mmWaveアプリケーションにパワーアンプ部品を活用する

著者 Pete Bartolik(ピート・バートリック)

DigiKeyの北米担当編集者の提供

より高いワイヤレスデータレートは、以前は、同じスペクトラムスライスにさらにビットを圧縮する複雑な変調方式によって達成されていました。このアプローチが実用的な限界に達している現在、商業的な5Gスループットアプリケーションの設計が目的であれ、大容量の軍事リンクが目的であれ、将来は高密度変調よりも広帯域化にかかっています。これにより、設計者はミリ波(mmWave)スペクトラムへと移行しています。豊富なスペクトラムは新たな機能を可能にしますが、同時に全く異なる設計上の課題をもたらします。

5G通信システムは、防衛企業が当初実施した長年の研究の恩恵を受けています。たとえば、ビームステアリングと複数ターゲットの同時追跡を可能にする防衛分野発のフェーズドアレイアンテナ技術は、現在、複数のユーザーに同時データストリームを送信する5Gアプリケーションに広く採用されています。商用システムは、マルチギガビットリンクに必要な帯域幅にアクセスするため、28GHzや39GHzといった帯域で運用されることが多くなっています。

Analog Devices, Inc.などの企業は、防衛産業アプリケーションで培ったmmWaveの専門知識を活用し、防衛性能要件と商用インフラに必要な製造性の両方に適合する標準部品を提供しています。高周波ICの高度な面実装パッケージングは、5Gを大量展開・拡大するのに役立ちました。

5G産業も防衛産業も、高度な高周波ハードウェアに依存しています。5Gネットワークは、スループットを最大化するために特定の狭い周波数帯域に最適化されますが、電子戦(EW)のような軍事アプリケーションでは、スペクトル認識を確実にするために広い運用帯域幅が必要となります。このような違いはあるものの、5Gにおける広帯域変調の推進は、共生的な製造上の利点を生み出しています。

mmWave技術におけるこれらの分野の融合は、商用展開に必要な製造規模を実現しました。また、以前は少量生産で高価な「チップアンドワイヤ」組み立て工程に頼っていた軍事アプリケーションの開発に関連するコストを大幅に削減しました。

この規模は、高度に集積化された無線周波数IC(RFIC)、フェーズドアレイモジュール、およびアクセス可能なテストソリューションに依存しています。これらのソリューションは、これまで大規模な防衛請負会社のような予算や専門性を持っていなかった小規模な設計会社でも利用できるようになってきています。

また、これらの分野の融合によって、テストインフラも共有されるようになりました。かつて、28GHzと39GHzでフェーズドアレイアンテナをテストするには、大型で高価な電波暗室が必要でした。5Gの普及は、防衛企業が多額の設備投資をせずに製品開発の課題を迅速に解決するために利用できる、手頃な価格の既製OTAテストソリューションの開発につながりました。実績のあるアプリケーション対応ビルディングブロックが利用できるため、あらゆる規模の設計会社が管理可能なサブシステムとしてmmWaveに取り組むことができ、有望なmmWaveアプリケーションをブロックダイアグラムから展開可能なハードウェアへと容易に移行させることができます。

スペクトラムイノベーション

数十年にわたり、ワイヤレスの技術革新は、2つの根本的に異なるアプローチから生み出されてきました。1つは、より多くの情報をそれぞれの異なる信号状態(シンボル)にエンコードすること、もう1つは、情報を伝送するために利用可能なスペクトル空間を拡大することです。

より単純な変調方式はロバスト性とシグナルインテグリティを優先し、より複雑な方式はシンボルあたりのビットを増やすことでデータスループットを向上させます。基本的な変調では、各シンボルを1ビットのような少量の情報で表現します。設計者は、QAMのようなより複雑な変調方式を使ってシンボルあたりにより多くの情報をエンコードしたり、より高い周波数のmmWave帯でより広いスペクトルチャンネルにアクセスしたりすることで、システムの性能を高めることができます。

