インダストリ4.0のサプライチェーンの合理化とスピードアップのためにイントラロジスティクスを最適化する方法 - パート2(全2回)

著者 Jeff Shepard(ジェフ・シェパード)氏

DigiKeyの北米担当編集者の提供

イントラロジスティクスに関する本シリーズのパート1では、イントラロジスティクスを実装し、必要に応じて資材を迅速かつ安全に移動させるために、自律移動ロボット(AMR)や無人搬送車(AGV)をシステムレベルでどのように使用するかに関連した問題を取り上げました。この記事では、使用事例や、AMRとAGVがどのようにセンサを使用して物品を識別・追跡するか、機械学習(ML)と人工知能(AI)が倉庫および生産施設全体で資材の識別、移動、配送をどのようにサポートするかに焦点を当てます。

イントラロジスティクス(内部ロジスティクス)では、自律移動ロボット(AMR)や無人搬送車(AGV)を使用して、インダストリ4.0の倉庫や生産施設内で資材を効率的に移動させています。サプライチェーンの合理化とスピードアップを実現するために、イントラロジスティクスシステムは、資材の現在地と目的地、そして資材が目的地に到達するための最も安全かつ効率的な経路を把握する必要があります。この合理化されたナビゲーションには、さまざまなセンサが必要です。

イントラロジスティクスソリューションでは、AGVとAMRは状況把握能力を高めるためにセンサを使用しています。複数のセンサを用いることで、近くにいる人員の安全、他の装置の保護、効率的なナビゲーションと自己位置推定を可能にします。アプリケーション要件に応じて、AMR用のセンサ技術には、バンパーに組み込まれるリミットスイッチのような接触センサ、2Dおよび3Dの光による検知と測距(LiDAR)、超音波、2Dおよびステレオカメラ、レーダ、エンコーダ、慣性計測装置(IMU)、フォトセルなどが含まれます。AGV用のセンサ技術には、磁気式、誘導式、光学式のラインセンサ、バンパーに組み込まれるリミットスイッチ、2D LiDAR、エンコーダなどが含まれます。

本シリーズのパート1の記事では、イントラロジスティクスを実装し、必要に応じて資材を効率的に移動させるために、AMRとAGVをシステムレベルでどのように使用するかに関連した問題を取り上げました。

この記事では、センサフュージョンに焦点を当て、AMRとAGVが自己位置推定、ナビゲーション、動作の安全性を実現するために、どのようにセンサにAIやMLを組み合わせているかを紹介します。まずは、AGVに見られる一般的なセンサの簡単な考察から始めます。また、センサフュージョンを使用したロボットのポーズや自己位置推定とマッピングの同時実行(SLAM)アルゴリズムについて考察し、スキャンからマップおよびスキャンからスキャンへのマッチング技術を使用してSLAM推定値を改善する方法を検討します。最後に、センサフュージョンがAMRとAGVの安全な動作にどのように貢献するかに目を向けます。DigiKeyは、ロボティクスや他の産業用アプリケーション向けにさまざまなセンサ & スイッチを取り揃え、設計者をサポートしています。

AMRの自律動作と安全をサポートするには、さまざまなセンサやセンサフュージョン、AI、ML、およびワイヤレスコネクティビティが必要です。一方で、AGVに要求される性能は高くないものの、安全で効率的な動作をサポートするために複数のセンサに依存していることに変わりはありません。センサには次の2つの包括的なカテゴリがあります。

  • 自己受容センサは、車輪速度、荷重、バッテリ充電量などのロボット内部の値を測定します。
  • 外受容センサは、距離測定、ランドマークの位置、ロボットの進路に進入する人物などの障害物の識別など、ロボットの周囲環境に関する情報を提供します。

