LiDAR向けZynq UltraScale+ MPSoCシステムオンモジュール

著者 Tawfeeq Ahmad(タウフィーク・アハマド)

画像:iWave SystemsのZynq UltraScale+ MPSoCシステムオンモジュールLiDARセンサ(画像提供:iWave Systems

LiDARは、多くの科学的、軍事的アプリケーションにおいて重要なリモートセンシング技術として台頭してきました。LiDARでは、3次元構造物を高解像度で正確に計測し、受信したデータを3Dマップに変換して周囲の状況を容易に把握でき、天候や照明条件が厳しくなっても影響を受けません。

LiDAR技術をサポートできるZynq UltraScale+ MPSoCの適応性

Zynq UltraScale+ MPSoCデバイスは、LiDARアプリケーションの実装に極めて有望なAdaptive(適応性の高い)SoCベースの製品設計を可能にします。プロセッサとFPGAの両アーキテクチャを1つのデバイスに統合しているので、あらゆる分野向けに最適化された柔軟なソリューションを迅速に配備することができます。

FPGAのプログラム可能性により、製品のカスタム機能を非常に柔軟に開発することができます。また、FPGAは階層間並列性を採用することで、処理を高速化することができます。

Zynq UltraScale+ MPSoCシリーズは、グラフィックス、ビデオ、波形、パケット処理向けのソフトエンジンおよびハードエンジンと、リアルタイム制御機能を兼ね備えています。このため、MPSoCデバイスは、信号処理、点群前処理、点群機械学習加速といった高度な機能をLiDARセンサ向けに実現するのに十分なパワーと柔軟性を備えています。また、Zynq MPSoCデバイスは、LiDARにとって非常に重要な高い電力効率を持つことでも良く知られています。

LiDAR製品の構築にSoMによるアプローチを使う理由

システムオンモジュールによるアプローチでLiDAR製品を製作することで、設計サイクルに関わるいくつかの複雑な作業を軽減できるので、大きなメリットが得られます。設計のうち、複雑なハードウェア部分がなくなるので、ファームウェアスタックとソフトウェアスタックの開発に集中することができます。これにより、製品開発コストを削減するとともに、市場投入までの時間を大幅に短縮することができます。

さらに、システムオンモジュールは、より高い演算能力を持つSoMに移行する際に、キャリヤカードの設計を変更しなくても済むので、設計者に大きなスケーラビリティと自由度を提供します。

LiDAR向けZynq MPSoCシステムオンモジュールの特長

Zynq UltraScale+ MPSoC SoMは、異種混淆のArm® + FPGAアーキテクチャを採用し、プロセッシングシステム(PS)とプログラマブルロジック(PL)の強固な組み合わせを提供します。

  • PS:最大1.5GHzで動作するクアッドコアArm Cortex®-A53プロセッサと、最大600MHzで動作するArm Cortex-R5プロセッサを搭載したリアルタイムプロセッシングユニットを搭載しています。
  • PL:16nm UltraScale+アーキテクチャをベースとし、最大50万4千個の構成可能ロジックブロック、ブロックRAM、DSP素子を搭載しています。

画像:iWave SystemsのZynq UltraScale+ MPSoC SoM図1:Zynq UltraScale+ MPSoC SoM(画像提供:iWave Systems)

他にも以下のメリットがあります。

  • 任意の2つの規格・インターフェースの接続
  • 設計ツールチェーン
  • 画像処理機能
  • 高速ニューラルネットワーク
  • 安全性およびセキュリティ機能

任意の2つの規格・インターフェースの接続

センサのインターフェース接続や処理において、さまざまなインターフェース規格に準拠することは非常に困難な作業です。カメラ、RADAR、LiDARなどの広帯域センサをサポートするために、MIPI、JESD204B、LVDS、GigEなどの高速インターフェースをサポートする機能をソリューションに持たせることが一般的であり、望ましいとされています。また、センサのインターフェース接続や処理では、加速度計向けにCAN、SPI、I2C、UARTなどの規格を使用する低帯域幅センサとのインターフェース接続も必要になります。

