ウェアラブル電子機器の課題
2015-10-07
ウェアラブル電子機器は、実際に、今日の社会で一般的な補聴器、ペースメーカーやその他医療デバイスとして数十年間にわたって使用されています。 実際に、場合によってはポータブル音楽プレーヤとして装着されることがある携帯電話などの多くの民生用電子機器の設計は、当初はポータブルとして設計されたのではなく、機能やコネクティビティOTG(On-The-Go)を求める消費者のニーズに合わせて設計されてきました。 ウェアラブル電子機器は、救命デバイスからファッションアクセサリに至るまで進化を遂げており、アクティビティモニタブレスレット、スマートウォッチ、スマートグラスからGPS対応の靴にまで及んでいます。現在、これらすべてに対する市場の需要が拡大しています。
図1:スマートウェアラブル電子機器。
ウェアラブル電子機器の登場は、主に消費者の需要から生じているものの、次の項目を含むさまざまなウェアラブルアプリケーションがあります。
インフォテイメント:音楽、写真、ビデオ、ルート案内および電子メールを含み、お知らせやエンターテイメントに使用。
アクティビティ追跡:動作を変更することでアクションを取ることができる即時で重要なフィードバックを個々の消費者に提供するために、ウォーキング、睡眠、心拍数や食品の消費などのアクティビティおよび機能をモニタリングするのに使用。
ヘルスモニタリング:規制要件やプライバシーへの懸念が、このような技術の長期にわたる開発期間やテストを義務付けているものの、診断された状態をモニタリングし、まもなく診断をサポートするのに使用。
産業用およびエンタープライズ:ファクトリプロセスのモニタリングや倉庫在庫の更新を含むリアルタイムデータを提供する手首装着型の端末が中心。 産業部門でのリモート「デスクレス」作業者向けに、スマートグラスおよびバンドの急速な普及が見込まれる。
兵士システム:これらのシステムを管理するために、パーソナルネットワーク、センサ、外部通信およびパワーを統合。 1つの目標として、高性能、耐久性と堅牢性があり、かつ歩兵にとって軽量性が求められる、サブシステムに接続するコネクタおよびケーブルを使用して、兵士をより大きな戦場に連結させることがある。
ウェアラブル電子機器の定義
ウェアラブル電子機器は、インテリジェンスがあり、入力を取得し、その入力を処理して意味のある出力を提供できる機器として定義することができます。 たとえば、アクティビティブレスレットの1つの機能として、センサからの生データを取得し、それを処理して、特定の期間にわたる歩数に関するレポートを生成することがあります。 センサは、歩行と他の動きを見分ける十分なインテリジェンスで、モーションを追跡します。
センサは、ウェアラブル電子機器の重要な一部で、引き続き小型化と高度化が進みます。 使用可能な多くのタイプのセンサがある一方で、最も一般的なのは、通常加速度センサの慣性計測ユニットです。 加速度センサは、特定の動き、方向、強度または速度を追跡することができます。 加速度センサの簡単な1例として、携帯電話またはタブレット(入力)が回転され、デバイスがその動きを処理して、それに応じてスクリーンを回転する(出力)ことがあります。
圧力、温度、位置、湿度を含む他の一般的なセンサは、動きを検出するために、コンパス、GPS、ジャイロスコープなどのアプリケーションをサポートします。 医療アプリケーションで使用されるセンサは、血流、脈、血圧、血中酸素濃度、筋肉運動、体脂肪、体重の測定およびモニタリングに使用できます。 最も成功を収めたウェアラブルは、生、センスされたデータを、ユーザーにとってアクション可能な意味のある洞察にするために、アルゴリズムを使用する機器です。
ウェアラブル電子機器は、外界と通信可能でなければなりません。 短距離無線を通したワイヤレスコネクティビティまたはその他ワイヤレスプロトコルが一般的な一方で、USBポートを通した有線コネクティビティが一般的に必要です。
