転流エンコーダにインテリジェンス機能を搭載

著者 Jeff Smootは、CUI Devicesでアプリケーションエンジニアリングおよびモーションコントロール担当副社長を務めています。

新しいアプローチで新たな可能性の扉を開く

エンコーダのユーザーは従来、変化することに対して消極的でした。これには正当な理由があります。工場のフロアや産業設備内でのモータ制御は、パフォーマンスや信頼性を求めるようなイノベーションに満ちた環境にはなく、裏付けとなる過去の記録や十分な実績もありませんでした。光エンコーダおよび磁気エンコーダは長年にわたって確立されており、「より明白な」物理的概念と思われるものを採用していますが、静電容量式エンコーダはまた、その分野での長年にわたる成功を通して実証されているように、十分にテストされた原理を使用しています。モーションセンシング方式に代わるこのデジタル式エンコーダは、さまざまな利点をさらに拡大するとともに、ロータリ式転流エンコーダを使用する設計者に、新しい次元のインテリジェンスを提供します。

ロータリ式エンコーダは、モーションコントロールを採用するほぼすべてのアプリケーションにおいて非常に重要であり、制御、精度、効率性に優れたブラシレスDC(BLDC)モータの需要の増加を受けて、その必要性はさらに拡大しています。エンコーダの機能は基本的にはシンプルで、モータシャフトの位置をシステムコントローラに知らせる役割を果たします(図1)。コントローラはこの情報を使用して正確かつ効率的にモータ巻線を転流し、また、速度、方向、加速を決定します。これらのパラメータはモーションコントロールのループで望ましいモータ性能を維持するために必要なものです。

CUIのロータリエンコーダの画像図1:ロータリエンコーダにより、モータシャフトの方向、位置、速度、および加速度情報が得られます。

エンコーダはさまざまな技術をベースに設計されており、これらの技術によって、AおよびBの直交信号の標準的なデジタル出力が行えるうえ、一部モデルではインデックスの出力も可能です(図2a)。転流エンコーダ(以下で詳しく説明)ではまた、U、VおよびW転流相のチャネル出力も可能です(図2b)。

標準的なAおよびBの直交信号の画像図2a:光学エンコーダについての、標準的なAおよびBの直交信号、ならびにインデックス信号。

U、VおよびWの波形の画像図2b:転流エンコーダで生成されるU、VおよびWの波形。

エンコーダの技術

エンコーダの方式で最も良く知られているのは、光学磁気、または容量性技術を利用した3つのタイプです。簡潔に説明すると、光学式 ではLEDを一面、フォトトランジスタをもう一面に搭載したスロットディスクを使用します。ディスクが回転すると光路が妨害され、その結果出力されるパルスでシャフトの回転と方向が示されます。低コストで効果が高いものの、光学エンコーダの信頼性は次の2つの要因によって低下します。まず、埃やごみ、油分が光路に干渉する可能性があります。次に、LEDには耐用年数があり、一般的には数年で半分程度の明るさになり、最終的には消耗してしまいます。

磁気エンコーダの設計は、光線の代わりに磁気が使用されているという点を除いて、光エンコーダに類似しています。スロット付きの光学ホイールの代わりに、磁気式では、磁気抵抗性のセンサアレイ上で回転する磁気ディスクが搭載されています。ホイールが回転するとこれらのセンサが反応し、この反応が信号を調整するフロントエンド回路に送られてシャフト位置が決定されます。磁気式エンコーダは、耐久性は高いのですが、精度がやや劣っており、また電子モータからの磁気干渉を受けやすい性質があります。

3つめの方式である容量性エンコーダは光学式および磁気式エンコーダの利点すべてを備えており、またウィークポイントもありません。この技術では、実績があり、低コストながら精度の高いデジタルノギスと同様の原理が活用されています。この方式には2パターンのバーまたはラインがあり、一方を固定要素、もう一方を可動要素に設定し、一対のトランスミッタ/レシーバで構成される可変コンデンサを形成します(図3)。エンコーダが回転すると、積分回路でこれらのラインの変更がカウントされるとともに、補間処理によってシャフト位置および回転方向が検出され、標準的な直交信号と、他のエンコーダではブラシレスDC(BLDC)モータの制御のために出力される転流信号が生成されます。

