光の品質を低下させずにLEDを調光する方法
DigiKeyの北米担当編集者の提供
2016-10-11
従来の照明から発光ダイオード(LED)への移行が加速し、さらに広い範囲のソリューションが市場に出回るにつれて、消費者は製品をより注意深く選ぶようになりました。 特に、コントラスト比が高く色度変化や可視フリッカがない直線性調光は、品質の優れた製品の特徴であるとみなされます。
それは設計者にとって困難なことであり、従来の白熱照灯明や蛍光灯照明とは違い、光の品質を維持しながらLEDを調光することは簡単ではありません。 アナログ調光は可能ですが、放出光の色度と「温度」の著しいずれを生じてしまう可能性があります。
LEDに電力を供給する順電流のパルス幅変調(PWM)を使ってLEDを調光する技術が確立されています。 基本前提は、PWM列の「ON」周期中は、最適な順電流や順方向電圧の条件下でLEDが作動していることです。 結果として、光の品質が高くなり、知覚される輝度はPWM列のデューティサイクルに直線的に比例します。
設計者の課題は、一般にLED電源または「ドライバ」として使用されるモジュール式スイッチング電圧コンバータと協調して動作するPWM回路を設計することです。 この補完的な手法がなければ、電磁妨害(EMI)、限定されたコントラスト比(最大光度と最小光度)、可視フリッカ(健康への悪影響に結びつく)などの問題があまりにたやすく生じてしまいます。
この記事では、最新のLEDドライバの選択を中心としたPWM LED調光回路の設計を検討し、光の品質を妥協しないソリューションを生み出すために必要な設計ステップに焦点を当てています。
アナログ調光のドローバック
LEDは、光の品質が良い状態での効率的な動作を維持するために定電流/定電圧の電源を必要とします。 (光の品質は、製品の重要な差別化要因となっており、主要ベンダーは苦心してハイエンド製品を売り込んでいます。 ライブラリの記事「Manufacturers Shift Attention to Light Quality to Further LED Market Share Gains」を参照してください。)
最終製品の仕様に応じて、動作点の選択にある程度の柔軟性があります。 たとえば、LEDの光束は順電流に比例しているため、設計者はより高い順電流でLEDに電源を供給することを選択して光度を高め、それによってある設計仕様に必要なLEDの数を減らす場合があります。 (ライブラリの記事「Lighting Design for Optimum Luminosity」を参照してください。)
図1は、OSRAM Opto SemiconductorのDuris S5E white LEDの順電流対光度特性を示しています。 OSRAMデバイスは実証された技術に基づいており、主流の照明用途によく使用されています。 このLEDは6.35V/150mAで118ルーメンの光を発生させ、その動作点で123ルーメン/Wの公称効率があります。 たとえば、順電流を100mAに減らすと、150mAで発生した光度と比較して、光度が30パーセント減衰します。

