精密テープ&リールキャリアソリューションを使用してチップレットとWLCSPアセンブリの歩留まりを改善する方法
DigiKeyの北米担当編集者の提供
2023-07-28
EIA-481や国際電気標準会議(IEC)60286-3などの業界標準では、250mmのテープ部分における最大許容蛇行量は1mmと定められています。また、ポケットのサイズや全体の寸法公差の要件も定められています。標準では、キャリアテープシステム用の特定の素材は規定されていません。チップコンデンサや抵抗器のような小型で頑丈な受動部品には、紙製のキャリアテープが良い選択となります。安価で、厚さ約0.9mmまでの部品に対応できます。
多くの面実装(SMD)半導体デバイスのように、より剛性の高いポケットを必要とする薄型部品には、ポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネートテープが良い選択肢となります。ポリエステルは収縮率が比較的高いため、長期間保管するとポケットが安定しなくなることがあります。ポリスチレンテープは、比較的高い蛇行量を持つことができ、それでもなおEIA-481およびIEC 60286-3の仕様内に収まります。チップレット、WLCSP、BGAのような極小部品には、多くの場合、エンジニアードポリカーボネートテープが最適となります。ポリカーボネートは丈夫で、デリケートな部品を衝撃から守ることができます。また、収縮率が低いため、長期にわたってポケットが安定します。これは、ピックアンドプレースマシンで必要とされる正確なテープ送りやポケット位置のサポートに役立ちます。
小型化するコンポーネント
半導体デバイスの小型化が進むのに伴い、キャリアテープの寸法公差を厳しくすることが求められています。キャリアテープの規格では、ポケットの寸法は100マイクロメートル(μm)までの誤差が認められています。これは、チップ型の受動部品や大型のSMD半導体デバイスでは問題ありません。しかし、より小さな部品はポケット内でデバイスが過度に回転したり傾いたりするのを防ぐため、公差を約50μmにする必要があります。WLCSPのような最新パッケージでは、大型デバイスに比べて44%も浅いポケットが必要になることがあります(図1)。また、こうしたパッケージの公差は30μmで、これは高精度のポリカーボネートキャリアテープを使用しなければ安定して供給できません。
図1:WLCSPのような小型部品の使用により、キャリアテープのポケットの高さは44%縮小されました。(画像提供:3M)
チップレットへの挑戦
チップレットの使用は、デバイスメーカーが小型ソリューションのニーズに応える手段の1つです。チップレットにより、デバイス設計者は、特定の機能を提供するさまざまなチップから必要なものを選択して組み合わせ、より高度なシステムレベルの機能をサポートできます。一般的なチップレットパッケージング技術には、2.5次元(2.5D)と3D構造があります。インターポーザ技術と呼ばれることもある2.5Dパッケージングでは、複数のデバイスが1つのベースに並んで実装されます。インターポーザはコネクティビティを提供します。3D構造では、チップを積み重ねてさらに小さなフットプリントを実現します。
チップレットは便利ですが、特別な取り扱いが必要です。また、ESDによる損傷からも保護する必要があります。サイズが小さいため、キャリアテープの公差が厳しく安定性が不十分だと、ポケット内でズレやエッジの欠けが発生しやすくなります。さらに、その製造はクラス10,000のクリーンルーム環境で行われるため、特別なエンジニアード特性を持つ適切なキャリアテープが必要となります。
ポリカーボネートの特性
エンジニアードポリカーボネートキャリアテープには、ベアダイ、チップレット、WLCSP、BGAデバイスの使用に特に適した特性がいくつかあります。公称表面抵抗率は10⁴~10⁸オーム/スクエア(Ω/sq)です。これにより、摩擦電気効果による電荷蓄積を消散させ、ESDに敏感なデバイスを保護することができます。また、ポリカーボネートは非常に安定しており、+85℃で24時間後の標準収縮率はポリスチレンが0.5%未満であるのに対し、同条件で0.1%未満です。
たとえば、3Mの3000BDポリカーボネート精密キャリアテープは、高精度で正確なポケットを作り出す革新的なプロセスで作られています。従来のキャリアの熱成形ポケットに比べ、3000BDキャリアは側壁の角度が急で、チップが壁面を上に移動する可能性が低くなっています。また、部品の回転を防ぐためにポケットの長さと幅に関して厳しい公差を持ち、ピックアンドプレース装置での性能向上をサポートする極めて平坦な底面を備えています(図2)。さらに、厳しいポケット公差は、チップレットやベアダイを出荷する際に大きな懸念となるダイエッジの欠けを防ぎます。
図2:ポリカーボネートキャリアテープのポケット(左)は、代替テープ(右)と比べて、側面が急で底面が平らです。(画像提供:3M)
