固定型ロボットの高度化に向け、センシング、コネクティビティ、モーション制御デバイスにおける最新技術を活用

著者 Bill Schweber氏

DigiKeyの北米担当編集者の提供

マウント型(固定型)ロボットシステムは、多軸ロボットとも呼ばれ、決められたワークスペース内で高精度かつ高性能な動作を実現するように設計されています。これらのシステムは、再現性、速度、積載能力が極めて重要な現代の製造および自動化セルの中核を担っています。

一般的な例としては、協働ロボット(コボット)、多関節ロボットアーム、水平多関節ロボットアーム(スカラ)、デルタ(パラレルリンク)機構、コンピュータ数値制御(CNC)、ガントリ式機械などがあります。用途要件に応じて、このようなロボットはレール、壁、天井、床に取り付けられる他、生産機械に直接組み込むことも可能です。組み立て、マテリアルハンドリング、梱包、検査、加工プロセスなど、柔軟な展開を実現します。

高度なドライブエレクトロニクス、高精度センサ、リアルタイム制御アーキテクチャを組み合わせることで、これらのマウント型ロボットプラットフォームは、スマートで接続された製造環境に不可欠な信頼性、汎用性、機能性、精度を提供します。しかしながら、これらのシステムの利点と性能を最大限に引き出すためには、設計者は、モーション検知、位置およびエリアセンシング、モーション制御、コネクティビティにおける最新の進歩を理解し、適用する必要があります。

本記事では、高度なロボットの設計要件について簡単に説明します。続いて、Analog Devicesのソリューション事例および関連評価キットを紹介します。設計者はこれらを活用し、システムの実装が可能になります。

先進ロボットの設計要件

先進マウント型ロボット(図1)は、移動型ロボットと比較して、2つの特徴があります。1つは、比較的静的で既知の環境内で動作すること、もう1つはバッテリ駆動に依存しないことです。しかしながら、変化する状況下においても、高速性、精密性、再現性、精度を備えた動作が求められます。たとえば、さまざまな大きさ、形状、重量、向き、位置のパッケージをピックアップし、動くベルト上の正確な位置に置かなければならない場合があります。これらを実現するためには、これらのロボットは自身の設定や周囲の状況を認識しながら、自律的に状況を判断し、動的に対応しなければならなりません。

広く普及している固定型ロボットの画像図1:広く普及している固定型ロボットは、現在では極めて高い精度、柔軟性、適応性を備えています。(画像提供:Analog Devices Inc.)

これらの要件を満たすためには、エンドエフェクタの精密なモーション制御、周囲の状況を把握するための飛行時間型(ToF)イメージング、モーションセンシングのための慣性計測ユニット(IMU)、そして信頼性の高い高速通信のためのギガビットマルチメディアシリアルリンク(GMSL)を慎重に統合する必要があります。

1:エンドエフェクタグリッパのモーション制御:ロボットのグリッパは手やクランプのように機能し、要求に応じて開閉します。ペイロードを損傷せず確実にグリップするために、適切な力加減が求められます。そのためには、モータドライブがモータを慎重に制御し、精密で安定性のあるスムーズな動作を実現する必要があります。また、重量とスペースの制約から、ドライブは低質量で小型でなければなりません。

このようなコントローラに適したソリューションの1つが、TMCM-1617単軸サーボドライブです(図2)。重量24g、寸法36.8mm × 26.8mm × 11.1mmのこの3相ブラシレスDC(BLDC)モータドライブは、最大18A RMSを供給可能で、8V~24Vの電源で動作します。

軽量かつ小型のAnalog Devices TMCM-1617サーボドライブの画像(クリックして拡大)図2:軽量かつ小型のTMCM-1617サーボドライブは、8V~24V、18AのBLDCモータ制御を実現します。(画像提供:Analog Devices Inc.)

TMCM-1617は、位置フィードバックのためにインクリメンタルエンコーダとデジタルホール効果センサをサポートしており、これによりさまざまな負荷条件下での精度と再現性が向上します。コネクティビティに関しては、CAN、RS-485、およびEtherCATバスオプションを備えています。

TMCM-1617とそのアルゴリズムを迅速に評価、調整するために、Analog DevicesはTMCM-1617-GRIP-REFグリッパリファレンスデザインを提供しています。このオープンソースハードウェアリファレンスデザインは、ロボットのグリッパに使用される24V BLDCモータの精密制御専用に設計されています。精密なベクトル制御(FOC)を提供し、トルクリップルを最小限に抑え、効率的で高性能なモータ制御を実現します。設定済みのソフトウェアスタックにより、初期設定プロセスが合理化され、市場投入までの時間を短縮します。

2:ToFセンサ: ロボットが周辺環境および動作領域内のあらゆる物体を完全に認識できるようにするため、設計者には基本的に2つの選択肢があります。ToFセンシング配列を使用するか、1台以上のビデオカメラを使用するかです。それぞれに相対的な利点と欠点があります。

