Virgin Galacticが開発したSpaceShipTwoの飛行を脅かす電磁干渉(EMI):同様の障害を回避するために
電子システムでの電磁干渉(EMI、無線周波干渉(RFI)とも呼ばれる)対策がいかに大切かを改めて実感したのは、最近発表されたVirgin Galacticの収支報告の記録を読んだときでした。次のような一節が目に留まったのです。「12月のテスト飛行で、ロケットモータが点火シーケンスを開始する際に停止しましたが、その原因は搭載されたロケットモータ用コンピュータの接続が遮断されたことです。..当社では、電磁干渉によるコンピュータの再起動を問題の原因として特定しました」報告によると、新しい飛行制御用コンピュータシステムが導入されており、同システムはテスト対象の一部でもありました。
さらに報告は続きます。「電磁干渉(EMI)は、航空宇宙分野で比較的よく見られる課題です。1月には、電磁干渉レベルを下げて特定のシステムの保護をさらに高めるように設計された修正作業を進めました。..この作業が完了するまで8~9週間かかる見込みで、次のテスト飛行は5月になる予定です(当初は2月の予定でした)」
図1:2019年、超音速テスト飛行を経て地上に戻るVirgin GalacticのSpaceShipTwo(別名VSS Unity)。(画像提供:Virgin Galactic)
電磁干渉に関連する問題のトラブルシューティングは、一筋縄ではいきません。動力停止のきっかけとなった新しい制御用コンピュータシステムの再起動は、電磁干渉が原因であると判断されたようですが、詳細なデータがなければ、電磁干渉が実際の原因であると判断された理由、またそれがシステムに与えた影響の度合いを知ることは難しいでしょう。いずれにしても、この報告書には、設計段階で電磁干渉を的確に検出して緩和することがいかに重要かが明確に示されています。それでも、電磁干渉が生じるのをすべて未然に防ぐことは難しいため、次の一手は電磁干渉を検出した時点で緩和することです。
電磁干渉のフィルタリング
幸いにも、設計者には電磁干渉対策のいくつかの選択肢として、信号回線やデータライン上のフィルタ、EMIエミッション抑制のためのパワーエントリフィルタ、カスタムのRFフィルタリングソリューションの設計に役立つ一般的な電磁干渉フィルタリング部品を集めたキットなどがあります。この3つの選択肢について、Bourns、TE Connectivity Corcom Filters、TDKが提供するアイテムを、それぞれ1つずつ取り上げます。
EMIネットワークフィルタ:コンピュータ、通信機器、オーディオ/ビデオ機器、産業用システムの設計者に有用なのが、Bournsの各種EMI Tネットワークフィルタです。これらのアイテムは、10通りの異なる25dB減衰範囲に対応します(図2)。
図2:設計者は、10通りの異なる25dB減衰範囲に応じてEMI Tネットワークフィルタを選択することで、高周波での優れたノイズフィルタリングを得られます。(画像提供:Bourns Inc.)
これらのTネットワークフィルタは、EMI220T-RCでは800~1000MHz、EMI103T-RCでは15~200MHzの減衰周波数範囲に対応します。回路基板またはサブ回路が特定範囲の電磁干渉周波数に影響されやすい場合は、これらの小型フィルタの1つを追加して問題を緩和することが考えられます。
パワーエントリフィルタ:スイッチングパワーコンバータは、電磁干渉の大きな原因になる場合があります。標準的なパワーエントリフィルタを使用することで、フィルタリングを強化し、レベルに応じて電磁干渉を緩和することが可能です。既存のフィルタをより高性能なフィルタに交換すると、有害なEMIエミッションをなくすことができると考えられます。
TE Connectivity Corcom FiltersのX、Y、Zシリーズは、多くのデジタル機器(スイッチング電源を備えた機器を含む)が特定のEMIエミッション制限に対応できるように設計された、3レベルの性能を備えています。各シリーズの仕様は、以下のとおりです。
- Xシリーズは、FCCパート15J、クラスBの伝導エミッション制限に準拠するように設計されています。
- Yシリーズは、EN55022、レベルAおよびFCCパート15J、クラスBの伝導エミッション制限に準拠するように設計されています。
- Zシリーズは、EN55022、レベルBおよびFCCパート15J、クラスBの伝導エミッション制限に準拠するように設計されています。
これらのフィルタは、スルーホール基板実装または外部実装の構成で提供されます(図3)。
図3:TE Connectivity CorcomのX、Y、Zシリーズ パワーエントリフィルタには、基板実装式(左)と外部実装式(右)があります。(画像提供:TE Connectivity Corcom Filters)
たとえば、3EXP(左)は3アンペア、低リーク(0.5mA未満)、250ボルトACの単相ラインフィルタで、スルーホール実装式の構成です。
カスタムRFフィルタ設計用キット
電磁干渉の問題はもちろん、新しいコンピュータシステムがRFセクションなど他の隣接サブシステムからのエミッションの影響を受けやすくなっている結果とも考えられます。電源の電磁干渉に対処するために標準的なフィルタを使用できる場合が多いのですが、RFセクションの場合は、カスタムフィルタ設計が必要なケースが多いと言えます。設計者を支援するためにTDK Corp.が提供しているRF-KITは、900MHzおよび2.4GHzで動作するシステム用のRFフィルタコンポーネントキットです。このキットには、29の値のそれぞれに10通りの表面実装フィルタコンポーネントを揃えた290個の部品が含まれており、バラン、マルチプレクサ、RFフィルタがあります。
図4:TDK Corp.のパーツ290個入りRFフィルタ設計キットは、900MHzおよび2.4GHz帯域のカスタムフィルタ設計の簡素化に役立ちます。(画像提供:TDK Corp.)
結論
電磁干渉(EMI)の問題を特定および解決しようとしても、一筋縄ではいかない場合があり、システム性能を低下させる原因にもなります。SpaceShipTwoの実例が示唆するように、設計プロセスのできるだけ早い段階で電磁干渉の問題を徹底的にテストして特定することが重要になります。設計サイクルで後から電磁干渉の問題が発覚すると、設計が大幅に遅れる原因にもなります。幸いにも、設計者はいくつかの有効な方法によって電磁干渉の感受性とエミッションの両方を緩和できます。
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