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低電力な常時オンウェアラブル機器の設計方法:パート3 – Bluetoothワイヤレス接続の最適化

著者 Bill Giovino

Digi-Keyの北米担当編集者 の提供

編集者の注釈:この記事は、常時オンの電池駆動型ウェアラブル電子機器の設計について、主に電力を最適化する3つの領域に焦点を当てる3部構成シリーズのパート3です。パート1では、電池寿命を延長して充電を減らすためのマイクロコントローラの構成方法について説明しました。パート2では、電池を安全にメンテナンスして充電間隔を延ばす方法について説明しました。このパート3では、ウェアラブル機器のワイヤレスネットワーキングと、低電力を実現するようにワイヤレス接続を最適化する方法を検証します。

ウェアラブル機器は、設計者の能力を解放して、スペースや低電力のための最適化を図ることができるようにします。1平方ミリメートルでも重要であり、1ミリアンペアでも無駄にすれば電池寿命の短縮につながり、確実にユーザーエクスペリエンスが低下します。ウェアラブル機器の電池を消耗する主な要因の1つはワイヤレスインターフェースで、電池の消耗を最小限に抑えるためのソリューションが設計者向けに多数提供されています。

この記事では、ウェアラブル機器でのワイヤレス接続の仕組み、および電池の消耗を最小限に抑えるようにワイヤレスインターフェースを構成する方法について説明します。その後、Dialog Semiconductor社のワイヤレスチップについて検証し、ウェアラブル機器用にBluetooth接続を適切に構成する方法について説明します。

民生用ウェアラブル機器でのワイヤレス通信

民生向けのウェアラブル機器は、通常、メーカーが開発したアプリケーションを実行するモバイルデバイスに接続します。ウェアラブル機器は接続先のモバイルデバイスとは独立して動作できますが、最も一般的な動作モードでは、モバイルデバイスが通信圏内にある場合には常に、設定された間隔でモバイルデバイスと同期します。この同期はリアルタイムである必要はなく、この点は電力最適化の重要な要素となります。

たとえば、フィットネスウェアラブルは、経時的な心拍数、歩数、距離のログなどのデータをアプリケーションと同期します。ユーザーがトレーニングの最中である場合も、このデータはリアルタイムである必要はありません。1~5秒の更新間隔でも問題はなく、多くの場合はユーザーが間隔を構成できます。また、ウェアラブル機器は、着信呼び出しや着信メッセージなど、モバイルデバイスからのアラートを受信します。これらのアラートはオンデマンドで、必要な場合にのみ発生します。

ウェアラブル機器への接続のために設計者が使用できるワイヤレスインターフェースは多数ありますが、相互運用性を考慮すると、ウェアラブル機器とモバイルデバイス間の直接接続を提供するBluetoothよりも優れた機能はほぼありません。Wi-Fiも、モバイルが通信圏外にある場合に、ウェアラブルデバイスをインターネットに接続するために使用できます。そして、パブリックネットワークやアクセスが承認されているその他のネットワークに接続するように、ウェアラブル機器を構成できます。これにより、データを双方向に交換できます。たとえば、ウェアラブル機器からWi-Fiネットワーク経由でデータをウェアラブル機器メーカーのクラウドに転送し、そこからセルラーネットワークを介してモバイルデバイスに送信できます。同時に、モバイルデバイスでは、関連するローカルの状況に加え、電子メールやテキスト通知に合わせてウェアラブル機器を更新できます。

しかし、Wi-Fiはウェアラブル機器ではほとんど採用されていません。これは、必要となる電力やコストが増大すること、また、ウェアラブル機器は、ほぼ常に、組み合わされるモバイルデバイスの近くにあることが原因です。したがって、この記事では、Bluetoothに焦点を当てます。

ウェアラブル機器用のBluetooth

Bluetoothは、元々、1~3メガビット/秒(Mbit/秒)のデータレートでデータをストリーミングするためのピアツーピア接続用に開発されました。この本来のBluetooth仕様は、現在、Bluetooth 3.0またはBluetooth Classicと呼ばれています。このようなBluetoothの初期バージョンは、オーディオファイルやマルチメディアファイルのストリーミングには有効ですが、設計上、多くの電力を消費するため、断続的で、低データレート、低電力の制御信号やセンサデータには不向きでした。そこで、このような用途のために、Bluetooth 4.0が開発されました。

