IIoTとPLC:対立ではなく共存を
DigiKeyのヨーロッパ担当編集者の提供
2017-04-19
産業用モノのインターネットは、機械を再設計してプロセスを再編成し、ビッグデータの力を利用して生産性と収益性を向上させることを約束しています。慣れ親しんだアーキテクチャやPLC(プログラマブルロジックコントローラ)などのデバイスが一掃される可能性があると言う人もいます。また、データ収集量の爆発的増加に伴い、工場内のほぼどこにでも設置できるマイクロPLCやナノPLCなどの小型デバイスがさらに増えていくという見方もあります。
以前からあったビッグデータの概念
産業用モノのインターネットは、プロセスや機器から大量のデータを収集し、クラウドで集中的に分析することを前提としています。その目的は、プロセスの再最適化と再編成を強化し、無駄を省いて顧客の要求に迅速に対応するなどの改善を追求することです。第4次産業革命(インダストリ4.0)の工場では、機器や作業場に何千ものセンサが設置されることで、モータの電流や振動、周囲の温度や湿度、最終製品の試験や検査の測定値、シリアル番号、ロット番号、タイムスタンプなど、さまざまな情報が報告されることになるでしょう。
インダストリ4.0を成功させるためには、これら数千ものチャンネルのデータを効率的にクラウドに集めて保存、優先順位付け、グループ化、分析を行い、最終的には機械に伝達すべき改良された命令や、ビジネス上のスマートな意思決定を行うための情報に変換する必要があります。機械、制御システム、工場の通信ネットワークの設計が大きく変わることが予想されているため、従来のオートメーションにおけるデータの収集、処理、制御のタスクを支配してきたプログラマブルロジックコントローラ(PLC)などの既存デバイスの存在を脅かす可能性があります。
より多くのデータを収集して製造歩留まりを向上させ、ビジネス上の意思決定を支援したいという願望は、インダストリ4.0から始まったものではありません。企業は、クラウドが普及する以前から、機器から大量のデータを収集し、工場の現場とバックオフィスの分析システムとのデータのやり取りを自動化することを目指してきました。産業用PC(IPC)は、PCによる自動化を実現するために生まれたコンセプトの一例であり、企業内LANを使用している意思決定者との間でシームレスなデータフローを実現するというメリットがあります。しかし、PLCは、長寿命、高信頼性などのメリットを依然として有するほか、市場のニーズに合わせて処理能力の向上、機能の追加、PCベースの規格の導入などの進化を遂げてきました。
対立
次世代産業の工場では、センサなどによるデータ収集活動が盛んになり、現在のPLCの能力を超えてしまう可能性があります。MQTT(Message Queuing Telemetry Transport)などの軽量なプロトコルを使って、センサデータを直接クラウドに収集するという案もあります。データ量の多い今日の製造現場においてMQTTが持つ大きな利点は、従来のポーリング/レスポンスプロトコルを使用した場合にネットワークを詰まらせる原因となる大量の不変データを、バイパスできることです。つまり、MQTTのパブリッシュ/サブスクライブモデルにより、スマートセンサは、新しいデータを受信するように設定されたデバイスに対し、新しいデータのみをパブリッシュすることができるのです。消費者向けの有力なIoTプラットフォームやソーシャルプラットフォームの中には、このプロトコルの低帯域需要、低遅延、低消費電力を利用しているものがあることが知られています。MQTTは制御システムでの使用に向いており、MQTTモジュールはIIoTデータをクラウドに直接送信するルートを提供することができます。これは、ネットワーク接続された工場(コネクテッドファクトリ)に配置された大量のセンサが生成するデータを処理するための実用的な手段です。
共存
また、従来の中央管理型PLCを、監視するセンサや制御する機構の近くに配置する複数の小型PLCに置き換えることもできます。このような役割を果たすため、IIoTのコンポーネントとして通信するように設計されたマイクロPLCやナノPLCが台頭してきており、小さなフットプリントでI/Oチャンネルを提供するとともに、モジュール式の拡張オプションも備えています。
この機会に対応するため、Crouzetではem4 Ethernetなどのem4ナノPLCファミリを提供しています。em4は、寸法が124.6mm x 90mmであり、アナログとデジタルのIOとリレー出力から選択できます。また、デジタルとアナログのI/O拡張モジュールも用意されているので、大規模な設備から小規模な設備まで柔軟に対応することができます。em4は、ローカルネットワーク上のどこにいてもプログラミングやデバッグが可能であり、モジュールを追加しなくても意図したときにインターネットに接続することができます(図1)。em4は、センサからデータを簡単に収集できます。つまり、タイムスタンプ付きのシンプルなデータログをEメールやFTPで送信したり、アプリケーションプログラムの制御下でEメールアラートを送信したりすることができます。ネットワーク上の最大16台の他の機器と通信でき、接続されている最大8台のem4機器を自動的に検出することができます。18 x 4のモノクロディスプレイと6ボタンのキーパッドを搭載しており、フロントパネルから直接PLCを管理することができます。
図1:LANやインターネット上の他の機器と簡単に接続できるem4 EthernetナノPLC
Panasonicでは、分散型の監視・制御や機器の小型化に適した、省スペースの超小型PLCを提供しています。FP0Rシリーズは、高さ90mm、幅25mmで、多軸モータ制御が可能なパルス出力を含むI/Oを備えています。最大で3つの拡張モジュールを追加することができます。FeRAMを内蔵し、バッテリレスでデータを自動バックアップするため、機器の電源を切ってもデータを失うことはありません。本PLCは、FP Web Server 2モジュールを介してEthernetネットワークに接続されるPLCリンクを介して、最大16台の類似機器と情報を共有することができます。また、モータ制御用の他の機能としては、カウンタやPWM出力もあります。一般的なプロトコルを採用したCC_LINKモジュールやIO/LINKモジュールを接続することで、ネットワーク接続やセンサ監視をさらに柔軟に行うことができます。Crouzetのem4とPanasonicのFPORは、各メーカーの標準プログラミングソフトウェアを使用してプログラミングされています。
Maxim Integratedでは、従来のPLCよりもはるかに小さな容積でより高い性能を提供するため、マイクロPLCプラットフォームを開発しました(図2)。0~10Vのアナログ出力モジュール「MAXREFDES60」をはじめとするマイクロPLCのデジタル&アナログIOモジュールは、クレジットカード程度のスペースに収まります。このフォームファクタにより、開発者は標準的なPLCの約10%のスペースと半分の電力で、それらと同等の接続性を実現することができます。他にも、4チャンネルのアナログ入力モジュール、8チャンネルのデジタル入力モジュール&出力モジュール、RS-485通信カードなどのマイクロPLCモジュールが用意されています。これらの製品には、インダストリ4.0に対応した次世代小型PLCを実装するように促す、サンプルのC言語ソースコードとテストデータが付属しています。
図2:クレジットカードサイズの広範なI/Oボードから選択できる小型モジュラープラットフォーム、Maxim IntegratedマイクロPLC
まとめ
PLCは、産業オートメーションの歴史の中で、プロセスや機器を監視・制御するための信頼性の高い手段として発展してきました。市場のニーズや新しい接続・通信規格に適応することで、PLCは産業機器や工場設計者に広く使用され続けています。最新のマイクロ&ナノレベルフォームファクタは、IIoTやインダストリ4.0の桧舞台におけるPLCの地位を確かなものにするでしょう。

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