困難な環境下での車両検知と衝突回避にレーダを活用する方法
DigiKeyの北米担当編集者の提供
2024-11-12
モーションモニタリングと位置センサは、物流、製造、鉱業、輸送、農業などの産業において、衝突回避を可能にし、安全を確保し、生産性を高めます。これらのセンサは車両に搭載することも、戦略的な固定位置に設置することもできます。
また、特定のアプリケーションのニーズに合わせて設定可能であり、距離、角度位置、速度に基づく物体検出を含む多機能センシング機能を備えていなければなりません。一度に複数のターゲットを検出する能力は、過密な環境や複雑な環境で必要とされます。
搬入口やフォークリフトの速度制御のような用途では、汚れ、ほこり、風、降水などの環境条件に影響されない技術を使用するメリットがあります。検出窓の形状やターゲットセットポイントなどのパラメータをカスタマイズすれば、さらに性能を高めることができます。
この記事では、まずいくつかの主要なレーダ仕様における動作周波数の重要性を確認し、周波数変調連続波(FMCW)やパルスコヒーレントレーダ(PCR)などの利用可能なレーダ技術、検出方式、ビームパターン、検知ゾーンの比較に移ります。その後、レーダセンサを使用した高度なシステムの開発を加速させるソフトウェアスイートを紹介します。
最後に、Banner EngineeringのQ90Rシリーズのレーダセンサが、搬入口でのトラックの存在検知や安全性向上のためのフォークリフト速度制御など、要求の厳しい環境下でも信頼性の高い検知を可能にする多機能センシング機能を提供するために、これらすべての要素がどのように活用されているか、その応用例を紹介します。
無線探知測距(レーダ)は、高周波RFエネルギーを放出するアクティブセンサ技術です。エネルギーはその経路上にある物体で反射され、反射されたエネルギーの特性を利用して物体の検出や距離の測定を行います。センサに向かっていく、あるいはセンサから遠ざかっていく速度を測定できる場合もあります。
動作周波数は、レーダセンサの性能を決定する基本的な特性です。産業用レーダセンサは、産業・科学・医療(ISM)周波数帯の一部である24GHz、60GHz、122GHzで動作し、特別な免許なしで使用できます。
レーダセンサの動作周波数は、以下のようないくつかの仕様に大きな影響を与えます。
- 探知距離 - 24GHzのような低周波レーダセンサは、最も長い探知距離に対応します。
- 精度 - 122GHzのような高周波レーダセンサは精度が高く、より小さな物体を検出できます。
- デッドゾーン - レーダセンサのデッドゾーン(ブロッキング距離)は、ターゲットが近すぎるために発生します。一般的に、高周波数のセンサはデッドゾーンが小さくなります。
- 耐候性 - センシング機能は、風、霧、蒸気、温度変化の影響を受けません。レーダは一般的に、雨や雪による干渉を受けにくいです。雨や雪による干渉を最も無視できるのは24GHzレーダです。
- 対象物質 - 24GHzレーダは天候による干渉に最も強い反面、さまざまな物質を感知する能力が最も制限されます。60GHzまたは122GHzのレーダセンサは、高誘電材料と低誘電材料を検出できます(図1)。
図1:レーダセンサの動作周波数は、誘電特性に基づくさまざまな対象物質の識別能力に強い影響を与えます。(画像提供:Banner Engineering)
周波数以外の要素
周波数はレーダセンサの明確な特徴です。さらに、その他の重要な仕様として、FMCWやPCRのようなレーダ技術、調節可能フィールドセンサや再帰反射センサを含む検出方式、視野角、窓形状、ターゲットセットポイントなどがあります。
FMCWは、固定帯域幅で周波数が増減する変調された連続信号を放射します。レーダは反射信号の周波数を測定することで、信号がターゲットに反射して戻ってくるまでの時間を確認することができます。その飛行時間(ToF)情報によってターゲット距離を特定します。
FMCWの利点としては、別々のアンテナやパルスを使用しない距離と速度の同時測定、優れた距離分解能、距離の近いターゲットを識別する能力、厳しい環境での高精度などがあります。