現在、Bluetooth Low Energy(LE)として広く知られているBluetooth 4.0は、125キロビット/秒(Kbit/秒)という低速でのデータ転送に適しています。さらに、Bluetooth LEチップは、ほとんどの時間、スリープモードに滞在しているため、必要になるまで最小限の電力しか消費しません。この特徴は、小型電池を使用する低電力のウェアラブル機器に最適です。

Bluetooth LE無線をウェアラブル機器に実装する際、開発者は無線を内蔵するマイクロコントローラを使用するか、外部無線を使用できます。どちらの方法が電力の最も低い選択肢となるかは、システム要件によって決まります。

たとえば、Bluetooth LE無線が周辺機器としてマイクロコントローラに統合されている場合、プリント基板上の貴重なスペースを節約できます。ただし、無線周辺機器が動作できるように、必ずマイクロコントローラに部分的に電力を供給する必要があります。

もう1つの方法として、Bluetooth LE無線をマイクロコントローラの外部に配置することもできます。この場合、プリント基板上のスペースがその分だけさらに必要になりますが、マイクロコントローラを低電力モードにできる間は、無線チップしかアクティブにする必要がないという利点があります。また、ウェアラブル設計に対するモジュラーアプローチの利点も得られます。この方法では、Bluetooth LE無線チップは変えずに、ホストマイクロコントローラだけを新しい設計のより強力なものに必要に応じて交換できます。さらに、Bluetooth無線およびスタックをマイクロコントローラにコーディングする必要がないため、設計サイクルを短縮できます。

外部Bluetoothチップの使用

ウェアラブル機器用の外部Bluetoothチップは、消費電力を大きく増やすことのない、マイクロコントローラへのシンプルなインターフェースを備えている必要があり、スリープ状態からマイクロコントローラを起動できる必要もあります。ウェアラブル機器に適したデバイスの1つは、図1のDialog Semiconductor DA14585 Bluetooth SoCです。

DA14585は、工場でプログラムされた128キロバイト(KB)のROMから実行されるArm® Cortex®-M0コアに基づいています。また、カスタマイズ用に64KBのOne-Time Programmable(OTP)メモリも備えています。これにより、DA14585用のカスタムBluetoothアプリケーションファームウェアを開発できます。このファームウェアでは、次のようなその他のオンチップ周辺機器にもアクセスできます。

  • 電池の監視に使用できる4チャンネルの10ビットA/Dコンバータ(ADC)
  • 直交デコーダを使用して、有向型のステップカウンタなど、3軸ヒューマンインターフェースデバイス(HID)にインターフェース接続可能
  • キーボードコントローラ周辺機器をプッシュボタンへの接続およびプッシュボタンのデバウンスに使用可能

Dialog Semiconductor DA14585の完全なBluetooth SoCソリューションの図図1:Dialog Semiconductor DA14585は、完全なBluetooth 5.0スタック、2.4ギガヘルツ(GHz)の無線トランシーバ、およびBluetooth周辺機器をカスタマイズするためのその他のハードウェアを備えた完全なBluetooth SoCソリューションです。(画像提供:Dialog Semiconductor社)

また、DA14585には2.4GHzトランシーバ、ベースバンドプロセッサ、および認定済みのBluetooth LE 5.0スタックが統合されているため、開発者は、Bluetooth半導体設計の細かな点を把握するために費やす時間を最小限に抑えることができます。ウェアラブル機器に必要な接続は通常1つだけですが、最大8つの同時Bluetooth LE接続がサポートされています。

このチップは、UART、SPI、またはI2Cインターフェースを使用してマイクロコントローラに接続できます。このデバイスにはホスト通信用のデフォルトファームウェアが搭載されていますが、ウェアラブルシステム設計の効率を向上できるように、オンチップOTPを使用した開発者によるホスト通信のカスタマイズがサポートされています。UARTではハードウェアフロー制御による最大1Mbit/秒のデータレートがサポートされているため、ホストマイクロコントローラは互換性のあるUARTインターフェースに対応している必要があります。

DA14585は小型でもあります。わずか5ミリメートル(mm)x 5mmの34ピンWLCSPで提供されるため、最小限の基板フットプリントで済みます。厚さも0.9mmしかなく、超薄型ウェアラブル機器に適しています。

