食品、飲料、製薬の加工ライン向けの新しいIP69Kセンサオプション

著者 Jeff Shepard(ジェフ・シェパード)氏

DigiKeyの北米担当編集者の提供

食品、飲料、製薬の加工では衛生管理が必須です。インダストリ4.0のすべての作業と同様に、これらの加工ラインでは多数のセンサによってサポートされた高度な自動化が求められます。

つまり、高圧洗浄や定期的な定置洗浄(CIP)手順に耐えることができ、衛生的な作業環境を維持しながら効率的な運用を確保できる、耐環境性の高い侵入保護(IP)69K定格のセンサを使用する必要があります。

これらのアプリケーションのセンサには、多くの場合、IP69K定格に加えて、腐食に強く、定期的なCIP手順にも耐えるSAE 360 Lステンレス鋼合金のような、米国食品医薬品局(FDA)の要件を満たす材料で構成されていることが求められます。その他のアプリケーションでは、FDAグレードのプラスチック製ハウジングが適しています。

この記事では、まずDIN 40050-9で定義されているIP69Kの要件の概要を説明し、SAE 200、300、400シリーズを含む各種のFDAステンレス鋼の性能を検討します。また、利用可能なFDAグレードのプラスチックと、どのような場合にそれらを使用できるかも考察します。

次に、食品、飲料、製薬の加工ラインでの使用に適したBanner Engineeringの新しいセンサをいくつか紹介し、そのアプリケーションと設置に関する提案をご紹介します。最後に、IP69Kのセンサ性能が必要であるものの、FDA承認の材料で作られたハウジングは必要ない、ボトルキャッピングのアプリケーションについて取り上げます。

IP69KセンサはIP68にも適合するか?

センサは両方の規格を満たすように設計することができます。これらのIP定格の「6」は、これらのデバイスが防塵構造であり、塵の侵入がないことを意味します。

しかし、IP69Kに適合しているからといって、センサが自動的にIP68にも適合しているとは限りません。国際電気標準会議(IEC)40050-9は、IEC 60529のIP評価システムを拡張し、他のIP評価とはやや異なる高圧高温洗浄アプリケーション向けのIP69Kを追加したドイツ規格に基づいています。

IP68の防水性能はIP67に基づいています。IP67では、深さ1メートルまでの水中に一時的に30分間以上浸すことが求められます。IP68もまた、機器メーカーとユーザーの合意によって設定された試験条件で水中に浸すことが必要であり、その条件はIP67よりも厳しいものでなければなりません。たとえば、Banner EngineeringのIP68定格のセンサは、水深2メートルで24時間以上の連続浸漬に耐えることができます。

IP69Kでは浸水は必要ありません。IP69Kの試験には3つの要素があります。

  • 毎分14~16リットル(L/min)の流量で10MPa(1500psi)の圧力で+80°Cの水をデバイスに噴射する能力
  • スプレーノズルは、デバイスから10~15cm離し、0°、+30°、+60°、+90°の角度でそれぞれ30秒間、合計120秒間保持する必要があります
  • デバイスはターンテーブルの上で12秒に1回回転します

Banner EngineeringのIP69K定格のセンサは、標準のIP69K試験を上回る要件である、少なくとも1メートルの水中浸漬試験も実施されています(図1)。試験後、センサ内部に水が入っていないか検査します。センサ内部に水が入っていないこと、そしてセンサが正常に機能し続けることが、試験合格の条件です。

画像:Banner EngineeringのIP69K定格センサ図1:IP69K定格のセンサは、このセンサのように、高圧高温の洗浄に耐えることができます。(画像提供:Banner Engineering)

腐食も重要な考慮事項

IP評価システムは、エンクロージャが固形粒子や液体の浸入をどれだけ防ぐことができるかを示します。腐食環境での動作は考慮されていません。FDAの要件がこれをカバーしています。

FDAは、食品や医薬品に使用しても安全であることを保証するために、エンクロージャのハウジング材料を規制しています。たとえば、食品グレードのステンレス鋼は、以下の要件を満たさなければなりません。

  • クロム含有量が16%以上である必要があります。酸素が存在すると自己修復する酸化クロム膜により、ステンレス鋼は腐食に耐えることができます。
  • それぞれクロム-ニッケル-マンガン合金、クロム-ニッケル合金、クロム合金を含むSAE 200、300、400シリーズのステンレス鋼でなければなりません。
  • 表面が滑らかで、クリーニングが容易でなければなりません。
  • ピッティング、チッピング、クレージング、スクラッチ、スコーリングに耐性があり、繰り返される高圧・高温の洗浄に耐える厚さが必要です。
  • 食品に匂い、味、色を移してはなりません。

軽量なソリューションとしては、陽極酸化アルミがFDAにより「一般的に安全と認められている」とされています。アルミを使用する際には、適切な取り扱いと加工が必要です。