PCRレーダはパルスを送信し、送信機をオフにしてターゲットからのエコーを受信するのを待ち、送信機を再びオンにして新しいパルスを送信するというサイクルを続けます。FMCWと同様に、ToF解析の一種を使用してターゲットの距離と速度を特定します。パルスの使用は、PCRレーダの使用電力がFMCWよりも少ないことを意味します。PCRはバッテリ駆動のシステムで好まれることが多く、低消費電力の近距離アプリケーションに適しています。
調節可能フィールドセンサと再帰反射センサの比較
調節可能フィールドレーダは、反射されたRF波を感知することで物体を検出します。多くのRFエネルギーを反射するレーダ断面の大きな物体を検出するのに適しています。金属表面(特にレーダビームに垂直な表面)が大きな物体は、一般的にレーダ断面が大きくなります。
調節可能フィールドレーダセンサは、セットポイント距離が設定可能な場合があります。このセンサはToF計算を使用してターゲット距離を特定し、セットポイント距離内にターゲットが存在する場合のみ信号を送ります。
再帰反射レーダセンサは、壁のような反射する基準ターゲットの存在に依存し、基準ターゲットからの戻り信号の乱れを識別することで物体を検出します。これらのレーダセンサは、レーダ断面積が大きくなくても物体を感知するように最適化できます。
60GHzのFMCWレーダセンサ
Q90RシリーズのFMCW調節可能フィールドレーダセンサは60GHzで動作し、精度、探知距離、物質検出能力においてバランスの取れた性能を発揮します。また、IP69Kに準拠しており、過酷な環境での使用に適しています(図2)。視野角は120°×40°と40°×40°があります。探知距離および、最も近い物体や最も強度のある物体の検出といったパラメータは、特定のアプリケーション要件に合わせて変更することができます。
図2:Q90RシリーズのFMCW調節可能フィールドレーダセンサは60GHzで動作し、IP69Kの堅牢なパッケージに収められています。(画像提供:DigiKey)
Q90R2-12040-6KDQは、高度に設定可能な120°×40°の視野角を独立した検出ゾーンに分割でき、精密な位置センシングが可能です(図3)。その多次元センシング機能は、距離、半径方向の位置、速度の閾値に基づき、よりインテリジェントな物体検出をサポートすることができます。Q90Rファミリの他のレーダセンサモデルと同様に、探知距離は0.15~20mです。また、IO-LinkやBannerのパルス周波数変調(PFM)技術であるPulse Proなど、柔軟なコネクティビティオプションも提供します。
図3:Q90R2レーダセンサは、設定可能な120°×40°の広い視野角を備えています(画像提供:Banner Engineering)
ソフトウェアでパフォーマンスを引き出す
Q90RおよびQ90R2レーダセンサの強力な機能は、設計者がセンサからのデータを設定および視覚化できるグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)である、BannerのMeasurement Sensor Softwareを使用して引き出すことができます。
このソフトウェアは、センサが検知しているものを示すグラフィックを提供し、レーダセンサのような可視ビームを持たないセンサに役立ちます。ユーザーは、応答速度、出力設定、フィルタリングオプションなどのセンサパラメータを変更できます。
Q90R2の120°×40°の視野角は高度に設定可能で、精密な位置決めと制御が可能です。設計者はBannerのソフトウェアを使用し、各アプリケーションの窓形状やターゲットセットポイントなど、高度なセンシングパラメータをカスタマイズすることができます(図4)。
図4:BannerのMeasurement Sensor Softwareを使用することで、設計者は視野角(上)、窓形状とターゲットポイント(下)を最適化できます。(画像提供:Banner Engineering)
搬入口での車両検知
