ビクトリア朝時代の21セグメント式ディスプレイを再現

近ごろは、ディスプレイ技術に関して言うと、選ぶのに迷うほど豊富な選択肢があると感じます。たとえば、ついこの前、ニキシー管を6本使っているように見える時計を目にしました。「えっ、何のこと?」「ニキシー管って何?」と思われたという意味でしょうか。ニキシー管は、1950年代後半から60年代、そして70年代の初期まで、デジタル情報(つまり数を表す多様な文字の中でも主にアラビア数字0、1、2、3、4、5、6、7、8、9)を表示するための主要な手段の1つでした。

ニキシー管の形は真空管に似ていますが、中は真空ではなく、通常はネオンに少量の水銀やアルゴンを混ぜたペニングガスと呼ばれる気体が低圧で充填されています。また、ニキシー管にはワイヤメッシュのアノードと複数のカソードが内蔵されており、カソードは数字や記号などの形をしています。各カソードは、そのカソードとアノードの間に約170VDCのストライク電圧を数ミリアンペアの電流で印加することにより、ネオン特有の赤っぽいオレンジ色に発光させることができます。

やがて、ニキシー管は商業用途では別のタイプのディスプレイに取って代わられましたが、今でも趣味やDIYの愛好者やメーカーから好まれています。最近まで、ニキシー管を入手するには、古い装置から再生利用するか、旧東ドイツ圏やロシアなどから新古品を購入する方法しかありませんでした。新古品とは古くなった商品在庫のことで、元の梱包のままの状態で一度も販売されていない「新品」です。

図1:R|Z568Mニキシー管は、古典的なZ568M管とピン互換で、ディスプレイのサイズは幅2インチ、高さ4インチです。(画像提供:ダリボル・ファルニー氏)

しかし、本記事の執筆時点から数年前、チェコの若者ダリボル・ファルニー氏は、R|Z568Mというニキシー管(図1)を提供し始めました。Rは「再生(Resurrection)」を表します。この素晴らしく美しいニキシー管は、幅2インチ、高さ4インチの数字を表示し(ほとんどの管ではもっと小さい)、最も美しいチューブの1つとして広く知られるオリジナルのZ568Mニキシー管とピン互換性があります。

実は、私の仕事場にもダリボル・ファルニー氏のニキシー管が1セットあります。私が所有しているのは、銅のアノードメッシュと青銅の底部を持つニキシー管です。これまでに彼が2セットだけ作ったうちの1セットであり、いかにも一昔前の様式を感じさせるニキシー管ですが...話が本題から逸れました。

この記事の冒頭で、「ディスプレイ技術に関して言うと、今の設計者には、選ぶのに迷うほど豊富な選択肢がある」と書きました。例として、ニキシー管を6本使用しているように見える時計について述べましたが、よく見ると、実はガラス管ごとに小さなOLEDディスプレイが入っていたのです。そしてOLEDディスプレイにはビットマップ画像を意のままに表示できます。ニキシー管内にアノードと発光しているカソードがあるように見える画像もです。

次に、7セグメントのLEDディスプレイ、たとえばLite-On Inc.LSHD-5601のようなディスプレイと言えば、誰にも馴染みがあるでしょう。このデバイスには、コモンアノードとコモンカソード両方の構成でさまざまな色が用意されています。このようなディスプレイが初めて登場したのは、確か1970年代始めのはずです。当時は、様々な色が欲しくても赤しかありませんでした。

この7セグメントLEDディスプレイは、数字を表示するあらゆる種類のデバイス、たとえば時計や四則計算の電卓などに瞬く間に採用されました。電卓では、このディスプレイが10進数だけでなく16進数の表示にも使われましたが、アルファベット文字はどうしても大文字と小文字が入り交じり、A、b、C、d、E、Fのような表示になりました。

