複数の同時Ethernetプロトコルに単一のフィールドバスケーブルを使用する方法
DigiKeyの北米担当編集者の提供
2023-11-28
加速するインダストリ4.0と産業用モノのインターネット(IIoT)への移行により、データ収集とコネクティビティの必要性が生じる結果、分析を行って生産性と安全性を向上させることが可能になります。しかし、工場全体の水平・垂直方向のデータ収集と転送は、特に複数のネットワークや過酷な環境が関係する場合、複雑になってコストがかかる可能性があります。設計者は、異なるベンダーの複数のプログラム可能ロジックコントローラ(PLC)、センサ、アクチュエータとデータを交換でき、異なるプロトコルと最小限の配線を使用して、産業用ネットワークを効率的に設計、展開、管理する方法を必要としています。
これは、単一のEthernetケーブル上で複数のプロトコルを処理できる、統合化および最適化された分散入出力(I/O)プラットフォームを使用することで実現できます。また、そのようなシステムにより、産業用ネットワークのオペレータは、使用するPLCにかかわらず単一のI/Oプラットフォームで標準化することにより、サービス要件を簡素化し、スペアパーツの在庫を削減することができます。
この記事では、インダストリ4.0ネットワークについて簡単に考察します。そして、過酷な環境下の単一ケーブルで複数のEthernetフィールドバスに対応するSiemensのI/Oプラットフォームを紹介し、インダストリ4.0の設計者のニーズを満たすためにどのように使用できるかを示します。
Ethernetプロトコル
インダストリ4.0の展開には、さまざまな通信ニーズがあります。PROFINET、EtherNet/IP、Modbus TCPというの3つの主要フィールドバスプロトコルはそれぞれ、工場現場でのオペレーションテクノロジー(OT)から情報技術(IT)まで、異なるユースケースをサポートします。
PROFINET:これは、PLCのようなコントローラとデバイスの間のデータ交換に使用される決定論的な高性能プロトコルです。高速モーションコントロールアプリケーションを含むリアルタイムおよびセーフティクリティカルな機能に適しています。また、OT/IT機能の統合にも使用されます。
EtherNet/IP:これは標準Ethernetプロトコルを使用するため、Ethernetデバイスへの実装が容易です。共通産業プロトコル(CIP)は、産業用オートメーションアプリケーション向けに最適化されており、EtherNet/IPを含むネットワークテクノロジーをサポートします。EtherNet/IPは、フィールドレベルからITシステムへのデータ交換にも使用できます。
Modbus TCP:これはTCP/IPベースのプロトコルで、エネルギー消費量や環境データ収集のようなタイムクリティカルでない機能および、フィールドレベルとITシステムの間のデータ交換に有用です。
3つのフィールドバスにはそれぞれ特定の目的があることを考えると、3つとも必要になります。そのため、複雑な通信の課題が生じ、マルチフィールドバスシステムの出番となります。マルチフィールドバス通信コントローラはフィールドレベルと制御レベルの間に位置し、単一ネットワークケーブルで異なるプロトコルを使用して複数のコントローラと同時に通信します(図1)。マルチフィールドバスデバイスは、保護された制御キャビネット内部から工場現場の外や遠隔地の屋外まで、さまざまな環境で使用されています。
図1:マルチフィールドバス通信コントローラはフィールドレベルと制御レベルの間に位置し、インダストリ4.0の包括的なコネクティビティと通信を促進します。(画像提供:Siemens)
多様な環境
環境の多様化により、IP20~IP67のさまざまな保護等級(IP)定格のデバイスが必要とされています。IP定格システムは、国際電気標準会議(IEC)規格60529に具体化されており、埃や液体の侵入に対するエンクロージャの保護能力および、密閉されたシステムの危険な部分に指、工具、さまざまなサイズの固形物などがどれだけ容易に侵入できるかに基づいてデバイスを評価しています。IPコードは2桁の数字で構成されます。1桁目の数字は、固形物に対する保護性能を示し、0(保護性能なし)~6(埃の侵入なし)で評価されます。2桁目の数字は、液体に対する保護性能を示し、0(保護性能なし)~9(さまざまな角度から高圧の熱水に対する保護性能あり)で評価されます。
