Arduinoの2つの「頭脳」を1つの環境で活用し、AIを簡素化

あなたがホビイストであれ、ラピッドプロトタイピングのプロであれ、メイカークラスのハードウェアがどれほど便利かはすでにご存じでしょう。しかし、人工知能(AI)、ロボティクス、モノのインターネット(IoT)、コンピュータビジョンを含む要求の厳しいプロジェクトは、ハードウェアに負担をかける可能性があります。

一般的な解決策の1つは、メイカー向けボードとプロフェッショナル向け機器を組み合わせることです。しかし、これには設計上の複雑さが伴います。ボード間の通信が複雑になり、配線も大幅に増え、デバッグ作業も困難になります。2つの別々のツールスイートを学ぶだけでも大変な作業です。私も、慣れない統合開発環境(IDE)に長い夜を費やし、もどかしい思いをしたことが何度もあります。だからこそ、Arduino UNO Qのスマートな設計に興味を惹かれたのです。

UNO Qは、高性能マイクロプロセッサユニット(MPU)とリアルタイムマイクロコントローラ・ユニット(MCU)を1枚のボードに搭載し、Arduino App Labと呼ばれる新しい統合開発環境に支えられています。

このデュアルプロセッサアーキテクチャは、そうでなければ複数のボードを必要とするアプリケーションを実現します。自律航行ロボット、プライバシーに配慮した顔認識機能を備えたスマートホーム機器、環境に自動的に適応するスマート農業システムなどは、ほんの数例に過ぎません。

要求の厳しいアプリケーション向けのデュアルプロセッサ、デュアルOS搭載Arduinoボード

UNO Qラインの最初の製品はABX00162です(図1)。このボードの特長は、Qualcomm QRB-2210、2.0ギガヘルツ(GHz)で動作するクアッドコアArm Cortex-A53 MPU、Adrenoグラフィックスプロセッシングユニット(GPU)およびデュアルイメージシグナルプロセッサです。このチップは2ギガバイト(Gバイト)のRAMと16GバイトのeMMCストレージでサポートされており、完全なデスクトップクラスのDebian Linuxを実行するように設計された最初のArduinoハードウェアとなっています。実用的には、AIモデルやPythonアプリケーションを、別のコンピュータではなく、ボード上で直接ホストできることを意味します。

図1:Arduino UNO Q ABX00162は、高性能MPUとリアルタイムMCUを組み合わせています。(画像提供:Arduino)

これはすべて、最大160メガヘルツ(MHz)で動作するArm Cortex-M33をベースにしたSTMicroelectronics STM32U585 MCUを中心に構築された従来のArduino体験と組み合わされています。MCUはZephyr OS上でArduino Coreを実行し、内蔵の8 × 13 LEDマトリクスを含むさまざまな周辺機器を駆動します。

すべての新機能を搭載しても、UNO Qはより幅広いArduinoエコシステムとの互換性を維持しています。従来のUNOヘッダは既存のシールドに対応し、Qwiicコネクタはセンサやその他の周辺機器用のModulinoモジュールにプラグアンドプレイでアクセスできます。下面には、MIPIカメラやディスプレイなどの高度な周辺機器を接続するための高速ヘッダ(JMEDIAとJMISC)もあります。

Arduino App Labによる統合開発

UNO Qの魅力はハードウェアだけではありません。デュアルプロセッサアーキテクチャを1つのまとまったターゲットとして扱う開発環境であるArduino App Lab(図2)が、この製品を完成させています。

図2:Arduino App Labには、さまざまな実用的なアプリケーションサンプルが含まれています。(画像提供:Arduino)

App Labでは、ワンクリックで両方のプロセッサにプロジェクトをデプロイできます。「Apps」と呼ばれるこれらのプロジェクトは、リアルタイムサイドで従来のArduinoスケッチを活用します。Linuxサイドは、Pythonコード、「Bricks」(あらかじめ構築されたAIモデル)、ウェブサービスなど、一連の便利な機能を提供します。

ここでの重要な要素は、両サイドを接続するリモートプロシージャコール(RPC)フレームワークであるArduino Bridgeです。カスタム通信設定を必要とせず、BridgeによりLinuxサイドとリアルタイムサイドが相互の機能を呼び出すことが可能となります。

はじめに:室内環境モニタリングのサンプル

この技術を実際に使用するのは簡単です。強力なQualcommプロセッサを搭載したUNO Qは、独自の開発環境として機能します。必要なのは、Power Delivery(PD)を搭載したUSB-Cドングルと、キーボード、マウス、ディスプレイだけです。必要であれば、PCを開発環境として使用することもできます。

ハードウェアのセットアップが完了したら、App Labに含まれるサンプルを使って実験を始めることができます。App LabはUNO Qにプリインストールされているので、ログインしてすぐにサンプルAppsを実行することができます。

代表的なサンプルは、家庭向け室内環境モニタリングと保存のデモです。このデモでは、温度/湿度センサを組み合わせたABX00103(図3)が必要です。

図3:ABX00103はプラグアンドプレイで温度と湿度を測定できます。(画像提供:Arduino)

その仕組みは以下の通りです。

  1. MCUがI2Cインターフェースを介してセンサを読み取り、一貫したリアルタイムのポーリングを保証します。
  2. BridgeがそのデータをLinux MPUに送信します。
  3. LinuxサイドのPythonスクリプトがデータを受信し、ログ記録、グラフ生成、ウェブダッシュボードの提供を行います。

これらはすべて、1つのApp Labプロジェクトを通じて調整されます。完全な手順については、チュートリアルをご覧ください。1

まとめ

UNO QとApp Labは、Arduinoにできることを明確に再定義しています。Arduinoの使いやすさと本格的なLinux環境のパワーを融合することで、このプラットフォームは、教室から産業レベルのAI、IoT、ロボティクス、コンピュータビジョンまで、あらゆる場所で困難なユースケースに取り組むことができます。さまざまなハードウェアを組み合わせて苦労する夜を避けたいとお考えなら、是非ご検討ください。

リファレンス:

1:Arduino UNO Q入門:https://www.digikey.jp/ja/maker/tutorials/2025/getting-started-with-the-arduino-uno-q

著者について

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Kenton Williston氏は2000年に電気工学の学士号を取得し、プロセッサベンチマークアナリストとしてキャリアをスタートさせました。その後、EE Timesグループの編集者として、エレクトロニクス業界を対象とした複数の出版物やカンファレンスの立ち上げや指導に携わりました。

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