AGVやAMRにおけるセンサフュージョンは、自己受容センサと外部受容センサの組み合わせに依存しています。AMRのセンサの例には、以下が含まれます(図1)。

  • 20メートル(m)以上の範囲で物体を検知するレーザースキャナ
  • 6軸ジャイロスコープと加速度計を備えたIMU(地磁気センサを含む場合もあります)
  • 車輪に搭載されたミリメートル(mm)分解能を備えたエンコーダ
  • 予期せぬ物体が接触した場合に即座に動作を停止させる、バンパーのマイクロスイッチなどの接触センサ
  • 撮影距離4mの2台の前方視認型3Dカメラ
  • プラットフォームの端を検出する下向きセンサ(崖検出と呼ばれます)
  • コネクティビティを提供する通信モジュール:オプションでリアルタイム位置情報システム(RTLS)用のBluetooth到来角(AoA)および出発角(AoD)センシングや、センチメートルレベルの精度でグリッドをプロットするための5G送受信ポイント(TRP)を提供可能
  • 車両前方の障害物との距離を計算する2D LiDAR
  • 物体識別と自己位置推定に適した広角3D奥行き知覚システム
  • センサフュージョン、AI、ML向けに搭載された高性能計算プロセッサ

組み込みセンサの多様性と位置を示す典型的なAMRの画像図1:組み込みセンサの多様性と位置を示す典型的なAMR。(画像提供:Qualcomm)

ロボットのポーズとセンサフュージョン

AMRナビゲーションは複雑なプロセスです。最初の手順の1つは、AMRがどこにあり、どの方向を向いているかを把握することです。このデータの組み合わせは、ロボットのポーズと呼ばれます。ポーズの概念は、多軸固定ロボットのアームやエンドエフェクタにも適用できます。センサフュージョンは、IMU、エンコーダ、その他のセンサからの入力を組み合わせてポーズを決定します。ポーズアルゴリズムは、座標軸に対するロボットの位置(xとy)と方位角θを推定します。関数q =(x, y, θ)はロボットのポーズを定義します。AMRの場合、ポーズ情報には以下を含むさまざまな用途があります。

  • 外部リファレンスフレームまたはロボットを基準とする、ロボットに接近する人物などの侵入者のポーズ
  • 所定速度で所定時間移動した後のロボットの推定ポーズ
  • ロボットが現在のポーズから次のポーズに移行するのに必要な速度プロファイルの計算

ポーズは、いくつかのロボットソフトウェア開発環境において、あらかじめ定義された機能です。たとえば、robot_pose_ekfパッケージは、オープンソースの開発プラットフォームであるロボットオペレーティングシステム(ROS)に含まれています。robot_pose_ekfは、さまざまなセンサからの(部分的な)ポーズ測定値に基づいて、ロボットの3Dポーズを推定するために使用できます。6Dモデル(3D位置と3D方向)を備えた拡張カルマンフィルタを使用して、車輪オドメトリ用のエンコーダ、視覚オドメトリ用のカメラ、およびIMUからの測定値を組み合わせます。さまざまなセンサが異なる速度とレイテンシで動作するため、robot_pose_ekfでは、すべてのセンサデータが連続的または同時に利用可能である必要はありません。各センサは、共分散でポーズ推定値を提供するために使用されます。robot_pose-ekfは、任意の時点で利用可能なセンサ情報を識別し、それに応じて調整を行います。

センサフュージョンとSLAM

AMRが動作する多くの環境では、時折移動する可能性のある可変障害物が存在します。施設の基本図は役に立ちますが、それだけでは不十分です。産業用施設内を移動する際、AMRが必要とするのはポーズ情報だけではありません。効率的な動作を実現するために、SLAMも使用します。SLAMは、ナビゲーションをサポートするためにリアルタイムの環境マッピングを新たに提供します。SLAMには以下の2つの基本的なアプローチがあります。

