Apple iPhone、VCSELベースのLiDARを搭載:広がる可能性

光による検知と測距(LiDAR)技術の経済的・技術的な実行可能性については、否定的な意見も多く、議論が続いていましたが、ついにLiDARが勝利したように思われます。General Motorsは、来年、先進運転支援システム(ADAS)を備えた9台の車にLiDARを搭載すると最近発表しました。Appleは、すでに垂直共振器面発光レーザー(VCSEL)技術を採用し、iPhone 12 Pro、iPhone 12 Pro Max、iPad ProにLiDARを搭載しています。モバイルデバイスにLiDARを搭載することで、画期的な進化を遂げることが期待されています。まだLiDARの活用を検討していないのであれば、今がそのときであると言えます。

iPhoneのLiDARは、最大5mの距離の物体の深度センシングを可能にし、カメラやモーションセンサと連携して、拡張現実(AR)環境を作成・操作できるように設計されています(図1)。新しい8コアのA12Z Bionicグラフィックス処理ユニット(GPU)とコンピュータビジョンアルゴリズムは3Dモデリング用に設計されており、既存のARKit ARアプリには、LiDARデータとカメラおよびモーションセンサデータを統合するScene Geometry APIが追加されています。また、LiDARデータはMeasureアプリに統合され、より高速かつ詳細に対象物を測定する機能を提供します。

図1:黒い枠の右下(左側の2つのカメラの右横)にある小さな円が、このApple iPhoneに搭載されているLiDARセンサ(画像提供:Apple)

AppleのClips 3.1アプリのAR Spaces機能を使用すれば、ユーザーは撮影した動画のLiDAR情報を統合し、ダイナミックな照明や落下物などの特殊効果で没入感のあるARシーンを作成できます(図2)。

図2:ARビデオクリップを作成できるAppleのClips 3.1アプリのAR Spaces機能(画像提供:Apple)

それでは、VCSELと端面発光レーザー(EEL)LiDAR技術の簡単な比較、LiDARが用いる飛行時間(ToF)と点群という概念の概要、そしてams/OSRAMTMF8801 LiDARモジュールとDFRobotArduino UNO制御ボードx1向けSEN0245 VL53L0X Gravity LiDAR距離測定器について考察しましょう。

VCSELとEELの比較

Appleなどが採用したVCSELは、車載用や産業用のLiDARシステムで一般的に使用されているEELとは異なります。VCSELは、低電力の短距離アプリケーションに最適化されており、いくつかの利点を備えています。

  • VCSELアレイは50~10,000個の個別エミッタで構成され、エミッタが1~4個のEELと比較して、エミッタ1個の不具合による影響を大幅に軽減できるため、信頼性が高くなります。
  • 全温度範囲における波長帯域の狭小化により、レシーバでのフィルタリングがより効果的になり、信号対ノイズ比(SNR)が改善されます。
  • VCSELは垂直な円筒形ビームを放射するため、システムの統合がより簡単になります。

ToFと点群

LiDARはToF測定に基づいています。一連のレーザーパルスを物体に向けて照射し、戻ってくる時間をオンボード光センサで測定します(図3)。ToFはレーザーパルスの往復飛行時間を測定するため、物体までの距離はToFの半分に光速を掛けたものに比例し、空気中では1ナノ秒あたり約30センチメートル(cm/ns)となります。iPhoneで使用されているようなVCSELシステムは、数メートルまでの距離を高精度で測定できます。

図3:ToF測定は、レーザーパルスが対象に反射してLiDARセンサに戻ってくるまでの時間の測定に基づいています。(画像提供:DFRobot)

点群は、何千、何百万というToFの測定値で構成されます。LiDARシステムは、点群と、画像を処理する関連ソフトウェアを使用して、周辺環境の3次元(3D)画像を30フレーム毎秒(fps)以上の速度で作成できます。

