ターンキーソースおよび測定プラットフォームによる計測器クラスの高精度アナログ特性評価の実現

著者 Stephen Evanczuk

DigiKeyの北米担当編集者の提供

高精度コンバータや超低ノイズアナログシステムの登場により、性能をより正確に評価できるテストソリューションの必要性が高まっています。これを実現するための社内プラットフォームを構築することは可能ですが、それにはコストと遅れが生じます。一方、個別の発生器と分析器で構成される従来の環境では、歪みや変動が生じ、精度が低下し、これらのデバイスやシステムの特性評価要件を満たせない場合があります。

本記事では、先進的なオーディオ、ミックスドシグナル、および自動化試験環境の開発において設計者が直面する課題について簡単に振り返ります。続いて、Analog Devicesの即使用可能な統合型高精度ソースメジャメントプラットフォームを紹介します。本プラットフォームは、複雑な計測器の欠点なく、超低歪信号生成と高分解能測定を実現します。

信号生成および測定能力への高まる要求

高精度オーディオ、ミックスドシグナル、自動化試験環境において、技術者は、小型で統合された形態でありながら計測器レベルの性能をますます必要としています。高分解能A/Dコンバータ(ADC)の試験、ヘッドフォン、マイクロフォン、補聴器のオーディオ帯域の忠実度の検証、高スループットの自動試験装置(ATE)ワークフローのサポートなど、信号源と測定能力に対する要求はますます高まっています。

高性能試験は、極めて純粋な正弦波信号と低広帯域ノイズに依存しており、ソースからの歪みとノイズは、被試験デバイス(DUT)の歪みとノイズよりも十分に低いレベルに抑えられています。動的解析や高速フーリエ変換(FFT)評価では、スペクトルの漏れを低減し、コヒーレンスが達成できない場合に測定の忠実度を維持するため、コヒーレントサンプリングまたはウィンドウ関数が必要となります。

高忠実度オーディオデバイスへの需要の高まりは、オーディオ帯域全体にわたるクリーンで再現性の高いトーンおよびマルチトーンパターンへの必要性を高めています。これにより、歪み、相互変調、ノイズの影響を明らかにすることが可能となります。これらの要求は自動化された試験環境にも及び、高スループットの生産ワークフローは、決定論的な信号挙動、事前定義された波形プロファイル、安定した較正条件に依存しています。

またミックスドシグナル開発においても、広範な動作条件にわたる評価をサポートするため、直流(DC)、正弦波、デュアルトーン、任意波形を生成できる信号源が有用です。

Analog DevicesのADMX1001Bプラットフォームは、これらの課題に対処するために必要な特性を兼ね備えています。

ADMX1001Bプラットフォームによる精密な特性評価の実現方法

Analog DevicesのADMX1001Bは、わずか40mm × 60mmのサイズでありながら、シングルトーン、デュアルトーン、DC、任意波形を使用した精密なオーディオ帯域評価に必要な忠実度、再現性、制御性を実現するために設計されたシステムオンモジュール(SoM)です。ADMX1001Bのアーキテクチャの基盤となるシステムオンチップ(SoC)は、波形合成、タイミング、メモリを管理すると同時に、パターン制御、ハウスキーピング処理、モニタリング機能を統合しています。このSoCによって管理される専用信号チェーンにより、SoMの精密な波形生成および測定機能を実現しています(図1)。

Analog DevicesのADMX1001B SoMの図(クリックして拡大)図1:ADMX1001B SoMは、オンボードSoCの制御下で専用の波形生成および収集信号チェーンを統合し、高精度なオーディオ帯域評価をサポートします。(画像提供:Analog Devices)

信頼性の高い特性評価には、フィルタリングや再構成時に悪影響を及ぼすことなく、必要な振幅および周波数範囲全体で直線性を維持しつつ、DUTよりも大幅に低い高調波歪みを有する信号源が必要です。ADMX1001Bは、-130dBの標準全高調波歪み(THD)でトーン生成する能力により、次世代オーディオ帯域デバイスに必要な性能レベルを達成しています。

