キットを使用して、GNSSベースの高精度測位アプリケーションを迅速に開発
全地球測位衛星システム(GNSS)の利用は、基本的なナビゲーションにおいて日常的なものとなりました。それでも、新たなアプリケーションは、従来の衛星ベースのナビゲーションシステムの能力をはるかに超える測位精度に依存しています。GNSS補正法は、ますます高精度な測位情報を提供できるようになりましたが、その導入には、要求される精度、信頼性、統合の容易さ、強固なセキュリティを確保する上で、複数の課題があります。
しかし、こうした問題への取り組みは急速に進んでいます。ここで、u-bloxの完全に統合されたオールバンド高精度GNSSモジュール、評価キット、ソフトウェア、およびサービスを見てみましょう。これらは、センチメートルレベルの精度が求められる測位システムの迅速な導入を支援するために設計されています。
多様なアプリケーションが基本的なGNSSを超える位置精度を必要とする理由
GNSSに基づくナビゲーションは、数メートル(m)以内の精度を必要とする個人および商用輸送アプリケーションにおいて日常的なものとなっています。広域補強システム(WAAS)などの補正方法の利用により、位置精度は、航空機の精密進入に必要な1~2mまで向上しましたが、より幅広いアプリケーションではまだ十分な精度ではありません。
たとえば、従来のシングルバンドGNSSモジュールは、必要な精度、速度、堅牢性を欠いていることが多く、車線レベルの精度を必要とする先進運転支援システム(ADAS)や自動運転機能には不向きです。同様に、ドローンや自律型地上車両向けの効果的なソリューションは、迅速な信号収束、卓越した精度、干渉からの保護に依存しています。
精密農業や重機のアプリケーションでは、センチメートル(cm)レベルの精度が求められます。特に遠隔地では、従来のインターネットプロトコル(IP)ベースの補正サービスにおいて、カバレッジギャップ、一貫性のないパフォーマンス、高額な運用コストといった課題があります。
同様に、通信インフラは、正確なナノ秒(ns)レベルのタイミング同期に依存しており、これは従来のGNSSモジュールにとって困難な課題です。従来のGNSSモジュールは多くの場合、スプーフィングや干渉の影響を受けやすく、精度に課題を抱えています。
従来のオールバンドGNSSソリューションは、精度を向上させることはできますが、多くの場合、複雑さ、電力需要の増加、コスト高をもたらします。u-blox ZED-X20Pオールバンド高精度GNSSモジュールは、このようなアプリケーション固有の課題に直接対応します。
位置精度を高める包括的なソリューション
可能な限り広いカバレッジで正確な測位データをアプリケーションに提供するように設計されたu-blox ZED-X20Pモジュールは、1559~1610メガヘルツ(MHz)のL1、1215~1252MHzのL2、1164~1210MHzのL5、1260~1300MHzのL6/E6、および1520~1559MHzのLバンドを含む複数のGNSSバンドを同時に捕捉します。
このモジュールのオールバンド機能により、全地球測位システム(GPS)、Galileo衛星ナビゲーションシステム、BeiDou航法衛星システム(BDS)、衛星ベース補強システム(SBAS)、Quasi‑Zenith衛星システム(QZSS)、およびインド地域航法衛星システム(NavIC)を含む複数のGNSSコンステレーションをサポートすることができます。消費電力を制限する必要がある場合は、GNSSコンステレーションのサブセットのみを受信するようにモジュールを構成できることに留意してください。
開発者にとって、このモジュールは、システム統合を迅速化し、複雑さを軽減するように設計されており、高度に統合されたアーキテクチャにより、高精度測位を実現するドロップインソリューションを提供します(図1)。
図1:ZED-X20P GNSSモジュールは、包括的なマルチバンドおよびマルチコンステレーションのサポート、統合セキュリティ、および高速コンバージェンスアルゴリズムを提供し、開発者の高精度GNSS設計の効率化を支援します。(画像提供:u-blox)
このモジュールは、マルチバンド無線周波数(RF)フロントエンドとデジタルブロックを組み合わせています。このデジタルブロックは、プロセッサ、GNSSエンジン、内蔵フラッシュメモリ、設定可能なタイムパルス同期出力を備えた専用タイミングエンジンから構成されています。わずか17.0 x 22.0 x 2.4ミリメートル(mm)のコンパクトな面実装パッケージで提供され、3.0ボルト動作時における標準消費電流は約55ミリアンペア(mA)です。
モジュールに内蔵されたスペクトラムアナライザがRF環境の干渉を監視する一方で、ZED-X20Pは複数の直接的な脅威からも保護します。その多層防御には、セキュアブートとセキュアストレージによる信頼の基点、妨害電波とスプーフィングの検出、Galileo Open Service Navigation Message Authentication(OSNMA)のサポートが含まれます(図2)。Galileo OSNMAは、Galileo衛星からの安全なエンドツーエンドの伝送を保証し、セキュリティが重要なGNSSアプリケーションの認証を民間ユーザーに提供します。