たとえば、IP20定格のデバイスは、制御キャビネットや同様の環境内で有用です。数字の2は指などの12.5mmを超える粒子からの保護を示し、0は水の浸入に対する保護がないことを示します。
より厳しい環境の場合、標準的なIP定格にはIP65、IP67、IP69Kなどがあり、6は密閉された完全防塵のエンクロージャを示します。これらのIP定格は、水に対する保護が異なります。
- IP65は、ノズル(6.3mm)からエンクロージャに対してあらゆる方向から噴射される水が有害な影響を及ぼさないことを示します。
- IP67は、エンクロージャが最大深度1mの水に浸かった場合でも、有害な量の水が浸入しないことを示します。
- IP69Kは、道路車両に使用する装置向けで、高圧・高温の洗浄に適用されます。
マルチフィールドバスプラットフォーム
SiemensのSIMATIC ET 200 I/Oマルチフィールドバスプラットフォームとインターフェースモジュールは、PROFINET、EtherNet/IP、Modbus TCPのプロトコルを使用し、同じケーブルで複数のコントローラとのデータ交換を同時に行えます。通信プロトコルは、ハードウェアを変更することなく、すべてソフトウェアで設定できます。マルチフィールドバス搭載の完全なSIMATIC ET 200 I/Oプラットフォームには、制御キャビネットで使用するIP20定格のモジュール、機械で使用する屋内用のIP65およびIP67定格のモジュールおよび、屋外用のIP69K定格のモジュールも含まれます(図2)。
図2:SIMATIC ET 200 I/Oマルチフィールドバスプラットフォームには、複数のデバイスファミリが含まれ、制御キャビネット、屋内の機械、屋外でのインダストリ4.0をサポートします。(画像:Siemens)
このシステムは、異なるフィールドバスプロトコルを使用し、最大6台のPLCとの同時通信をサポートします。また、IO-Link、Profibus、ポイントツーポイント(PtP)、コントローラエリアネットワーク(CAN)、アクチュエータセンサインターフェース(Asi)、デジタル調光照明インターフェース(DALI)、デジタルマルチプレクサDMX512用のモジュールもあります。標準I/OとフェイルセーフI/Oは、1つのステーションで混在させることができます。
このシステムの多機能なモジュラーアーキテクチャは、インダストリ4.0ファクトリの特徴であるマスカスタマイゼーションをサポートします。プッシュイン式端子によって迅速な配線が可能で、計数、エネルギーモニタリング、モータスタータ、位置入力、サーボドライブ、温度センシング、時間ベースのI/O、さらには電気自動車の充電など、さまざまな機能に対応したモジュールが用意されています。多くのモジュールはPROFIenergyをサポートしています。これはPROFINET通信プロトコルのプロファイルで、産業用オートメーションデバイスの電源管理を可能にします。
SIMATIC ET 200SPは、多彩なモジュールを搭載した多機能で拡張性の高い分散I/Oシステムです。たとえば、モデル6ES71556MU000CN0は、制御キャビネット内で使用するための2ポートインターフェースモジュールです(図3)。モデル6ES71936BP000BA0は、機械の横にある小型制御ボックスに設置するために設計された、特にフットプリントが小さいSIMATIC ET 200SPベースユニットです。両方とも、IP20定格と-30°C~+60°Cの動作温度範囲を備えています。
図3:6ES71556MU000CN0は、制御キャビネット内で使用する2ポートインターフェースモジュールです。(画像提供:Siemens)
アセンブリライン用の耐振動モジュール
SIMATIC ET 200ALは、自動アセンブリラインや半自動アセンブリラインのようなモーションを伴うアプリケーション向けに最適化されています(図4)。これらのモジュールは、連続5g、最大10gまでの振動に対応します。IP65/67定格、動作温度範囲-25℃~+55℃、小型・軽量設計であるため、機械の分散制御アプリケーションに適しています。モジュール幅は30mmまたは45mmで、1ステーションあたり最大32モジュールをサポートします。これらは、モジュールに応じてM8またはM12コネクタを使用したセンサとアクチュエータの統合をサポートします。また、PROFIenergy機能も備えています。