図1:OSRAM Duris S5E white LEDは順電流と光度との間のほぼ直線的な関係を示します。 (ソース:OSRAM Opto Semiconductors)
白熱灯照明の調光に慣れた消費者は、必然的にLED交換においても同様の機能を求めます。 この機能の中でも最も重要な機能は、広い光度範囲にわたる高精度の調光です。 この要求に対処するには、(LED電源または「ドライバ」を介して)LEDに電力を供給する順方向電圧や順電流を減らすアナログ調光回路を設計することが、いかにもシンプルな方法に見えます。
残念ながら、アナログ調光ではいくつかの大きなドローバックが生じます。 このうち主なものは、効率への影響(出力(ルーメン)/入力電力(W))、最小電流閾値のため制限されたコントラスト比、広い範囲で一般的なLEDドライバの出力電流を正確に制御する設計の複雑度の増加、さらに最も該当するものは、順方向電圧や順電流の変化によるLEDの相関色温度(CCT)の変化です。
このCCTは、LEDの見かけ温度を決め、光の品質の基準となります。 順方向電圧や順電流を下げると、今日のほとんどの「白色」LED製品の中心である青色LEDにより発せられる光の波長に微妙な影響を及ぼします。 照明用途の最新の高輝度LEDは、藤紫色LEDをイットリウム-アルミニウム-ガーネット(YAG)蛍光体と結合させます。 LEDの青色光子の一部はデバイスから直接放出しますが、大部分は蛍光体と結合して(主に)黄色エミッションになります。 青色と黄色の光を組み合わせると、白色光に大変近くなります。
次に、LEDメーカーは、蛍光体に微妙な変更を加えて白色光の「温度」を寒色の(青みがかった)色合いから暖色(黄色)の色合いに変え、メーカーが個人の好みに合った色の選択を提供できるようにします。 CCTは、LED光の温度を量的に定義します。 (ライブラリの記事「白色LEDの色特性の定義」を参照してください。)
メーカーは、特定の順方向電圧や順電流の動作点でLEDのCCTを指定します。 設計者は、特定のCCT「ビン」から選択したすべての製品が実質的に同じCCTを放射することを十分承知した上で、そのビンから一連のLEDを選択します。 大手メーカーは、順方向電圧や順電流に対してCCTがどのように変化するかについての情報も通常含めますが、推奨パラメータを超えた動作点における特定の製品のパフォーマンスを保証しません。 特にLEDメーカーは、推奨される動作点以外の動作点で同じCCTを生じている同じビンのデバイスに関して保証しません。 図2は、OSRAM LEDの色度座標(そのCCTを決定する)が順電流によってどう変化するかを示しています。

図2:順方向電圧によりLEDの色度とCCTは変化します。 広範な順電流にわたって、これらの変化は目で検知できます。 (ソース:OSRAM)
さらに悪いことに、目は微妙な色の変化をあまりうまく検出できませんが(たとえば、純粋な赤色LED、緑色LED、または青色LEDにより放出される光子の波長の差は、それらが著しく変化して初めて気が付く場合がある)、CCTの変化にはとても敏感です。 その結果、同じビンのLEDを備えた2つの器具は同じアナログ調光の度合いで色がかなり変わるということを消費者が気付くことは十分に予想されます。 (このトピックの詳細な技術的説明については、ライブラリの記事「Digital Dimming Solves LED Color Dilemma」を参照してください。)
PWM調光によるCCT問題への対処
近年、PWMは高品質LED向けの好ましい調光手法として採用されています。 PWM列のONサイクルの間、LEDは推奨される順方向電圧や順電流の動作点で電源供給され、CCTがデータシートパラメータ内にあるようにします。 次に、PWM列のデューティサイクル(パルス幅(tP)と信号周期(T)の比率)により平均電流と感知される光度が決まります。
図3は、一定の順電流で動作する3つの異なるパルス列を示しています。 上段の例は中間レベルの照光、中段の例は調光、下段の例は明るさを示しています。 図4は、デューティサイクルと順方向電圧の間のリニア特性を示しています。

図3:PWMパルス列のデューティサイクルを変更すると、ONフェーズ中に指定された動作電流を維持しながら、LEDの平均順電流や光度が変化します(上から、中、低、高の輝度)。 (ソース:OSRAM)

図4:デューティサイクルはLED光度と直線関係にあります。 (ソース:OSRAM)
一般的に、主要ベンダーの最新のLEDドライバはPWM調光を考慮に入れて設計されています。 多くのチップが、ドライバのONとOFFのサイクルを決定するPWM発生器からの直接入力を可能にするPWMピンまたはDIMピンを採用しています。 しかしながら、LEDデジタル調光の良い設計と悪い設計を区別する重要な要素がいくつかあるため、LEDドライバの選択は慎重に検討しても損にはなりません。
重要な検討事項は、PWM列の周波数(またはfDIM)です。 fDIMの最小値は、フリッカに対する目の感度によって決まります。 照明設計の最近のガイドラインでは、fDIMは、長期的な健康への影響が生じない場合は、80~100Hz以上にすることを推奨しています。 (ライブラリの記事「How New Flicker Recommendations Will Influence LED Lighting Design」を参照してください。)
しかし、周波数が高いほどコントラスト比への影響が大きくなるため、設計者は何かしらのトレードオフに直面しています。 これは、PWM入力に応答するために最適なLEDドライバでも有限時間をとるためです。 図5は、このような時間遅延が発生する場所を示しています。

