基礎解説:IoT、IIoT、AIoT、およびこれらが産業用オートメーションの将来である理由

著者 Clive "Max" Maxfield(クライブ・マックスフィールド)氏

DigiKeyの北米担当編集者の提供

モノのインターネット(IoT)の導入が加速するにつれ、人工知能(AI)および機械学習(ML)など、より先進的な技術の取り込みも行われています。その流れは大きく、「IoT」という語自体の意味も進化し、産業用IoT(IIoT)、モノの人工知能(AIoT)、より重いモノのインターネットへと拡大しつつあります1

産業用デプロイの場合、IIoTで得られるコネクティビティとインテリジェンスは生産性、効率性、その他の経済的な恩恵をもたらします。しかしながら、新しいIIoT対応の装置以外に既存の「ダム」(旧式)インフラおよび機械設備が大量に存在しています。

この記事では、こうした装置を技術革新から外れて劣化するままにするのではなく、MolexTE ConnectivitySTMicroelectronicsDeltaWeidmullerのソリューションを利用して、設備管理者が積極的にこのような旧式化した装置をIIoTの時代に組み入れる方法を紹介します。

用語の定義

「モノのインターネット」は、英国の技術開拓者Kevin Ashton氏が1999年にProcter & Gamble(P&G)で行ったプレゼンテーションで初めて使用した用語です。Ashton氏は、至る所に配置したセンサを介してインターネットが物理的世界に接続されたシステムを「モノのインターネット」と表現しました。「モノのインターネット」およびその略語であるIoTが広まったのは、そう昔のことではありません。

IoT:「モノのインターネット(IoT)」という用語で人々が理解する内容は時と共に進化してきました。現在広く受け入れられている定義は、「一意の識別子を持ち、人から人、または人からコンピュータへ働きかける必要なしにデータをネットワーク越しに伝送できる、相互関係をもったコンピューティングデバイス、力学的およびデジタル機械、物体、動物、または人からなるシステム」です。それと共に、「IoTデバイス」という用語は、遠隔地から監視または制御(あるいは両方)できる、インターネットに接続されたあらゆる単体デバイスを指します。Statisticaによれば、世界中で2020年までに300億台近くのIoTデバイスが設置され、2025年には750億台近くに上ると予測されています。

IIoTおよびAIoT:産業用モノのインターネット(IIoT)とは、製造およびエネルギー管理などのコンピュータの産業用アプリケーションと共にネットワーク化され、相互接続されたセンサ、計測器、その他のデバイスを意味します。このコネクティビティにより、データの収集、交換、解析ができ、生産性、効率性、その他の経済的利点を向上させる可能性が生まれます。IIoTとは分散制御システム(DCS)の進化形であり、クラウドコンピューティングを使用してさらに高度なオートメーションを実現し、工程管理を改善し最適化するものです。現在の形態のIIoTは、サイバーセキュリティ、クラウドコンピューティング、エッジコンピューティング、モバイル技術、マシンツーマシン、3Dプリント、先進ロボティクス、ビッグデータ、IoT、RFID(電波による個体識別)技術、コグニティブ(認知)コンピューティングなどの技術によって支えられています。

AIoTとはIoTデバイスおよびインフラをAI技術で強化することを意味します。AIはIoTを機械学習(ML)と認知能力によって強化します。

産業の覚醒と、より重いモノのインターネット

2017年のGartnerによる予測によれば、全世界でのIoTに対する支出は2018年に7,725億ドルに達すると見られていました。その一方で、IDCによれば2018年の全世界でのIoTに対する個人消費は約620億ドルでした。比較すると、製造業の支出は1,890億ドルで、輸送(850億ドル)と公益事業(730億ドル)を合わせたものを上回りました。また、Bain & Companyは、IIoTアプリケーションが2020年までに3,000億ドル以上を生みだし、民生IoT分野(1,500億ドル)の倍になると予測しています。

「重工業」という用語は、大型で大重量の製品、大型で大重量の装置および設備(重機、大型機械工具、巨大建築物、大規模インフラなど)、あるいは複雑または多段の工程などの1つ以上の特性をもつ工業を指します。

IoT以前には、モータ、発電機、重機械を使用する産業用システムは、概ね接続されずに個別に運用されていました。しかし、インターネットに接続してIoTの一部とすることで、効率性、生産性、信頼性に関して得られる大きな利点があります。そうした利点には、遠隔監視および制御、故障検出、先行的保守ができることなどがあります。これが、新型の産業用装置がきわめて多様なセンサと通信機能を備えている理由です。

