高精度オペアンプの効果的に選択し、使用する方法
DigiKeyの北米担当編集者の提供
2019-07-30
フロントエンド信号調整システムを設計する場合、一般的に設計者は、個別部品を使用したソリューションよりも、広範に利用できる高度に統合された大規模データ収集ICの使用を好みます。これにより、コスト、時間、サイズを低減し、BOM(部品表)をシンプルにできます。ただし、高性能テスト、測定、および計測器システムのような一部のアプリケーションでは、特殊センサとインターフェース接続する単体のオペアンプが特別な注意を必要とする重要なフロントエンド部品となります。
この単機能高精度オペアンプは、帯域幅、ノイズ、消費電力性能のバランスを保ちつつ、電圧オフセット、オフセットドリフト、入力バイアス電流がきわめて小さいことが特長の特殊デバイスです。
これらの高精度デバイスを使用する場合、設計者が克服すべき設計課題が2つあります。それは、アプリケーションに最適なデバイスを選択することと、デバイスの潜在性能を最大限に引き出すことです。後者には、デバイスの動作を理解し、高精度を実現する属性を不注意で無効にすることなく、正しく適用することが求められます。
この記事では、高精度オペアンプの役割と意義、および設計上の考慮事項を説明します。そして、これらの設計上の考慮点をもとに、アナログ・デバイセズ社のサンプル・ソリューションを用いて、精密オペアンプの選択と効果的な使用方法を紹介します。
高精度オペアンプの役割
精度が劣る可能性のあるオペアンプを搭載した大規模ICの魅力は、オペアンプの不完全性を単に「較正」することにより、センサチャンネル性能を確保できることです。ただし、これは時間がかかるだけでなく、センサとそのチャンネルフロントエンドを正確に較正するのは非常に難しいという現実もあります(特に現場でのシステム使用開始以降)。この点を理解するには、高精度オペアンプの役割に留意することが重要です。
高精度オペアンプは、歪みゲージ、超音波圧電トランスデューサ、および光検出器などのセンサ間で主に使用され、脆弱なトランスデューサ出力を負荷なしで出力信号をキャプチャします。次に、オペアンプはその調整済み信号を残りのアナログ信号チェーンに正確に伝送します。これは、一般的にA/Dコンバータ(ADC)で完結します。オペアンプは、対象の信号を歪めたり、DCオフセットしたりしないアナログフィルタでも使用されます。
これらのアプリケーションでは、オペアンプの性能が線形で再現性があること、また時間、温度、電源レールに関して安定していることが重要です。さらに、ほとんどの場合、オペアンプは低ノイズ(一般的にセンサ出力または他のアナログ信号は非常に小さい)で、スペクトル全体にわたって応答がフラットである必要があります。また、最小限のオーバーシュートおよびリンギングで高速スルーイングしている必要があります。多くの場合、アプリケーションは電池駆動であるため、オペアンプはアクティブモードおよび静止モードで電力の消費を最小限に抑える必要があります。
単機能高精度オペアンプは、標準オペアンプの記号で回路図に表記します(図1)。しかし、このことは特殊なディスクリートデバイスの複雑さを示してはいません。
図1:高精度オペアンプの回路図記号は、標準オペアンプと同じであり、この基本的かつ重要なフロントエンド信号処理デバイスのクラス、性能、およびパラメータは明示されていない。(画像提供:Analog Devices)
オペアンプの性能パラメータは、非高精度アプリケーションではしばしば第2、第3の要素でしかありませんが、高精度オペアンプでは最重要の位置を占めています。これには、通常µV/√HzまたはnV/√Hzで記載されるノイズ、入力オフセット電圧とそのドリフト、入力バイアス電流とそのドリフト、およびゲイン、帯域幅、スルーレートなどの通常要素が含まれます。
入力オフセット電圧と入力バイアス電流の両方を詳しく考察します。
入力オフセット電圧とは、出力をゼロにするためにオペアンプの2つの入力端子間に印加しなければならない直流(DC)電圧です。オペアンプゲイン設定の機能として、オフセット電圧はオペアンプゲインにより増幅されるため、出力の誤差の一因となります。
入力バイアス電流は、その内部回路に適切にバイアスをかけるために、オペアンプの入力接続を通過する微量の電流です。入力バイアス電流が引き起こす可能性のある問題は、オペアンプの反転および非反転入力バイアス電流の両方がオペアンプに出入りする同じ経路を通過しようとするため、この電流のセンサソースへのリターンパスが不足することです。
入力バイアス電流の別の潜在的問題は、入力に接続されたセンサの抵抗全体にわたって望ましくない電圧降下が発生することです。この抵抗が小さい場合(多くの場合小さい)、この結果として生じるオフセットは重要ではない可能性があります。pHプローブ電極からのように入力抵抗が非常に高い場合は、大きな問題となる可能性があります。
