PLCのプログラミング:技術概要とSiemensの例

著者 Lisa Eitel(リサ・アイテル)氏

DigiKeyの北米担当編集者の提供

プログラマブルロジックコントローラ(PLC)は、マイクロプロセッサベースの堅牢な電子機器であり、以下のような現代のあらゆるオートメーションに不可欠なものです。

  • 石油ガス、原子力、製鉄、廃水処理など、プロセス系製造業/重工業
  • 一般的なファクトリーオートメーション、自動倉庫、パッケージング、食品飲料、医療機器製造など、ディスクリートタスクの制御に重点を置く産業分野

これらの産業の設備では、PLCの従来の設置場所は、PLCモジュール(ロジックの実行やコマンドの送出を行うCPUを搭載)とそれを補完する電源モジュール、アプリケーション固有機能モジュール、デジタル & アナログI/Oモジュールなどを搭載するスロットのある、DINレールマウントラックシステムまたは制御キャビネットラックシステムでした。

もちろん、オートメーション制御を行うための手段はPLCだけではありません。リレーベースシステムも、様々なアプリケーションで欠かせない存在であり続けています。たとえば、プログラマブルオートメーションコントローラ(PAC)や産業用PC(IPC)、パネルPC(制御用エレクトロニクス付きHMI)も、いろいろなレベルの分散制御を必要とする様々な機械設計や機械システムのオートメーションを行うための手段の一つとなっています。特に産業グレードのMicrosoft Windows OSを搭載したPACやIPCは、設計の自由度が最も高くなります。

これらの制御システムは、あらゆるタイプの制御設計をかつてないほど高度に、また使いやすくするために、様々な技術レベルで設定・プログラミングされています。これにより、OEMの機械メーカーやプラントエンジニアは、効率性、生産性、IIoTコネクティビティを最大限に高めたシステムの構築、アップグレード、移行を迅速に行うことができます。

PLCなどのコントローラをプログラミングするためのツール

画像:PLC & PACコントローラ用の統合ソフトウェア環境図1:PLCは専用ハードウェアの強み(含:信頼性)をすべて備えています。これに対して、PACは最高の柔軟性を備えています。サプライヤによっては、両タイプのコントローラを統一された同じソフトウェア環境でプログラミングできるようにしています。また、そのような環境では、デジタル化された自動化ツール、エンジニアリングツール、運用監視ツールに自由にアクセスすることも可能です。(画像提供:Siemens

現在、ほぼすべてのPLCは、PCベースのソフトウェアで設定・プログラミングされています。一般的なオートメーション製品やPLC製品だけでなくプログラム可能モーション制御/センシング/作動(アクチュエーション)/マシンインターフェイスコンポーネント製品を幅広く提供している大手ベンダーは通常、これらすべての製品を独自の統合プログラミング環境(設計、設定、プログラミング、さらには運用管理モジュールを備えたPCベースのWindows互換ソフトウェア)でプログラミングできるようにしています。このような傾向は特に、ベンダーがあらかじめ統合した製品(例:PLC機能を持たせたスマートモータやHMIなど)をラインアップしている場合に顕著です。

統合プログラミング環境は、習得しにくい反面、マスターできれば、機械設計を飛躍的にスピードアップさせます。

このようなソフトウェア環境の利点は、誤りがなく編集可能でどこにでも適用可能な、シンボル名、変数名、タグ名のデータベースを提供できることです。これらの名前は、PLCなどのコンポーネントのアドレスに付けた判読可能な英数字の名前であり、かつては複雑なレジスタアドレスを直接使うのが標準的だったのを改善したものです。これらのデバイスタグはソートや検索が可能ですが、これらのタグをさらに補完するものとして、機械や作業セルの情報タグや、Auto、Manual、MotorOn、Fault、Resetなどの一般的な機械機能向けのタグがあります。

SiemensのSTEP 7 Totally Integrated Automation(TIA Portal)ソフトウェアをご検討ください。このソフトウェアは、様々な用途に応じたパッケージを含んでおり、SiemensのSIMATIC (Siemens Automatic)ソフトウェア管理環境からアクセスすることができます。STEP 7は、世界で最も広く使用されている産業用オートメーションソフトウェアであり、機能性と信頼性も十分に検証されているため、STEP 7を例として利用し、PLCプログラミングの最も一般的なアプローチについてご説明します。SiemensのPLCは、全世界のPLC設置台数のほぼ3分の1に採用されていると、通常試算されています。