FDAが承認しているプラスチックにはさまざまな種類があります。共通の特徴として、摩耗、曲げ、寸法変化に対する高い耐性があります。以下はその例です。

  • ポリカーボネートは軽量かつ透明で、非常に強度の高い材料です。
  • ポリブチレンテレフタレート(PBTポリエステル)は強度、剛性、寸法安定性が高い材料です。化学薬品、酸化、水に耐性があり、150°Cまでの耐熱性があります。
  • アクリルは無毒で透明なプラスチックで、マテリアルハンドリング用として承認されています。また、耐熱性があり、過酷な環境での使用にも適しています。
  • ナイロンは、優れた酸素および水分バリア性を有しています。外部環境から部品を保護するために使用されています。

FDAグレードのステンレス鋼製光電センサ

Banner EngineeringのQ4Xシリーズ 光電センサは、モデルによって25~610mmの検出範囲を提供します。たとえば、モデルQ4XFKLAF310-Q8の検出範囲は35~310mmです。

ハウジングは316 L FDAグレードのステンレス鋼製で、IEC60529規格によるIP68、DIN 40050-9規格によるIP69Kの定格に適合しています。機器の洗浄や衛生管理で一般的に使用される酸や腐食性の洗浄・消毒用化学薬品にも対応しており、ECOLABの認証を受けています。

センサが実行モードにある場合、4桁の7セグメントディスプレイに現在の測定値または対応するアナログ出力値が表示されます(図2)。その他の特長を以下に挙げます。

  • ディスクリート、アナログ(0V~10Vまたは4mA~20mA)、透明体、およびIO-Linkモデル
  • 高分解能モデルにアナログ出力とさらに高い過剰ゲインが加わり、より多くの困難なアプリケーションに対応
  • 距離に応じて、さまざまなターゲットの色、材質、表面を検出
  • エラー防止用途に最適なデュアルティーチモード(明暗度 + 距離)。反射板を使用せずに透明体を検出

画像:Banner EngineeringのQ4XFKLAF310-Q8光センサ図2:IP69KおよびIP68定格のこの光センサは、FDAグレードのステンレス鋼でパッケージされています。(画像提供:Banner Engineering)

構成と切り替えの高速化

オプションのRSD1QPリモートセンサディスプレイ(RSD)は、BannerのQ4Xシリーズやその他のセンサファミリの構成やモニタリングに使用できます(図3)。RSDは、インダストリ4.0の工場における製品切り替えを迅速化し、構成完了後も接続したままにしておくことも取り外しておくことも可能です。また、アクセスしにくい場所にあるセンサのモニタリングも簡単になります。RSDのその他の用途には、以下のものがあります。

  • センサ間の設定のコピー
  • センサの迅速な交換をサポート
  • RSDは、異なる操作に対して最大6つの構成を保存可能

図:Banner Engineering RSD1は、リモート構成に使用可能図3:RSD1は、BannerのQ4Xシリーズのようなセンサのリモート構成とモニタリングに使用できます。(画像提供:Banner Engineering)

プラスチックハウジングの光センサ

T18-2VPRL-2M(T18-2)耐洗浄性センサは、食品製造ライン、家禽処理、箱検出、重量検査所の操作のトリガなど、過酷な環境での使用に設計された内蔵型光電センサです。

ケースは黒と黄色のPBTポリエステル製で、インジケータライトパイプとウィンドウは半透明の白色アクリル製です。プラスチックケースは超音波溶接で完全に密閉され、電子回路はIP69K定格のエポキシで封止されているため、二重の密閉性を実現しています(図4)。このセンサはIP68定格でもあります。

画像:Banner Engineering T18-2VPRL-2M(T18-2)耐洗浄性センサ図4:IP69KおよびIP68定格のこの光センサは、FDA承認のプラスチックでパッケージされています。(画像提供:Banner Engineering)

アルミ製IP69Kレーダセンサ

Q90Rシリーズのようなレーダセンサは、機械からの人の保護、協働ロボット(コボット)との連携、食品、飲料、製薬の加工ラインにおけるタンクレベルの測定など、さまざまな用途に役立ちます。IP69K定格のアルミ製ハウジングは頑丈で軽量です。これらのセンサの動作温度範囲は-40°C~+65°Cであり、湿気や霧の多いエリアなど、過酷な環境での使用に適しています。

たとえば、モデルQ90R-4040-6KDQは、150mmから20mの範囲で、2つの出力(IO-Link通信による1つのPNP/NPNと1つの1 PNP/NPN)を備えています。すべてのQ90Rセンサは、ウィンドウ形状やターゲット設定値などの検出パラメータをカスタマイズできます。IO-Linkは、リアルタイムのデータ転送をサポートできます。

物体検出は、センサに対する距離、速度、角度位置に基づいて行うことができ、構成可能な多次元性能を提供します。2つの独立したゾーンで、複数のターゲットを同時に検出および測定できます(図5)。