Bluetooth LEコアおよびスタックは、Bluetooth仕様v5.0に完全に準拠しています(図2)。マイクロコントローラの代わりにDA14585内にスタックを配置する利点の1つは、Bluetooth仕様が更新された場合に、Dialog社でDA14585内のスタックを更新するだけで対応できることです。開発者は、ホストマイクロコントローラのアプリケーションファームウェアを更新して仕様の変更を活用しながら、ウェアラブル機器を以前と同様に機能させることができます。

Dialog Semiconductor DA14585の図図2:Dialog Semiconductor DA14585には、最小限の外部コンポーネントしか必要ありません。完全なBluetooth v5.0コアおよび無線が実装されているため、開発者は、Bluetooth半導体ソリューションの構築に関する詳細を把握する必要がありません。(画像提供:Dialog Semiconductor社)

Bluetooth無線に外部コンポーネントはほとんど必要ありません。すべてのBluetoothデバイスクラスおよびパケットタイプがサポートされています。また、無線の電源を切り、エネルギーを節約することもできます。無線は、Cortex-M0コアからはAHBバス周辺機器として認識されます。

Dialog Semiconductor社は、DA14586も提供しています。このデバイスには、DA14585と同じROM、OTP、および周辺機器のセットが搭載されているうえに、2Mbitのフラッシュメモリが増設されています。フラッシュメモリは何度もプログラム可能であるのに対してOTPは1回しかプログラムできませんが、OTPはフラッシュに比べて消費電力が大幅に少なく済みます。また、DA14585は0.9~3.6ボルトで動作しますが、DA14586は1.8~3.3ボルトを必要とします。

低電力Bluetoothウェアラブル機器の実装

DA14585のBluetoothコアには、次の2つの動作モードがあります。「アクティブ」モードと「ディープスリープ」モードです。アクティブモードでは、無線はBluetoothワイヤレス接続を介して送受信します。 ディープスリープモードでは、コアが無効になり、必要に応じて無線の電源がオフになります。ウェアラブル機器はあくまでもほぼリアルタイムのデバイスであるため、定期的なスリープおよび起動イベントに対応するようコアと無線をプログラムして、電力を節約できます。

たとえば、ディープスリープに一定時間滞在してから、起動してアクティブになり、ユーザー宛てまたはユーザーに関するメッセージや通知(電子メール、心拍数の更新など)を処理した後、ディープスリープに戻るように、Bluetoothコアをプログラムできます。このサイクルの期間は開発者が設定できます。コアがディープスリープに滞在する時間が長くなるほど、節約される電池の電力も多くなります。 ただし、ディープスリープが長すぎると、Bluetoothメッセージの遅延が発生する可能性があります。レイテンシと応答時間を短縮するために、アクティブモードの状態が長くなるようにコアをプログラムできますが、その場合は消費電力が増加します。開発者は、ディープスリープモードとアクティブモードのさまざまな期間を試し、電力消費と応答時間のバランスを最適に調整して、最良のユーザーエクスペリエンスを実現する必要があります。

DA14585のメインArm Cortex-M0プロセッサは、次の4つの電力モードをサポートしています。「アクティブ」モード、「スリープ」モード、「拡張スリープ」モード、「ディープスリープ」モードです。これらの電力モードとBluetoothコアの電力モードを混同しないように注意してください。Bluetoothコアがアクティブモードであるときに、Armコアと周辺機器を独自の拡張スリープモードにすることもできます。

  • アクティブモードでは、Armコアと周辺機器はすべて電源がオンになり、アクティブになります。これは、Bluetoothデータ接続がアクティブな状態であるときのDA14585のモードです。アクティブモードでは、DA14585は、3ボルトの電力供給を受け、受信時には5.3ミリアンペア(mA)、送信時には4.9mAを消費します。
  • スリープモードでは、Armコアはアイドル状態になりますが、その状態は保持されます。これにより、Bluetoothがアクティブであり、送信が完了してデータを操作できるようになるまでArmコアが待機しているときに、電力が節約されます。スリープモードでの消費電流は、どの周辺機器がアクティブであるかによって異なります。
  • 拡張スリープモードでは、Armコアは、選択された周辺機器とともにアイドル状態になります。このモードを使用すると、Bluetoothコアがディープスリープモードであるときに、またBluetoothが長時間アクティビティがない状態であるときに電力を節約できます。Bluetooth周辺機器とホストインターフェースをアクティブにすることも、アクティビティの検出時に割り込みでArmコアを起動することもできます。このモードでは、電力消費量が最小限に抑えられます。拡張スリープでは、DA14585は、64KBのRAMを保持した状態で3.3マイクロアンペア(µA)を消費します。
  • Armと周辺機器の最低電力モードはディープスリープモードです。このモードでは、Bluetooth無線を含むすべてがオフになります。このモードは、Bluetoothをオフにする必要があり、どのDA14585周辺機器も使用しない場合に便利です。ディープスリープでは、DA14585は、わずか610ナノアンペア(nA)しか消費せず、16KBのRAMを保持する必要がある場合でも1.4µAの消費で済みます。

