サプライチェーン管理を向上させるためにタンク内の材料レベルを監視する方法

著者 Jeff Shepard(ジェフ・シェパード)氏

DigiKeyの北米担当編集者の提供

タンクに貯蔵された固体、液体、粒状物質の量の検知と測定は、サプライチェーンの課題および、在庫レベルの監視や製造工程の厳密な管理の必要性から、ますます重要になってきています。レベルセンサには、用途に応じて、食品への安全性、高圧・高温・振動への耐性、腐食環境で使用するための酸・塩基への高い耐性、安全な動作を確保するための高度な電気・熱絶縁性などが求められます。

レベルセンサを設計することは可能ですが、それはリスクを伴う複雑な作業です。そのプロセスは、静電容量式、磁気式、超音波式、光学式などの計測技術とアプリケーションをマッチングさせるところから始まります。次のステップは、動作環境をサポートするために、ハウジングや部品などの材料を選定します。また、安全性や規制に対する認可を取得し、必要な侵入保護(IP)等級を達成した設計にすることもしばしば必要となります。

設計者はその代わりに、正確で信頼性の高い測定を保証し、市場投入までの時間を短縮できる、設計済みのレベルセンシングソリューションを利用できます。この記事ではまず、静電容量式、磁気式、超音波式、光学式のセンシング技術の動作について、フォームA(ノーマリオープン)とフォームB(ノーマリクローズ)のデバイスを含めて確認します。次に、材料の適合性やIP定格を調べ、各技術に最適なアプリケーションを特定します。そして、PICCarlo GavazziTE Connectivityが提供している、磁気、静電容量、超音波、光センシングを用いたレベルセンサの事例を紹介します。

フロートセンサとも呼ばれる磁気液面センサは、密閉されたステムの中のリードスイッチと、リング状の磁石を含むフロートを使用します。液面が上下すると、磁石のついたフロートも上下します。リングが一定の高さまで上昇(または下降)すると、リードスイッチが作動します(図1)。このような設計は信頼性が高く、フォームAとフォームBの構成で数百万回のスイッチング動作に耐える定格を持ちます。ポリプロピレン、ポリアミド、ステンレス鋼など、さまざまな液体に対応したハウジング材料が用意されており、食品に対応したものもあります。また、上、下、横向きに設置できるモデルが用意されています。

磁気液面センサのフロートが上昇(左)または下降(右)する図図1:磁気液面センサのフロートが上昇(左)または下降(右)すると、リードスイッチが作動し、信号が発信されます。(画像提供:PIC)

液体などの静電容量式センシング

静電容量式レベルセンサは、タンク内の液面を検知するだけでなく、固形物や粒状物の検知にも使用することができます。プローブがタンク壁と結合し、コンデンサを形成します。静電容量は、タンク内の材料の量によって変化します。一般的に、タンク内の材料が多いほど静電容量は高くなります。これらのセンサには、さまざまなハウジング材料が用意されています。静電容量式レベルセンサは、検知距離の調節が可能で、オン/オフのための時間遅延を内蔵したものと内蔵していないものがあります。幅広い液体や固体に対応し、産業プロセスおよび、家畜の自動給餌システムやサイロなどの農業用途で一般的に使用されています(図2)。

粒状の家畜飼料を測定するような農業用途の画像図2:粒状の家畜飼料を測定するような農業用途では、静電容量式のレベルセンサが一般的です。(画像提供:Carlo Gavazzi)

高圧・気化性液体用の超音波センサ

超音波レベルセンサは通常、人間の可聴範囲をはるかに超える40kHzの範囲で動作します。超音波のエネルギーを繰り返し送り込むことで、その効果を発揮します。液体が存在する場合は超音波エネルギーの伝達が促進され、空気のみが存在する場合はエネルギーが減衰します。このようなギャップセンサは、さまざまな液体に対してポイントレベルのセンシングを提供し、特に他の技術ではモニタリングが困難な気化性液体での使用に適しています。これらの密閉型センサの典型的な設計は、250psiまでの加圧された液体での動作に対応しますが、特殊な設計では5,000psiまで動作可能です(図3)。

密閉して高圧下で動作することが可能な超音波レベルセンサの画像図3:超音波レベルセンサは、密閉して高圧下で動作することが可能です。(画像提供:TE Connectivity)