変調方式はデータが搬送波にどのように詰め込まれるかを決定しますが、データビットが意図した宛先に確実に届くようにするのはパワーアンプ(PA)です。商用5Gでは、PAは、高スループットのフェーズドアレイをサポートするために、特定の周波数帯域内の効率と直線性を優先します。しかし、軍事用システムは通常、レーダの鮮明度、衛星通信、使いやすさを向上させるため、より広い周波数範囲とより大きな出力を目指しています。

変調方式がますます高度化していても、搬送波周波数(FC)帯域で伝送できるデータ量には根本的な限界があります。重要な原則の1つは、データスループットがチャンネル幅、すなわち変調信号の帯域幅(FBW)に直接依存していることです。より高いデータレートを実現するには、混雑した単一車線の道路から10車線の高速道路へ切り替えるように、より広い搬送波周波数チャンネルが必要となります(図1)。

グラフ:搬送波周波数を中心とする変調帯域幅図1:搬送波周波数を中心とする変調帯域幅。(画像提供:Analog Devices, Inc.)

また、DCリミットを考慮する必要があり、これは信号が0Hzを下回ってはならないというものです。信号が変調されると、その搬送波周波数を中心に広がり、技術者が側波帯と呼ぶ領域を形成します。しかし搬送波周波数が低すぎると、理論上はこの信号の一部が制限値を下回ることになり、物理的に不可能な現象となります。そのため、エンジニアは搬送波周波数をmmWave帯のような高い周波数に引き上げ、全信号が使用可能なスペクトル内に確実に収まるようにしなければなりません。高周波動作におけるこの「絶対的な基盤」こそが、広帯域かつ高速なチャンネルを可能にしています。

この2つの原則を合わせると、なぜ設計者が商用5Gと防衛システムの両方でmmWave周波数に注目しているのかがよくわかります。変調の複雑さが実用的な限界に達すると、スループットを大幅に向上させる唯一の方法は、搬送波をより高い周波数に移動させ、はるかに広いスペクトルレーンを開くことです。したがって、mmWaveへの移行は単なるトレンドではなく、現代のアプリケーションが求める大容量データレートと高分解能センシングを実現するための物理的要件なのです。

設計上の課題の克服

mmWave周波数への移行は、商用および防衛システムの両方に影響を与える方法で、ワイヤレスハードウェアの物理的設計を再構築します。

  • 高い周波数は波長を圧縮し、アンテナの小型化を可能にします。この小型化により、アレイをチップや小型モジュールに直接組み込むことができます。
  • 波長が短いとビーム幅が狭くなり、角度分解能が向上します。つまり、レーダは間隔の近いターゲットを識別することができ、5G基地局は個々のユーザーに正確にエネルギーを集中させることができます。
  • これらの技術が広く商業的に展開されるようになったことで、面実装技術(SMT)へのシフトが進みました。SMTは、プラスチックまたはセラミックパッケージの高集積モジュールの自動生産をサポートします。

このような根本的な変化は、mmWaveシステムを構築する設計者にとって、チャンスと同時に新たなエンジニアリング上の課題をもたらします。

  • 高周波動作は、パスロスの増加、アンテナ効率の低下、非線形性、熱効果、寄生レイアウトの問題に対する感度の上昇につながります。
  • RFフロントエンド部品に厳しい要求を課す広帯域幅の要件や、5G用のフェーズドアレイビームフォーミングや防衛用の高分解能レーダなどのシステムレベルの制約が、設計プロセスをさらに複雑にしています。

商用設計者は、大規模な5Gインフラをサポートするために、効率性、直線性、統合性のバランスを見つけなければなりません。一方、防衛設計者は、多くの場合、レーダ、衛星通信、戦術通信のために、より高い出力電力、広い帯域幅、複数の帯域にまたがる適応性のある動作を必要とします。