  • カメラとIMUを組み合わせたVisual SLAM
  • 2Dまたは3D LiDARのようなレーザーセンサとIMUを組み合わせたLiDAR SLAM

LiDAR SLAMはVisual SLAMよりも精度が高いですが、一般的に実装コストがより高くなります。代わりの方法として、5Gを使用して自己位置推定情報を提供し、Visual SLAM推定を強化することもできます。倉庫や工場でプライベート5Gネットワークを使用することで、SLAMの組み込みセンサを補強できます。AMRの中には、5Gの送受信ポイント(TRP)を使用して、x軸、y軸、z軸にセンチメートルレベルの精度のグリッドをプロットできる、屋内用の精密な位置決め機能を実装しているものもあります。

効果的なナビゲーションの実現は、変化する環境要素に適応するAMRの能力によって決まります。ナビゲーションは、Visual SLAMやLiDAR SLAM、5G TRPのようなオーバーレイ技術、およびMLを組み合わせて環境の変化を検出し、位置情報を常に更新しています。センサフュージョンは、以下の方法でSLAMをサポートします。

  • さまざまなセンサからの入力に基づき、AIとMLを使用して環境の空間モデルと意味モデルを継続的に更新
  • 障害物を特定することで、経路計画アルゴリズムによって必要な調整を行い、環境全体における最も効率的な経路を発見
  • 環境の変化に応じて、AMRの速度や方向を含め、計画された経路の変更を行うために、リアルタイム制御を必要とする経路計画を実行

SLAMでは不十分な場合

SLAMは効率的なAMRナビゲーションに不可欠なツールですが、SLAMだけでは不十分です。ポーズアルゴリズムと同様に、SLAMは、推定値を提供する拡張カルマンフィルタを使用して実装されます。SLAMの推定値はポーズデータを拡張し、直線速度、回転速度、直線加速度などを新たに提供します。SLAM推定は2段階のプロセスです。最初の段階には、物理的な運動法則に基づき、内部センサ分析を使用して予測をコンパイルすることが含まれています。次の段階では、初期推定値の精度を向上させるために、外部センサの読み取り値を必要とします。この2段階のプロセスは、時間の経過とともに蓄積され、重大なエラーを生み出す可能性のある小さなエラーを排除し、修正するのに役立ちます。

SLAMはセンサ入力の有無に依存しています。比較的低コストの2D LiDARは、センサの直接的な視線上に物体がない場合などに、機能しないことがあります。そのような場合、3Dステレオカメラや3D LiDARを使用することで、システムの性能を強化できます。しかし、3Dステレオカメラや3D LiDARは高価で、実装にはより多くの計算能力を必要とします。

もう1つの選択肢は、2D LiDARセンサだけで実装可能な、スキャンからマップおよびスキャンからスキャンへのマッチング技術をSLAMと統合したナビゲーションシステムを使用することです(図2)。

  • スキャンからマップへのマッチングは、LiDARの距離データを使用して、距離測定値を保存された地図にマッチングさせることにより、AMRの位置を推定します。この方法の有効性は地図の精度に依存します。時間経過によるドリフトは発生しませんが、繰り返し使用される環境では、特定が難しく、知覚位置の不連続な変化を引き起こし、排除が困難なエラーを引き起こす可能性があります。
  • スキャンからスキャンへのマッチングは、スキャン間のAMRの位置を推定するために、LiDARの連続した距離データを使用します。この方法は、既存の地図とは無関係に、AMRの更新された位置とポーズ情報を提供し、地図作成時に役立つ可能性があります。しかし、これは時間の経過とともにドリフトが発生する可能性があるインクリメンタルアルゴリズムであり、ドリフトがもたらす不正確さを特定する能力はありません。

スキャンからマップ、スキャンからスキャンへのマッチングアルゴリズムの図図2:スキャンからマップおよびスキャンからスキャンへのマッチングアルゴリズムは、SLAMシステムの性能を補完し、向上させるために使用できます。(画像提供:Aethon)

