小型で高性能な追跡機能とトレーサビリティの実装

著者 Jens Wallmann

DigiKeyのヨーロッパ担当編集者の提供

ファクトリオートメーションや商品追跡システムの設計者は、感熱プリント、レーザー彫刻、メタルドットマトリクスなどのコードラベルタイプを読み取ることができる光学式バーコードリーダを必要としています。コンベヤベルト上を高速移動するさまざまなコードラベルをデコードするには、損傷や汚れのあるバーコードを正確にデコードできる、低レイテンシで高解像度の画像処理を備えたリーダが必要です。リーダは、不利な照明条件、予測不可能なラベルの向き、不均一なラベルジオメトリであったとしても、過酷な環境で確実に動作する必要があります。

産業用工場の設計者は、コストと時間の制約を満たしながらこれらのニーズに対応するために、広範囲の対象用途に適合するように容易に設定可能ですぐに入手可能なバーコードリーダを使用することができます。

この記事では、バーコード規格とリーダの要件について簡単に説明した後、現場で簡単に設定でき、さまざまな色の光やフィルタモジュールに対応するOmron Automation and Safetyの画像ベースのバーコードリーダを紹介します。また、サポートされるコード規格、配線、リーダのソフトウェアの設定方法についても説明します。

バーコード規格の種類

バーコードには多くの種類があり、それぞれに固有の特長と要件があります。図1には、線形(1次元)バーコード、積層型線形バーコード、マトリクス(2次元)シンボル、ドットコードシンボルの例および、コントラストと解像度の品質が異なるさまざまな素材へのダイレクトパーツマーキング(DPM)の写真を示しています。

さまざまなコードをサポートする必要があるコードリーダの画像図1:コードリーダは、線形(1次元)バーコード、積層型線形バーコード、2次元マトリクスシンボル、ドットコードシンボルなど、さまざまなコードをサポートする必要があります(上)。DPMには、さまざまなコントラストと解像度の特性があります(下)。(画像提供:Omron)

図2(右)の2次元マトリクスは、QRコードの構造を示しています。4つの正方形の基準マークがコードラベルの読み取り方向を定義し、2つの縞模様が読み取りクロックを示します。セルの半分以上をユーザーデータワードが占め、残りはエラー訂正のための冗長性としての役割を果たします。

エラー訂正が追加されたQRコードの画像図2:QRコードには、データワードに対する基準マークとクロックマークだけでなく、エラー訂正も追加されています(左)。調節可能なエラー訂正レベルにより、失われたシンボル領域の7%~30%を復元できます(右)。(画像提供:Omron)

リードソロモンアルゴリズムを使用してQRコードシンボルを生成した場合は、選択したレベルに応じて、失われたシンボル領域の7%~30%をエラー訂正によって復元できます(図2、右)。ISO/IEC 24778によると、スペースに制約のある用途向けの2次元ドットマトリクスコードであるAztecコードは、どの向きでも読み取ることができ、調節可能な5%~95%のエラー訂正を規定します。

画像処理を統合する画像ベースのバーコードリーダ

リーダがいかに高度で高機能になったかを示す好例が、Omronの小型バーコードリーダであるMicroHAWK V430-Fシリーズです。これらのリーダは、厳しい工場環境において、さまざまな表面上の多様なマトリクスのバーコードを確実に読み取ることができます。強力なエラー訂正アルゴリズムを使用し、損傷したシンボルや不完全なシンボルを最高60フレーム/秒(fps)の速度でデコードします。高度な光学部品は、最大5メガピクセル(MP)の解像度を持つモノクロまたはカラーのイメージセンサと、固定またはオートフォーカスのさまざまなオプションを組み合わせています。

V430-F000L12M-SRXモノクロバーコードリーダの解像度は1280 × 960ピクセル(1.2MP)です(図3)。被写界深度1160mmのオートフォーカスレンズ、8個のスポットライト赤色LED、800MHzのイメージプロセッサを、44.5(幅)× 25.5(高さ)× 56.9(奥行)mmのパッケージに統合しています。

OmronのV430-F000L12M-SRXバーコードリーダの画像図3:照光機能を搭載したV430-F000L12M-SRXバーコードリーダ(左)と、LEDリングとディフューザモジュールで拡張されたバーコードリーダ(右)。(画像提供:Omron)

