評価ボードの活用によるモータドライバ開発の迅速化と結果の最適化
DigiKeyの北米担当編集者の提供
2026-03-04
自動化とロボティクスは、モータおよび関連する制御ICやドライバICに大きく依存しています。これらの複雑な半導体は、基本的なモーション制御を超えて、モータ、その負荷、全体的な性能の優先順位に合わせてシステム動作を調整する高度なアルゴリズムを実行する段階へと進化しています。
しかし、データシートやシミュレーションのみに基づいて、これらの複雑なICを設定し、潜在的なシステム性能を評価することは困難です。このプロセスには長い時間とコストがかかる可能性があり、導入時に予期せぬ問題が生じる恐れがあります。開発は、評価ボードを活用し、システム設計、レイアウト、ソフトウェア開発の各段階と並行して進めることが適切です。
本記事では、モーション制御ICを使用する際に設計者が直面するいくつかの課題と、それらに対処するための評価ボードの役割について説明します。続いて、Analog Devicesの代表的なICと関連評価ボードを紹介します。これらはハードウェアおよびソフトウェアの問題点を低減しつつ、早期に実環境と同等の評価を行えるようにすることで、市場投入までの時間を短縮します。
モーション制御IC要件の概要
モーション制御ICは、モータおよびモータ巻線を駆動するMOSFETなどの内部パワーデバイスを制御するために必要な制御機能を提供します。モータとMOSFETの両方において、静的および動的な動作モードや負荷条件にわたって最適な性能、軌跡、モーションプロファイル、効率を達成し、不安定化、過渡現象、故障に対処するためには、慎重な管理が必要です。
こうした課題を解決するために、ドライバICベンダーは評価ボードを提供しています。これらは、実際のモータと実際の負荷を用いたHITL(Hardware-in-the-Loop)試験をさまざまな条件下で可能にすることで、ハードウェアおよびソフトウェアの設定、最適化、性能評価を簡素化します。また、ICとその周辺回路のレイアウトが、電源配分、寄生成分、入出力(I/O)接続性とフォーマット、コネクタなどに関して適切に確立されていることを保証します。中規模ボード、基本ブレイクアウトボード(BOB)、モジュラーソリューションなどとして提供されるこれらのボードを使用することで、設計者はさまざまな設定、構成、オプションを評価し、アプリケーションに最適なものを決定することができます。
モータ制御ICおよび関連ボード
モータ制御ICの優れた例としては、Analog DevicesのTMC5130A-TA-Tファミリの1つであるTMC5130が挙げられます。これは、シリアル通信インターフェースを備えた高性能ステッピングモータコントローラドライバであり、自動目標位置決め用の柔軟なランプジェネレータを搭載しています。
洗練されたStealthChopチョッパーアルゴリズムを採用したこのドライバは、ほぼ無騒音動作、最大効率、最適なモータトルクを保証します。TMC5130は、ドライバとコントローラのシステムオンチップ(SoC)で統合することで、いくつかの独自の機能強化を実現しています。たとえば、TMC5130のSixPointランプジェネレータは、DcStep、CoolStep、StallGuard2の各機能を活用して、あらゆるモータ動作を自動的に最適化します。
設計者がTMC5130の開発を容易に始められるよう、TMC5130-EVAL(図1)ボードシステムは、評価用の便利なハードウェアプラットフォームと使いやすいソフトウェアツールを提供します。このボードシステムは、コンピュータ接続用ベースボードブリッジ(左)、複数のテストポイントを備えたコネクタボード(中央)、TMC5130-EVALボード(右)の3つの部分で構成されています。
図1:TMC5130-EVAL評価ボード(右)とモータ負荷(右端)は、PCへのベースボード接続USBブリッジ(左)とテストポイント付きコネクタボード(中央)を用いて構成されます。(画像提供:Analog Devices)
TMC5130ベースのコアを中心に、より独自の回路を開発したい設計者のために、Analog DevicesはTMC5130A-BOBブレイクアウトボードを提供しています(図2、上)。このボードは、動作に必要な基本接続を提供し、SPIインターフェースを介して制御されます。回路図(図2、下)は、機能的なTMC5130 ICを実現するために提供する最小限の回路を示しています。
図2:TMC5130A-BOB(上)は、個別のコネクタではなく縁に沿って端子が配置された基本的な評価方法を提供します。その回路図(下)は、TMC5130 ICを機能させるために必要な最小限の回路を示しています。(画像提供:Analog Devices)
TMC5240-EVAL評価キットは、実績のあるTMC5130-EVALプラットフォームをベースに、次世代ステッピングモータの評価を効率化します。36V Hブリッジ、ロスレス電流センシング、高度なモーション制御を、ジャークに最適化されたランプジェネレータと超静音StealthChop2™動作を備えた高度なモーション制御を統合し、スムーズで精密なモータ性能の迅速な立ち上げ、容易な調整、効率的な検証を可能にします。
高度な制御によるフィードバックセンサの排除
ベクトル制御としても知られるフィールド指向制御(FOC)は、エンコーダやホール効果センサのようなフィードバックセンサと、それに関連するコストやサイズを多くの場合で不要とするため、幅広いモータ制御の手法としてますます普及しています。FOCと非FOC技術の主なトレードオフは、FOCはリアルタイムでかなりの高精度計算と行列演算を実行する必要があることです。