多くのウェアラブルには、ユーザーインタラクションのためのビデオディスプレイまたはタッチスクリーンがあります。 このような小型ディスプレイでの大きな課題は、使いやすさです。 スマートウォッチの高解像度ディスプレイでも、多くの面積を提供しません。 ユーザビリティの維持には、スクリーンにどれだけフィットできるかと、その結果の情報がいかに読みやすいかの適切なバランスが必要です。 これらディスプレイの消費電力の管理は、主要なウェアラブルメーカーにとって大きなモチベーションになります。 フルカラーのLCDまたはOLEDディスプレイとは対照的に、電子インクまたは電子ペーパーのような低電力の代替を幅広く利用しています。 すべての電子デバイスと同様に、ウェアラブルは、再充電式電池またはその他の充電方法で給電される必要があります。 一般的に、電池の充電には、接続されたパワー用のポートが必要です。 ワイヤレスパワー伝送は、新しいウェアラブルデバイスに統合される主要な機能として登場しており、防水の必要性を示しています。
ウェアラブル電子機器のもう1つの一般的な特長は、アプリが更新または変更中にさまざまなアプリケーションを実行できることです。 たとえば、スマートウォッチは、携帯電話に類似しています。 それは、アプリの重要な更新やダウンロードのためにインターネットに独立して接続しながら、さまざまなタスクを装着者が実行できるコンピュータです。
ウェアラブル電子機器およびモノのインターネットウェアラブル電子機器は、モノのインターネット(IoT)のサブセットです。 IoTは、人からモノへとインターネットを拡張します。 1例として、世界のどこからでも、自宅の開錠、サーモスタットの制御、セキュリティシステムの作動または解除をリモートで行うためにスマートフォンまたはウォッチを使用することがあります。
また、IoTは人間の介入なしで機能できます。 スマートウォッチは、寒い朝に暖房を強くし、夜に暖房を弱めたり、予報をチェックしてその情報に基づいて住宅の温度を調整したりするようにあらかじめプログラムできます。
IoTでの主要な要素は、インターネットプロトコル(IP)の使用です。 IPは、情報の流れを制御するために、Ethernetおよびインターネットで使用される通信プロトコルです。 接続される各デバイスには、IPアドレスがあります。 IPアドレスのある各デバイスは、他のすべてのIPデバイスと通信を行うことができます。 ファイアウォール、パスワード、その他セキュリティ措置は、デバイスの相互との通信を制御します。 IPアドレスにより、ウェアラブル電子機器はIoTに加わります。
IoTの一部となる1つの利点として、スタンドアロンデバイスとしてウェアラブル電子機器が存在する必要がないことがあります。 フィットネスブレスレットからのアクティビティデータは、コンピュータのアプリにダウンロードできます。 このアプリは、進展を追跡するために、経時的な傾向の詳しい分析を提供することができます。 ウォッチの音楽プレーヤは、クラウドコンピューティング(「クラウド」)を使用して曲を取得することができます。 体の近くに保持するか、または体に装着する小型デバイスを使用する結果として、ウェアラブル電子機器やIoTの世界を探求するだけで、あらゆる場所で人々が、モノ(テレビ、自宅、車、電気製品、救命デバイス)とインタラクションすることができます。
小型が望ましい:パッケージングの課題ウェアラブル電子機器は、コンポーネントの小型化と統合によって実現され、強力な機能を非常に小さなスペースに組み込むことができます。 センサ、コンピュータチップ、カメラ、スピーカ、その他コンポーネントは、より多くの機能を持つとともに、小型化を続けています。
これらのコンポーネントを、適切なフォームファクタでかつ製造可能性の適切なレベルに組み込むことが課題です。 コネクティビティのリーダー企業として、TE Connectivityは、ウェアラブル電子機器の設計者およびメーカーと密接に連携しています。 図2は、スマートウォッチ向けの一般的なコネクタソリューションを示します。 これらほとんどのコンポーネントやその他コンポーネントの主な特長は、小型フットプリントで薄型であることです。 デバイス自体がスリムな設計を持つことができるために、薄型は特に重要です。
図2:スマートウォッチコネクタソリューション。
面積が貴重な中で、部品の統合は、システムを簡素化させるだけでなく、最大の効率で利用可能なスペースを使用することもできます。 図3で示すように、携帯電話向けにアンテナをハウジングに直接組み込むことができます。 このような成形回路部品(MID)や新たなプリントアンテナ技術により、回路トレース、グランドプレーン、シールドを成形部品に統合することができます。 基板は、設計されたプラスチックまたはコンポジットの可能性があります。 コンポジットは、材料の強度を高めることができ、コスト効率の良い成形や金属化を実現できることから、ますます魅力的なものとなっています。