Zynq UltraScale+ MPSoCsのPSおよびPLは、CAN、SPI、I2C、UART、GigEなど、さまざまな業界標準インターフェースをサポートしています。PLは、I/Oの柔軟性により、MIPI、LVDS、および高速シリアルリンクと直接にインターフェース接続できるので、より高度なプロトコル実装が可能になります。

PLは、ハードウェア設計に適切なPHYを提供することで、あらゆるインターフェースの実装を可能にし、任意の2つの規格・インターフェースの接続を実現します。

設計ツールチェーン

Zynq UltraScale+デバイスには、PSおよびPL設計を構成するためのVivado Design Suiteが付属しています。Vivadoは合成、配置・ルーティング、シミュレーションをすべてサポートするPL開発環境です。

ソフトウェアソリューションの開発では、Vitisが活躍します。Vitisは、PetaLinuxや、FreeRTOSなどのリアルタイムOSを用いた組み込みLinuxの開発をサポートしています。

Vitisは、システム開発機能をサポートしているだけでなく、OpenCLを用いたPL内のカーネルアクセラレーションもサポートしています。

画像処理機能

画像処理は、ナビゲーションや監視を行うLiDARアプリケーションに必須です。通常、これらのシステムで使用されるアルゴリズムは、OpenCVのような高級フレームワークで作成され、モデル化されています。

Zynq UltraScale+ MPSoC EVシリーズには、画像処理をサポートするためのH.264/H.265ビデオコーデックユニットが搭載されています。

高速ニューラルネットワーク

画像処理のほかにも重要な技術として、自動化アプリケーションを開発するための機械学習があります。機械学習は、高速道路上の物体の分類や、乗員の観察・監視を支援します。

これを可能にするため、Viti AIは、アプリケーションをディープラーニングプロセッシングユニットに配備するためのModel Zoo、AIコンパイラ、Optimizer、Quantizer(量子化器)、プロファイラを提供します。

安全性およびセキュリティ機能

Xilinxデバイスの構成を保護するために、AES(Advanced Encryption Standard)が使用されます。

Zynq UltraScale+ MPSoCデバイスでは、PS内の構成セキュリティユニット(CSU)により、階層的なセキュリティソリューションをさらに実装することができます。CSUは、AES 256-GCM、4096 RSA Multiplier、SHA-384をサポートし、機密性、認証、完全性機能を提供します。

また、内蔵のシステムモニタによる不正変更防止対策により、SoMのデバイス電圧やダイ温度を追跡することができます。

すべてのiWave Zynq MPSoC SoMが備えているスケーラビリティ

iWaveでは、ZU4からZU19まで、Zynq UltraScale+ MPSoCシリーズ システムオンモジュールの幅広いラインアップを取り揃えております。これらのモジュールは、ハイエンドの製造業や軍事・防衛など、さまざまな産業で使用されています。

これらのシステムオンモジュールは、ロジック密度、I/Oの可用性、トランシーバのレーン数、高速DDR設計の点で優れたスケーラビリティをエンドアプリケーションに提供します。このため、19万2千個のロジックセル搭載のZU4から最大110万個のロジックセル搭載のZU19までの幅広い最終製品に対応する複数のI/Oポートを、設計するキャリヤボードでカバーすることが可能です。

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著者について

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Tawfeeq Ahmad(タウフィーク・アハマド)

Tawfeeq Ahmadは、iWave Systems Technologies Pvt.Ltd.でプロダクトマーケティングを担当しています。電子機器への情熱とマーケティングやセールスへの関心を持つTawfeeqは、iWaveの幅広い組み込みの専門知識を活用して、世界中の組織が製品開発のサイクルを短縮し、効率化を図る支援をすることを目指しています。エレクトロニクスおよび通信の学士号とマーケティングのMBAを持つTawfeeqは、iWave Systemsを製品エンジニアリング組織の世界的なリーダーにすることを目指しています。