産業用ロボットの分類に使用される主な要素
DigiKeyの北米担当編集者の提供
2024-04-16
世界中のインダストリ4.0ファクトリでは、何百万台もの産業用ロボットが活躍しています。それらのロボットは、生産率の向上、品質の改善、コストの削減、より柔軟で持続可能なオペレーションのサポートのために使用されています。産業用ロボットの重要性から、国際標準化機構(ISO)は、ロボティクスで使用される用語を定義し、多くの種類のロボットとその用途について議論するための共通言語を提供するために、規格8373:2021「ロボット-用語」を策定しました。
国際ロボット連盟(IFR)は、ISO 8373:2021で定義された主な用語を使用して、機械的構造に基づく以下6つのロボット分類を明確化しています。
- 多関節ロボット
- 直角座標ロボット
- 円筒座標ロボット
- パラレル/デルタロボット
- 極座標ロボット
- スカラロボット
この記事では、ISO 8373:2021を考察し、ロボットを定義する4つの主な用語、再プログラム可能性の必要性、ロボット分類を策定するためにIFRが使用したロボット関節の種類と数に焦点を当てます。その後、各ロボット分類の詳細と微妙な違いを掘り下げ、いくつかのメーカーの代表的なロボットを紹介します。その過程で、すべてのISO要件を満たしていないロボットと呼ばれるシステムについても考察します。
ISO 8373:2021は、産業用ロボットを「自動制御され、再プログラム可能な多目的マニピュレータで、3軸以上でプログラム可能であり、産業環境における自動化用途で使用するために、その場に固定するか移動プラットフォームに固定することができるもの」と定義しています。
再プログラム可能性は、極めて重要な差別化要因です。産業用機械の中には、マニピュレータを搭載し、飲料充填ラインでボトルをピックアップして箱に入れるような特定のタスクを処理できるように、複数の軸で動くものもあります。しかし、その単一目的だけに特化し、再プログラム可能でなければ、ロボットではありません。「再プログラム可能」とは、ISO 8373では「プログラムされた動作や補助機能を、物理的な変更なしに変更できるように設計されたもの」と定義されています。
ロボット関節の種類と数
ISO 8373は、以下2種類のロボット関節を定義しています。
- 直動関節(またはスライド関節)は、2つのリンク間のアセンブリで、一方が他方に対して直線運動できるようにします。
- ロータリ関節(または回転関節)は、2つのリンクを接続するアセンブリで、固定軸を中心に一方が他方に対して回転できるようにします。
IFRは、これらの定義とISO 8373のその他の定義を使用し、機械的構造またはトポロジに基づく6つの産業用ロボット分類を明確化しました。また、ロボットのトポロジが異なれば、軸の数も異なり、関節の数も異なります。
軸の数は、産業用ロボットの重要な特性です。軸の数とその種類によってロボットの可動域が決まります。各軸は、独立した動作や自由度を表します。自由度が高いほど、ロボットはより広く複雑な空間を移動できるようになります。ロボットの種類によっては、自由度の数が決まっているものもあれば、自由度の数が異なるものもあります。
エンドエフェクタは、ISO 8373ではエンドオブアームツーリング(EOAT)または「多目的マニピュレータ」とも呼ばれ、ほとんどのロボットにおけるもう1つの重要な要素です。エンドエフェクタは、グリッパおよび、ドライバーやペンキ噴霧器、溶接機などの専用処理ツール、カメラなどのセンサなど、多岐にわたります。エンドエフェクタには、空気圧式、電気式、油圧式があります。エンドエフェクタの中には回転できるものもあり、ロボットにもう1つの自由度をもたらします。
以下のセクションでは、各ロボットトポロジのIFR定義から始め、それらの機能と用途を考察します。
多関節ロボットには、3つ以上の回転関節があります。
これは大きなクラスのロボットです。多関節ロボットは10以上の軸を持つことができますが、最も一般的なのは6軸です。6軸ロボットは、X、Y、Z平面とピッチ、ヨー、ロールの回転運動が可能で、人間の腕の動きを模倣することができます。
