米国製の大容量・超薄型コンデンサを使用して、基板サイズと市場投入までの時間を短縮
DigiKeyの北米担当編集者の提供
2022-02-01
ハードウェア設計技術者は、部品のコスト、サイズ、重量を削減しつつ、部品やシステムの効率性や信頼性の目標を満たす、あるいは上回る可能性を常に探しています。最適化のために最も一般的で重要な部品の1つは、大量かつ広範囲に使用されているプリント基板実装型コンデンサです。また、極端な温度環境下では、リークや容量の経年劣化が起こりやすいため、コンデンサを選定する際には信頼性も考慮する必要があります。この劣化により、回路が断続的に故障し、システムの効率や信頼性が損なわれることがあります。
コンデンサのサプライヤは、エネルギー密度、信頼性、重量を向上させるために設計を改良し続けていますが、サプライチェーンの問題による長いリードタイムのために、アプリケーションに最適な部品が入手できない場合があります。
この記事では、フィルタコンデンサとバルクストレージコンデンサの役割について説明します。また、単一のコンデンサによって各種面実装コンデンサなど、他の種類のコンデンサをどのように置き換えるかを示します。それにより、基板部品や回路の相互接続が少なくなり、回路全体の信頼性が向上します。その途中では、薄型と非常に高いエネルギー密度という2つの利点を備えた、信頼性の高いCornell Dubilier Electronicsのアルミ電解コンデンサを紹介します。米国で製造されたこのコンデンサは、北米の各生産拠点への迅速な出荷が可能なため、リードタイム短縮への道も開きます。
基板実装型コンデンサの信頼性
電解コンデンサの寿命は、内部構造の電気化学的な経年劣化の速度で決まります。この劣化は一般的な動作条件で予測可能なため、メーカーはコンデンサの機能的な寿命を容易に算出することができます。コンデンサの信頼性とは、構造上のばらつきや極端な条件にさらされた場合に、コンデンサの実際の寿命が期待される寿命にどれだけ近いかを示すものです。
大型コンデンサと小型コンデンサの消耗寿命はほぼ同じですが、小型コンデンサは陽極表面と陰極表面の間の表面積が少ないため、より信頼性が高くなります。コンデンサが大きくなればなるほど、入手しやすさだけでなく、信頼性も選択の要因になります。この記事の執筆時点では、電子部品のサプライチェーンに問題があり、多くの国際貨物に遅延が生じています。そのため、電子部品を選択する際には、入手可能性とリードタイムが重要な基準となっています。
コンデンサは、多くの半導体に一般的なサイズ最適化の対象ではないため、プロセスジオメトリを縮小してもコンデンサのサイズを小型化することはできません。コンデンサ設計の物理学上、コンデンサの定格値(F)が大きいほど、陽極と陰極の間の表面積が大きくなり、物理的サイズが大きくなります。Vチップとも呼ばれる垂直実装タイプのコンデンサは、基板面積を節約するための一般的なパッケージオプションですが、その代償として、基板が厚くなり、クリアランスが狭くなるため、周辺部品のパッケージ選択に影響を与えます。
また、大型アルミ電解コンデンサの取り付け位置も信頼性に影響します。大型コンデンサは熱を持ちやすく、条件によっては空気流やヒートシンクが必要になることもあります。DC電圧印加、リップル電流、極端な周囲温度などにより、パラメトリックドリフトが発生し、動作寿命が短くなります。通常、コンデンサの実効直列抵抗(ESR)は、データシートの仕様から最初に逸脱するパラメータです。ESRが上昇すると、コンデンサの温度が次第に上昇します。最終的には、高温になって内部構造が破壊され、陽極と陰極が実質的に短絡することで故障します。ごくまれに、熱でコンデンサが乾燥してしまい、オープン回路になってしまうことがあります。
システムにおけるコンデンサの劣化は、まずランダムな故障として現れ、コンデンサが短絡するとすぐにシステムの故障につながります。この問題は、直列または並列に接続されたコンデンサのバンクに対して増幅され、1つのコンデンサが故障すると、バンク全体が故障します。バンクの故障率は1個のコンデンサの故障率にバンク内のコンデンサの数を乗じたものになるため、コンデンサバンクはシステムの信頼性を低下させます。このため、信頼性の高い設計では、コンデンサバンクではなく、1つの大きなコンデンサを使用することが推奨されています。
高信頼性、高密度のコンデンサ
Cornell Dubilierは、スペースが限られた高信頼性アプリケーション向けに、THAおよびTHAS Thinpackアルミ電解コンデンサを提供しています。このコンデンサは薄型・低背のパッケージで非常に高いエネルギー密度を実現するように設計され、電解コンデンサを囲むようにレーザー溶接されたケースによって液漏れを防止しています。このレーザー溶接により、多くの電解コンデンサの端部を密閉するために広く使用されている大型エンドシールガスケットが不要になります。ケース内のバルブでガスを抜き、内圧を下げることで膨張を抑えられます。THAラインの厚さは8.2mm、THASラインの厚さは9mmです。THAコンデンサは85℃で5,000時間、THASコンデンサは105℃で5,000時間の動作を保証する設計となっています。エネルギー密度は0.9J/cm3です。