光学式センサでレベルを確認

光学式レベルセンサは、空気と監視対象の液体の屈折率の違いを利用して動作します。赤外線(IR)エミッタ(トランスミッタ)、レシーバ、アンプ、出力スイッチで構成されます。エミッタは通常、ガリウムヒ素(GaAs)赤外線発光ダイオードです。出力は、直流(DC)出力の場合はトランジスタ、交流(AC)出力の場合はSCRを使用することができます。センサの円錐形の先端がプリズムを形成し、赤外線パルスは先端まで送られます。液体がない場合は内部反射してレシーバに到達します。センサの先端が液体に浸かると、液体は空気と異なる屈折率になり、ビームはレシーバに送られなくなくなります(図4)。光学式レベルセンサは非常に汎用性が高く、油、廃水、アルコールのほか、ビール、ワイン、抽出したコーヒーなどの飲料にも使用することができます。

光学式レベルセンサは空気の屈折率の違いを利用していることを示す画像図4:光学式レベルセンサでは、空気(左)と液体の屈折率の違いを利用して、レシーバ(右)への信号の伝達を妨げます。(画像提供:Carlo Gavazzi)

重要なハウジング

ハウジングの材質は、各種レベルセンサの使用場所を決定する重要な要素です。一般的なハウジング材料には、以下のようなものがあります。

ポリエステルは、多くの化学物質に対して優れた耐性を持ち、高い耐クラック性を有しています。-70℃から+150℃まで使用可能です。

ステンレス鋼は、さまざまな化学物質や食品に対応します。生物学的な洗浄除去特性に優れ、医薬品や食品加工および、医療・工業用途に多く使用されています。

ポリアミド12はナイロン12とも呼ばれ、透明性が高く、低温でも強靭で、寸法安定性や動的強度が高く、密度が低いため軽量です。80℃まで使用可能です。

ポリスルホンは、強度、透明性、汎用性の高い素材です。また、寸法安定性が高く、沸騰水や150℃の水蒸気または空気中での寸法変化は0.1%未満です。pH2~pH13の電解質、アルカリ、酸に対して高い耐性を有しています。酸化剤に強いため、漂白剤での洗浄が可能です。

ポリプロピレンは、多くの有機溶剤、酸、アルカリに耐性がありますが、酸化性酸、塩素化炭化水素、芳香族に侵されやすい性質を持っています。最高使用温度は80℃です。また、水を通さないため、水中での使用にも適しています。

IP定格

IP定格コードはIEC 60529で定められており、米国ではANSI 60529、欧州ではEN 60529に含まれます。2つの数字で構成され、1つ目の数字は固形物の侵入に対する耐性を0~6で、2つ目の数字は液体に対する耐性を0~9Kで表します。低いIP定格は、レベルセンサが使われる用途には特に関係ありません。固形物の侵入に関する上位の定格には、以下のようなものがあります。

5 - 防塵を示します。粉塵の侵入を完全に防げるわけではありません。しかし、粉塵がある状態で性能が低くなったとしても、装置の動作は継続します。

6 - 防塵密閉を示します。粉塵の侵入はありません。

液体の侵入を想定した2つ目の数値は、より複雑になります。高性能なカテゴリには、以下のようなものがあります。

7 - 規定された圧力および時間に対し、1メートル(3フィート3インチ)までの浸漬では、有害な量の水が浸入しません。

8 - 製造者が指定した条件下で、1メートル(3フィート3インチ)以上の深さまでの継続的な浸漬が可能です。

9K - 近距離で高圧、高温の噴射からの保護を提供します。

FDA認可の磁気レベルセンサ

米国食品医薬品局(FDA)の認可が必要な用途には、PICのポリプロピレン製ハウジングを使用した磁気レベルセンサが適しています。PLS-020A-3PPIは垂直方向の測定に適した小型センサで、PLS-092A-3PPHは水平方向の測定に適した設計となっています(図5)。これらのレベルセンサはIP67定格を有し、最大10W、0.7A、180VDC、130VACに対応したフォームAコンタクトを備えています。また、-20~+80℃の動作温度範囲を有しています。

水平磁気レベルセンサであるPICのPLS-092A-3PPHの図図5:PLS-092A-3PPHは、FDA認可の水平磁気レベルセンサです。(画像提供:PIC)