図5:LEDドライバが調光PWM信号への応答における遅延を示します。 これらの遅延により、調光システムの最大コントラスト比が決まります。 (ソース:Texas Instruments)
図5で、tDは、PWM信号(VDIM)が高になった時点からLEDを動作させる順電流が応答する時点までの伝播遅延を表します。 (tSUとtSDはそれぞれ、LED順電流のスルーアップ時間とスルーダウン時間です。) スルーレートは、最小デューティサイクルと最大デューティサイクル(DMINとDMAX)を制限し、その結果としてコントラスト比を制限します。
一般に、fDIMを下げると、コントラスト比が高くなります。Tが比較的長いため低デューティサイクルでも、スルーレートが固定されたLEDドライバが要求された順電流や順方向電圧に到達しゼロに戻るための時間が十分にあるためです。
(LEDのスイッチオン時間は、PWM信号の立ち上がり(したがって、仕様外の順方向電圧や順電流で)「早く」明るくなり、アナログ調光で問題となる同じCCT変動に消費者を晒す時間であるため、PWM調光周波数の選択では、スルーを制限したLEDドライバを選択するとよいことに注意してください。)
通常、コントラスト比(CR)は最小オン時間の逆数として表されます。
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一般用途向けの標準スイッチング電圧レギュレータはオンオフを繰り返すようには設計されていないため、メーカーはスルーに対してあまり注意を払っていません。 多くの場合、これらのレギュレータは、スルーを延長する(電圧スパイクを防止するための)ソフトスタートモードとソフトシャットダウンモードという機能も備えています。 その一方、調光用途向けのLEDドライバは、短いスルー時間で設計されています。
スイッチング降圧レギュレータをベースとするLEDドライバは、2つの異なる理由ですべてのスルー時間が最短になります。 最初に、降圧レギュレータドライバは、制御スイッチがONのときに出力に電源を供給して、制御ループを昇圧または昇降圧トポロジよりも高速にします。 次に、降圧レギュレータのインダクタは全スイッチングサイクル中に出力に接続され、連続出力電流を保証し、出力コンデンサを不要にします。 コンデンサが不要になることで、ドライバの出力電圧や出力電流が非常に早くスルーされるようになります。[1]降圧レギュレータを慎重に選択することにより、おそらく主流の照明では不要ですが、産業用画像認識タスクの高速ストローブなどの用途に役立つkHz範囲のPWM調光周波数が可能になります。
PWM調光LED電源の設計
PWM調光を備えたLED電源の設計には、次の3つの手法があります。ディスクリート部品を使用して最初から回路を開発する手法、降圧LEDドライバとPWM回路へのPWM入力を対にする手法、PWM回路を専用のPWM発生器に置き換える手法です。
最初の手法はためらわれるかもしれませんが、予算とスペースが限られている場合は、これを実施することも一つの手です。 しかし、ここでは、広範囲の主要サプライヤが提供する数多くの実証され統合されたモジュール式電源管理デバイスのいくつかを中心とする他の2つの手法を調べます。
LEDドライバの制御機能を統合するシンプルで比較的廉価なPWMの調光可能なソリューションにより、設計者はTexas Instruments製のLEDを作動するために使用する外部MOSFETを柔軟に選択できるようになります。 LM3421は、LED電力用の高電圧NチャンネルMOSFETコントローラです。 このチップは、降圧、昇圧、昇降圧、およびシングルエンドのプライマリインダクタコンバータ(SEPIC)トポロジで構成されます。
この文脈において特に興味深いことに、LM3421は調光に使用されるnDIMピンを内蔵しています。 TIは、調光の2つの手法を提案しています。1つ目は、ショットキーダイオード(DDIM)を介して逆PWMパルス列を使用する手法、2つ目は調光MOSFET(QDIM)を介して適用される標準のPWM信号を使用する手法です。 2つ目の手法は、LEDドライバコントローラのスルーレートを加速するため、用途がコントラスト比の良い高PWM周波数を必要とする場合に役立つ手法です。 図6は、LM3421のPWM調光オプションを示しています。