ポリカーボネートキャリアテープ3000BDは汎用性が高く、クリーンルームおよび非クリーンルーム環境に適した形式で提供されます。クラス10,000のクリーンルームで洗浄・包装されているため、標準的なキャリアテープよりも60%~70%低いパーティクル数とパーティクル汚染から最大限保護され、各プラスチックリールは静電気防止袋で密封されて保護されています。3000BDキャリアテープは、非クリーンルーム用途や感度の低い部品用に厚紙リールも用意されています。
これらのキャリアテープはリサイクル可能なカーボン入り熱可塑性ポリマーフィルムで作られており、高い持続可能性を支えています。他のキャリアテープと比較して、腐食性で水に溶出可能なイオン性汚染物質の含有量が低く、錫-鉛(SnPb)、インジウム-鉛(InPb)、金(Au)、銅(Cu)はんだバンプのはんだ付け性向上に必要な5ppmレベルを満たしています(図3)。
図3:MIL-STD-883E、メソッド5011の要件に従って試験した3種類のキャリア材料のイオン汚染レベル(ppm)の比較。(画像提供:3M)
精密キャリア
3Mのポリカーボネート精密キャリア3000BDシリーズには、長さ220mの3000BD-.12MMと87mの3000BD-12X8があります。幅8mmから幅44mmのスプライスのない連続テープとして、クリーンルーム用途向けに330mm(13インチ)から560mm(22インチ)までのプラスチックリールサイズにレベル巻き形式で提供されます。特注で平巻き形式も提供可能です。ポケットの深さやピッチ、巻取り形式などにもよりますが、これらのリールは通常、30~2,000mのキャリアテープを保持します(図4)。
図4:ポリカーボネート精密キャリアテープは最大2,000mのロール状です。(画像提供:3M)
カバーテープの選択
高性能で精密なキャリアテープを選ぶことは、答えの半分でしかありません。設計者は、部品を保護し、ピックアンドプレース装置とのスムーズなインターフェースを提供できるカバーテープも必要としています。一般的なカバーテープの選択肢は、熱活性接着剤(HAA)と感圧接着剤(PSA)の2つです。
HAAテープは、加熱されたシーリングシューでテープの端を押しながら貼り付けられるため、部品が密閉され、接着剤残りがありません。HAAの場合、シーリングの熱、圧力、速度を正確にコントロールする必要があります。HAAテープの接着剤は、温度、湿度、保管時間によっても影響を受けます。その結果、HAAテープに必要な剥離力は、比較的一定しないことがあります。剥離力にばらつきがあると、キャリアポケットからデバイスが飛び出し(トランポリンと呼ばれる)、アセンブリ工程が遅くなることがあります。
チップレットやWLCSPのような小さな部品には、PSAテープがより良い選択となります。PSAテープは剥離力がよりスムーズで安定しているため、トランポリンを最小限に抑え、アセンブリ工程をスピードアップできます。さらに、熱や温度条件の影響を受けにくく、経時変化の可能性も高くありません。一部のPSAテープの欠点は、アセンブリ機械に残留物が蓄積する可能性があることです。
PSAテープで部品を密封
ポリカーボネート精密キャリア3000BDシリーズを補完するために、設計者は3MのPSA導電性高せん断感圧ポリエステルフィルムカバーテープの2668シリーズを使用することができます。たとえば、2668-5.4MMX500Mは幅5.4mm長さ300mで、2668-13.3MMX500Mは幅13.3mm長さ300mです。これらのカバーテープは、HAAテープと比較してより平坦なカバーを提供し、標準的なHAAカバーテープの±20グラムと比較して、±10グラムのばらつきの剥離力を提供します。部品側に非導電フィルム層がある構造で、ESD保護を提供し、接着剤の残留を最小限に抑えます。
テープ2668は、ベアダイ、チップレット、WLCSPなど、ディテーピング処理中にトランポリンが発生しないよう細心の注意が必要な小型部品に使用できます(図5)。その結果、このテープは高速ディテーピング装置で使用でき、アセンブリ工程をスピードアップできます。標準パッケージとクリーンルーム対応パッケージがあります。両者の違いは以下のとおりです。
- 標準的なテープはプラスチックコアで、高密度の紙製ウェハーインサートとセンタリングコアとともに1つのポリエチレン袋に包装され、段ボール箱に収められています。
- クリーンルーム用テープは同じテープですが、ポリエチレン袋を2つ使って納品されます。これにより、クリーンルーム環境で使用・保管されるカバーテープは、段ボール箱と直接接触していない内側の袋の中に収められます。
図5:3000BD導電性ポリカーボネート精密キャリアからPSAキャリアテープ(左上)を剥がしています。サイズ参照用のBGAデバイスを装着した状態です。(画像提供:3M)
まとめ
ポリカーボネート精密キャリアテープシステムは、PSAキャリアテープと併用することで、ベアダイ、チップレット、バンプダイ、チップスケールパッケージング、WLCSP、BGAデバイスの歩留まりを向上させることができます。これらのテープ&リールシステムは、デリケートな部品を広範囲に保護し、高速ピックアンドプレース装置をサポートするために必要な厳しい寸法公差を備えています。
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