電気オフハイウェイ車両でトラクションバッテリから低電力ネットワークに電力を供給する方法
大手自動車メーカーが発表する電気自動車(EV)は世界中の人々を魅了しています。その理由の1つとして、洗練された広告の効果も考えられますが、電気自動車が現代のエンジニアリングを印象付ける格好の例になっていることにも関係していそうです。その一方、世界のさまざまな場所で電気を利用した膨大な数の「縁の下の力持ち」が黙々と仕事をこなしています。
いわゆるオフハイウェイ車両(OHV)は、倉庫、工場、空港、埠頭など、物資や荷物、人を移動させる必要があるさまざまな場所を駆け回り、世界の経済を支えています。倉庫の暗い隅で稼働している埃に覆われた電動フォークリフトは、高速道路を疾走するスマートでスポーティなEVほど華やかではありませんが、同じくらい重要な役割を果たしています(図1)。そして、OHVの設計上の課題は、公道を走る車両を開発する際に直面するものと同じくらい(それ以上ではないとしても)厳しいものです。
図1:フォークリフトなどの電気OHVには、設計上の大きな課題があります。(画像提供:Komatsu)
ワンサイズでは、あらゆる要件に対応できない
公道を走るEVセクタの主要トレンドは、400ボルトのトラクションバッテリから800ボルトのシステムへの移行です。これはエンジニアリング上の理にかなった判断です。電圧が高いほど、トラクションモータに同じ出力を供給するのに必要な電流が少なくて済むからです。これにより消費電力が減少し、性能を維持するとともに、より軽量なケーブルや小型モータを使用できるようになります。電圧絶縁要件がより高くなるなど、いくつかのトレードオフはありますが、総合的に見ると800ボルトへの移行は好ましいと言えます。
800ボルトの電力は、高速道路を数百キロメートルにわたって4人が移動する際は威力を発揮します。しかし、倉庫内を1日に数時間ゆっくり移動する電動フォークリフトや、旅行者の荷物をエアサイドで運ぶ荷物カートにはほとんど必要ありません。これは電気OHV設計者にとっては朗報です。なぜなら、公称800ボルトのバッテリを構成する200個のリチウムイオン(Li-ion)電池の搭載スペースを確保するのは、小型車両にとって簡単ではないためです。
代わりに、電動OHVでは小型のトラクションバッテリを使用します。用途によって異なりますが、OHVの一般的なトラクション電圧は24、36、48、80、96、120ボルトです。トラクション電圧は異なる場合があるものの、ほとんどのOHVの共通点は、OHVのライト、ワイパ、クラクション、換気ファンなどを動作させるために12ボルトの低電圧ネットワークを使用していることです。
12ボルトバッテリの廃止
公道を走るEVは一般に、低電圧ネットワークへの電力供給に従来の12ボルトの鉛酸バッテリを搭載していますが、48ボルトのバッテリも普及しつつあります。これは、高電圧トラクション側を低電圧ネットワークから物理的に分離できるため、理にかなっています。また、電動ステアリングやシートヒータなどの補助機能は、トラクションバッテリから直接電力を供給する必要がなく、低電圧バッテリは回生ブレーキによって充電されるため、レンジに影響を与えません。
OHVに12ボルトのバッテリを追加することは可能ですが、多くの場合、最善の解決策ではありません。バッテリはスペースを必要とし、重量、コスト、複雑さが増します。また、OHV用途ではエネルギーを有効活用するために、多くの場合最小限の回生ブレーキが使用されます。多くの場合、設計者は、OHVのトラクションバッテリから低電圧ネットワークに直接電力を供給することを選択します。また、公道を走るEVと比較すると、こうした現場で活躍するOHVは動作範囲があまり問題にならないため、トラクションバッテリの電力消耗はそれほど懸念されません。
さらに、OHVはトラクションバッテリの電圧が低いため、トラクション回路と低電力回路間の絶縁に関する規制がそれほど厳しくありません。
堅牢なDC/DCモジュールであらゆる要件に対応
トラクションバッテリから低電圧ネットワークに電力を供給するには、電圧を12ボルトに降下させるDC/DCコンバータが必要です。コンバータは、トラクションバッテリの消耗を最小限に抑えるだけでなく、熱管理の問題を緩和する効率性と、厳しい条件下でも確実に作動できる堅牢性を備え、小型OHVの空きスペースに収まるコンパクト設計である必要があります。
これには、RECOMのすぐに利用可能なRMODシリーズのパワーモジュールが適しています(図2)。このモジュールは、車両のトラクションバッテリから低電圧を生成させるように設計され、出力は400ワットバージョンと600ワットバージョンが用意されています。IP69K規格に従った密閉により埃や水の浸入を防ぎ、温度サイクル、衝撃と耐久性、湿度/熱サイクル、振動、機械的衝撃、塩水噴霧に対する耐性についてはEN60068の認証を受けています。また、2.5キロボルト(kV)DCの絶縁を備え、IEC/EN/UL/CSA 62368-1の認証を受けています。
図2:RECOMのRMOD DC/DCモジュールは、トラクションバッテリから低電圧ネットワークに電力を供給するための堅牢なソリューションです。(画像提供:RECOM)
400ワットシリーズのRMOD400-28-13SWモジュールは、16.8~56ボルトの範囲のDC入力電圧を受け入れ、13ボルトで30.8アンペア(A)の出力が可能です。サイズは8 x 4.53 x 2.4インチ(in.)で、85%の効率を実現します。図3は、さまざまな電圧でのモジュールの効率曲線を示しています。また、24ボルト出力のバージョン(RMOD400-60-24SW)も利用できます。
図3:RMOD400-28-13SW DC/DCモジュールの入力電圧範囲における効率曲線を示しています。(画像提供:RECOM)
600ワットのRMOD600-80-13SEWのDC入力電圧範囲は33.6~125ボルトで、出力は13ボルトで46.2Aです。モジュールのサイズと効率は400ワットバージョンと同じです。図4は、負荷に対するモジュールの消費電力を示しています。高出力負荷時に温度を制御できるよう、モジュールには適切な熱管理機能が必要です。
図4:RMOD600-80-13SEW DC/DCモジュールの消費電力曲線を示しています。(画像提供:RECOM)
熱を取り除く
防水・防塵ハウジング構造により、デバイスをOHVのシャーシに接続できるほか、最も過酷な条件下でも確実に作動させることが可能です。モジュールは、ヒートパッドに取り付けてから、ヒートシンクとして機能するシャーシ部材に適用する必要があります。ベースプレート温度を70°C未満に保てるよう十分に冷却されていれば、遮蔽されたアプリケーションでもモジュールを全負荷状態で使用できます。
定格出力電圧が同じであれば、複数のモジュールを並列に動作させることができます。ただし、アクティブな電流シェアリングがないため、並列に接続されたユニットが総負荷電流に寄与する量はそれぞれ異なる可能性があり、設計者はこの点に注意する必要があります(図5)。
図5:定格出力電圧が同じであれば、RECOMのRMOD DC/DCコンバータを並列に動作させることができます。(画像提供:RECOM)
まとめ
OHVの設計者は、車両の補助システムに使用される低電圧ネットワークに対してトラクションバッテリから電力を供給することで、追加の低電圧バッテリの必要性を回避できます。RECOMのRMOD DC/DCモジュールは、この目的に特化したプラグアンドプレイのソリューションです。このモジュールは、幅広いトラクションバッテリ電圧を入力として受け入れると同時に、補助システム用に安定化された低リップルの13ボルト出力を提供します。
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