また、1kg未満から200kg以上の幅広い可搬重量で利用可能です。これらのロボットのリーチ能力も、1m未満から数メートルまでと幅広くなっています。たとえば、KUKAのKR 10 R1100-2は、最大リーチ1,101mm、最大可搬重量10.9kg、ポーズ繰り返し精度±0.02mmの6軸多関節ロボットです(図1)。このロボットは、高速移動、短いサイクルタイム、統合されたエネルギー供給システムを特長としています。
図1:ポーズ繰り返し精度±0.02mmを備えた6軸多関節ロボット。(画像提供:DigiKey)
多関節ロボットは、床、壁、天井に恒久的に設置することができます。また、床上や頭上のトラック、自律移動ロボットやその他の移動可能なプラットフォームの上に取り付け、ワークステーション間を移動させることも可能です。
これらのロボットは、マテリアルハンドリング、溶接、塗装、検査など、さまざまなタスクに使用されます。多関節ロボットは、人間と協働するために設計された協働ロボット(コボット)を実装するための最も一般的なトポロジです。従来のロボットは安全バリアのある安全ケージの中で動作するのに対し、協働ロボットは人間との密接な相互作用のために設計されています。たとえば、Schneider ElectricのLXMRL12S0000協働ロボットは、最大リーチ1,327mm、最大可搬重量12kg、ポーズ繰り返し精度±0.03mmを備えています。協働ロボットは多くの場合、安全性を高めるための衝突保護、丸みを帯びたエッジ、力の制限、軽量化を特長としています。
直角座標ロボット(長方形ロボット、リニアロボット、ガントリロボットと呼ばれることもある)には、軸が直角座標系を形成する3つの直動関節を備えたマニピュレータがあります。
一部変更された直角座標ロボットは、2つの直動関節を備えています。それでも、「3軸以上でプログラム可能」でなければならないというISO 8373の要件を満たしていないため、技術的にはロボットではありません。
3つの直動関節を構成する方法は1つではないため、直角座標ロボットを構成する方法も1つではありません。基本的な直角座標トポロジでは、3つの関節はすべて直角で、1つはX軸方向に動き、Y軸方向に動く2つ目の関節に取り付けられ、その関節はZ軸方向に動く3つ目の関節に取り付けられています。
ガントリトポロジは直角座標ロボットの同義語として使用されることが多いですが、同一ではありません。基本的な直角座標ロボットと同様に、ガントリロボットは3次元空間での直線運動をサポートします。しかし、ガントリロボットは、2本のベースX軸レール、2本のX軸にまたがるサポートガイド付きY軸レール、Y軸に取り付けられた片持ちZ軸で構成されています。たとえば、IgusのDLE-RG-0012-AC-800-800-500は、800mm x 800mm x 500mmの作業領域を持つガントリロボットで、最大5kgを搬送し、±0.5mmの繰り返し精度により最大1.0m/sで移動することができます(図2)。
図2:800mm x 800mm x 500mmのワークスペースを備えたガントリロボット。(画像提供:Igus)
円筒座標ロボットは、1つ以上の回転関節と1つ以上の直動関節を持つマニピュレータを備え、その軸は円筒座標系を形成しています。
円筒座標ロボットは、比較的シンプルかつ小型であり、可動範囲が限られているためプログラムも容易です。より複雑な他のロボットに比べれば、あまり一般的ではありません。それでも、研削加工、パレット積載、溶接(特にスポット溶接)、集積回路製造作業における半導体ウェハーのカセットへの積み下ろしのようなマテリアルハンドリングなどの用途に特に適しています。(図3)。
図3:この円筒座標ロボットには、1つの回転関節と直動関節があります。(画像提供:Association for Advancing Automation)
円筒座標ロボットは通常、1~10m/sの速度で動き、重負荷を運ぶように設計することができます。円筒座標ロボットの用途は、自動車、製薬、食品・飲料、航空宇宙、エレクトロニクスなどの産業で見られます。
