センサフュージョンで工場現場でのAMRの効率的な移動を実現する方法
DigiKeyの北米担当編集者の提供
2024-03-27
産業用移動ロボット(IMR)とも呼ばれる自律型移動ロボット(AMR)と人間が同じエリアで作業する事例が増えているため、内在する複数の安全リスクに対処する必要があります。AMRの安全で効率的な動作は非常に重要であるため、単一のセンサ技術に依存することはできません。
マルチセンサフュージョン(単に「センサフュージョン」とも呼ばれる)は、レーザー測距(LiDAR)、カメラ、超音波センサ、レーザー障害物センサ、RFID(電波による個体識別)などの技術を組み合わせて、ナビゲーション、経路計画、衝突回避、在庫管理、ロジスティクス支援など、さまざまなAMR機能をサポートします。センサフュージョンには、AMRの存在を近くの人に知らせることも含まれます。
AMRの安全かつ効率的な動作のニーズに対応するため、米国規格協会(ANSI)と、旧米国ロボット工業会(RIA)であるAssociation for Advancing Automation(A3)は、ANSI/A3 R15.08シリーズの規格を策定しています。R15.08-1とR15.08-2がすでにリリースされ、基本的な安全要件とAMRの現場への統合に焦点が当てられています。R15.08-3は現在策定中であり、センサフュージョンの使用に関するさらに詳細な推奨事項を含め、AMRの安全要件が拡大される予定です。
この記事では、R15.08-3を見越して、AMRにおける安全性とセンサフュージョンに関する今日のベストプラクティスをいくつか考察します。まず、IEC 61508、ISO 13849、IEC 62061などの一般的な産業用安全規格や、IEC 61496、IEC 62998のような人の存在を検知するための安全要件など、AMRで現在使用されている機能安全要件の概要を簡単に説明します。その後、多数のセンサ技術を搭載した典型的なAMR設計や代表的なデバイスを紹介し、ナビゲーション、経路計画、位置推定、衝突回避、在庫管理/ロジスティクス支援などの機能をどのようにサポートしているかを考察します。
より優れた選択肢から最高の選択肢へ
AMRの設計者は、IEC 61508、ISO 13849、IEC 62061などの汎用機能安全規格をはじめ、さまざまな安全規格を検討する必要があります。また、IEC 61496、IEC 62998、ANSI/A3 R15.08シリーズなど、人の存在を検知することに関するさらに具体的な安全規格もあります。
IEC 61496は、いくつかのセンサタイプについてガイダンスを提供しています。IEC 62061は、機械の電気的検知保護設備(ESPE)の設計、統合、検証における要件を規定し、勧告を行うもので、これには安全度水準(SIL)が含まれます。ISO 13849は、安全性のパフォーマンスレベル(PL)など、機械および制御システムの安全関連部品の安全性をカバーしています(表1)。
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表1:IEC 61496で規定されているタイプ別のESPEの安全要件。(表提供:Analog Devices)
IEC 62998は新しく、センサフュージョンの実装、安全システムにおける人工知能(AI)の使用、IEC 61496の適用範囲外の移動プラットフォームに取り付けられたセンサの使用に関するガイダンスを含むため、多くの場合、より良い選択肢となります。
R15.08 Part 3がリリースされれば、AMRシステムやAMRアプリケーションのユーザーに対する安全要件が追加されるため、R15.08シリーズは最高の選択肢になるかもしれません。その主なテーマは、センサフュージョンや、AMRのより広範な安定性テストおよび検証などになりそうです。
センサフュージョン機能
施設をマッピングすることは、AMRの稼働に不可欠な側面です。しかし、これは一度限りの作業ではありません。それは、自己位置推定とマッピングの同時実行(SLAM)と呼ばれる進行中のプロセスの一部でもあります。これは、ロボットの位置を追跡しながら、あらゆる変化に対してエリアのマップを継続的に更新するプロセスです。
