信頼性の高いセンサ集約型自動車の安全性のためにPSI5を適用する方法
DigiKeyの北米担当編集者の提供
2018-04-17
自動車の設計における最重要項目は安全性であり、設計者はより多くのセンサと運転支援システムを追加する必要があります。問題は、これらのシステムには共通のインターフェースが必要であり、広範囲の温度と湿度の変化、振動、電磁両立性の問題にも関わらず、信頼性が高くエラーのない通信を行うことができる必要がある、ということです。
設計者にとって、ペリフェラルセンサインターフェース(PSI5)に準拠するセンサベースのソリューションを調べるのは役に立つことです。これは、本来はエアバッグシステムに使用されていた干渉耐性の高いインターフェースですが、新しいセンサ集約型自動車アプリケーションでの使用が増えています。
この記事では、PSI5バスの概要を説明してから、いくつかのPSI5システムソリューションを紹介し、それらを使用してセンサベースの制御システムを構成する方法を説明します。
ペリフェラルセンサインターフェース(PSI5)
PSI5インターフェースは、複数のセンサを電子制御ユニット(ECU)に接続するために使用されるもので、エアバッグおよび関連する拘束システム用の主要なセンサ通信バスとして使用されてきました。PSI5組織のウェブサイト(PSI5.org)から利用できるオープン標準です。現在の仕様はPSI5バージョン2.3であり、エアバッグ、シャーシ、安全制御、パワートレインなどのすべての下位標準に共通のベース標準としてリリースされています。
PSI5標準は、125kbps(189kbpsはオプション)のデータレートの電流変調Manchesterエンコーディングデータ送信を使用する2線(ツイストペア)バスとして実装されます。他の一般的な自動車用データバスと比較すると中速のインターフェースです(表1)。
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表1:一般的な自動車用データバスの比較。PSI5は中速のインターフェースです。(データ提供:DigiKey)
PSI5には、CANやFlexRayより使用コストは安く、センサデータと互換性のあるデータレートを持つという、中速範囲でのメリットがあります。SENTデータバスもセンサデータ送信用を意図されていますが、センサから電子制御ユニット(ECU)に対してしかデータを送信できないという制限があります。PSI5は双方向であり、センサのアドレス指定と構成が可能です。
車載ECUでのPSI5の標準的な実装には、複数のインターフェースをフィードするマイクロコントローラが含まれます(図1)。
図1:車載マイクロコントローラECUのブロック図。PSI5など、一般的な車載データバス用のI/Oポートが含まれます。(画像提供:DigiKey)
図1でマイクロコントローラの右側のボックスは、サポートされているI/Oポートを示します。Ethernet、コントローラエリアネットワーク(CAN)、ローカル相互接続ネットワーク(LIN)、FlexRayの各自動車用通信バスに加えて、Single Edge Nibble Transmission(SENT)とPSI5のセンサインターフェースが含まれます。これらの車載ECUは高度に統合されており、高速で正確なセンサ測定のためにデルタシグマアナログ〜デジタルコンバータ(ADC)を含めることができます。
PSI5物理レイヤ
ECUは、2線を使用してセンサに接続されます。2線ツイストペアを使用すると、3線以上を使用する他のバスと比較して、実装コストを削減できます。同じ2線が電力とデータ送信の両方に使用されます。ECUは、センサへの調整済み電圧の提供と、センサから送信されたデータの読み取りに、統合されたPSI5トランシーバまたは個別のPSI5トランシーバを使用できます。センサのデータは、Manchesterエンコーディングを使用する電流変調によってECUに送信されます(図2)。
図2:PSI5インターフェースのManchesterエンコーディングでは、ビット時間間隔の中央での電流の遷移が使用されます。Teledyne LeCroyのモデルHDO4104Aデジタルオシロスコープでは、オプションでManchesterデコーダが提供されます。(画像提供:DigiKey)
データは、電流をベースレベル(センサ定格静止電流)からトップレベルに変更することによって、センサから送信されます。例示されている電流では、ベースレベルが10ミリアンペア(mA)、トップレベルが40mAで、デルタは30mAです。
Manchesterエンコーディングでは、ビット時間間隔の中央での電流の遷移が使用されます。電流変調はPSI5トランシーバ内で検出され、立ち上がりスロープが論理「0」、立ち下がりスロープが論理「1」を表します。図では、縦のカーソルによってビット時間間隔が示されています。オプションのManchesterデコーダを使用するTeledyne LeCroyのモデルHDO4101Aオシロスコープでは、PSI5パケットが縦の青い線で示される13のビット時間に分割されます。ビット時間途中での電流の遷移がデータ値を表し、オシロスコープでは遷移に重ねて表示されます。
ECUは、電圧変調を使用してPSI5センサと通信します。この同じ方法を使用して、センサからのデータ送信が同期されます。
単一のセンサがECUに接続されている場合、そのセンサがデータ送信のタイミングと繰り返し率を制御します。複数のセンサが接続されている場合は、ECUが同期とデータ転送を制御します。複数のセンサを、並列構成またはバス構成で接続したり、一連のセンサを通して「デイジーチェーン」接続したりすることができます。構成については後で詳しく説明します。
データリンクレイヤ
