2023年:サプライチェーンの知恵とノウハウの活用
今年、Merriam-Webster辞書では、2022年の流行語大賞に「ガスライティング」が選ばれたと発表しましたが、「サプライチェーン」を選択すべきだったと私は思います。「サプライチェーン」ということばはビジネス界では注目度が低下していましたが、政治家や消費者の間で広く使われるようになりました。「サプライチェーン、そしてそれに関連するロジスティクス技術や製造拠点などのトピックが、2023年の流行語大賞を獲得するほど、本年誰もが口にすることばにまでなるだろう」と、私は予想しています。
サプライチェーン技術
高まるリスクと不確実性や多くの課題に悩まされるサプライチェーンの金字塔的な存在が、「レジリエンス」(回復力)と「透明性」です。これらへの取り組みを実現する技術は、サプライチェーン自体よりも多くの関心を集めています。これまでサプライチェーンエクセレンスは目標でしたが、先進的な企業にとってはそれが今年、現実のものとなるでしょう。
市場調査会社Spherical Insights and Consultingは、2021年の世界のサプライチェーン管理市場を166億4000万ドルと評価し、2030年には588億9000万ドルに成長すると予測しています1。この分野では豊富が製品がリリースされているため、競争が激しくなることが予想されます。しかし、エレクトロニクスのOEMにとっては、特に注目すべき技術分野がいくつかあります。たとえば、会社全体で対処しているサプライチェーンの問題に関係なく、ソリューションが全社的にクラウドを通じて提供されるので、社員はどこからでも素早くデータにアクセスできるようになります。迅速なスケーリングのニーズに対処できる技術としては、SaaS(サービスとしてのソフトウェア)があります。また、この配信アプローチSaaSは、導入が容易で比較的安価であることから、企業がサプライチェーンパートナーに新しい技術を採用させる際にも役立ちます。
応用技術の面では、人工知能(AI)とオートメーションが大きく普及すると考えられます。Zion Market Researchは、2021年のサプライチェーンにおけるAIの世界市場規模を1兆5945億ドルと算定するとともに、2028年には12兆7986億ドルに達するとも予想しているので、この間では前年比41.50%の成長を遂げると予測していることになります2。オートメーションやAIによって人の手を介する必要がなくなるため、効率性、安全性、信頼性が高まるので、サプライチェーンの重要な目標に直接取り組むことができます。
製造業における変化
過去一年では自然災害、パンデミック、地域紛争が発生したため、誰もが製造と調達について考えざるを得ませんでした。オンショアリングとニアショアリングが再び話題に上るようになりました。そのような話題がある一方で、中国のような重要なパートナーについては、2021年と2022年の間であまり大きな変化がなかったことが数字で示されました(図1)。
図1:2022年の対中貿易は2021年と比較してほぼ変わらず、米国の中国からの輸入はわずかに増加しています。(画像提供:Bloomberg)
サプライチェーンの確保や製造の効率化のために、オンショアリングやニアショアリングが常に検討されているように見えますが、オンショアリングやニアショアリングを実際に行うのは困難です。その理由は、大規模な製造工場には独自のエコシステムが存在するからです。オンショアリングやニアショアリングがどのような進化を遂げるのか、興味深いところです。
ロジスティクスの改善
2022年は、停滞している港にコンテナ船がやってきて身動きできなくなったため、配送料が現在まで高騰しています。陸上では、トラックドライバーの不足がロジスティクス上の問題を引き起こしました。米国トラック協会によると、今後10年間で退職や他の仕事への転職によるドライバーの減少に対応するため、120万人近くのドライバーを新規に雇用しなければならないそうです。一方、ロジスティクス業者によると、船舶は発注済みで、来年には引き渡される予定だそうです。
半導体製造のリバウンド?
2023年の展望を語るのに、半導体に直接言及しないことはかなり無理があります。リードタイムは、昨年よりは短くなるものの、依然として長いままになるでしょう。また、半導体メーカーについては(パンデミック時には堅調に、さらには力強く成長していたのに)、3.6%の減収が予測されています(表1)。
表1:2023年は、世界的な経済危機と消費者需要の低迷により、半導体市場の成長率がマイナスになるなど、業界にとっておそらく厳しい年になると思われます。(画像提供: Gartner)
しかし、2024年に半導体市場が回復することを期待するのは、楽観的過ぎると言われるほどでもないでしょう。その頃には新しい工場が稼働し始め、在庫が増加して需給ギャップが埋まる時間ができているはずでしょうから。
2022年もその前の2年間と同様に、サプライチェーンの点では厳しい年でしたが、最悪の事態は脱したかもしれません。これからは、何か月間にもわたって、サプライチェーンの問題よりも、サプライチェーンの解決策について話すことが多くなるでしょう。ロジスティクスと部品製造の変化は、 サプライチェーンのレジリエンス改善の方向に有利に働き始めるでしょう。つまり、「2023年はようやく落ち着きを取り戻す年になる」と考えても良いでしょう。
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