Sensors Expo 2019:Neonodeのホログラフィタッチ制御に、設計者が足を止める
6月末に開催されたSensors Expo 2019には、センサの製品、テクノロジ、キット、リファレンス設計、使い方に関するアイデアが多数出展されました。センサの将来について、STMicroelectronicsからの優れた情報もありました。今回は、この催しのベストデモだったと筆者が考えるものについてお話したいと思います。それは、NeonodeのzForce AIRTMセンサです。
これは、3次元空間に「タッチ」インターフェースを投影したデモに使われていたものです(図1)。実は、このデモでは実際には何にも触れていません。空間のある一点に投影された制御ボタンに手を伸ばしてタッチすると、zForce AIRセンサがそのタッチを検知し、システムがそれに応答するのです。これは、本当に戸惑うと同時に面白いものでした。
図1:Neonodeのデモで、デモボックス表面から約5インチ上方の空間の一点にディスプレイから投影されたホログラフィ像。正面から見ると、普通の制御パネルインターフェースのように見え(左)、横から見ると制御パネルが消えます(右)。(画像提供:TechWire International)
といっても、Neonodeのデモは単に面白いだけではなく、実用的な応用を目指したものでもあります。その場合、ユーザーに「不安感」を与えてはいけないため、同社ではそれに対処する計画も用意しています。説明を進めるまえに、このデモをもう少し詳しく見ておきましょう。その後で、zForce AIRとその役割について説明します。
デモの仕組み
デモですから、一番よい紹介方法は下の動画を見ていただくことでしょう。
動画:NeonodeのzForce AIRとAsukanetの特殊プラスチックを組み合わせて、3次元空間に制御インターフェースを投影する仕組み(動画提供:TechWire International)
しかし、簡単にまとめると次のとおりになります。このデモ装置は、ボックスの中に普通のディスプレイが入ったものです。ディスプレイはボックスの上面に対して45˚の角度で取り付けられています。ボックスの上面は、NeonodeのパートナーであるAsukanet(日本、東京)の特殊プラスチックシートで覆われています。そのプラスチックの内部には多数のミラーがあり、像をさらに45˚反転して、ディスプレイから空間のある特定位置(ボックスの上方約8インチ)に結像させます。控え目に言っても奇妙なことですが、横から水平面に沿って見るとそこには何も見えません(図2、右)。
このデモでは、像上の各ピクセルの座標がわかっているため、制御ボタンに直接対応する空間の点にユーザーが触れると、それをzForce AIRで検知します。
zForce AIRは幅2mmの赤外線ビームの列を発して、物体を検知します(図2)。物体からの反射光をレシーバが検知し、NeonodeのコントローラがI2CまたはUSB経由ヒューマンインターフェースデバイス(HID)プロファイルを使って、その位置をホストに送信します。ホストにダウンロードしてある専用ソフトウェアが指の位置と投影されたピクセルの位置を関係付けます。
図2:NeonodeのzForce AIRは反射した赤外光を利用して指や他の物体を検知します。(画像提供:Neonode Inc.)
もちろんデモの内容はこれだけではなく、DigiKeyの今後の技術特集記事で取り上げられるかもしれませんが、最終的にたどり着くのは、任意の物体を検知し、サイズ、表面への圧力、(3次元での)奥行き、速度、距離の判別ができるセンサです。これは、物体の追跡という関心の高い用途に使うことができます。
光学的なものであるため、筆者がまず疑問に思ったのが、埃の多い環境や周囲照明の影響で光学的信号が妨げられるのでは、ということです。Neonode(スウェーデン、ストックホルム)のディストリビューションおよびパートナーセールス担当副社長、Bengt Edlund氏によれば、埃やその他の粒子状物質、さらに周囲照明についてはソフトウェアで補償しているとのことです。また、これは光学技術であるため、電気的干渉および強力なRF信号に耐性があるとも話していました。消費電力については、約8インチ長のセンサで146mWです(図3)。
図3:約8インチ長のzForce AIRのストリップ型センサがデモボックスに角度を付けて組み込まれていて、スクリーン上方約8インチの空間にある物体を検知します。このストリップ型センサの消費電力は146mWです。(画像提供:TechWire International)
このテクノロジが容量性タッチスクリーンの代わりになることは明らかです。デモが示しているように、このことで適切なパートナーとの興味深い協業の可能性が開けます。たとえば、Neonode社は、自動車分野をターゲット市場とする、音波を使用した触覚フィードバックのプロバイダであるUltrahapticsと緊密に協業しています。制御ボタンに触ったと「感じる」ことができれば、一般的にも不安感がかなり解消します。運転者にとっては、道路から目を離さずに正しいボタンに触れたと確認できることは非常に重要です。
医療用アプリケーションにおいては、表面にまったく触れる必要がないというのは、病原体伝染の可能性が大幅に下がるため非常にすばらしいことです。
まとめ
Sensors Expo 2019のベストデモがNeonodeのデモだったと言うのはもちろんとても主観的なことで、実用を詳しく検討するに値するデモは他にもたくさんありました。しかし、Neonodeのデモは、展示会を見飽きるほど渡り歩いている筆者を立ち止まらせ、「えっ、どういう仕組みなんだろう」と立ち寄ることになった唯一のものでした。そして、そう思ったのは筆者だけではなかったのです。このテクノロジは新しいものではありませんが、適切なパートナーと組めば、産業、民生、車載、医療への応用に大きな可能性があることは明白です。
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エンジニアリングから始めたPatrick Mannion氏は、25年以上にわたりエレクトロニクス業界を分析してきました。エンジニアがリスクを管理し、コストを抑え、設計を最適化するための情報に基づいた編集に重点を置いています。かつてUBM Techのエレクトロニクスグループのブランドディレクタおよび副社長だった同氏は、カスタムコンテンツサービスを提供しています。