一般的に、深度センシングにはToFカメラが適しており、高精度の距離測定が可能です。しかし、一般的に従来のビデオカメラよりも空間分解能が低く、周囲の光や反射面の影響を受けやすいという欠点があります。一方、標準的なビデオカメラは、高解像度の画像を提供し、さまざまな用途に汎用性がありますが、深度情報を抽出するにはより複雑な処理と複数のカメラが必要になります。

多くのロボットアプリケーションにとって、ToFベースのイメージングのメリットは大きいと言えます。ただし、ToFベースのセンシングサブシステムでは、適したLED光源、レンズ、光学フィルタ、イメージャなど、多くの電気光学コンポーネントを注意深く組み合わせて構成する必要があります。これらのコンポーネントを選び、組み立てるには、電気、機械、光学の幅広い専門知識が必要です。

このような問題を最小限に抑えるため、Analog Devicesは、ADTF3175 ToFモジュールを提供しています(図3)。この完成されたユニットは、1メガピクセル(MP)のCMOS間接ToFイメージャを備えています。また、イメージャ用のレンズと940nmの光学バンドパスフィルタ、光学系を含む赤外照明光源、レーザーダイオード、レーザーダイオードドライバおよび光検出器、フラッシュメモリ、ローカル電源電圧を生成する電源レギュレータも統合されています。

Analog Devices Inc. ADTF3175モジュールの画像(クリックして拡大)図3:ADTF3175モジュールには、完全なToFサブシステムに必要な電子、機械、光学部品がすべて含まれています。(画像提供:Analog Devices Inc.)

1024 × 1024ピクセルADTF3175センサ(視野角75°×75°)のイメージクラウドデータ出力は、1レーンあたり1.5ギガビット/秒(Gbits/s)で動作する4レーンのMIPI(Mobile Industry Processor Interface)カメラシリアルインターフェース2(CSI-2)を介してホストシステムに送信されます。本モジュールのプログラミングおよび動作は、4線式シリアルペリフェラルインターフェース(SPI)とI2Cインターフェースを通じて制御されます。深度範囲は0.4~4mで、全深度範囲において深度精度は±5mmです。

関連するADSD3500深度イメージシグナルプロセッサは、ADTF3175からのメガピクセル解像度の生データを変換し、最終的なラジアル深度、アクティブ輝度(AB)、および信頼データフレームを生成します。これにより、低レイテンシと高フレームレートが保証され、高速で移動する物体をカメラが正確に捕捉することが可能となります。その結果、ロボットは動的に変化する産業環境においてタイムリーな判断と正確な分析を行うことができます。

モジュールの設定と実装を容易にするため、Analog DevicesはEVAL-ADTF3175D-NXZ 3DoFセンサ評価キットを提供しています(図4)。このオープンソースキットには、ADTF3175モジュール、組み込み人工知能(AI)および機械学習(ML)アプリケーション向けのサードパーティ製数値演算処理ユニット、カメラインターフェースボード、インターポーザーアダプタボード、三脚が含まれています。

Analog DevicesのEVAL-ADTF3175D-NXZ評価キットの画像図4:EVAL-ADF3175D-NXZ評価キットは、ADTF3175 ToFセンサのデザインインを容易にするために必要な処理機能、コネクタ、三脚を提供します。(画像提供:Analog Devices Inc.)

3:IMU:ロボットのエンドエフェクタ(グリップ)は、所定の3次元領域内で自由に移動できるため、その空間における位置と姿勢の両方を把握することが極めて重要です。その方法の1つとして、各関節にエンコーダを取り付け、座標変換と行列式を用いてすべての出力を結合する方法が挙げられます。ただし、この方法では複数の多軸エンコーダが必要となり、計算の複雑さが増します。

この問題を回避する代替案として、3軸加速度センサと3軸ジャイロスコープを組み合わせた6自由度(6DoF)IMUを使用する方法があります。ADIS16500小型MEMS(微小電気機械システム) IMU(図5、左)は、SPI 出力を備えたわずか15 × 15 × 5mmの小型パッケージでこの機能を提供します。関連するADIS16500/PCBZ評価ボード(図5、右)のサイズは 33.25mm × 30.75mm です。このボードは、主に16ピン(2 × 8)、2mmピッチのコネクタを介して包括的なEVAL-ADIS2Z評価システムとの配線接続を容易にするためのブレイクアウトボードとして使用できます。

Analog Devices Inc.のADIS16500のハイレベルブロック図とADIS16500/PCBZブレイクアウトボードの画像(クリックして拡大)図5:ADIS16500のハイレベルブロック図(左)は、この6-DoF IMUの内部統合と高度な機能すべてを表しているわけでありません。関連するADIS16500/PCBZブレイクアウトボード(右)は、主にEVAL-ADIS2Z評価システムへの物理接続インターフェースとしての役割を担っています。(画像提供:Analog Devices Inc.)