安全に不可欠なセンサフュージョン

AGVとAMRにとって安全は重要な懸念事項であり、いくつかの規格を考慮する必要があります。たとえば、米国規格協会/産業用トラック標準開発財団(ANSI/ITSDF)B56.5 - 2019「ドライバーレス自動誘導産業用車両および有人産業用車両の自動化機能に関する安全規格」、ANSI/ロボット工業会(RIA)R15.08-1-2020「産業用移動ロボットに関する規格 - 安全要件」、いくつかの国際標準化機構(ISO)規格などがあります。

AGVとAMRの安全動作には、安全認証を受けた2D LiDARセンサ(セーフティレーザースキャナと呼ばれることもあります)と、車輪のエンコーダを組み合わせたセンサフュージョンが必要です。2D LiDARは、同時に2つの検出距離をサポートし、270°のセンシング角度を備え、エンコーダによって報告される車速と連携します。より遠くの検出ゾーン(センサによっては最大20m先)で物体が検出されると、必要に応じて車両を減速させることができます。物体が走行ライン上の検出ゾーンに進入すると、車両は動作を停止します。

セーフティレーザースキャナは4台1組で使用されることが多く、車両の各コーナーに1台ずつ設置されます。これらは1つのユニットとして動作し、車両の安全コントローラと直接通信できます。スキャナは、安全カテゴリ3、性能レベルd(PLd)、安全度水準2(SIL2)のアプリケーションでの使用が認められています。また、ほとんどの屋外および屋内アプリケーションに適したIP65のエンクロージャに格納されています(図3)。スキャナには、センサフュージョンをサポートするために、車輪からのインクリメンタルエンコーダ情報の入力が含まれています。

Idecの2D LiDARセンサの画像図3:AMRやAGVの安全な動作を実現するセンサフュージョンシステムでは、このような2D LiDARセンサを、車輪のエンコーダと組み合わせることができます。(画像提供:Idec)

まとめ

イントラロジスティクスは、インダストリ4.0の倉庫や工場における、より迅速で効率的なサプライチェーンをサポートします。AMRとAGVは、イントラロジスティクスにとって、資材をタイムリーかつ安全に場所から場所へと移動させるための重要なツールです。センサフュージョンは、ポーズの決定、SLAMデータの計算、スキャンからマップおよびスキャンからスキャンへのマッチングを使用したナビゲーション性能の向上、施設全体の人員と物体の安全確保などを可能にする、AMRとAGVの機能をサポートするために欠かせません。

DigiKey logo

免責条項:このウェブサイト上で、さまざまな著者および/またはフォーラム参加者によって表明された意見、信念や視点は、DigiKeyの意見、信念および視点またはDigiKeyの公式な方針を必ずしも反映するものではありません。

著者について

Image of Jeff Shepard

Jeff Shepard(ジェフ・シェパード)氏

ジェフ氏は、パワーエレクトロニクス、電子部品、その他の技術トピックについて30年以上にわたり執筆活動を続けています。彼は当初、EETimes誌のシニアエディターとしてパワーエレクトロニクスについて執筆を始めました。その後、パワーエレクトロニクスの設計雑誌であるPowertechniquesを立ち上げ、その後、世界的なパワーエレクトロニクスの研究グループ兼出版社であるDarnell Groupを設立しました。Darnell Groupは、数々の活動のひとつとしてPowerPulse.netを立ち上げましたが、これはパワーエレクトロニクスを専門とするグローバルなエンジニアリングコミュニティで、毎日のニュースを提供しました。また彼は、教育出版社Prentice HallのReston部門から発行されたスイッチモード電源の教科書『Power Supplies』の著者でもあります。

ジェフはまた、後にComputer Products社に買収された高ワット数のスイッチング電源のメーカーであるJeta Power Systems社を共同創設しました。ジェフは発明家でもあり、熱環境発電と光学メタマテリアルの分野で17の米国特許を取得しています。このように彼は、パワーエレクトロニクスの世界的トレンドに関する業界の情報源であり、あちこちで頻繁に講演を行っています。彼は、定量的研究と数学でカリフォルニア大学から修士号を取得しています。

出版者について

DigiKeyの北米担当編集者