このソフトウェアにより、エンジニアはPLCなどの産業用コントローラの機能に関連したプロセス制御、ディスクリートオートメーション、エネルギー管理、HMI視覚化、またはシミュレーションとデジタルツインプログラムを開発することができます。PLCについては、Siemensの従来のSIMATIC STEP 7ソフトウェアから進化したSTEP 7(TIA Portal)エンジニアリングソフトウェアが、S7-1200、S7-1500、S7-1500コントローラ、さらにET 200SP I/O CPUやレガシーS7-300 CPU(業界の永遠の定番)、また、S7-400 / SIMATIC WinACコントローラをプログラミングできるようになりました。STEP 7のProfessionalグレード版および特別ライセンス版には、追加機能、ロジックエディタが含まれているほか、従来のエンジニアリングソフトウェアが統合されています。

多機能PLCに代わる産業用コントローラは、本稿の範囲外ではありますが、補完的なソフトウェアによって設定やプログラミングが可能であることは注目に値します。Siemensコントローラの広大なエコシステムに含まれている、そのような多数の例を以下に挙げます。

  1. LOGO!ロジックモジュールは、リレーとマイクロプロセッサベースの産業用コントローラの間のギャップを埋めなければならない、中小規模のオートメーションアプリケーションのニーズを満たします。ロジックモジュールのプログラミングに使用されるのは、Siemens LOGO!ソフトウェア、エンジニアリングソフトウェアSoft Comfort、LOGO!Access Tool、LOGO!Web Editorであり、これらによって設計および設定操作を簡単に行うことができます。
  2. プロセス制御システムには、SIMATIC PCS 7システムソフトウェアでプログラム可能なSiemensのSIMATIC PCS 7コントローラ製品が採用されています。
  3. IIoTコネクティビティが必要な分散コントローラ/機械向けのラック(レール)/パネル/ボックス型産業用PC(IPC)製品は、SiemensのSIMATIC IPCソフトウェアモジュール(含む:IPC Image and Partition Creator、IPC DiagMonitor、IPC Remote Manager、IPC FirmwareManager、SIMATIC Industrial OS)を使用しています。
  4. オンマシンコントローラ用パネルPCとしてのHMIには、SIMATIC WinCC Unified(TIA Portal)ソフトウェアをはじめ、WinCC flexible、WinCC V7、WinCC OA、プロセス診断ソフトウェアProAgent、モバイルデバイス用通知ソフトウェアなどが採用されています。

SIMATIC PLCとその他の機械コントローラのいずれを選択するかを簡単に決定できるようにしてくれるソフトウェアがあります。それは、クラウドベースのSelection Tool(電気品選定用オンラインツール)(またはそのオフライン版)であり、設計の物理的配置(制御盤と分散コントローラのどちらが必要かなど)と以下の項目についてエンジニアに尋ねるものです。

  • センサ、スイッチ、アクチュエータなど想定されるI/Oの数
  • 使用するプログラミング言語(例:ラダー図(LD)、構造化制御言語(SCL)、機能ブロック図(FBD)、より高度な構造化テキスト(ST)、グラフベースのシーケンシャルファンクションチャート(SFC)、コンティニュアスファンクションチャート(CFC)、さらにはより高度な言語)
  • 必要なモーション制御のレベル(該当する場合) — 単純な速度および位置制御から、電子カムや高度な運動制御まで
  • ハードウェアの好みや、IPC上で動作するソフトウェアPLCプログラムが最適かどうか

PLCプログラムプロジェクト

通常、プロジェクトには、PLCサプライヤのソフトウェアで作成したPLCプログラムが追加されます。これらのプログラムは、以下のようなアプリケーション固有の主要操作に関連しています。

  • 加熱、混合、充填、計量、注水
  • 移動、ステアリング、サイクリング、位置決め、制動
  • グリッピング(把持)、切断、パンチング(打ち抜き)、スライス
  • 溶接、接着、マーキング、分注
  • センシング、トラッキング、シーケンシング、表示

オートメーション制御を行うための最も先鋭的な手段では、デジタルプランニングと統合エンジニアリングがサポートされるとともに、HMIで簡単にアクセスできる透明性の高い操作が実現され、操作ごとにユーザー固有の画面が1つ表示されます。つまり、機械オペレータ、技術者、工場長、あるいは事務系管理者が持っている多様な情報ニーズに対応するために、PLCの適切な情報を別々のディスプレイに表示することができるのです。

また、PLCサプライヤのソフトウェア環境におけるシミュレーションツールは、製品の市場投入までの時間を短縮し、完成品のスループットを向上させることができます。さらに、エネルギー管理機能、診断機能など、ソフトウェアによる改善も行っています。