エンジニアは、専用ICの中から選択しなければなりません。多くの場合、その選択は、アプリケーションがパフォーマンスの最適化を優先するか、運用の汎用性を優先するかによって決まります。

mmWaveの周波数ではパスロスが著しく増加し、高次の変調方式は歪みの影響を受けやすくなります。その結果、商用5Gでは、フェーズドアレイアンテナがそれぞれの帯域で高いスループットを効率的に提供できるようにすることが極めて重要になります。軍事用システムも同様の課題に直面しますが、その主な焦点は多くの場合、レーダ距離や衛星通信(SATCOM)リンクの出力電力を最大化することです。

このようなニーズに対応するため、ADIのHMC863ALC4は、5Gアプリケーション向けに24GHz~29.5GHzの範囲内で狭帯域においてピーク効率が得られるように調整できる帯域最適化PAを提供しています。高い直線性、17dBのゲイン、+21dBmの出力電力を誇り、22.5%の電力付加効率(PAE)定格を達成します。これは、消費されるDC電力に対して生成される追加RF電力を測定するものです。4mm x 4mmのコンパクトなSMTパッケージに収納されたこれらの機能により、商用設計者は、自動化された組み立て工程をサポートしながら、堅牢なスループットを維持することができます。EV1HMC863ALC4評価ボード(図2)は、RFフロントエンドの採用を決定する前に、PAの性能、熱挙動、バイアスネットワーク、測定セットアップを検証するためのハードウェアプラットフォームを設計者に提供します。

画像:Analog DevicesのEV1HMC863ALC4評価プラットフォーム図2:EV1HMC863ALC4は、mmWave狭帯域アプリケーションの実際の性能を評価するための評価プラットフォームを提供します。(画像提供:Analog Devices, Inc.)

防衛設計者は、高いレーダ分解能やマルチバンド通信を実現するため、より広い帯域幅で運用することが多く、その目標達成のために効率を犠牲にすることがあります。このような場合、ADPA7005CHIP PAは20GHz~44GHzの広い動作範囲を提供し、通常、周波数サブバンドに応じて8%~13%の範囲のPAEを達成します。+33dBmの出力電力、14dBのゲイン、45%のシンプルなDC-RF効率を実現し、これらすべてが7mm x 7mmのコンパクトなSMTパッケージに収められているため、コンパクトなモジュールへの統合が容易です。その広いカバレッジと高い出力は、高分解能レーダから長距離通信まで、柔軟で高性能な防衛アプリケーションに適しています。ADPA7005-EVALZテストプラットフォーム(図3)にはヒートシンクが内蔵されており、広帯域mmWaveアプリケーションに対応するためのより複雑な設計を開発する際に、放熱効果を高めることができます。

画像:Analog DevicesのEVAL-ADPA7005AEHZ評価ボード図3:EVAL-ADPA7005AEHZ評価ボードは、より複雑な広帯域mmWaveアプリケーションの開発を支援します。(画像提供:Analog Devices, Inc.)

まとめ

mmWave周波数への移行は、世界的な通信・防衛技術の重大な変化を意味します。フェーズドアレイ5GインフラでもコンパクトなEWシステムでも、mmWaveモジュールを統合するには、熱と信号の性能を維持しながら、自動化された反復可能な組み立てをサポートする部品が必要です。帯域幅、直線性、効率に細心の注意を払って設計されたADIのPA部品を利用することで、設計者は商用および軍事アプリケーションの両方でmmWaveシステムの要件を満たすことができます。

DigiKey logo

免責条項:このウェブサイト上で、さまざまな著者および/またはフォーラム参加者によって表明された意見、信念や視点は、DigiKeyの意見、信念および視点またはDigiKeyの公式な方針を必ずしも反映するものではありません。

著者について

Image of Pete Bartolik

Pete Bartolik(ピート・バートリック)

Pete Bartolikはフリーライターで、20年以上にわたってITとOTの問題や製品について研究し、執筆してきました。それ以前は、IT管理専門誌『Computerworld』のニュース編集者、エンドユーザー向け月刊コンピュータ誌の編集長、日刊紙の記者を務めていました。

出版者について

DigiKeyの北米担当編集者