問題は、既存の(旧式の)「ダム」インフラおよび機械設備が大量にあることです。米国だけで6.8兆ドル相当のそうした装置があると見積もられています。選択肢には、そのままにする、莫大なコストをかけて既存設備を最新の対応物で置き換える、または既存設備を最新のセンサ、制御、通信のシステムで増強および強化してなんとか21世紀にも使用する、があります。

米国のベンチャーキャピタル企業Kleiner Perkinsは、IIoTおよびAIoTの能力によって産業用システムを増強することを「産業の覚醒」と呼びました。2015年公開の記事『The Industrial Awakening: The Internet of Heavier Things』(産業の覚醒:より重いモノのインターネット)でKleiner Perkinsは、世界経済フォーラムの報告書にある一文を引用し、この「産業の覚醒」が2030年までに全世界で14.2兆ドルを生み出すと期待される、と記しています。

旧式化した装置をIIoTおよびAIoTの能力で増強する

電気モータは単独で世界最大の電気消費者です。産業用消費電力の約2/3、世界全体の消費電力の約50%を占めています。これは、発電所や他の電源が刻々、もっぱらモータに電力供給するために使用されていることです。

問題は、平均的な産業用モータの効率が約88%しかないことです(商用モータは、さらに大幅に低い場合があります)。この効率は、適切なセンサおよび制御システムによって劇的に改善できます。

産業界の企業にとって特に大きなリスクの1つは、予期せぬ装置故障によるダウンタイムです。この問題を緩和する1つの方法は、予知保全を実施することです。これには、装置を監視するセンサとIIoTおよびAIoTの能力を利用して、正常な動作からのあらゆる逸脱を検出し、発生しうる故障の状態および時期を予測することが含まれます(例えば、「本機のこの2次回転子は現在95%の効率で動作し、1日当たり0.9%ずつ低下しており、6日+/-1日後に決定的な故障を起こすことが予期される」)。

IIoTおよびAIoTの能力を利用する理由は、これらがパターンの検出、履歴データからの傾向の抽出、発生しうる故障の推定を、人間よりもはるかに効率的にできることです。

人間は膨大な量の数値データを与えられた場合にパターンを検出し、異常を特定することには困難を覚えますが、データをグラフィカルな形で与えられると、それがはるかに容易になります。

たとえば、図1に示す数値データから問題を検出して特定することは、人間には不可能でないにしても困難です。一方、同じデータが図2に示すようにグラフィカルな形で与えられれば即座に異常を見つけられるでしょう。

IoTシステムによる一般的な測定値を公開用に整えたものの画像(クリックして拡大)図1:人間は膨大な量の数値データを与えられた場合にパターンを検出し、異常を特定することには困難を覚えます。(画像提供:「IoTシステムによる一般的な測定データを公開用に整えたもの」、Stephen Bates氏のプレゼンテーションより)

視覚的な形で提示されたデータの画像図2:人間は視覚的な形でデータを与えられた場合にパターンを検出し、異常を特定することがはるかに容易に感じます。(画像提供:「IoTシステムによる一般的な測定データを公開用に整えたもの」、Stephen Bates氏のプレゼンテーションより)

ここでの要点は、IIoTおよびAIoTシステムは、データの提示方法に関わらず、パターンを検出し、異常を特定することができることです。さらに、多数の同一システム(世界中に散らばったまったく別々の場所にある場合もある)をすべて監視すれば、IIoTおよびAIoTシステムはそれらすべてから学習し、あるシステムから得た知識によって他のシステムの問題を予測することができます。

すべてはセンサ(と処理とコネクティビティと……)にかかっている

旧式化した産業用装置増強の第一歩は、センサの追加です。実にさまざまなタイプのセンサがあり、さらにセンサの各タイプにも膨大な選択肢があります。センサで測定できる各種の特性量には、これですべてではありませんが、以下のものがあります。

  • 位置
  • モーション
  • 速度および加速度
  • 荷重(タクタイルおよび閾値)
  • 圧力(単位面積当たりの荷重)
  • フロー(流速および体積)
  • 放射
  • 湿度(絶対および相対)
  • 温度
  • 化学物質(種類、濃度、他)

