スマート水道メータにおける超音波センサの活用方法
DigiKeyの北米担当編集者の提供
2022-12-06
スマート水道メータの普及と改善は、効果的な水管理にとって不可欠な要素です。メータは配水システムにおける漏水の発見と位置特定に役立ち、干ばつなどの水供給制限時にユーザーが節水するのにも役立ちます。超音波流量メータの技術は、産業、商業、家庭の各分野で採用が進んでいます。これらのメータには、可動部がないためメンテナンスが容易で信頼性が高い、低消費電力で電池が長持ちする、精度が高い、双方向の測定に対応できるなど、従来の機械式水道メータと比較して多くの利点があります。
この記事では、スマート水道メータにおける超音波流量センサの動作および統合を説明し、住宅用メータの精度に関する国際規格を簡単に確認します。その後、Audiowellの超音波センサアセンブリや、Texas Instrumentsのアナログフロントエンド(AFE)、タイムデジタルコンバータ(TDC)IC、マイクロコントローラユニット(MCU)、評価ボードなど、それらのメータに適したコンポーネントの例および、Silicon Labsのセキュアブート付きRFトランシーバ、Tadiranの長寿命1次電池などの「サポート」コンポーネントを紹介します。そして最後に、超音波流量メータの精度を向上させるためのいくつかの提案を行います。
一般的な通過型の超音波流量メータは、2つの圧電トランスデューサを搭載し、2系列の超音波パルスを発生させて流水中を反対方向に送信します。下流方向と上流方向のパルスのToF(time of flight、またはトラベルタイム)の差から、水の流量を測定することができます。その他の機能ブロックは、以下の通りです(図1)。
- 各圧電トランスデューサに対応した音響ミラー
- 2つのICで構成されることが多く、トランスデューサとインターフェース接続するアナログフロントエンドと、ToFを測定するピコ秒精度のストップウォッチで構成されるトランジットToF IC
- 流量を計算し、通信用ICやオプションのディスプレイとリンクさせるためのマイクロコントローラ
- 長寿命電池などの電源(不図示)
図1:2系列の超音波パルスが反対方向に送信されています。下流方向(青)と上流方向(赤)のパルスのToF(トラベルタイム)の差から、水の流量を測定することができます。(画像提供:Audiowell)
各超音波パルスの開始時に、ToF測定の開始を示す「開始」信号が生成されます。パルスがレシーバに到達すると「停止」信号が発生し、「開始」から「停止」までの間隔を利用して、ストップウォッチ機能によりToFを特定します。水が流れていないときは、通過時間の測定値が同じになります。通常の流れでは、上流方向の波は下流方向の波よりも遅く進みます。水が逆方向に流れると、波の進行速度はセンサに対して逆になります。
家庭用メータの精度に関する規格
住宅用の流量メータには、さまざまな規格に対応した設計が必要です。たとえば、水量メータの最大許容誤差(MPE)に対する計量要件は、国際法定計量機関(OIML)によってQ1、Q2、Q3、Q4と呼ばれる一連の値で定義されています(表1)。
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表1:住宅用水道メータのMPEに対するOIML規格は、4つの流量域に基づきます。(表提供:Texas Instruments)
水道メータは、Q3の数値(m3/h)およびQ3/Q1の比で指定されます。Q3の値およびQ3/Q1の比は、OIML規格に含まれるリストに記載されています。水道メータは、MPEに基づきクラス1またはクラス2として定義されています。
- クラス1のメータ
- Q1とQ2の間の小流量域のMPEは、温度に関係なく±3%です。
- Q2とQ4の間の大流量域のMPEは、温度+0.1~+30℃では±1%、+30℃以上では±2%です。
- クラス2のメータ
- 小流量域のMPEは、温度に関係なく±5%です。
- 大流量域のMPEは、温度+0.1~+30℃では±2%、+30℃以上では±3%です。
超音波流量センサ
Audiowellの超音波流量センサHS0014-000は、DN15ポリマーパイプ内の超音波流量トランスデューサのペアと対応する反射板で構成されており、ToFスマート水道メータに使用することができます(図2)。低圧力損失、高信頼性、±2.5%の精度が特長です。+0.1~+50℃の動作定格を持ち、1MHzで最大入力5V(ピークツーピーク)で動作し、OIML規格で定義されたクラス2の住宅用アプリケーションで使用できるように設計されています。
図2:HS0014-000超音波流量センサは、ポリマーパイプ内に一対の超音波流量トランスデューサを搭載しています。(画像提供:Audiowell)
Texas Instruments(TI)は、超音波ToF水量メータ内のHS0014-000に使用できる3つのICを提供しています。TDC1000は、超音波センシング測定用の完全統合AFEです。これはプログラム可能で、31.25kHzから4MHzで動作するトランスデューサに適した複数の送信パルス、周波数、信号閾値、ゲインをさまざまな品質(Q)ファクタで設定できます。TDC1000は、電池駆動のスマートな超音波ToF流量メータの設計に適した低消費電力動作モードを備えています。
図3:TDC1000は、ToFスマート水道メータの設計でHS0014-000と組み合わせることができる完全統合AFEです。(画像提供:Texas Instruments)
TIが提供する2つ目のICは、TDCおよびピコ秒精度のストップウォッチであるTDC7200です(図4)。このデバイスは、ピコ秒単位の変換精度を可能にする自己較正タイムベースを内蔵しており、低流量や無流量状態の正確な測定をサポートします。さらに、自律的なマルチサイクル平均化モードを使用することで、ホストMCUをスリープモードにして電力を節約し、TDC7200による測定シーケンスが完了したときにのみMCUを起動させることができます。