この容量性による技術の優れた点は、消耗するものが一切なく、また産業環境では当たり前に存在する埃やごみ、油分などの異物の影響も受けないことです。この性質が、光学デバイスよりも高い信頼性を実現しています。容量性エンコーダにはまた、デジタル制御機能によって得られる性能上の利点があります。たとえば、エンコーダ分解能(1回転あたりのパルス数)を調整できるため、分解能の高い、もしくは低いエンコーダに交換する必要がありません。

受信パルスをカウントする容量性エンコーダの画像図3:容量性エンコーダは、モータシャフトに固定されているローターからの送信信号の変調で生じたパルスを受信し、カウントします。

あらゆる点で最高

CUI Devicesの新しいAMT31シリーズは、最新技術を搭載した容量性エンコーダの一例で、AおよびBの直交信号、インデックス信号、さらにはU、VおよびW転流相の信号の出力が可能です。48~4096パルス/回転(PPR)の領域では、分解能の増分の値を20パターンから選択可能です。また、7つのモータ極のペア数は2~20の間で指定可能です。AMT31シリーズにはまた、設置を容易にする固定ハブが装備されており、最小5Vレールで動作し、必要な供給電流はわずか16mAです。

しかしながら、容量性エンコーダの利点は、優れたパフォーマンス、柔軟性、短期的および長期的な信頼性にとどまりません。光学および磁気エンコーダとは異なり、デジタル出力可能な容量性エンコーダの設計は21 世紀型で、製品の開発から設置、整備まで、エンコーダが活躍するあらゆる局面でユニークな利点を数多く提供します。

その理由をご説明しましょう。光学および磁気エンコーダの出力は、機能的ではあるものの処理能力に欠けており、ユーザーにとっては柔軟性や洞察力、操作上の利点がありません。対照的に、容量性エンコーダはデジタルベースの設計で、内蔵のASICおよびマイクロコントローラにより、さらなる機能の提供およびパフォーマンスの向上を実現します。スマートな出力機能により、ユーザーおよびパフォーマンスのシナリオがさまざまな点で変わりました。もちろん、一般的なエンコーダ出力にも100%対応しています。

内容の充実した、有益な変更を実装

CUI DevicesのAMT31シリーズなどの容量性エンコーダに組み込まれている、ASICおよびマイクロコントローラによる機能向上の詳細について、目を向けていきましょう。

  • CUI Devicesの容量性エンコーダはデジタルベースであるため、シンプルかつ迅速な「ワンタッチ」操作のゼロイングが可能です。手順は単純明快です。適切なモータ相に通電してシャフトを希望位置に固定し、この位置でエンコーダに「ゼロ」のコマンドを実施します。所要時間は合計でたったの1~2分程度で、特別な装置も必要ありません。

対照的に、モータ巻線で光学または磁気エンコーダを使用している状態で、ゼロイングから転流信号のメカニカルなアライメントを行うには、複数のステップが必要で、複雑かつフラストレーションの溜まりやすい作業です。この場合、ローターの固定、物理的なアライメント、およびモータの逆駆動が必要で、適切なゼロ交差アライメントのため、オシロスコープを使用して逆EMFおよびエンコーダ波形を観察しながら行います。このプロセスは反復的な作業を伴うことが多く、通常は微調整や検証のステップを繰り返し行う必要があるため、サイクル全体で15~20分を要します。

  • デジタル機能の装備により、AMTシリーズではシステムの設計プロセスも目覚ましく向上し、柔軟性や診断機能を実現するとともに、モータおよびモータコントローラ性能の評価も可能にします。特に、1台の容量性エンコーダで幅広い分解能と極ペア数に対応できるため、設計者は、分解能をプログラム可能なこのエンコーダを利用して、コントローラとアルゴリズムの開発中に、PIDの制御ループのレスポンスおよびパフォーマンスを直接調整できます。別の新しいエンコーダを購入する必要はありません。