これらおよび他のオペアンプパラメータに関しては、温度によって誘発される値のドリフトも問題です。ドリフトによる変化を修正するのは困難です。ただし、手動のハードウェアトリム(コストと時間は増加)またはソフトウェア補正により、定格温度での誤差を補償できます。
さらに、オペアンプは経時変化や温度による性能変化を示す場合があります。その経時変化の値は予測不可能です。多くの高精度オペアンプのデータシートには、主要なパラメータの経時変化の仕様が記載されています。ただし、経時変化はランダムな過程であるため、明確な値ではなく推定値によりのみ特性化できます。
使用条件に関わらず、これらの高精度デバイスの入力オフセット電圧とバイアス電流を高い信頼性をもって実際に測定することは非常に難しく、有益かつ効果的な補償方式を実装することも困難です。より良いアプローチは、アプリケーション情報だけでなく、性能関係のあらゆる側面を特性化および定義する数多くの表やグラフを含む包括的なデータシートを備えた製品のみを検討することです。
高精度オペアンプから必要なもの引き出する
すべてのオペアンプの実装では、実際のデバイスのさまざまな側面(設計、プロセス、トリム、およびテスト)においてトレードオフが必要になります。高精度オペアンプが標準デバイスとわずかに異なる点は、設計者がどのパラメータおよび値を優先するかを決定し、それぞれに相対的な重み付けを割り当てなければならないことです。
Analog Devicesが提供する高精度オペアンプの2種類のファミリ(ADA4805-1シングルチャンネルデバイス/ADA4805-2デュアルチャンネルデバイス、およびADA4896-2デュアルチャンネルデバイス)について考えてみましょう。
これらは基本機能が似ていますが、仕様ハイライトが示すように重要な違いもあります(表1)。設計上の優先事項が電圧ノイズの低減である場合、ADA4896はより良い選択肢であると思われますが、電流ノイズと入力オフセット電圧がADA4805ファミリよりも高くなってしまいます。もちろん、電源やコモンモード電圧などに関して、2つのファミリの間には他にも多くのトレードオフがあります。
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表1:高精度オペアンプファミリのADA4805とADA4896には、電流ノイズ、入力オフセット電圧、その他のパラメータに関して重要な違いがある。(表データ提供: DigiKey)
出力も重要
入力特性や入力性能は高精度オペアンプを評価する際の重要な要素ですが、出力も無視できません。とりわけ重要な要素には、スルーレートと出力振幅が含まれます。たとえば、ADA4805デバイスには、フィードバック誤差電圧の上昇に応じてスルーレートを引き上げる内部スルーエンハンスメント回路があります。これにより、大きなステップ入力に対する応答を高速化し、セトリング時間を短縮できます(図2)。
図2:選択された出力ステップサイズに対するADA4805のステップ応答ADA4805はフィードバック誤差電圧の上昇に応じてスルーレートを引き上げるスルーエンハンスメント回路を内蔵しており、大きなステップ入力に対する応答を高速化し、セトリング時間を短縮できる。(画像提供:Analog Devices)
これらのオペアンプの調整対象となるセンサ信号の多くはステップ入力ではないことに留意してください。多くの場合、これらのセンサは多重化されています。したがって、マルチプレクサ(mux)がチャンネルを切り替えると、オペアンプからステップの変化を確認できます。ADA4805デバイスのスルーエンハンスメントの影響は、大きな信号周波数応答でも確認できます。ここでは、大きな入力信号によりピーキングがわずかに上昇します(図3)。
図3:ADA4805における周波数応答のピーキングは信号レベルの関数であり、ここでは+1のゲインで示されている。(画像提供:Analog Devices)
ADA4805アンプをパワーダウンすると、その出力は高インピーダンス状態になり、周波数の増加に伴ってインピーダンスが低下します。ADA4805デバイスのシャットダウンモードにおける、100kHz時のフォワードアイソレーションは62dBです(図4)。
図4:ADA4805のフォワード/オフアイソレーションは周波数の関数であり、周波数の増加に伴って低下する。(画像提供:Analog Devices)