フィルタリングおよびモータ制御の多くのアプリケーションに対し、THAS131M450AD0C THASシリーズ130μFコンデンサを使用することができます(図1)。このコンデンサの長さは66.5mm、幅はわずか25.4mmです。前述のように、THASシリーズのコンデンサは厚さがわずか9mmのため、取り付け後も非常に薄型のプリント基板を実現します。このシリーズの定格電圧は450Vで、モータ制御アプリケーションや小型電源に適しています。このシリーズは非常にスリムなため、部品のヘッドルームが厳しく制限されているノートパソコンなどの薄型電子機器にも適しています。また、同種のコンデンサと比較して、プリント基板上に垂直に実装できるため、省スペース化も図れます。
図1:THAS131M450AD0C 130µFコンデンサは、定格電圧が450Vで、厚さがわずか9mmのため、モータ制御や薄型プリント基板のアプリケーションに適しています。(画像提供:Cornell Dubilier)
130μFのTHAS131M450AD0Cは、小型コンデンサのバンクを置き換えて信頼性を向上させるために使用できます。THAS131M450AD0Cの25℃におけるESRは、120Hzで1.12Ωです。20kHzでは0.54Ωまで低下します。ESRが低いため、熱発生を最小限に抑える必要のあるスイッチング電源に適しています。85℃でのリップル電流は定格1.36A定格で、これは電源にとっても重要です。
Cornell DubilierのTHAS製品ファミリの一部であるTHAS131M450AD0Cコンデンサは、耐久性に優れたステンレス鋼スリーブを採用しています。端子は20AWGで、ほとんどのスルーホールプリント基板実装アプリケーションに適しています。
短時間で電圧を蓄える必要があるアプリケーションの場合、設計者はTHAS322M050AD0C THASシリーズ3200μF 50Vコンデンサを使用できます。また、このコンデンサの長さは66.5mm、厚さは9mmで、ステンレス鋼スリーブを採用しています。120HzでのESRは0.05Ωで、20kHzでは0.04Ωまでわずかに低下します。また、20kHzで3.48A、20Hzで2.90Aのリップル電流に対応します。低ESRと高電流能力を備えたこのコンデンサは、主電源が使用できない状況において、小型回路に一時的に電力供給する50Vスーパーキャパシタとして使用するのに適しています。
Cornell Dubilierが提供する他のTHASコンデンサと同様に、THAS322M050AD0Cにも上部に通気孔があり、図2にはっきりと示されています。高温下ではガスの発生が増加することがありますが、この通気孔により、通常動作の一部としてコンデンサからガスが排出されます。排出されるガスは、水素と廃ガスの混合物です。
図2:THAS322M050AD0Cコンデンサの上部に見える通気孔により、通常の動作で蓄積される内部ガスを安全に排出することができます。(画像提供:Cornell Dubilier)
特に高付加価値コンデンサでは、内部のガスを排出することが重要です。スチール製ケーシング内には水素などのガスが蓄積し、圧力が高まって故障の原因になります。コンデンサの通気性が不十分になると、内部にガスが蓄積され、電解液がプリント基板上に漏れ出して他の電子機器を短絡させたり、場合によってはコンデンサが爆発したりすることもあります。ただし、プリント基板をレイアウトする際には、コンデンサの通気孔に障害物がないかどうかを確認することが重要です。
より多くの充電容量を実現するために、Cornell DubilierはTHAシリーズを開発しました。THA Thinpackコンデンサは、アルミスリーブを採用し、THASシリーズよりも若干薄型の厚さ8.2mmに仕上げています。THAシリーズの例としては、4400μF 50VのTHA442M035AC0Cが挙げられます。長さは53.8mmで、同種のコンデンサに比べて非常に高いエネルギー密度を実現しています。ESRは120Hzで0.07Ω、20kHzで0.06Ωとなっており、短時間の電源遮断時に小型電子機器の一時的な電源として使用するのに適しています。また、4400µFのコンデンサは非常に高温になるため、十分な空気流を確保して、-55℃~+85℃の推奨動作範囲を維持することが重要です。大容量のコンデンサの場合は、通気孔に障害物がないかどうかを確認することがさらに重要になります。また、水素ガスは爆発性があるため、通気孔が可燃性のものに向かないようにすることをお勧めします。
まとめ
コンデンサは、電子システムにおいて重要な部品です。設計者は高信頼性、高エネルギー密度、薄型化を組み合わせることで、電子システムのサイズを縮小し、動作寿命を向上させることができます。エネルギー密度の高い米国製の電解コンデンサを1個使用することで、長いリードタイムを回避し、コンデンサのバンクを置き換えて基板スペースを節約することができます。
リソース
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