PSI5のデータフレームは非常に柔軟です(図3)。3つの主要コンポーネントから成る基本構造に加えて、拡張機能構造があります。
図3:PSI5データフレームの構造では、データペイロード領域の基本セグメントと拡張セグメントの両方が示されています。(画像提供:DigiKey)
基本構造には、以下の必須要素が含まれます。
- スタートビットフィールド:2ビットから成り、常に「00」としてコード化されます。
- ペイロードを含むデータフィールド:D0~D27で示される10~28ビットを含みます。
- エラー訂正セグメント:シングルパリティビットPと、3ビットの巡回冗長検査(CRC)C0~C2の両方をサポートします。
拡張データ構造には、表2にまとめられているような、制御、メッセージ、ステータスのデータが含まれます。
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表2:追加のPSI5データパケットオプションフィールドセグメントとサブフィールドにより、追加の柔軟性が提供されます。(データ提供:DigiKey)
PSI5システム
NXP SemiconductorsのRDAIRBAGPSI5-001は車載エアバッグ制御システムの参照設計であり、PSI5ベースのセンサ設計の要素が示されています(図4)。
図4:NXP Semiconductorsのエアバッグ参照プラットフォーム設計のブロック図では、PSI5ベースのセンサインターフェースの要素が示されています。(画像提供:NXP Semiconductors)
この参照設計では、センサとマイクロコントローラ間のインターフェースにNXP PSI5トランシーバASSPが使用されています。ASSPは、複数の拘束システム関連機能を処理する複合モード(アナログ/デジタル)デバイスです。センサ側では、最大4つのセンサチャンネルがサポートされ、電力と制御が提供されます。
PSI5センサ
自動車では、一般に、加速度、温度、圧力のセンサが使用されます。エアバッグシステムに関連付けられているセンサは、主として加速度計です。一般に、ECUの近くにローカル加速度計があります。サテライトセンサと呼ばれる、自動車全体に分散された複数の加速度計もあります。エアバッグECUは、複数のセンサからのデータを使用して、フェイルセーフな動作を保証します。サテライトセンサが減速を検出した場合、ECUはローカル加速度計もポーリングして、加速度計の故障ではなく「衝突」イベントが発生しているかどうかを検証します。
標準的なエアバッグ加速度計は、自動車アプリケーション用として認定されていて、2ステップ刻みで±30gから±480gの範囲を構成可能な、単一軸のセンサです。PSI5の直接接続とともに、並列およびデイジーチェーンの双方向同期通信をサポートします。前面および側面衝撃衝突の検出、衝撃と振動の検出、または歩行者衝突の検出に対して、これらの加速度計を採用できます。
PSI5のセンサ接続トポロジ
加速度計を使用するときは、複数の方法でPSI5をECUに接続できます(図5)。
図5:加速度計の接続に使用できる、PSI5によってサポートされる4つの異なるセンサ接続トポロジの例。いずれの場合も、ECUはPSI5トランシーバ経由で、センサに電力を供給し、センサのデータを読み取ります。(画像提供:DigiKey)
この図は、PSI5によってサポートされる、ECUに対して可能な4種類のセンサ接続を示しています。いずれの場合も、ECUはPSI5トランシーバ経由で、センサに電力を供給し、センサのデータを読み取ります。同期トポロジでは、ECUはセンサも制御します。図6のタイミング図は、さまざまな動作モードの違いを理解するのに役立ちます。
図6:4種類のPSI5接続トポロジに対するタイミングシーケンスの範囲は、シンプルなポイントツーポイントから同期並列まで及びます。同期モードでのタイミングは、電圧変調同期パルスを使用してECUによって開始されます。(画像提供:DigiKey)
加速度計を接続する最も簡単な方法は、直接接続またはポイントツーポイント接続を使用することです。このモードでは、ECUがセンサに電力を提供し、センサは周期的にデータを送信します。データ送信のタイミングと繰り返し率は、センサによって制御されます。
温度センサ、圧力センサ、多軸加速度センサなどの複数のセンサが共通パッケージに含まれているセンサクラスタが直接接続されると、関連モードが検出されます。この接続は、同期または非同期のタイミングモードで実装できます。異なるセンサからのデータは、多重化するか、またはここで示すように同じパケット内の2つの異なるデータセグメントに結合することができます。
同期モードでのタイミングは、電圧変調同期パルスを使用してECUによって開始されます。
並列接続では各センサはバス全体に配置されます。データ転送は、ECUからの同期信号によって開始されます。その後、各センサは対応する割り当てられたタイムスロットでデータを送信します。
デイジーチェーン構成では、センサは固定のアドレスを持たず、バス上の各位置に接続できます。起動時に、各センサは個別のアドレスを受け取り、電源電圧を後に続くセンサに渡します。アドレス指定は、アドレス指定シーケンスと呼ばれる特定の同期信号パターンを使用して、ECUからセンサに対する双方向通信によって行われます。個別のアドレスを割り当てられた後、センサは、ECUによって生成される同期パルスに応答して、対応するタイムスロットでデータの送信を開始します。
まとめ
設計者は、安全性向上のため、より多くのセンサを自動車に追加することを求められています。ここで示したように、PSI5バスでは、物理構成とデータパケット構造の両方に関する柔軟性を備え、複数のセンサを接続する信頼性の高い相互運用可能な手段を提供します。

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