静電容量式センサ

Carlo Gavazziの静電容量式センサは、熱可塑性ポリエステルハウジングを備え、検出距離を調節でき、時間遅延を内蔵したもの(VC11RTM2410M)と内蔵しないもの(VC12RNM24)があります。時間遅延付きのセンサの場合、フォームAまたはフォームBのアクションに対して、遅延は最大10分まで可能です。これらのセンサは、検知距離を4~12mmまで調節可能で、さまざまな固体、液体、粒状物質の監視に使用できます。単極双投(SPDT)リレー出力により、ソレノイドやアクチュエータなどの負荷を直接駆動することができます。また、20.4~255VACまたはVDCの電源電圧で動作し、-20℃~+70℃の温度定格です。

高い繰り返し精度を持つレベルセンサ

TE ConnectivityのLL01-1AA01超音波レベルセンサは、デジタルフィルタ技術によって性能を向上させ、2mm以上の繰り返し精度を特長としています。このセンサは、フォームAまたはBの単極単投(SPST)リレー出力を有しています。ステンレス製ハウジングに収納されたこのセンサは、5.5VDC~30VDCの入力に対応し、ピーク負荷電圧は100VACまたはVDC、連続電流は+25℃まで3.5A、+100℃で0.75Aまで直線的にディレーティングすることができます。また、250psiまでの圧力に対応します。オプションとして、最高動作温度は80℃または100℃、取り付けは1/4インチNPTまたは1/2インチNPT、ケーブル長は1、4、10、20フィートです。

ハウジング材料が選択できる光学式センサ

VP01/02光学式レベルセンサは、Carlo GavazziのVP01EPと同様に、ほとんどの酸や塩基に耐性のあるポリスルホン製のハウジングに収められています。同社のVP03/04センサは、VP03EPと同様に、さまざまな溶剤に耐えられるポリアミド12のハウジングに収められています。IP67定格のこれらのセンサは、最大100ルクスの周囲光レベルで使用できます。フォームAおよびフォームBの出力としては、直流負荷に対してNPN/PNPトランジスタ、交流負荷にはSCRを選択できます。DC駆動のセンサの光パルス周波数は30Hz、AC駆動のセンサの光パルス周波数は5Hzです。DC駆動のセンサは10VDCから40VDCで動作し、出力がオンであることを示すLEDを備えています。AC駆動のセンサは、110VACまたは230VACの公称入力に対応します。

Carlo Gavazziの光学式レベルセンサの画像図6:この光学式レベルセンサは、ポリスルホン製とポリアミド12製のハウジングが選択可能です。(画像提供:Carlo Gavazzi)

まとめ

タンク内に貯蔵された液体や粒状物質、固形物の量を監視し、在庫状況の把握や製造プロセスの制御を行うために、磁気、静電容量、光学、超音波などさまざまなセンシング技術が利用されています。これらのセンサは、高温、高圧、滅菌処理など、特定の使用環境に応じたさまざまなハウジング材料で提供されます。

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著者について

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Jeff Shepard(ジェフ・シェパード)氏

ジェフ氏は、パワーエレクトロニクス、電子部品、その他の技術トピックについて30年以上にわたり執筆活動を続けています。彼は当初、EETimes誌のシニアエディターとしてパワーエレクトロニクスについて執筆を始めました。その後、パワーエレクトロニクスの設計雑誌であるPowertechniquesを立ち上げ、その後、世界的なパワーエレクトロニクスの研究グループ兼出版社であるDarnell Groupを設立しました。Darnell Groupは、数々の活動のひとつとしてPowerPulse.netを立ち上げましたが、これはパワーエレクトロニクスを専門とするグローバルなエンジニアリングコミュニティで、毎日のニュースを提供しました。また彼は、教育出版社Prentice HallのReston部門から発行されたスイッチモード電源の教科書『Power Supplies』の著者でもあります。

ジェフはまた、後にComputer Products社に買収された高ワット数のスイッチング電源のメーカーであるJeta Power Systems社を共同創設しました。ジェフは発明家でもあり、熱環境発電と光学メタマテリアルの分野で17の米国特許を取得しています。このように彼は、パワーエレクトロニクスの世界的トレンドに関する業界の情報源であり、あちこちで頻繁に講演を行っています。彼は、定量的研究と数学でカリフォルニア大学から修士号を取得しています。

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