ソフトウェアで作成したプログラムによるPLCの検証およびロード

画像:SiemensのSIMATIC PLCとオートメーションシステム図2:SiemensのSIMATIC PLCとオートメーションシステムは、1950年代に初めて導入されました。現在では、SIMATIC S7製品(例:この図に示すSIMATIC S7-1500 PLCコンポーネント)は、さまざまな産業用オートメーションアプリケーションをサポートするために進化を遂げています。(画像提供:Siemens)

PLCの機能を最大限に発揮させるためには、PLCのプログラムの品質が重要です。すべてのコードは、ソフトウェア開発の業界標準とベストプラクティスに従っていなければなりません。それどころか、検証プロセス(手動と自動の両方)を行えば、重大なエラーからコードの非効率性まで、あらゆるものが明らかになりますので、SIMATIC S7製品のプログラムを見直してください。Siemensのエコシステムでは、TIA PortalのProject Checkアプリケーションが、これら特定のPLCのプログラミングスタイルガイドで定義されたルールに照らし合わせて、特定のコードを自動的にチェックすることができます。次に、その照合結果をXMLファイルやExcelファイルにエクスポートすることができます。なお、ユーザー定義のルールセット(複雑なタイプも含む)を追加することも可能です。それには、C#またはVisual Basic(.NET)で書かれたProject Checkソフトウェア開発キット(SDK)を使用します。このSDKは、主にプログラムのスタイルを検査するものです。

プログラミング上のポイント 目標 品質 アクション / ツール
スタイル わかりやすさ 実証される品質 コードレビュー - スタイルチェック
技法 適合性 語用論上の品質 静的コード解析 / Lint
技法 効率 語用論上の品質 動的コード解析 / プロファイリング
テストケース 機能性 統語論(シンタックス)上の品質 機能テスト / 単体/結合テスト
数学モデル 正確性 / 完全性 意味論上の品質 形式的検証 / モデルチェック

表1:PLCプログラムの検証には、手動および自動のアプローチを利用できます。後者は特にスタイルとテクニックを検証するのに有効です。(表提供:Siemens)

PLC向けのプロジェクトを十分に作成・検証したら、そのPLCにロードする必要があります。多くの場合、EthernetケーブルやPC USBとPLC COMM間のアダプタを介してPC(通常、ラップトップ)を一時的にPLCに接続し、PLCのマイクロエレクトロニクスにプログラムをロードします。PLCはI/Oモジュールを介して被制御コンポーネントに接続されます。PLCは、起動時に追加で検証された後、ネットワークに接続されたアクチュエータ(各種信号)にプログラムを実行するように指示し、フィールドデバイスからのフィードバックに応じてリアルタイムに調整を行います。

ときには、機械や自動的な作業セルは、調整、トラブルシューティング、修理が必要になったり、(PLCへのPC接続をなんらかの形でプログラミングして)フィードバックに対するPLCのデフォルト応答を強制的に上書きすることが必要になったりします。これは、あるフィードバックが特定の値ではないのにそうであるものとしてPLCを動作させるように「だます」方法です。たとえば、誤動作したアクチュエータの下流側のステーションをクリアしなければならない場合などにそうします。また、機械や作業セルは、設置されているPLCのパラメータの値を現場で変更して調整することが必要な場合もあります。このような調整を行う際には、該当するトリガ、変数値/テーブル、カウンタ、タイマを参照する必要があります。

まとめ

Siemensの膨大なオートメーション/産業用コントローラ製品群を扱うことで、設計エンジニアはPLCやその他のタイプのハードウェアを含む今日の制御手段についてより深く理解することができます。これは、オートメーションが行われる設備として最終的に選ばれるブランドやハードウェアのサブタイプに関係なく、言えることです。

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著者について

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Lisa Eitel(リサ・アイテル)氏

Lisa Eitel氏は、2001年からモーション制御業界で働いています。彼女が注力する分野には、モータ、ドライブ、モーション制御、動力伝達、リニアモーション、センシングおよびフィードバックテクノロジが含まれます。彼女は機械工学の理学士号を取得しています。Tau Beta Pi工学名誉協会(全米最古の工学名誉協会)の新参会員であるほか、女性エンジニア協会会員、FIRST Robotics Buckeye Regionalsの審査員を務めています。motioncontroltips.comへの寄稿に加え、Lisaは業界誌Design Worldで四半期ごとにモーション制御問題の制作も指揮しています。

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