図4:ET 200ALモジュール(右下隅)は、モーションを伴うアプリケーション向けに最適化されており、最大5gの連続的な振動に対応します。(画像提供:Siemens)
ET 200ALモジュールの例としては、以下のものがあります。
- 6ES71415BF000BA0は、8つのデジタル入力と、近接センサやスイッチを接続するためのM8ソケットを備えています。寸法は30mm x 159mmです。
- 6ES71445KD500BA0は、8つのアナログ入力と、接続用のM12ソケットを備えています。測定タイプは、電圧、電流(2線式および4線式トランスデューサ)、抵抗(2線式および3線式トランスデューサ)、抵抗温度計検出器(2線式および3線式接続)などを各チャンネルにプログラムできます。解像度は16ビットで、寸法は30mm x 159mmです。
機械取り付け用のIP65/67定格モジュール
SIMATIC ET 200proモジュールは、IP65/67定格を備え、制御キャビネットの外側で機械に直接取り付けるように設計されています。これらのモジュールはワイヤレス接続を備えているため、無人搬送車システム、ビル管理、倉庫物流、電気モノレールシステムなどのアプリケーションで使用するのに適しています。このファミリはホットスワップが可能で、中央処理装置(CPU)モジュール、インターフェースモジュール、I/Oモジュール、機能モジュールが含まれます。
ET 200proシリーズには、IO-LinkやRFID(電波による個体識別)などのさまざまな機能が搭載されています。モータスタータモジュールは、最大5.5kWのモータと負荷の始動および保護に使用できます。また、安全度水準(SIL)3に対応したフェイルセーフバージョンもあります。周波数コンバータモジュールは、誘導モータの開ループまたは閉ループ制御に使用できます。6ES71444JF000AB0温度測定モジュールは柔軟性が高く、Pt100、PT200、PT500、Pt1000、NI100、NI200、NI500、NI1000などのさまざまな抵抗温度検出器(RTD)を使用するようにプログラムでき、温度は摂氏または華氏で出力できます。
屋外および危険領域用の機械取り付けモジュール
SIMATIC ET 200eco PNモジュールは、IP65およびIP67定格の小型ブロックI/Oで、キャビネットなしで機械に直接取り付けるのに適しています。他のET 200モジュールと同様に、PROFINET、Ethernet/IP、Modbus TCPをサポートしています。これらのモジュールは、完全に密閉された亜鉛ダイカストハウジングで提供され、振動、埃、油、湿度に対して耐性があるため、屋外設置に適しています。動作温度は-40℃~+60℃です。ET 200eco PNシリーズは、欧州連合(EU)の防爆(ATEX)指令の認証を受けており、ゾーン2までの危険領域で使用できます。
IO-Link V1.1仕様に準拠したデバイスでは、デバイスを交換する必要がある場合、「オートスタート機能」を使用して事前設定なしにデバイスとマスターのパラメータを自動的に転送することができます。たとえば、モジュール6ES71486JG000BB0は、IO-Link V1.1マスターデバイスとして動作し、4つのクラスA IO-Linkポートと4つのクラスB IO-Linkポートが混在しています(図5)。パラメータ割り当てに応じて、ポートはデジタル入力またはデジタル出力として機能します。このモジュールはIP67およびIP69K定格で、COM1では4.8kBd、COM2では38.4kBd、COM3では230.4kBdという3つの伝送レートをサポートします。
図5:SIMATIC ET 200eco PNモジュール(左)と典型的な設置例のクローズアップ(右)(画像提供:Siemens)
まとめ
インダストリ4.0ネットワークの展開は、複数の通信インターフェースとさまざまな動作環境を考慮しなければならない複雑な取り組みです。ファクトリネットワークを合理化するためにSiemensのSIMATIC ET 200マルチフィールドバスプラットフォームを使用すれば、PROFINET、EtherNet/IP、Modbus TCPのプロトコルを使用して、同じケーブルで最大6台のPLCと同時にデータ交換を行えます。
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