この性能を実現するため、ADMX1001Bは複数の技術を応用しています。SoMの完全差動信号チェーンは、20ビットのD/Aコンバータ(DAC)からの出力を、信号調整ステージに送ります。このステージでは、DACのコード遷移に伴うグリッチエネルギーを除去し、サンプルレートの倍数で現れる、目的のアナログ信号の帯域外スペクトル複製(イメージ成分)を減衰させます。

さらに、ADMX1001Bは、特定の周波数と振幅の組み合わせにおける直線性を改善するために一度だけ実行する必要がある、特許取得済みのデジタルプリディストーション(DPD)アルゴリズムを使用して、20kHzまでのシングルトーンの出力純度をさらに向上させます。DPDセンス経路(図1のVSENSEPおよびVSENSEN)を介してフィードバックされた出力信号を用いて、DPDアルゴリズムは出力信号をデジタル的に再構成し、それをモデルと比較することで、正弦波の純度を大幅に改善する補正パラメータを生成します(図2)。

DPD前後のグラフ(クリックして拡大)図2:DPD適用なしのシングルトーン出力(左)と比較すると、DPDを適用した場合(右)は高調波成分が大幅に減少し、全体的なスペクトル純度が向上しています。(画像提供:Analog Devices)

ADMX1001B は、生成されたこれらのパラメータを波形プロファイルとして不揮発性メモリに保存し、シングルトーン、DPD適用シングルトーン、デュアルトーン、DC波形用の最大15個のプロファイルに加え、ユーザーが提供する任意波形プロファイル用の1個のプロファイルの保存が可能です(SoMの27kHz出力フィルタの帯域幅制約に従う)。ハードウェアまたはソフトウェア制御によるプロファイルの再ロードにより、ユーザーは信号の純度を損なうことなく、デバイスの試験中に異なる波形タイプを素早く切り替えることができます。

測定側においては、ADMX1001Bは7つのプログラム可能な測定レンジを持つアナログフロントエンド(AFE)を内蔵しています。適切な測定範囲を設定することで、クリッピングを防止し、SoM入力チャンネルのダイナミックレンジ全体を、SoMの±7.5ボルトの差動および±7ボルトのコモンモード制限内の入力信号に対して維持します。この信号経路には、24ビット、256キロサンプル/秒(kS/s)ADCによる変換前に信号を調整する4次アンチエイリアシングフィルタも含まれています(図1を再度参照ください)。このフィルタは、使用可能な収集帯域幅を定義するため、より高い周波数の成分は ADC に到達する前に減衰されます。アンチエイリアシングフィルタは最大-130dBの除去性能を有しますが、収集チャンネルは、最大128dBの総ダイナミックレンジと、-115dBの標準THD(フルスケールの1kHz入力トーン)を実現します。

これらの信号生成と収集機能を組み合わせることで、ADMX1001Bは、高純度な信号生成と同期測定を実現する小型計測器クラスのモジュールとなっています。開発者がこの機能を最大限に活用できるよう、Analog DevicesはADMX1001Bの機能を即評価でき、すぐに使用できる高精度テストベンチとしての目的をサポートする2種類のボードを提供しています。

ターンキーテストベンチ環境による迅速な評価の実現

Analog Devicesは、ADMX1001BとEVAL-ADMX100X-FMCZ評価ボード(図3)およびSDP-H1(EVAL-SDP-CH1Z)コントローラボードを組み合わせた完全な評価プラットフォームを提供しています。これらのボードを組み合わせて使用することで、ADMX1001B SoMをホストPCに接続し、電源とクロックを供給し、モジュールの信号生成および収集経路を構成および測定のために公開するターンキー環境を構築します。