V430-FのリーダはIP67定格で、工業生産エリア内の現場で容易に設置して設定することができます。オンボード画像処理により、1次元、2次元、ドットマトリクスのコードをキャプチャし、コントラストの悪い条件下でもDPMを検出します。そのエラー訂正および画像処理アルゴリズムは、損傷、汚れ、ぼやけ、または歪みのあるコードラベルをデコードし、プレーンなASCIIテキストとして出力することができます。

V430-Fファミリの重要な特長は、以下の通りです。

  • コード規格のサポート:
    • ISO/IEC 15415:DataMatrix(ECC200、GS1)、QRコード、マイクロQR
    • ISO/IE TR 29158:DataMatrix(ECC200、GS1)
    • ISO/IEC 15416:コード128/GS1-12、UPC/EAN(JAN)、ITF、コード39、コード93、Codabar
    • ISO/IEC 16022:DataMatrix(ECC200、GS1)
  • 3つの解像度オプション:
    • 752 x 480(0.3MP)モノクロ、1280 x 960(1.2MP)モノクロ、2592 x 1944(5.0MP)カラー
  • 50~300mmオートフォーカス、75~1200mmオートフォーカス、固定焦点
  • 焦点距離:広角、中焦点、狭角/長焦点
  • 最大60fpsで32ミリ秒(ms)の読み取りサイクル
  • 5~30Vの電源、オプションのPoE(Power over Ethernet)(モードB)、24Vで180mAの電流消費
  • オプトカプラで絶縁された3つの入出力(I/O)制御ポート
  • RS-232、TCP/IP、Ethernet/IP、またはProfinet経由の通信
  • 最大8台のリーダをデイジーチェーン接続
  • WebLinkのグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)によるブラウザベースの設定と監視

V430-F000W12M-SRPバージョンは広角レンズを採用し、画像処理ファームウェアでXモードのエラー訂正の代わりにプラスモードを提供します。プラスモードはラベルのような高コントラストのコードに適しているのに対し、Xモードは積極的なシンボル位置決め、分析、再構成のアルゴリズムにより、低印刷グレードのコードやDPMを含むすべてのラベルに適しています。F430シリーズはデュアル機能を備えているため、バーコードリーダおよびビジョン検査システムとして同時に動作します。

アドオンモジュールによるコントラストの向上

F430シリーズには、用途に応じたさまざまなオプションが用意されています。たとえば、赤、白、青、赤外線の8個または24個のLEDを備えたリングライト(V430-AL)のような簡単に設置できるアドオンモジュールにより、バーコードリーダのコントラスト範囲が広がります。さらに、カラーフィルタ、偏光フィルタおよびディフューザ(V430-AF)により、光沢面からの迷光やグレアを低減します(図4)。

反射を低減するディフューザと偏光フィルタの画像図4:ディフューザと偏光フィルタは、反射や迷光を低減してコントラストを向上させ、読み取りエラーを低減します。(画像提供:Omron)

バーコードリーダの接続

V430-Fのバーコードリーダには、2つのM12ソケットと複数の接続オプションがあります(図5)。通信ソケットにより、ホストPCはEthernet/IP、TCP/IP、またはProfinet経由でデコードされたデータを読み取り、バーコードリーダを設定および監視し、オプションとしてPoE(モードB)経由で電力を供給することができます。2つ目のプラグは、プロセス制御用のプログラマブルロジックコントローラ(PLC)に接続し、トリガ入力、RS-232インターフェース、3つのI/O切り替え信号に対応します。また、V430-Fへの電源供給にも使用できます。V430-FのRS-232端子を介して、デコードされたデータの読み取り、設定、バーコードリーダの監視を行うことも可能です。

OmronのV430-Fバーコードリーダのコネクティビティオプションの画像図5:V430-Fバーコードリーダのコネクティビティオプションには、Ethernet、I/O制御ライン、RS-232、電源ラインが含まれます。(画像提供:Omron)

Omronは、V430シリーズ(V430-W) 用のEthernetケーブル、I/Oケーブル、RS-232ケーブルを提供しています。V430-Fを周辺機器部品(光センサ、補助LEDライト、電源など)と組み合わせて設置する場合、98-000103-02インターフェースデバイスは便利な4方向の分配ポイントを提供します。

WebLinkユーザーインターフェース

バーコードリーダと統合されたWebLinkサーバは、ブラウザに「http://192.168.188.2」を入力することで呼び出されるGUIをユーザーに提供します。設計者はここから、V430-Fの制御、監視、設定、読み出しを行うことができます。

OmronのWebLinkユーザーインターフェースの画像(クリックして拡大)図6:V430-Fの制御、読み出し、設定はWebLinkユーザーインターフェースから行えます。(画像提供:Omron)