デジタルジャイロスコープには±2,000°/秒(˚/s)のダイナミックレンジが、デジタル加速度センサには±392m/s2のダイナミックレンジがあります。ADIS1650/05/07の各慣性センサには動的性能を最適化する信号調整機能が搭載されています。

さらに、ジャイロスコープと加速度センサには固有の誤差要因があるため、工場での較正により各センサの感度、バイアス、アライメント、直線加速度(ジャイロスコープバイアス)、衝撃中心(加速度センサの位置)を特性評価しています。その結果、各センサには幅広い条件下で極めて精度の高い測定を行うための動的補正式が適用されています。

4:GMSL: ロボットアームにこれらすべての機能ブロックを統合する際には、重要な考慮事項があります。それらは相互に連携している必要があり、とくにToFモジュールは、大量のタイムクリティカルなデータを生成します。GMSLインターフェイスは、こうした状況に対応します。もともと車載向けに開発されたGMSLは、1本のケーブルで必要な高データレートをサポートするため、ロボティクスなどのアプリケーションにも採用されています。

たとえば、8 × 8mm TQFNパッケージのMAX96724デシリアライザは4つのGMSL 2/1入力を1、2、または4つのMIPI D-PHYまたはC-PHY出力に変換します(図6)。この6Gビット/秒、4入力、2出力のデバイスは、50Ω(Ω)同軸ケーブルまたは100Ωシールド付きツイストペア(STP)ケーブルを使用して同時双方向通信が可能です。このデバイスは、遠隔に配置された最大4つのセンサに対応します。

Analog DevicesのMAX96724デシリアライザの図(クリックして拡大)図6:MAX96724デシリアライザは、4つのGMSL 2/1入力を1、2、または4つのMIPI D-PHYまたはC-PHY出力に変換します。(画像提供:Analog Devices Inc.)

各GMSL2シリアルリンクは、順方向では3Gbpsまたは6Gbps、逆方向では187.5Mbpsの固定レートで動作します。また、このリンクは順方向受信特性を自動的に適応させ、チャンネルの挿入損失および反射損失特性を補償することが可能です。これらの損失は、ケーブル、コネクタ、温度による影響、およびプリント回路基板(プリント基板)の特性によって大きく左右されます。MAX96724は、ビデオデータの集約と再現の両方に対応し、遠隔に配置された複数のセンサからのストリームを結合することが可能です。

これらのデバイスは、設定および使用が複雑なものです。Analog Devicesは、MAX96724-BAK-EVK#評価キット(図7)により、この作業を容易にしました。このキットは、標準的なFAKRA同軸ケーブル(車載およびその他のアプリケーションで使用される堅牢なケーブル/コネクタアセンブリ)またはMATE-AXケーブル(FAKRAケーブルの小型版)を使用してMAX96724デバイスを評価するための、実績のある設計と信頼性の高いプラットフォームを提供します。

Analog DevicesのMAX96724-BAK-EVK#評価キットの画像(クリックして拡大)図7:MAX96724-BAK-EVK#評価キットは、高度に洗練されたMAX96724を基盤とした設計を実装する上で、非常に有用なツールです。(画像提供:Analog Devices Inc.)

本キットには、デバイスの機能を実行するための、Windows 10®(またはそれ以降)互換の使いやすいグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)が含まれています。

まとめ

最先端のマウント型ロボットシステムは、必要な速度、精度、柔軟性を発揮するために、複数の技術を慎重に統合する必要があります。高度なサーボ制御、ToFイメージング、IMUなど多様な技術を、GMSLを用いて接続することで、必要な機能を実装と統合が可能となります。Analog Devicesは、デザインインプロセスを加速し、リスクと不確実性を最小限に抑えるために、必要なコンポーネントと評価ユニットを提供しています。

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著者について

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Bill Schweber氏

エレクトロニクスエンジニアであるBill Schweber氏はこれまで電子通信システムに関する3冊の書籍を執筆しており、また、発表した技術記事、コラム、製品機能説明の数は数百におよびます。これまで、EE Timesでは複数のトピック固有のサイトを統括するテクニカルウェブサイトマネージャとして、またEDNではエグゼクティブエディターおよびアナログエディターの業務を経験してきました。

Analog Devices, Inc.(アナログおよびミックスドシグナルICの大手ベンダー)ではマーケティングコミュニケーション(広報)を担当し、その職務を通じて、企業の製品、ストーリー、メッセージをメディアに発信する役割と、自らもそれらを受け取るという技術PR業務の両面を経験することになりました。

広報の業務に携わる以前は、高い評価を得ている同社の技術ジャーナルの編集委員を務め、また、製品マーケティングおよびアプリケーションエンジニアチームの一員でした。それ以前は、Instron Corp.において材料試験装置の制御に関するハンズオンのアナログおよび電源回路設計およびシステム統合に従事していました。

同氏はMSEE(マサチューセッツ大学)およびBSEE(コロンビア大学)を取得した登録高級技術者であり、アマチュア無線の上級クラスライセンスを持っています。同氏はまた、MOSFETの基礎、ADC選定およびLED駆動などのさまざまな技術トピックのオンラインコースを主宰しており、またそれらについての書籍を計画および執筆しています。

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