もちろん、設計者はすぐに、16進数に加えてさらに多くの文字を表示する必要があると考え、間もなく9、14、16セグメントバージョンのデバイスが登場しました。

古い物の趣を再び味わう

どういうわけか、私たちは身の回りにあるあらゆる物が最近発明されたと思いがちです。実際には、ほとんどの物が以前から何らかの形であるものです。「伝道の書」の預言者も第1章9節で、「先にあったことは、また後にもあり、先になされたことはまた後にもなされる。日の下には新しいものはない」とあります(きっとこの預言者は、あまり多くのパーティに招かれなかったでしょう)。

何が言いたいかというと、7セグメントLEDディスプレイを初めて見たとき、これは画期的だと心底感心し、同類のものが以前にもあったなどとは思いも寄りませんでした。そのため、ジョージ・ラファイエット・メースンという発明家が1898年、つまりビクトリア朝時代に、21セグメントディスプレイの特許を申請していたことを知ったときは、仰天せずにいられませんでした(特許は1901年に認められました)。このディスプレイの各セグメントには小さな白熱電球が使われており、全セグメントが複雑な電気機械式スイッチで制御され、そのスイッチが目的の文字を表すのに必要なセグメントを作動させるのです(図2)。

図2:ジョージ・ラファイエット・メースン氏が1898年に発明した21セグメントディスプレイの各セグメントには小さな白熱電球があり、全セグメントが複雑な電気機械式スイッチで制御されます。(画像提供:米国特許庁)

なぜここまでディスプレイの話を長々披露したかと言うと、筆者は、英国に住む親友のスティーブ・マンリー氏とともに、各セグメントを光らせるのに3色LEDで代用した、このディスプレイの10文字バージョンを嬉々として作っているからです。1枚の基板で、短いセグメントにLED1個、長いセグメントにLED2個、合計35個のLEDを使用しています。このディスプレイ作りで、スティーブは小さな回路基板(幅50mm、高さ64mm)と、厚さ10mmの3Dプリントによるシェルを設計しました(図3)。

図3:LED回路基板(左)と3Dプリントのシェル(右)を使用してメースン氏のディスプレイを再現し、10文字を表します。基板には、白熱電球の代わりに3色LEDを35個搭載しています。(画像提供:スティーブ・マンリー氏)

LEDには、Adafruit Industries LLC4684に代表されるWS2812Bタイプを使い、デイジーチェーン接続しています。各LEDには、0Vと5Vの端子の間に100nFのコンデンサを取り付けています。また、基板では0V(グランド)と5Vの電源入力の間に47μFのコンデンサを取り付けており、基板のデータ入力には330Ωの抵抗を直列に取り付けています。

まとめ

図3のような、3色LEDを35個搭載した21セグメントの基板を見ると、1枚の基板だけでできることをいろいろ想像してしまいます。なお、スティーブと私はディスプレイにこれを10枚ずつ使う予定です。表示できるのは数字や文字、句読点の記号だけでなく、驚くようなパターンや効果も表現できます。また、音に反応させて何かを表示することもできます。

もちろん、それぞれを制御するには何らかの手段が必要なため、専用の制御ボードを設計しました。次のブログでは、その話題をご紹介します。それでは、いつものようにコメントやご質問、ご意見をお待ちしています。

著者について

Image of Max Maxfield

Clive "Max" Maxfield氏は、1980年にイギリスのシェフィールドハラム大学で制御工学の理学士号を取得し、メインフレームコンピュータの中央処理装置(CPU)の設計者としてキャリアをスタートしました。Maxは長年にわたって、シリコンチップから回路基板まで、果ては脳波増幅器からスチームパンクな予測エンジンまであらゆる設計に携わってきました(細かいことは聞かない)。彼はまた、30年以上にわたってEDA(電子設計自動化)の最前線にいます。

また彼は、『Designus Maximus Unleashed』(アラバマ州で発禁)、『Bebop to the Boolean Boogie』(型破りなエレクトロニクス界へのガイド)、『Where Electronics Begins』(EDA関連)、『Instant Access』(FPGA関連)、『How Computers Do Math』(同)をはじめとする多くの書籍の著者や共著者として活動しています。彼のブログ Max's Cool Beans をチェック!

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