図4:TDCおよびピコ秒精度のストップウォッチであるTDC7200は、TDC1000 AFEと連動するように設計されています。(画像提供:Texas Instruments)
また、TIは、精密で正確な測定を可能にする超音波センシングアナログフロントエンドを内蔵した超低消費電力MCUのMSP430FR6047も提供しています。このデバイスは、信号処理用の低エネルギーアクセラレータを搭載しており、消費電力を最適化して電池寿命を延ばすことが可能です。また、MSP430FR600x MCUは、スマートメータの設計に役立つ以下のような周辺モジュールも内蔵しています。
- LCDドライバ
- リアルタイムクロック(RTC)
- 12ビット逐次近似レジスタ(SAR)A/Dコンバータ(ADC)
- アナログコンパレータ
- AES256用暗号化アクセラレータ
- 巡回冗長検査(CRC)モジュール
超音波メータEVB
開発プロセスを迅速化し、市場投入までの時間を短縮するために、設計者はEVM430-FR6047を使用して、スマート水道メータの超音波センシングに使用するMSP430FR6047 MCUの性能を評価することができます(図5)。このEVMは50kHzから2.5MHzまでのさまざまなトランスデューサをサポートし、測定値を表示するオンボードLCDやRF通信モジュールを統合するためのコネクタを備えています。
図5:EVM430-FR6047は、水道メータの超音波ToFセンシングにおけるMSP430FR6047の性能評価に使用できます。(画像提供:Texas Instruments)
サポートコンポーネント
Silicon LaboratoriesのEFR32FG22シリーズ2ワイヤレスSoCであるEFR32FG22C121F512GM32は、38.4MHzのCortex-M33と高性能2.4GHz無線および、高速暗号化、セキュアブートロード、デバッグアクセス制御などの統合セキュリティ機能を組み合わせたシングルチップソリューションです(図6)。最大出力6dBm、受信感度-102.1dBm(250Kビット/s OQPSK)を実現しています。EFR32FG22C121F512GM32は、超低送受信電力(+6dBmで8.2mA送信、3.6mA受信)と1.2μAのディープスリープモード電力を組み合わせ、スマートメータや同様のアプリケーション向けに信頼性の高い通信と高いエネルギー効率で堅牢な無線周波数(RF)リンクを提供します。
図6:EFR32FG22シリーズ2ワイヤレスSoCは、高速暗号化機能とセキュアブートロード機能を備えた38.4MHzのARM Cortex-M33コアを搭載しています。(画像提供:DigiKey)
Tadiranのはんだタブ付きTL-5920/T(図7)や標準接続のTL-5920/Sなどのボビン型塩化チオニルリチウム(LiSOCl2)電池は、特に水道、ガス、電気のスマートメータに適しています。これらの1次電池は、3mAから端子電圧(V)の2Vで放電したときの公称容量が8.5Ah、定格電圧が3.6V、最大連続電流定格が230mA、最大パルス電流定格が400mA、動作温度範囲が-55~+85℃です。また、費用のかかる電池交換をしなくても、メータと同じく20~30年使用できます。
図7:TL-5920/TのようなLiSOCl2電池は最大30年の寿命を持ち、スマートメータ用途に適しています。(画像提供:DigiKey)
精度の向上
超音波ToF水道メータの精度を向上させるために、補正、較正、インピーダンスマッチングの手法を使用することができます。
- 超音波ToFメータの測定精度は、音速がどの程度一定であるかと、信号処理エレクトロニクスの精度によって制限されます。音速は、密度や温度によって変化することがあります。音速の変化や信号処理回路のばらつきを較正および調整するために、補正を加える必要があります。
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超音波ToFメータは通常、工場で乾式較正されています。較正パラメータには、トランスデューサ、エレクトロニクス、ケーブルによる時間遅延、各音響経路に必要なΔToFオフセット補正、設計依存の幾何学的パラメータなどを含めることができます。工場での較正によって低流量および無流量状態での精度が向上しますが、高流量状態での精度に影響を与えないようにする必要があります。
- 静止流状態でのΔToFオフセットを最小化または除去するには、対称性の高い送受信信号経路のペアが必要です。また、インピーダンスマッチングソリューションを使用して、各経路のインピーダンスを制御することができます。これによりΔToF較正が簡素化され、トランスデューサが完全に一致しない場合でも、動作圧力および温度範囲の全体でゼロ流量時の誤差のドリフトが非常に小さくなります。
まとめ
超音波ToFスマート水道メータは、配水システムにおける漏水の確認と位置特定を支援し、節水を改善するために必要な情報をユーザーに提供するため、住宅、産業、商業用途で市場シェアを拡大しています。圧電トランスデューサを用いて2系列の超音波パルスを発生させ、流水中を反対方向に送信します。下流方向と上流方向のパルスのToF差から水の流量を測定することで、双方向の流量測定に対応することが可能になります。これらのメータには可動部がないため、信頼性が高く、エネルギー効率に優れています。OIMLは、水道メータのMPEレベルを分類するための国際規格を定めています。補正の手法、較正、インピーダンスマッチングを使用することで、これらのメータの精度を向上させることが可能になります。
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