図2:Galileo OSNMAをサポートするZED-X20P GNSSモジュールは、Galileo衛星からの安全なエンドツーエンドの伝送を保証し、セキュリティが重要なGNSSアプリケーションの認証を民間ユーザーに提供します。(画像提供:u-blox)
精密測位アプリケーションでは、このモジュールは、観測空間表現(OSR)によるリアルタイムキネマティック(RTK)補正と、状態空間表現(SSR)による精密点測位リアルタイムキネマティック(PPP-RTK)補正の両方をサポートしています。
OSRによるRTK補正の測定値は、NTRIP(Network Transport of RTCM via IP)プロトコルを使用してインターネット経由で補正データプロバイダから送信されるRTCM(Radio Technical Commission for Maritime Services)メッセージとして届きます。モジュールのRTK動作モードは、ネットワークRTK(nRTK)またはシングルステーションRTKのいずれかで構築された比較的短いベースラインのアプリケーションに簡単なソリューションを提供します。nRTKでは、モジュールはVRSネットワークを運用する仮想基準局(VRS)サービスプロバイダからのRTCM補正を使用します。シングルステーションRTKでは、基準局はローカルで、補正データをローバー受信機に送信します。
たとえば、ロボット芝刈り機のアプリケーションでは、シングルステーションRTKを簡単に使用できます。この場合、1つのZED-X20Pモジュールが基準局として機能し、ローバー受信機として動作する2つ目のZED-X20Pに補正を提供します(図3)。
図3:OSRによるRTKのネイティブサポートを使用して、2つのZED-X20Pモジュールを迅速に構成し、ロボット芝刈り機などの短いベースラインのアプリケーションをサポートできます。(画像提供:u-blox)
SSRによるPPT-RTKもNTRIPプロトコルを使用しますが、このプロトコルは特定の補正データを配信するのではなく、SPARTN(Secure Position Augmentation for Real-Time Navigation)形式を使用して、軌道、クロック、信号バイアスを含む衛星中心のモデルを受信機にストリーミングします。SSRによるPPT-RTKの受信機は、モバイルインターネットやLバンド衛星放送を通じて送信されるSPARTNメッセージに含まれるストリームデータを使用して、ローカル補正を計算します。
この補正プロトコルは、非常に低いデータレートと、受信機で計算された補正を組み合わせているため、通信帯域幅が限られている長いベースラインのアプリケーションに特に効果的です。Lバンド受信機能とSPARTN/SSRのネイティブサポートにより、ZED-X20Pモジュールは、モバイルインターネット接続が不安定な可能性がある無人航空機(UAV)、農業機器、物流/輸送システムなどのアプリケーションに適しています。補正情報の取得には、u-blox PointPerfect Flex PPP-RTK補正サービスを利用できます。このサービスは、モバイルインターネット接続またはLバンド衛星接続経由で送信されるSPARTN形式のメッセージをサポートする、コスト効率の良い使用量ベースのプランを提供します。
ZED-X20Pモジュールは、u-blox ANN-MB2-00などの高品質アンテナで受信した信頼性の高い補正データにアクセスすることで、0.6cm + 1ppmのRTK測位精度、6cm未満のPPP-RTK測位精度を達成し、標準的な収束時間はRTKで7秒未満、PPP-RTKで40秒未満です。
開発リソースで評価と統合を迅速化
ZED-X20Pモジュールの機能はシステム統合の簡素化に役立ちます。一方で、u-blox EVK-X20P-00評価キット(図4)はモジュール評価の迅速化をサポートします。ケーブルとANN-MB2-00アンテナとともに、キットにはZED-X20Pモジュールを中心に設計された完全なGNSS受信機を実装するボードが含まれています。
図4:EVK-X20P-00評価キットは、GNSSプロトタイピングと統合を簡素化し、迅速な開発を実現する使いやすいハードウェアとソフトウェアのプラットフォームを提供します。(画像提供:u-blox)
アプリケーションの評価を迅速に行うために、u-blox u-center 2 GNSS評価ソフトウェアパッケージにはNTRIPサーバ/キャスタおよびクライアントツールが含まれており、RTCM経由でOSRを使用してローカルのベースとローバーの設定を実行したり、SSRによるPPP-RTK用にクライアントをPointPerfect Flexに接続したりできます。
まとめ
多くの新しいロボティクス、自動車、農業、物流、タイミングアプリケーションでは、基本的なGNSSや不安定なIP接続では確実に提供できないセンチメートルクラスの測位データを必要としています。ZED-X20P GNSSモジュール、EVK-X20P評価キット、u-center 2ソフトウェア、PointPerfect Flex GNSS補正サービスを含むu-bloxソリューションの組み合わせにより、時間的制約があり、かつ高精度測位が求められるアプリケーションの迅速な導入が可能になります。
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