ADA4805のような高精度オペアンプは、本来シングルエンドのセンサ出力を多くの高性能ADCに適した差動モードへ変換するのに使用できます。そのような差動信号が望ましい理由は、ノイズや高調波歪みが低減するためです。これは、従来の設計トレードオフの一例であり、単一の差動アンプを使用するか、2つの別個の物理アンプを構成して、シングルエンドから差動への変換を実行します。通常、前者の方が優れた性能が得られますが、2つのアンプによるソリューションよりもコストが増加します。
ADA4805ファミリは、両方の利点を組み合わせることによりこのジレンマを解決します。このデバイス固有の低い高調波歪み、低オフセット電圧、および低バイアス電流は、高分解能ADCの性能に適合した差動出力を生成できることを意味しています。さらに、シングル差動アンプソリューションと同等のコストでそれを実現します。
容量性負荷を駆動する場合は、少しややこしくなります。アンプ出力での静電容量により、フィードバックパス内で時間遅延(位相シフト)が発生します。ループの帯域幅内の場合は、これにより過剰なリンギングや発振が発生します。たとえば、ADA4896-2の応答-ゲイン曲線は、+2のゲインで最大量のピーキングの発生を示しています(図5)。
図5:ADA4896-2の小信号周波数応答-ゲインは、ゲインに応じてどのように変化するかを示しています(RL = 1kΩで、G = +1の場合はRF = 0Ω、その他の場合はRF = 249Ω)。(画像提供:Analog Devices)
このような望ましくないピーキングに対する標準的な解決法は、アンプ出力および容量性負荷に値の小さな「スナバ」抵抗器を直列に接続して、問題を最小化することです。小さな100Ωのスナバはこのピーキングを完全に排除しますが、出力での減衰により閉ループゲインが0.8dB低減するというトレードオフをもたらします。スナバ抵抗器の値を0Ω~100Ωの間で調整することにより、ピーキングおよび閉ループゲインを許容レベルにできます(図6)。
図6:出力でスナブ抵抗器(RSNUB)の使用により、+2のゲインで示されているADA4896-2のワーストケースとなる周波数応答におけるピーキングが低減する。(画像提供:Analog Devices)
ゲインが選択可能なアンプを使用すれば、信号チェーンは可能性のある幅広い入力信号に対応できます。従来のゲイン選択可能アンプでは、フィードバックループのスイッチが反転入力に接続されています。これらのスイッチの小さいながらも回避不可能な抵抗により、アンプのノイズ性能が低下すると共に反転入力ノードへ無視できない静電容量が加わります。これらの結果、オペアンプの低ノイズ性能が損なわれます。さらに、抵抗により非線形のゲイン誤差が増加し、オペアンプ性能が損なわれます。
このような性能低下を回避するため、設計者はプログラム可能なゲインスイッチングトポロジを使用できます。これにより、非線形のゲイン誤差を低減しつつ、ADA4896-2の1nV/Hzノイズ性能を維持します。最小静電容量を備えたスイッチの選択により、回路の帯域幅を最適化できます。
図7:ADG633アナログスイッチを備えた2チャンネルのADA4896-2を使用して、ゲインを選択可能な低ノイズのアンプを構築できます。これにより、非線形のゲイン誤差を低減して、低抵抗負荷を駆動できます。(画像提供:Analog Devices)
入力アンプのバイアス電流は微量ですが、ゲイン設定に応じて異なるオフセットを出力で引き起こす可能性があります。ただし、ADA4896-2の入力アンプおよび出力バッファ段は共に単一モノリシックデバイスの一部であるため、バイアス電流は厳密に適合しています。この特性により、さまざまなオフセットが大幅に打ち消されます。
パッケージングおよびレイアウトの考慮事項
高精度オペアンプは、半導体チップ上に注意深く設計された回路以上のものです。パッケージング方法やそのパッケージの展開方法は、データシートに示される「完全な」条件下での性能と比較してデバイスがどれほど優れた動作を提供するかに影響を与えます。
高精度電圧リファレンスと同様に、オペアンプのパッケージは、現場で発生するプリント基板の通常の屈曲や振動だけでなく、配置および初期はんだ付けプロセスで発生する微量の機械的応力にさらされます。その結果として生じる歪みは、デバイス性能に小さいながらも重大な影響を与えかねない変化をもたらします。これは、誘導体結晶への圧電効果や他の材料特性によるものです。
したがって、プリント基板に十分な剛性があることを確認し、必要に応じて追加サポートを行うことが重要です。潜在的な応力を解消する前に、基板を熱循環させることが必要な場合もあります。
多くのアナログ回路(特に高精度回路)と同様に、設計を成功させるにはレイアウトと接地が主な考慮事項となります。高い値と低い値の両方のコンデンサを平行に配置して使用することにより、電源をバイパスすることが重要です。一般的に、バイパスペアは10µFの電解コンデンサと0.1µFのセラミックコンデンサを並列に配置して構成されます。値の最も小さいコンデンサをアンプと同じ基板側の電源ピンにできるだけ近い場所に配置する必要があります。