図3:アンテナおよび他の回路素子をプラスチック基板に組み込むことができます。
堅牢化多くのウェアラブルシステムは、スポーツや他の過酷なアクティビティ中に装着されるように設計されています。 概念としての堅牢性は相対的で、アプリケーションの観点で定義できるにすぎません。 心拍数モニタの堅牢性要件は、サイクリストが装着するアクティビティモニタの堅牢性要件と異なっています。 兵士のウェアラブルは、まったく異なるレベルの堅牢性で動作し、民生用デバイスを損なうであろう、より広範な温度範囲、高い耐衝撃性および耐振動性、高い耐化学物質性または耐溶剤性が必要です。
環境危険に対してウェアラブル電子機器の耐性を高めることで、デバイスの信頼性や使いやすさは向上します。 防滴USBポートおよびゴムカバーの使用により、ある程度の防水性を達成することができますが、これによりデバイスの防水性は実現しません。 設計者は、防水設計向けにIP67/68密閉を達成するために、閉じた開口部を求めています。 侵入保護(IP)は、電子機器周りのエンクロージャの環境保護を指定するのに使用されます。 防水性は、より堅牢な設計を実現するだけでなく、使いやすさも促進します。 ワイヤレスパワー伝送などのいくつかのアプローチが市場で登場しています。
磁気的に取り付けられたケーブル:USBと類似のコネクタは、コネクタの嵌合状態を維持するためにフリクション フィットを使用します。 図4で示す代替のアプローチでは、ケーブル側のスプリング装填コンタクトでコネクタを保持するために、磁石を使用します。 デバイス側のコンタクトおよび磁石は、液体や湿気がデバイスに入ることを防止するために密閉できます。 マイクロUSBコネクタの嵌合とは対照的に、磁石は、ケーブルを適切な位置に引き入れるのに寄与します。
図4:磁気的に取り付けられたケーブル。
非接触データ接続:ワイヤレス接続を作成するために、デバイスとケーブルアセンブリの両方で磁気取り付けおよびトランシーバを使用します。 このアプローチは、USB 2.0および3.0などの高速I/Oプロトコルをサポートすることができます。 トランシーバ間の短距離は、パワー効率の良い接続を提供します。
ワイヤレス充電:直接電気接続なしで電池を充電できます。 ワイヤレス充電、または誘導充電は、デバイスを充電するために、充電ユニットおよび電子機器で誘導コイルを使用します。 充電コイルによって生じる電磁場により、エネルギーを、トランスのように動作する受信コイルに伝達することができます。 ワイヤレス充電の利点には、次の項目が含まれます。
- 耐久性の向上:コネクタへの摩損なし
- 信頼性の向上:汚染物質の入り口となるコネクタポートなし
- 使いやすさの向上:嵌合する小型コネクタなし
- 設計自由度:産業設計者は、デバイス向けに新しい独特な形を自由に作成可能
- 寿命の延長:パワートランスミッタを一般的なオブジェクトに組み込むことは、デバイスの連続的な充電を意味する
ワイヤレス充電の短所には、効率の低減、熱発生の増大、充電の低速があります。 これらの問題はそれぞれ関連性があり、より新しいコイル構造やより高いカップリング周波数によって改善します。 ほとんどのウェアラブルデバイスは、非常に低電力であり、これは、これらの短所の影響が最小限である可能性があることを意味します。
スマートテキスタイルおよび電子衣類ウェアラブルのもう1つの傾向として、特殊な運動着から日常の衣類に至るまで、テキスタイルにセンサおよび電子機器を組み込むことがあります。 課題は、快適で柔軟性があり、洗濯可能な他の衣類と同様に扱える電子衣類を作成することです。 相互接続および電子機器は、目立たず、堅牢である必要があります。 これには、次の項目が必要になります。
- 絶縁され、堅牢で防水性のある、信頼できる終端
- 柔軟性があり、衣類ベースのアンテナおよびトランシーバソリューション
- 伸縮導電性の絶縁ワイヤ
- 小型の乾燥可能な電池
- しわや折り目に対する耐性があるPCB/FPC
電子ウェアラブル市場の課題は、日常生活を向上させる有益なデータを提供可能なデバイスを作成することです。 手首、頭部、足などの装着か所を問わず、ウェアラブルはおしゃれで堅牢であり、かつ容易に再充電できる必要があります。
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