画像:Banner Engineering Q90R-4040-6KDQアルミ製ハウジングレーダセンサ図5:このアルミハウジングのレーダセンサは、食品、飲料、製薬の加工ラインにおけるタンクレベルのモニタリングに使用できます。(画像提供:DigiKey)

ビジョンシステム用照明

品質管理および検査アプリケーション用のビジョンシステムは、最適な動作のために優れた照明を必要とします。BannerのBL60密閉型LEDバーライトは、明るく、焦点の合った照明を提供します。4つの高輝度可視波長と赤外線(IR)、2つの紫外線(UV)波長を生成するモデルが入手可能です。最適な照明オプションを選択することで、ビジョンシステムの性能をさらに向上させることができます。

耐油、耐薬品、耐水性のアルミ製ハウジングはIP69K定格を備えており、長さは340mmと640mmがあります。ウィンドウには、透明または拡散ポリカーボネート、ホウケイ酸ガラスの3種類があります。1~10Vの調光制御と、調整可能なパルス幅変調(PWM)ストロボ機能を備えています。340mm LEDバーライトで使用可能な光色の例には、以下のものがあります。

ボトルキャップ用IP69Kニッケルメッキ亜鉛レーザーセンサ

食品、飲料、製薬の加工ラインにおけるセンサのアプリケーションすべてに、FDA承認のハウジング材料が必要とされるわけではありません。ボトルキャッピングは、その良い例です。

ボトルキャップは大量に供給されることが多く、充填ラインで使用する前に選別が必要です。上下逆さまなど、位置がずれたキャップは、キャップのないボトルができたり、キャッパーマシンが詰まったりして、生産性を低下させる可能性があります。Q3XTBLD-Q8(Q3X)のようなレーザーセンサは、キャップがキャップの供給システムに到達する前に、キャップの向きが間違っていないかを素早く識別することができます。

Q3Xは100mmのバックグラウンド抑制機能を備えており、向き検出アプリケーションに好適です。固定バックグラウンド抑制機能により、Q3Xセンサは特定の距離を認識し、設定値から外れたものは無視するように設定できます。

ボトルキャップの選別アプリケーションでは、Q3Xはキャップの上部がセンサ側を向いていることを検出するように設定できます。キャップがセンサと反対側を向いている場合は受け入れられますが、センサ側を向いている場合はエラー出力が送信され、キャップは拒否されます。キャップはキャップ選別機に戻されて再試行させることができます。

Q3Xの迅速な検出速度は、高速充填ラインにおいて重要です。このセンサは、わずか250µsで部品を検出し、毎秒最大2,000イベントをキャプチャできます。角度付き3桁ディスプレイは、ユーザーにフィードバックを提供し、セットアップと試運転を迅速化します。ニッケルメッキ亜鉛ハウジングはIP67およびIP69K定格であり、湿潤環境に適しています(図6)。

画像:Banner Engineering Q90R-4040-6KDQアルミ製ハウジングレーダセンサ図6:このIP69K定格のレーザーセンサは、ボトルキャッピング工程に適したニッケルメッキ亜鉛パッケージに収められています。(画像提供:Banner Engineering)

まとめ

食品、飲料、製薬の加工ラインでは、IP69Kに適合し、高圧・高温のCIP手順に耐える堅牢なセンサが必要です。これらのセンサの多くは、水中への浸漬に関するIP68の要件を満たすようにも設計されています。ほとんどの場合、FDA承認の材料でパッケージされる必要がありますが、ボトルキャッピングの作業など、例外もあります。

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著者について

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Jeff Shepard(ジェフ・シェパード)氏

ジェフ氏は、パワーエレクトロニクス、電子部品、その他の技術トピックについて30年以上にわたり執筆活動を続けています。彼は当初、EETimes誌のシニアエディターとしてパワーエレクトロニクスについて執筆を始めました。その後、パワーエレクトロニクスの設計雑誌であるPowertechniquesを立ち上げ、その後、世界的なパワーエレクトロニクスの研究グループ兼出版社であるDarnell Groupを設立しました。Darnell Groupは、数々の活動のひとつとしてPowerPulse.netを立ち上げましたが、これはパワーエレクトロニクスを専門とするグローバルなエンジニアリングコミュニティで、毎日のニュースを提供しました。また彼は、教育出版社Prentice HallのReston部門から発行されたスイッチモード電源の教科書『Power Supplies』の著者でもあります。

ジェフはまた、後にComputer Products社に買収された高ワット数のスイッチング電源のメーカーであるJeta Power Systems社を共同創設しました。ジェフは発明家でもあり、熱環境発電と光学メタマテリアルの分野で17の米国特許を取得しています。このように彼は、パワーエレクトロニクスの世界的トレンドに関する業界の情報源であり、あちこちで頻繁に講演を行っています。彼は、定量的研究と数学でカリフォルニア大学から修士号を取得しています。

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