図6:TIは、高PWM周波数を必要とする用途向けにショットキーダイオードまたはMOSFETのいずれかを使用する、LM3421 LEDドライバコントローラで使用する2つのPWM調光手法を推奨しています。
その部品用にMaxim Integratedは、外部コンポーネント(PWM信号発生器を除く)を必要としない調光機能を内蔵したLEDドライバを最近発表しました。 MAX16819は4.5~28Vの入力範囲で動作する降圧LEDドライバで、5V/10mAのオンボードレギュレータを搭載しています。 上記のTIデバイスと同様に、このチップのDRV出力は、LEDに接続されスルーの削減に役立つ外部MOSFETを供給するように設計されています。
このチップの注目すべき機能はヒステリシス制御アルゴリズムです。同社によると、この機能はPWM調光操作中の高速応答を保証し、そのような速度を必要とするアプリケーション向けに最大20kHzのPWM周波数を可能にするということです。 デバイスのスイッチング周波数は最大2MHzになり、したがって設計者は小型の外部コンポーネントを選択できるようになります。 図7は、LEDを動作させる順電流が調光用電圧の変化に対してどれだけ素早く応答するかを示しています。

図7:Maxim IntegratedのMAX16819はPWM調光入力に対する応答を加速するヒステリシス制御アルゴリズムを採用しています。 図は、400mAのLED電流で50パーセントのデューティサイクル時におけるシステムの応答を示しています。
ハイエンド(しかし、明らかに高価な)ソリューションに対して、Linear TechnologyはLT8500 48チャンネルLED PWM発生器を提供しています。 このチップは、最大50mAの電流で最大480個のLEDに電源を供給できるPWM調光可能ソリューション向けに、同社の3つのLT3595 16チャンネル降圧モードLEDドライバと組み合わせることができます。
LT3595Aは、最大10個の各LEDの16の独立チャンネルを動作するように設計された降圧LEDドライバです。 このチップは、スイッチ、ショットキーダイオード、および補正コンポーネントを統合して、回路フットプリントを減らし、コンポーネントのコストを下げます。 4.5~45Vの入力で動作し、2MHzのスイッチング周波数で動作します(小型のインダクタとコンデンサの使用が可能になります)。
16の独立したPWMピンにPWM入力を加えることにより、チャンネルごとに調光が制御されます。 デバイスは、最大コントラスト比5000:1の高速スルーアップレートとスルーダウンレートを特長とします。
LT8500 LED PWM発生器は、3~5.5 Vの入力で動作し、48の独立チャンネルを備えています。これにより、3つのLEDを直接制御するために使用することができます。 各チャンネルには、個別に調節可能なPWMレジスタがあります。
LT8500は、各チャンネルの輝度を個別に調節できます。 シンプルなシリアルデータインターフェースを介してプログラム可能な12ビットのPWMレジスタは、最大LED出力の0~99.98パーセントまで、4095段階の異なる輝度を可能にします。 図8は、3つのLT3595A降圧LEDドライバを動作するためにLT8500がどう構成されるかを示しています。 RSET抵抗がそれぞれのLEDドライバ上で16チャンネルすべてのLED電流を設定していることに注目してください。

図8:Linear TechnologyのLT8500は、3つのLT3595降圧LEDドライバ用にPWM調光入力を提供します。 その結果、各ドライバは最大160個のLEDに電源を供給できます。 (この図面は、Linear Technology提供の元の画像を基に、DigiKeyのScheme-itを使用して作成されたものです。)
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