センサのタイプおよび選択肢には、文字通り数万の組み合わせがあります。数種の例を挙げると、Molexの光電センサであるContrinex 120254シリーズ、TE Connectivity Measurement Specialtiesの通気孔付き圧力ゲージM3041-000006-250PG(図3)などがあります。TE ConnectivityのMicrofused製品ラインに属するM3041-000006-250PGは、液体または気体の圧力測定に適しており、汚染水、蒸気、弱腐食性流体といった測定が困難な媒体でも測定できます。

TE Connectivityの圧力トランスデューサM3041-000006-250PGの画像図3:圧力トランスデューサM3041-000006-250PGは、液体圧またはガス圧の測定や、汚染水、蒸気、弱腐食性流体などの測定が困難な媒体の測定にも適しています。(画像提供:TE Connectivity)

センサ開発キットおよび評価ボードの例としては、IoT Studio対応プラットフォーム、SensorTile STEVAL-STLCS02V1SensorTileボックス開発キットSTEVAL-MKSBOX1V1モーションMEMS評価ボードX-NUCLEO-IKS01A3があります(すべてSTMicroelectronicsの製品)。

X-NUCLEO-IKS01A3は、Arduino UNO R3コネクタレイアウトと互換性のあるモーションMEMSおよび環境センサ評価ボードシステムです(図4)。このボードは、3軸加速度計および3軸ジャイロスコープLSM6DSO、3軸地磁気センサLIS2MDL、3軸加速度計LIS2DW12、湿度および温度センサHTS221、圧力センサLPS22HH、温度センサSTTS751を備えています。

STMicroelectronicsのモーションMEMSおよび環境センサ評価ボードX-NUCLEO-IKS01A3の画像図4:X-NUCLEO-IKS01A3は、Arduino UNO R3コネクタと互換性のあるモーションMEMSおよび環境センサ評価ボードシステムです。(画像提供:STMicroelectronics)

センサに加えて、ローカルデータのコンディショニング、処理、制御が必要になります。これらの処理は、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)で実行でき、例としてはDelta Industrial Automationのモジュール式小型ミッドレンジPLCであるASシリーズなどがあります(図5)。

ASシリーズは、あらゆる種類の自動機器向けに設計された高性能の多目的コントローラです。32ビットCPUをベースにしたDelta Industrial Automationの自社開発SoC(システムオンチップ)を搭載しており、実行速度は最大40キロステップ/ミリ秒に強化されています。最大で32個の拡張モジュール、すなわち1,024本までの入出力に対応しています。

Delta Industrial Automationのモジュール式小型ミッドレンジPLCであるASシリーズの画像図5:Delta Industrial Automationのモジュール式小型ミッドレンジPLCであるASシリーズは、最大40キロステップ/ms、最大1,025本の入出力に対応します。(画像提供:Delta Industrial Automation)

それと同時に、先進的なAIoTによる解析は遠くはなれたクラウドで行われるため、ネットワーク化および通信が必要になり、Weidmullerグループの産業用Ethernet接続のための完全なソリューションなどが用意されています。

まとめ

モノのインターネット(IoT)の導入が加速しMLおよびAIが追加されるにつれ、設備管理者は生産性と効率性を高めるため、旧式化した設備を状況に応じて現代化する手段を見いだす必要があります。

幸いなことに、旧式化システムにインテリジェンスとコネクティビティを追加してIIoT革命に組み入れることができる、すぐに使えるソリューションが多数のベンダーから提供されています。

出典

  1. The Industrial Awakening: The Internet of Heavier Things、2015年、Kleiner Perkins
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著者について

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Clive "Max" Maxfield(クライブ・マックスフィールド)氏

Clive "Max" Maxfield氏は、1980年にイギリスのシェフィールドハラム大学で制御工学の理学士号を取得し、メインフレームコンピュータの中央処理装置(CPU)の設計者としてキャリアをスタートしました。Maxは長年にわたって、シリコンチップから回路基板まで、果ては脳波増幅器からスチームパンクな予測エンジンまであらゆる設計に携わってきました(細かいことは聞かない)。彼はまた、30年以上にわたってEDA(電子設計自動化)の最前線にいます。

また彼は、『Designus Maximus Unleashed』(アラバマ州で発禁)、『Bebop to the Boolean Boogie』(型破りなエレクトロニクス界へのガイド)、『Where Electronics Begins』(EDA関連)、『Instant Access』(FPGA関連)、『How Computers Do Math』(同)をはじめとする多くの書籍の著者や共著者として活動しています。彼のブログ Max's Cool Beans をチェック!

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