パラレル/デルタロボットは、アームが閉ループ構造を形成するリンクを備えたマニピュレータです。
円筒座標トポロジや直角座標トポロジなどのロボットがその動作にちなんで命名されたのに対し、デルタロボットは逆三角形の形状にちなんで命名されました。デルタロボットには2軸~6軸があり、2軸と3軸の設計が最も一般的です。2軸直角座標ロボットと同様、2軸デルタロボットも技術的にはISO 8373のロボットと呼ばれる要件を満たしていません。
デルタロボットは、強度よりも速度を重視して設計されています。作業領域の上に設置され、ピックアンドプレース、選別、分解、梱包などの機能を実行します。多くの場合、コンベヤの上部に設置され、生産ラインで部品を動かします。グリッパは細長いメカニカルリンクに接続されています。これらのリンクは、ロボットのベースにある3つか4つの大型モータにつながっています。リンクのもう一方の端は、EOATを取り付けるツーリングプレートに接続されています。
IgusのRBTX-IGUS-0047は、3軸デルタロボットの1例です。作業スペースの直径は660mmで、最大荷重は5kgです。0.5kgの荷重を扱う場合、最高速度0.7m/s、加速度2m/s2で毎分30回のピッキングが可能です。繰り返し精度は±0.5mmです(図4)。
図4:3軸デルタロボットとコントローラ(左)。(画像提供:DigiKey)
極座標ロボット(球体ロボット)は、2つの回転関節と1つの直動関節を備え、それらの軸が極座標系を形成するマニピュレータです。
回転関節の1つは、ベースから伸びる垂直軸を中心に極座標ロボットを回転させます。もう1つの回転関節は、最初の回転関節と直角に配置され、ロボットアームを上下にスイングさせることができます。最後に、直動関節は、ロボットアームが垂直軸から伸縮できるようにします。
極座標ロボットは単純な構造ですが、多関節ロボット、直角座標ロボット、スカラロボットのような他のトポロジと比べると、その使用が制限されるという欠点があります。
- 球座標系では、プログラミングがより複雑になります。
- 通常、他のタイプのロボットよりも可搬重量が限られます。
- 他のロボットよりも速度が遅くなります。
極座標ロボットの主な利点は、広い作業スペースと高い精度です。極座標ロボットは、工作機械の手入れ、アセンブリ作業、自動車組立ラインでのマテリアルハンドリング、ガス溶接やアーク溶接などに使用されています。
スカラ(SCARA)ロボット(「Selective Compliance Assembly Robot Arm(選択的柔軟性組み立てロボットアーム)」の頭文字をとって命名)は、2つの平行な回転関節を備えたマニピュレータであり、選択した平面で柔軟性を提供します。
基本的なスカラロボットには3つの自由度があり、3つ目は回転エンドエフェクタによるものです。スカラロボットは、回転関節を追加して合計4自由度とすることも可能で、より複雑な動作を実現できます。
スカラロボットは、高速と高精度が要求されるピックアンドプレースやアセンブリ用途でよく使用されます。たとえば、DobotのM1-PROは、作業半径400mm、最大可搬重量1.5kg、繰り返し精度±0.02mmの4軸スカラロボットです。このロボットは、センサのない衝突検知とドラッグトゥティーチプログラミングを備えており、協働ロボットとしてだけでなく、スタンドアロンロボットとしての使用にも適しています(図5)。
図5:繰り返し精度±0.02mmの4軸スカラロボット。(画像提供:DigiKey)
まとめ
すべての産業用ロボットは、再プログラム可能な多目的マニピュレータで自動制御されるというISO 8373の要件を満たします。しかし、すべての設計で、指定されたトポロジの軸数が定義されているわけではありません。デルタロボットや直角座標ロボットは、定義された軸数より少ない軸数で利用可能であり、スカラロボットの中には、IFRで定義された軸数より多い軸数を備えているものがあります。
免責条項:このウェブサイト上で、さまざまな著者および/またはフォーラム参加者によって表明された意見、信念や視点は、DigiKeyの意見、信念および視点またはDigiKeyの公式な方針を必ずしも反映するものではありません。