SLAMをサポートし、AMRの安全な動作を可能にするためには、センサフュージョンが必要です。すべてのセンサがすべての動作状況で同じように機能するわけではなく、異なるセンサ技術がさまざまなデータタイプを生成します。AIをセンサフュージョンシステムに使用して、現地の動作環境に関する情報(霞んでいるか、煙が多いか、湿度が高いか、周囲の明るさはどうかなど)を組み合わせ、異なるセンサ技術の出力を組み合わせることで、より意味のある結果を得ることができます。
センサ素子は、技術だけでなく機能によっても分類できます。AMRにおけるセンサフュージョン機能の例としては、以下のようなものがあります(図1)。
- 車輪に取り付けられたエンコーダおよび、ジャイロスコープや加速度計を使用した慣性計測ユニットのような距離センサは、移動を計測し、基準位置間の範囲を特定するのに役立ちます。
- 3次元(3D)カメラや3D LiDARのような画像センサは、近くの物体を識別し、追跡するために使用されます。
- 通信リンク、計算プロセッサおよび、バーコードスキャナやRFID(電波による個体識別)デバイスなどのロジスティクスセンサは、AMRを施設全体の管理システムにつなぎ、外部センサからの情報をAMRのセンサフュージョンシステムに統合して性能を向上させます。
- レーザースキャナや2次元(2D)LiDARのような近接センサは、AMRの近くにある物体を検出し、人の動きも含めて追跡します。
図1:AMRセンサフュージョン設計に使用される一般的なセンサタイプと関連システム要素の例。(画像提供:Qualcomm)
2D LiDAR、3D LiDAR、超音波
2Dおよび3D LiDARと超音波は、AMRにおいてSLAMと安全性をサポートする一般的なセンサ技術です。これらの技術の違いにより、あるセンサが他のセンサの弱点を補い、性能と信頼性を向上させることができます。
2D LiDARは、XとYの座標に基づいて物体を識別するために、レーザー照射の単一平面を使用します。3D LiDARは、複数のレーザービームを使用して、点群と呼ばれる非常に詳細な周囲の3D表現を作成します。どちらのタイプのLiDARも、周囲光の条件には比較的影響されませんが、検出される物体には、レーザーが放射する波長の反射率の最低閾値が必要です。一般的に、3D LiDARは2D LiDARよりも高い信頼性で低反射率の物体を検出することができます。
Seeed TechnologyのHPS-3D160 3D LiDARセンサは、高出力850nm赤外線VCSEL(垂直共振器型面発光レーザー)エミッタと高感光性CMOSを内蔵しています。組み込まれた高性能プロセッサは、フィルタリングと補正のアルゴリズムを含み、複数の同時LiDAR操作をサポートすることができます。このユニットは、センチメートルの精度で最大12メートルの範囲をカバーします。
2D LiDARソリューションが必要な場合、設計者はSICKのTIM781S-2174104を使用することができます。これは、270度の開口角、0.33度の角度分解能、15Hzの走査周波数を備えています。安全上の作業範囲は5メートルです(図2)。
図2:この2D LiDARセンサの開口角は270度です。(画像提供:SICK)
超音波センサは、LiDARで確認できるとは限らないガラスや光を吸収する素材のような透過性の物体を正確に検出することができます。また、LiDARを妨害する可能性のある高濃度のほこり、煙、湿度、その他の条件による干渉の影響を受けにくくなります。しかし、超音波センサは環境ノイズの干渉に敏感で、その検出範囲はLiDARよりも制限される場合があります。
SenixのTSPC-30S1-232のような超音波センサは、AMRのSLAMと安全のためにLiDARやその他のセンサを補完することができます。前述の2D LiDARの最適範囲が5メートル、3D LiDARが12メートルであるのに対し、このセンサは3メートルです。この温度補正超音波センサは、環境的に密閉されたステンレススチール製のエンクロージャで、IP68定格を備えています(図3)。
図3:最適範囲3メートルの環境密閉型超音波センサ。(画像提供:DigiKey)
センサフュージョンとは通常、複数のディスクリートセンサを使用することを指します。しかし場合によっては、複数のセンサを1つのユニットとして同一パッケージ化することもあります。
3つのセンサの一体化
2台のカメラを使用して立体画像を生成する視覚認識と、AIやMLに基づく画像処理により、AMRは背景を確認するだけでなく、近くの物体を識別することもできます。ステレオ深度カメラ、独立したカラーカメラ、IMUを一体化したセンサもあります。