インテリジェント機能が搭載されたAMTシリーズではまた、現場での故障に対する分析をより迅速に実施するためのオンボード診断も可能です(業界初)。エンコーダに対して、正常に動作しているか、シャフトでメカニカルなアライメント不良による何らかの不具合が発生していないか、などの問題についてクエリを行うと、状況が示されます。このため、設計者はエンコーダで不具合が発生していないかを迅速に見極め、問題の原因がどこにあるかを探ることができます。これにより、エンコーダ自身が問題の発生源となる可能性を排除します。さらに、設計者はこの機能を予防的な手段としても活用できます。たとえば、アプリケーションの実行前に「encoder good(エンコーダ良好)」のテストシーケンスを実行する、といった具合です。これらの機能は光学またはメカニカルエンコーダでは利用できません。利用することで、設計者はダウンタイムを最小限に抑えつつ、現場の装置で発生する可能性のある問題を予測することができます。

  • 最後に、デジタルインターフェースでは部品表(BOM)も簡素化されます。エンコーダは、要求される特定のバリエーション(PPR、極ペア、転流の方向)に合わせてソフトウェア内で個別に調整可能なため、マルチモータ製品または複数の製品で、もしくは設置場所で必要なバージョンをいくつもリスト化し、ストックすることは不要です。

インテリジェントなエンコーダにGUI機能をさらにプラスした強力な組み合わせ

CUI Devicesの容量性エンコーダ用に設計されたWindows PCベースのAMT Viewpoint™ソフトウェアにより、開発期間が短縮されるとともに、モデル番号やバージョンの特定など、時間のかかる日常的な作業が簡単な操作で済むようになります。エンコーダに接続するために必要なものはUSBケーブルのみで、シンプルなシリアルデータ形式で実行します。

このGUIを使用することで、ユーザーはエンコーダをアプリケーションに合わせて個別に調整したり、カスタマイズできます(図4)。

CUIのAMT Viewpointソフトウェアの画像図4:CUI DevicesのAMT Viewpointソフトウェアは、使いやすい開発インターフェースを提供します。

ユーザーはGUIの設定画面で主要なエンコーダの波形およびタイミングを確認できます。エンコーダオプションが変更されると、自動調整が行われます。GUIを介してエンコーダのプログラミングを行う場合、わずか数回のキー操作で、30秒もあればすべてが完了します。中でも印象的なのは、A、B相、インデックス、または転流モードのエンコーダのアラインおよびゼロイングがほんの数秒で実行できることです。プログラム不可能なエンコーダで実行する場合とは非常に対照的です。

デモモードでは、GUIを使用して、実際にエンコーダが接続されているような状態でエンコーダ関連の操作を実施できます。ご購入や実際に使用される前にエンコーダやツールをよくご理解いただくための、便利な方法です。またこのGUIは、特定のエンコーダバージョンに対応する、ご注文が可能な品番の作成もサポートしています。指定できるオプションには、出力フォーマット、スリーブ(ボア)アダプタ、取り付けベースなどがあります。

まとめ

容量性技術をベースにしたエンコーダの利点は、パフォーマンスや信頼性の向上という言葉では説明しきれません。CUI DevicesのAMT31などの、ASIC/マイクロコントローラを内蔵するデバイスは、プログラム可能なセットアップや設置をサポートするインテリジェント機能を装備しており、洞察力に富んだ操作性を発揮するとともに、部品表の管理を容易にします。これらの機能をPCベースのGUIと併用することで、簡単に高度な機能を利用できます。これによって、試作のデザインイン、評価、および設置と構成におけるデバッグから、診断、部品表の最小化まで、エンコーダ使用のあらゆる局面で、簡素化が大幅に進みます。しかも、これらすべての機能は他のエンコーダと同程度のコストでご利用いただけます。一般的な出力タイプやフォーマットとの互換性はそのままに、消費電力の低減に成功しています。AMT31には異なるシャフトサイズに対応した、取り付けの容易なアダプタが付属しています(図5)。 インテリジェントなインターフェースを活用し、他のエンコーダ技術では実現不可能な利点を幅広く提供する、論理的な新しいステップを特長としています。

CUIのAMT31エンコーダの画像図5:CUI DevicesのAMT31エンコーダは、他に類を見ない、耐久性と柔軟性の両立を実現しています。

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著者について

Jeff Smootは、CUI Devicesでアプリケーションエンジニアリングおよびモーションコントロール担当副社長を務めています。

CUI DevicesのJeff Smootによって提供された記事です。