シングルチャンネル対デュアルチャンネル
高精度オペアンプのシングルチャンネル版とデュアルチャンネル版での選択には、従来のトレードオフや妥協が関係しています(図8)。たとえば、デュアルデバイスの機能ごとのフットプリントは小型パッケージであり、必要とするバイパスコンデンサが少ないため全体面積も縮小されています。
図8:6ピンSOT-23パッケージのADA4805-1のピン配列(左)、8ピンMSOPパッケージのADA4805-2のピン配列(右)(画像提供:Analog Devices)
ただし、デュアルデバイスを使用する場合には、回路図に応じて、より長い低レベル入力信号トレースが必要な場合があります。これにより、スペースが占有され、設計が複雑化するだけでなく、ノイズのピックアップも増加します。したがって、2つのシングルチャンネルデバイスを使用するか、1つのデュアルチャンネルデバイスを使用するかの決定は、BOMのシンプルさだけでなく、各アンプ機能の近接、ICおよび関連受動デバイスのフットプリントの総計、および電気的性能の観点で判断する必要があります。
直観に反した高精度オペアンプの接地原則
高精度オペアンプの接地原則は、基板レイアウトの設計者がしばしば前提とする、接地面積やグランドプレーンが広いほうが好ましいという見方とはいくらか異なっています。
高精度オペアンプでは、入出力の下および周辺の領域での接地を回避することが重要です。それは、グランドプレーンと入出力パッドの間に発生する浮遊容量が高速アンプ性能にとって有害だからです。反転入力での浮遊容量やアンプの入力静電容量も位相マージンを減少させ、不安的な状態を引き起こします。出力では、浮遊容量がフィードバックループ内で極を生成します。これも、位相マージンを減少させ、回路を不安定にします。
高精度オペアンプを使い始めるために
これらのオペアンプのさまざまな性能の検証は、ベンダーが提供する評価ボードを使用すると簡単になります。幸いなことに、多くのオペアンプにおいて特定パッケージのピン配列はベンダーの全製品内で(および業界全体にわたってかなりの程度)ほぼ標準化されているため、1つの評価ボードを多くのオペアンプモデルに対して使用できます。
たとえば、Analog DevicesのEVAL-HSAMP-2RMZ-8は、8ピンMSOPデュアルチャンネルアンプ用のベア(未実装)の6レイヤ評価ボードです。この評価ボードは、入出力がSMAエッジマウントコネクタに対応しており、機器や他の回路をテストするための効率的な広帯域接続が可能です(図9)。
図9:Analog Devicesの8ピンMSOPデュアルオペアンプ評価用EVAL-HSAMP-2RMZ-8 6レイヤベアプリント回路基板は、入出力がSMAエッジマウントコネクタに対応している。(画像提供:Analog Devices)
この評価ボードのグランドプレーンおよび部品配置は、回路図だけでは分からない寄生インダクタンスや静電容量を最小化するように設計されています(図10)。
図10:Analog DevicesのEVAL-HSAMP-2RMZ-8評価ボードの回路図(画像提供:Analog Devices)
EVAL-HSAMP-2RMZ-8の回路図は相互接続や部品スペースの割り当てを示していますが、それらの実際の値は示していません。これは、オペアンプおよびアプリケーションのニーズに適合する値の受動デバイスを使用してユーザーが性能を評価できるよう、ボードに未実装であるためです。推奨される評価ボード部品は、1206ケースサイズの電解バイパスコンデンサ(C1およびC2)を除き、主にSMT 0603ケーズサイズです。
まとめ
高度に統合された大規模データ収集ICを使用すれば、コスト、時間、サイズを低減し、BOM(部品表)をシンプルにできますが、一部のアプリケーションには単体の高精度オペアンプが必要です。この単機能デバイスは高度に特殊化されているため、これを選択、デザインインして、その潜在性能を最大限に引き出すことが難しくなっています。
ただし、望ましいデバイスの選択につながる多くの要素に関して適切な知識を得ると、迅速な選択が可能です。デバイスの選択後は、既述の要素を考慮に入れて、高精度オペアンプを正しく応用する必要があります。これにより、データシートに記載されたデバイスの実際の性能が損なわれることを回避できます。さらに、評価ボードを配置や基板レイアウト(回路図には表れない物理的要素)に関する知識と組み合わせて活用することが、デザインインの成功につながる重要なカギとなります。
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