搬入口でトラックを自動的かつ正確に検知することは、生産性と安全性をサポートして環境基準を満たすために重要です。ドアベルやインジケータといった従来のソリューションは、適切でない場合が多くあります。搬入口は騒音が多く、ドアベルが聞こえないこともあります。加えて、頭上や機械の照明、フォークリフトの点滅灯などがあるため、インジケータライトが点滅していても見落としやすくなります。
望ましいのは自動化されたセンサソリューションです。しかし、トラックにはさまざまなサイズがあり、さまざまな素材で作られ、さまざまな色や表面仕上げがあります。このような課題に加え、騒音、ほこり、雨、雪といった周囲の環境条件の曖昧さにより、光電センサや超音波センサに基づく信頼性の高いソリューションの実装は困難になります。
多くの場合、Q90R2のようなレーダセンサが好まれます。これらは周囲の環境条件の影響を受けません。また、IP67/IP69K規格のハウジングを備え、激しい雨やその他の厳しい環境条件に適しており、-40℃~+65℃という広い動作温度範囲も備えています。素材やその色、質感、反射率に関係なく、トラックの存在を確実に検知することができます。
設定可能な独立した検知ゾーンと120°×40°のビームパターンを持つQ90R2は、1つのセンサで2つ分の作業を行え、隣接する2つの搬入口でトラックの存在を検知することができます(図5)。
図5:Q90R2レーダセンサの120°×40°のビームパターンは、1つのセンサで2つのトラック搬入口を監視できることを意味します。(画像提供:Banner Engineering)
フォークリフトの速度制御と安全性
レーダセンサは車両を検知するだけでなく、フォークリフトのような車両に取り付けて周囲の変化を検知し、安全性を高めることもできます。たとえば、Q90R2レーダセンサをフォークリフトの背面や側面に取り付け、距離の異なる複数のゾーンを設定することができます。
Q90R2は120°×40°の広いビームパターンを持ち、特に動きのある周囲の対象物を監視するのに適しています。さらにQ90R2は、半径方向の距離、角度位置、ターゲット速度をフィードバックします。危険が近づくと、フォークリフト運転手に警告を発したり、フォークリフトの速度を自動的に制限したり、フォークリフトを停止させたりすることができます。
フォークリフトを屋内と屋外の両方で使用する場合は、ビームパターン40°×40°のQ90Rレーダセンサを屋根に取り付けて、天井の有無を検出できます。フォークリフトが屋外にあり、天井が検出されない場合、フォークリフトは最大許容速度で動くことができます。フォークリフトが屋内を移動しており、天井がある場合は、安全性を高めて損傷を防ぐために、最高速度を自動的に下げることができます(図6)。
図6:レーダセンサは、フォークリフト周囲の人や物体、天井の有無を監視するために使用できます。(画像提供:Banner Engineering)
システムのニーズに応じて、Q90Rには以下のような出力構成の異なる複数のモデルがあります。
- デュアルディスクリートNPN/PNP、PFM、IO-Link出力を備えたQ90R-4040-6KDQ
- アナログ電流(4~20mA)、単一ディスクリートNPN/PNP、IO-Link出力を備えたQ90R-4040-6KIQ
- アナログ電圧(0~10Vまたは0.5~4.5V)、単一ディスクリートNPN/PNP、IO-Link出力を備えたQ90R-4040-6KUQ
まとめ
Q90Rシリーズのレーダセンサは高い汎用性を備えています。動作周波数は60GHzのため、さまざまな物質を検出できます。最大20mの探知距離と設定可能なビームパターンを持つこれらのFMCWレーダは、さまざまなアプリケーションをサポートすることができます。さまざまなシステムニーズをサポートするために複数の出力オプションが用意されており、フォークリフトのような車両に取り付けたり、搬入口に隣接するような戦略的な固定位置に設置したりすることが可能です。最後に、設計者はBannerのMeasurement Sensor Softwareを利用することで、システム設計と配備を迅速に行うことができます。
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