基本動作では、DA14585ベースのウェアラブル機器のBluetoothコアは、ほとんどの時間、ディープスリープモードに滞在し、Armはスリープモードまたは拡張スリープモードのいずれかになります。この状態から、Bluetoothコアは、プログラムされた間隔で定期的に起動してアクティブモードになり、ワイヤレスデータをチェックし、Armコアは、起動してアクティブモードになり、ホストマイクロコントローラとの間でデータを通信します。送信が完了すると、Bluetoothコアはディープスリープモードに、Armコアはスリープモードまたは拡張スリープモードに戻ります。これにより、モバイルデバイスへのアクティブで信頼性の高い接続を確保しながら、電力も節約できます。

DA14585の導入

DA14585を導入する場合は、Dialog社のDA14585-00ATDEVKT-B Bluetooth DA14585基本開発キットを利用できます(図3)。

Dialog Semiconductor DA14585基本評価ボードの画像図3:Dialog Semiconductor DA14585基本評価ボードは、USBインターフェースを介してPCに接続し、デバイスのマイクロコントローラドライバやアプリケーションファームウェアを開発者がテストおよびデバッグする際に必要となるすべてを備えています。(画像提供:Dialog Semiconductor社)

DA14585基本開発キットは、USBインターフェースを介した完全なデバッグをサポートしています。これは、外部フラッシュプログラムメモリを使用する、Microchip Technology社のホストマイクロコントローラによって制御されます。マイクロコントローラのアプリケーションファームウェアは、USBインターフェースを介してフラッシュメモリにロードできます。開発者は、キットに含まれているサンプルプログラムをロードし、そのプログラムを使用してPCなどの別のBluetoothデバイスにインターフェース接続できます。その後、開発者のカスタムファームウェアをロードしてデバッグできます。

まとめ

ウェアラブルデバイスの設計者は、消費電力が最小となるように最適化を図って最良のユーザーエクスペリエンスを実現すると同時に、開発時間とコストにも配慮する必要があります。ワイヤレスインターフェースはパワーバジェットの大部分を消費する可能性もありますが、インターフェースを慎重に選択して実装することで、その電力消費を大幅に軽減できます。

前述のとおり、外部Bluetoothチップとホストマイクロコントローラを使用すると、開発時間が短縮され、開発者はBluetoothインターフェースをゼロから設計することなくウェアラブル機器を作成できます。利用可能な低電力モードを適切に活用すれば、信頼性の高い動作を確保しながら、ウェアラブル機器の電池寿命を延ばすことができます。

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著者について

Bill Giovino

Bill Giovino氏は、シラキュース大学のBSEEを持つエレクトロニクスエンジニアであり、設計エンジニアからフィールドアプリケーションエンジニア、そしてテクノロジマーケティングへの飛躍に成功した数少ない人の1人です。

Billは25年以上にわたり、STMicroelectronics、Intel、Maxim Integratedなどの多くの企業のために技術的および非技術的な聴衆の前で新技術の普及を楽しんできました。STMicroelectronicsでは、マイクロコントローラ業界での初期の成功を支えました。InfineonでBillは、同社初のマイクロコントローラ設計が米国の自動車業界で勝利するように周到に準備しました。Billは、CPU Technologiesのマーケティングコンサルタントとして、多くの企業が成果の低い製品を成功事例に変えるのを手助けしてきました。

Billは、最初のフルTCP/IPスタックをマイクロコントローラに搭載するなど、モノのインターネットの早期採用者でした。Billは「教育を通じての販売」というメッセージと、オンラインで製品を宣伝するための明確でよく書かれたコミュニケーションの重要性の高まりに専心しています。彼は人気のあるLinkedIn Semiconductorのセールスアンドマーケティンググループのモデレータであり、B2Eに対する知識が豊富です。

出版者について

Digi-Keyの北米担当編集者