IntelのRealSenseD455 RealSense深度カメラ のようなステレオ深度カメラは、既知のベースラインで区切られた2台のカメラを使用して深度を感知し、対象物までの距離を計算します。高精度の鍵の1つは、厳しい産業環境でもカメラ間の正確な分離距離を確保する頑丈なスチール製フレームワークを使用していることです。奥行き知覚アルゴリズムの精度は、2台のカメラの正確な間隔を知ることに依存します。
たとえば、モデル82635DSD455MPの深度カメラは、AMRや同様のプラットフォーム用に最適化されており、カメラ間の距離を95mmまで延長しています(図4)。これにより、深度計算アルゴリズムは、4メートルでの推定誤差を2%未満に抑えることができます。
図4:このモジュールには、95mm離れた2台のステレオ深度カメラ、独立したカラーカメラ、IMUが搭載されています。(画像提供:DigiKey)
D455深度カメラには、独立したカラー(RGB)カメラも搭載されています。深度撮像器の視野(FOV)に合わせたRGBカメラの最大90フレーム/秒のグローバルシャッターにより、カラー画像と深度画像の対応関係が改善し、周囲の状況を把握する機能が強化されます。D455深度カメラは6自由度のIMUを内蔵しており、深度計算アルゴリズムにAMRの運動速度を含めたり、深度認識の動的な推定値を生成したりすることができます。
照明と音響
AMRの安全を確保するには、AMRの近くにいる人に対するライトの点滅と音声による警報が重要です。ライトは通常、AMRの側面にあるライトタワーやライトストリップの形をしています。それらは、ロボットが意図した行動を人間に伝えるのに役立ちます。また、バッテリの充電、荷物の積み下ろし、方向転換の意思表示(自動車の方向指示器など)、緊急事態などを表示することもできます。
ライトの色、点滅速度、可聴アラームに基準はありません。それらはAMRメーカーによって異なり、多くの場合、AMRが動作する施設の特定の活動を反映して開発されます。ライトストリップには、可聴警報メカニズムを内蔵したものと内蔵していないものがあります。たとえば、Banner EngineeringのモデルTLF100PDLBGYRAQPには、選択可能な14のトーンとボリュームコントロールを備えた密閉型可聴素子が内蔵されています(図5)。
図5:このライトバーアナンシエータには、密閉型可聴素子(上部の黒丸部分)が内蔵されています。(画像提供:DigiKey)
ロジスティクス支援
AMRは大規模な業務の一部として動作するため、多くの場合、企業資源計画(ERP)、製造実行システム(MES)、または倉庫管理システム(WMS)のソフトウェアと統合する必要があります。AMRの通信モジュールとバーコードやRFIDリーダなどのセンサを組み合わせることで、AMRを企業システムに緊密に融合させることができます。
バーコードリーダが必要な場合、設計者はOmronのV430-F000W12M-SRPを使用できます。これにより、ラベル上の1Dおよび2Dバーコード、またはダイレクトパーツマーク(DPM)バーコードをデコードすることができます。この製品は、可変距離オートフォーカス、広視野レンズ、120万画素センサ、内蔵ライト、高速処理などを備えています。
DLP DesignのDLP-RFID2は、高周波数(HF)RFIDトランスポンダタグの読み取りと書き込みを行うための低コストな小型モジュールです。また、最大15個のタグの固有識別子(UDI)を一度に読み取ることができ、内部アンテナまたは外部アンテナを使用するように設定できます。動作温度範囲は0℃~+70℃で、インダストリ4.0の製造施設や物流施設での使用に適しています。
まとめ
センサフュージョンは、AMRにおけるSLAMと安全性をサポートするための重要なツールです。この記事では、センサフュージョンや、AMRのより広範な安定性試験と検証への言及を含む可能性のあるR15.08-3を見越して、AMRにセンサフュージョンを実装するための現在の規格とベストプラクティスについて考察しました。この記事は、2部構成の第2回目です。パート1では、最大の利益を得るために、AMRを安全かつ効率的にインダストリ4.0事業へ統合することについて考察しました。
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