<開始>タブには、接続されているすべてのリーダのモデル固有の情報が含まれており、設定プロファイルを作成するための出発点となります。<セットアップ>タブでは、左側に重要な構成設定、中央の領域にカメラ画像が表示され、バーコードのキャプチャ領域を定義するための画像処理ツールが提供されます。右側の出力ウィンドウには、デコードされたバーコードのデータワードが連続的に表示され、WebLinkターミナルを介して追跡したり、RS-232インターフェースを介して読み出したりすることもできます。

パラメータの設定

デコードを大幅に高速化するために、設計者は検出エリアを正確に区切り、予想されるコードタイプを定義し、画像処理アルゴリズムを最適に設定することができます。また、デコードされたデータワードの出力形式を変更したり、文字を挿入、交換、抽出することも可能です。

設計者はターミナルのコマンドラインからKコマンドを使用するか、WebLinkのメニュー項目<高度な設定>で値を直接変更することで、カメラセットアップ、通信、読み取りサイクル、シンボル、I/O、シンボル品質、文字列照合、診断、画像保存、設定データベースの機能領域のパラメータを設定できます。

カメラ視野内に関心ウィンドウ(WOI)セクションが作られると、関心領域(ROI)と呼ばれるすべての関連コードラベル領域が内部で定義されます。このようなROIは、設定データベースで最大10個までコード別に設定できます。V430-Fでは、<実行>モードでこれらのパラメータセットを切り替えることができます。

さまざまな特殊アルゴリズムにより、不十分なシンボル品質を改善できます。それらは、<高度なデコードパラメータ>のメニュー項目を介して設定します。

  • 2次元ダメージモードでは、グリッドアライメントが歪んだシンボルや、セル登録が不適切なシンボルをデコードすることができます。図7の左上にその機能を示します。この機能は、シリアルコマンド<K567,1>(0/1 = 無効/有効)で有効にできます。
  • 形態操作の試行では、形態の拡張または侵食を適用し、デコードを試みます。図7の右上には、信号強度を高め、ノイズを減らす方法を示しています。このアルゴリズムは、シリアルコマンド<K568,1>によって有効になります。

ダメージモード、形態操作、スケールアップ/ダウンなどの画像処理アルゴリズムの画像図7:ダメージモード、形態操作、スケールアップ/ダウンなどの画像処理アルゴリズムにより、画質が悪くてもデコードが可能になります。(画像提供:Omron)

  • 湾曲2Dは、データマトリクスとQRコードのシンボル用に設計されています。
    図8に示す赤線と緑線の長さの比率が20:1より大きい場合に、湾曲2Dアルゴリズムがアクティブ化されます。この機能は、シリアルコマンド<K563,1>によって有効になります。

湾曲2D画像処理アルゴリズムの画像図8:湾曲2D画像処理アルゴリズムは、湾曲したコードラベルを自動的に検出し、デコード前に補正します。(画像提供:Omron)

  • シンボル品質は、ISO/IEC15416に従ってAからFまでの等級で詳細な評価を出力します。シリアルコマンド<K726, aperture, overall, edge determination, decode, contrast, minimum reflectance, minimum edge contrast, modulation, defects, decodability, quiet zone>を使用して、各パラメータを個別に有効にできます。シリアルコマンド<VAL4>は、ISO/IEC15416の等級付けをまとめたテキストレポートを返します(表1)。

ISO/IEC15416の等級付けをまとめたテキストレポートを返すシリアルコマンド<VAL4>の画像表1:シリアルコマンド<VAL4>は、ISO/IEC15416の等級付けをまとめたテキストレポートを返します。(表提供:Omron)

まとめ

小型で画像ベースのV430-Fシリーズ バーコードリーダは、厳しい工場環境において、異なる表面上のさまざまなコード規格を高速かつ確実にデコードします。上述したように、強力な統合型画像処理はブラウザを介して容易に設定できるため、設計者は専門的な画像処理の経験がなくても、バーコードリーダを立ち上げて稼働させることができます。

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著者について

Jens Wallmann

Jens Wallmann

Jens Wallmann氏はフリーランスのエディターで、エレクトロニクス関連の出版物に紙媒体、オンラインを問わず寄稿しています。電気エンジニア(通信工学)として、また産業用電子工学エンジニアとして、計測技術、車載用電子機器、プロセス産業、高周波を中心としたエレクトロニクス開発に25年以上携わってきました。

出版者について

DigiKeyのヨーロッパ担当編集者