Analog DevicesのTMC4671-LAモータコントローラICは、組み込みアルゴリズムと、それらを実行するために必要な複雑な演算を処理する専用エンジンを備え、特にFOCをターゲットにしています。このサーボコントローラは、DC、ブラシレスDC(BLDC)、ステッピングモータに対応し、FOCによるトルク制御と、カスケード制御による速度および位置制御を実現します。
TMC4671-Aは、低コストの監視用マイクロコントローラユニット(MCU)との基本的な通信用に、SPIおよびUARTリンクをサポートしています。すべての制御機能はハードウェアで実装されており、内蔵ADC、オプションのフィードバック用位置センサインターフェース、位置補間器などを備え、幅広いサーボアプリケーションに対応する完全な機能を備えたサーボコントローラを提供します。
TMC4671-A用のTMC4671-EVALボード(図3)は、必要なFOCパラメータの設定を簡素化し、この高度な制御方式でのモータ性能評価を容易にします。設計者は、接続ブリッジ、関連するベースボード、および別個のパワー段を介してTMC4671-EVALを接続します。この構成により、比例積分(PI)コントローラやフィードバック方式の容易な設定が可能となり、標準的な位置制御、速度制御、トルク制御モードでのモータ動作をサポートします。
図3:TMC4671-EVALボードは、信号および電源I/O用に2列のヘッダを備えています。(画像提供:Analog Devices、著者による変更)
TMC4671-EVALの上部にあるピンヘッダは、デジタルエンコーダ、デジタルホール効果センサ信号、およびリファレンススイッチの接続用です。ボード下部のピンヘッダは、アナログホール効果センサ信号または正弦波エンコーダの接続用です。
機能的なモータドライバコアを中心に独自の評価回路を構成したい設計者には、TMC4671-BOBブレイクアウトボードが最適です(図4、上)。このボードは、通信および設定用のSPIおよびUARTインターフェースに加え、(直流的な導通のない)ガルバニック絶縁を備えたUSB-2-RTMI_V20アダプタを介してライブデバッグおよび調整用のリアルタイム監視インターフェース(RTMI)を提供します(図4、下)。
図4:TMC4671-BOB(上)は、TMC4671への直接アクセスのほか、SPIおよびUARTインターフェースを提供します。関連するUSB-2-RTMI_V20アダプタ(下)は、電気的に絶縁されたUSBインターフェースです。(画像提供:Analog Devices)
このアダプタは、TMC4671-LA FOCコントローラICのリアルタイム監視のためのUSBインターフェース変換を提供します。USB High-Speed - SPIブリッジインターフェースコンバータはUSB給電式で、基本的な静電気放電(ESD)保護機能に加え、USBコネクタとRTMIコネクタ間の電気的(ガルバニック)絶縁により、安全上の問題やグラウンドループの発生を防止します。
オールインワン評価キット
最後に、場合によっては、Analog Devicesの評価ボード全体がそのまま製品として展開される場合もあります。たとえば、TMCM-3351-TMCLモジュール(図5、上)は、3つの2相バイポーラステッピングモータ用の3軸ステッピングモータコントローラ/ドライバボードです。MOSFETパワードライバやコネクタを含め、必要な能動および受動部品がすべて含まれています(図5、下)。
図5:TMCM-3351-TMCLモジュールの標準的な信号、電源、I/Oコネクタ(上)は設定と使用が迅速です。ICおよびそのモジュールは3軸モーション制御のために3つのモータを同時に処理することができます(下)。(画像提供:Analog Devices)
この機能的に完全なモジュールは、3軸それぞれにオプションのエンコーダを取り付けた閉ループ動作において、直線およびS字型ランプをサポートします。TMCM-3351-TMCLには、多数の汎用デジタルおよびアナログ入出力も備えています。通信には、RS-485、CANバス、USB、RS-232シリアルインターフェースが利用可能です。
評価ボードの生産性に不可欠なソフトウェアツール
評価ボードは、Trinamic Motion Control Language-Integrated Development Environment(TMCL-IDE)によってサポートされています。このグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)は、パラメータの設定、データのリアルタイム可視化、スタンドアロンアプリケーションの開発およびデバッグを容易に行うためのツールを提供します。
TMCL-IDEは、診断タスク用の各種ダイアログボックス(図6)を表示し、接続されたモーションコントローラおよびドライバチップの概要を表示します。この概要ウィンドウは、評価キットを初めて接続した直後にポップアップ表示されます。このウィンドウには、現在の接続ステータスが表示されます。また、ダイアログの2番目のタブでは基本設定の選択や、モジュールを工場出荷時のデフォルトにリセットすることができます。
図6:TMCL-IDE GUIは、関連する評価ボードと併用することで、実際の負荷下における各種モータドライバICの設定、構成、性能分析を簡素化します。(画像提供:Analog Devices)
まとめ
最新のモーション制御ICとそのアルゴリズムは高度に洗練されており、精度、信頼性、効率性を含む複数のモータ基準において非常に優れた性能を発揮する必要があります。評価ボードとサポートソフトウェアを活用することで、設計者は負荷変動や過渡現象にもかかわらず最適化されたモータ性能を実現するため、設計作業と並行してこれらのコントローラを微調整することが可能です。
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