Analog DevicesのEVAL-ADMX100X-FMCZ評価ボードの画像(クリックして拡大)図3:EVAL-ADMX100X-FMCZ評価ボードは、ADMX1001Bの信号生成および収集経路にアクセスするために必要な電源、信号配線、外部接続を提供します。(画像提供:Analog Devices)

この構成において、EVAL-ADMX100X-FMCZ ボードはADMX1001B SoMの主要インターフェースとして機能し、ADMX1001B SoMはメザニンコネクタを介してボードに接続され、電源分配と信号接続を実現します。出力ポート(OUTP/OUTN)は超低歪み信号源へのアクセスを提供し、対応する差動入力ポート(AINP/AINN)はDPD較正時に使用される外部信号取り込みまたはループバック構成をサポートします。追加のコネクタにより、DPDセンス経路、ハードウェアトリガと同期信号、ならびに生成、収集、較正ワークフロー用のモード選択制御が提供されます。

EVAL-ADMX100X-FMCZ 評価ボードは、FMCコネクタを介してSDP-H1高速コントローラボード(図4)に接続されます。SDP-H1は、ホストPCからADMX1001Bを操作するために必要なUSBおよび高速パラレルインターフェースを提供します。専用のフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)とデジタルシグナルプロセッサを中心に構築されたコントローラボードは、評価ボードに電源を供給し、USB通信、設定転送、プロファイルロード、高速収集を管理します。

Analog Devicesの評価ボードとSDP-H1コントローラボードの接続画像(クリックして拡大)図4:評価ボードをSDP-H1コントローラボードに接続することで、ADMX1001Bの設定、波形生成、信号測定のターンキーシステムが完成します。(画像提供:Analog Devices)

Analog Devicesは、波形生成、DPDトレーニング、および収集設定を管理するためのADMX100Xグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)ソフトウェアツールを提供しています(図 5)。

GUIを備えたソフトウェアツールの画像(クリックして拡大)図5:GUIを備えたソフトウェアツールは、波形生成、収集制御、およびDPD較正の管理を支援します。(画像提供:Analog Devices)

ソフトウェアツールを使用することで、開発者は波形タイプの選択、トーンパラメータの調整、任意のパターンのロード、および保存されたプロファイル間での切り替えが可能となります。DPDのトレーニング時には、本ツールが信号生成、センス経路取り込み、補正パラメータ計算を調整し、ユーザーがプロファイルを不揮発性メモリに保存することを可能にします。また本ツールは、タイムドメイン取り込み、FFT表示、ADCからのサンプルエクスポート向けに、主収集チャンネルの測定範囲とサンプリング制御機能を提供します。ハードウェア設定への容易なアクセスを可能にすることで、GUIは精密な信号生成および測定のためのADMX1001Bの機能の設定と完全な活用を効率化します。

まとめ

より高度なオーディオ帯域コンバータやミックスドシグナルシステムが登場し続ける中、一般的なテストベンチ構成では、歪みや変動が生じやすく、性能測定の精度と再現性が制限されます。Analog Devicesの統合型波形生成および測定プラットフォームは、高分解能デバイスの特性を確実に評価するために必要な、超低歪みと低ノイズを実現します。これらの機能により、開発者は高忠実度アプリケーション向けの次世代オーディオ帯域コンバータやサブシステムをより効果的に評価することが可能となります。

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著者について

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Stephen Evanczuk

Stephen Evanczuk氏は、IoTを含むハードウェア、ソフトウェア、システム、アプリケーションなど幅広いトピックについて、20年以上にわたってエレクトロニクス業界および電子業界に関する記事を書いたり経験を積んできました。彼はニューロンネットワークで神経科学のPh.Dを受け、大規模に分散された安全システムとアルゴリズム加速法に関して航空宇宙産業に従事しました。現在、彼は技術や工学に関する記事を書いていないときに、認知と推薦システムへの深い学びの応用に取り組んでいます。

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