携帯電話ベゼル用VCSEL

ポータブルデバイスおよびハンドヘルドデバイスの設計者は、ams/OSRAMのTMF8801 LiDAR ToFセンサを使用できます。検出範囲は2500mmで、携帯電話ベゼルに収まるように設計された2.2 x 3.6 x 1.0mmのパッケージで提供されます(図4)。

図4:TMF8801 ToFセンサは、携帯電話ベゼルに収まるサイズで2500mmの範囲を検出できます。(画像提供:ams/OSRAM)

TMF8801は、VCSEL技術と、数十ピコ秒(ps)の分解能で単一光子信号を検出できる単一光子アバランシェダイオード(SPAD)センサを組み合わせたものです。内蔵のVCSELドライバは、持続時間500ps未満の波長940nmのレーザーパルスを発生させます。これにより、TMF8801が、目の安全に関するIEC 60825-1 Class 1に適合可能になります。また、太陽光除去フィルタによりバックグラウンドノイズが最小限に抑えられ、内蔵のCortex M0マイクロコントローラ(MCU)には画像処理アルゴリズムが搭載されています。TMF8801のシステムへの接続には、1.8VのI²C高速モードインターフェースが使用されます。

Arduinoボード用VCSELモジュール

DFRobotのSEN0245 VL53L0X Gravity距離測定器も、VCSELベースのLiDARの利用を検討する際の優れた選択肢の1つです(図5)。これは、Arduino UNO制御ボードx1と組み合わせて使用するために設計されており、最大2mまでの距離を測定できます。波長940nmのVCSELエミッタと内蔵SPADアレイにより、測定精度±3%、応答時間30ミリ秒以下、消費電力20mWが実現されています。VL53L0Xは、さまざまなMCUと組み合わせて使用するために設計されたDFRobotのGravity-I2Cインターフェースを搭載しており、幅広いLiDARアプリケーションに対応する柔軟性を提供します。

図5:SEN0245 VL53L0X ToFレーザー距離測定器は、Arduino UNO制御ボードx1と組み合わせて、最大2mの距離測定ができるように設計されています。(画像提供:DFRobot)

まとめ

すでに主流になりつつあるLiDARの技術が通用するかどうかは、もはや問題ではありません。LiDARは、車載用ADASシステムやApple iPhoneの最新モデルにも搭載されています。特に、低電力のVCSELエミッタ技術とSPADセンサアレイを組み合わせることで、消費者向けポータブルデバイスでのLiDARの利用が可能になります。

光学部品、MCUインターフェース、基本的な画像処理ソフトウェアなど、必要なものがすべて揃った既製のモジュールを使用することで、独自のVCSELベースのLiDAR設計をすばやく開始できます。

著者について

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ジェフ氏は、パワーエレクトロニクス、電子部品、その他の技術トピックについて30年以上にわたり執筆活動を続けています。彼は当初、EETimes誌のシニアエディターとしてパワーエレクトロニクスについて執筆を始めました。その後、パワーエレクトロニクスの設計雑誌であるPowertechniquesを立ち上げ、その後、世界的なパワーエレクトロニクスの研究グループ兼出版社であるDarnell Groupを設立しました。Darnell Groupは、数々の活動のひとつとしてPowerPulse.netを立ち上げましたが、これはパワーエレクトロニクスを専門とするグローバルなエンジニアリングコミュニティで、毎日のニュースを提供しました。また彼は、教育出版社Prentice HallのReston部門から発行されたスイッチモード電源の教科書『Power Supplies』の著者でもあります。

ジェフはまた、後にComputer Products社に買収された高ワット数のスイッチング電源のメーカーであるJeta Power Systems社を共同創設しました。ジェフは発明家でもあり、熱環境発電と光学メタマテリアルの分野で17の米国特許を取得しています。このように彼は、パワーエレクトロニクスの世界的トレンドに関する業界の情報源であり、あちこちで頻繁に講演を行っています。彼は、定量的研究と数学でカリフォルニア大学から修士号を取得しています。

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