が注力する分野には、モータ、ドライブ、モーション制御、動力伝達、リニアモーション、センシングおよびフィードバックテクノロジが含まれます。彼女は機械工学の理学士号を取得しています。Tau Beta Pi工学名誉協会(全米最古の工学名誉協会)の新参会員であるほか、女性エンジニア協会会員、FIRST Robotics Buckeye Regionalsの審査員を務めています。motioncontroltips.comへの寄稿に加え、Lisaは業界誌Design Worldで四半期ごとにモーション制御問題の制作も指揮しています。

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