過酷な環境でのセンシングのためのレーダの選択と応用方法
DigiKeyの北米担当編集者の提供
2024-09-25
屋外や産業用途、その他の過酷な環境では、超音波センサのようなリモートセンシング技術に干渉する可能性のある条件が存在します。悪天候、塵や埃、複雑なセンシング環境は、標準的なセンサに影響を与える可能性のある問題の一部です。
レーダセンサはこのような課題に対処することができ、さまざまな環境条件下で動くターゲットや静止したターゲットを検知することができます。この記事では、レーダが他の選択肢を上回る性能を発揮するシナリオについて検討します。Banner Engineeringが提供する数種類のレーダセンサとその用途、そしてセンサを選択する際の設計上の留意点について解説します。
レーダセンサを使う理由
レーダは、雨や埃、その他の一般的な空気中の物質にも強く、明るい場所でも照明のない場所でも同じように機能し、温度変化や風の影響を受けません。さまざまな表面仕上げ、形状、色を検知することができ、非導電性素材を透過するため、レーダセンサで容器の内部を確認することもできます。
さらに、レーダは比較的長距離で使用できる一方、クロストークにも強いため、センサが近接する近距離のアプリケーションにとっても有利です。
レーダの仕組み
レーダは電磁波を対象物で跳ね返し、信号が戻ってくるまでの時間から距離を割り出す仕組みです。レーダセンサは、周波数変調連続波(FMCW)とパルスコヒーレントレーダ(PCR)という2つの主要な技術を使用しています。
FMCWレーダは一定の電波を放射するため、移動物体や静止物体を途切れることなく監視できます。PCRセンサは、通常、低出力の送信機を使って、パルスで電波を送信します。このため、PCRセンサは近距離のアプリケーションに適しています。
レンジと材料感度も動作周波数に大きく影響されます。周波数が低いほど長距離探知に適しており、金属や水など誘電率の高い物質との相性が良くなります。一方で、周波数が高いほど精度が高くなり、より小さな物体やより多くの素材を検知しやすくなります。
ビームパターンと感知ゾーン
レーダセンサは、特定の関心領域に焦点を当て、1つまたは複数の物体を追跡するように最適化することができます。主なパラメータには、ビームパターン、感知ゾーン、デッドゾーンなどがあります。
レーダセンサは、水平と垂直の角度で定義された特定のパターンで電波を放射します。ナロービームパターンは、正確な検知と長い照射距離を提供し、ワイドビームパターンは、より広いエリアをカバーし、不規則な形状の物体検知により有効です。
多くのレーダセンサは、ビームパターン内に複数の検知ゾーンを設定できます。この機能により、衝突回避アプリケーションで近距離ゾーンと遠距離ゾーンに異なるパラメータを設定するなど、より複雑な検知シナリオが可能になります。
デッドゾーンとは、センサのすぐ前の検知の信頼性が低い領域のことです。高周波数のセンサは一般にデッドゾーンが短くなります。
最適なレーダセンサを見極める:基本から始める
レーダセンサを選ぶ際に考慮すべき要素は数多くあります。基本的な動作パラメータに加えて、レーダセンサには、コスト、耐久性、使いやすさに影響するさまざまな特長があります。図1は、Banner Engineeringのレーダセンサを例に、これらの判断ポイントのいくつかを示すフローチャートです。
図1:レーダセンサの選択プロセスを示すフローチャート。(画像提供:Banner Engineering)
Banner EngineeringのQ90Rシリーズは、その出発点として有用です。これらのFMCWセンサは60GHzで動作し、レンジ、精度、物質検知能力のバランスをとっています。感知範囲は0.15mから20mで、不感帯は150mm、感知ゾーンは2つ設定できます。
これらのセンサは、たとえば、トラックが搬入口に到着したことを検知するために使用されます。ここでは、40° x 40°の比較的広いビームパターンにより、ドックが視界に入るような取り付け場所を見つけやすくなっています。
Q90R2-12040-6KDQ(図2)は、これらの機能をベースに、設定可能な広い視野(120°x 40°)と2つのターゲットを追跡する能力を備え、より複雑なセンシングシナリオに取り組むことができます。
図2:Q90R2-12040-6KDQ FMCWレーダセンサは60GHzで動作し、2つのターゲットを追跡でき、広い視野を設定できます。(画像提供:Banner Engineering)
ナロービーム用レーダの選択
用途によっては、レーダは小さなターゲットを検知する必要があります。これにはT30Rシリーズ(図3)のセンサが適しています。センサのビームパターンは15° x 15°または45° x 45°、動作周波数は122GHz、感知範囲は25m、デッドゾーンは100mmで、2つの感知ゾーンを設定可能です。
狭いビームパターンと高い動作周波数により、このセンサファミリは特定エリアの正確な検知を実現します。たとえば、狭い容器内のレベルを監視するために使用することができます。
図3:T30Rシリーズは122GHzで動作し、15° x 15°のビームで精密に検知します。(画像提供:Banner Engineering)
T30RWバージョンは、洗車場のような高圧・高温の洗浄環境に適したIP69Kのハウジングを備えています。感知範囲は15m、ビームパターンは15° x 15°です。
視覚フィードバック用レーダセンサの選択
レーダセンサは通常、大規模なオートメーションシステムに統合されますが、一目でステータスがわかるインジケータがあると便利です。たとえば、電気自動車(EV)の充電ステーションでは、視覚的な表示がドライバの正しい位置決めを助けます。
このような用途では、K50Rシリーズの内蔵LEDが重要な役割を果たします。
特に注目すべきは、K50RPF-8060-LDQ(図4)のようなProモデルで、カラフルで見やすいディスプレイを提供しています。
図4:K50RPF-8060-LDQには、視覚フィードバック用のLEDが組み込まれています。(画像提供:Banner Engineering)
K50Rシリーズの主な仕様は、動作周波数60GHz、感知範囲5m、デッドゾーン50mm、設定可能な2つの感知ゾーン、80° x 60°または40° x 30°のビームパターンなどです。
長距離レーダセンサの選択
より長い距離のセンシングを必要とする用途では、24GHzで動作するレーダが最良の選択となることが多くなります。QT50Rシリーズに代表されるこれらの低周波デバイスの感知範囲は25mで、移動装置の衝突回避などの用途で価値があります。また、このシリーズには、1つまたは2つの設定可能な感知ゾーンと、90° x 76°のビームパターンがあります。デッドゾーンは移動物体で400mm、静止物体で1000mmです。
QT50Rの特筆すべき点は、DIPスイッチによる設定が可能なことです。これにより、現場で簡単なセットアップすることができます。しかし、アプリケーションによっては、より洗練された構成が求められます。
たとえば、Q130Rセンサ(図5)は、高度な検知能力と高度な設定オプションを必要とするアプリケーション向けに設計されています。24GHzで動作し、レンジは40m、ビームパターンは90° x 76°または24° x 50°、デッドゾーンは1000mmで、移動物体や静止物体を正確に検知します。
図5:Q130Rレーダセンサは、高度な感知能力を必要とする用途向けに設計されており、移動物体や静止物体を正確に検知します。(画像提供:Banner Engineering)
注目すべきは、Q130Rが複雑なセットアップや微調整のためにPCベースのグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)を採用していることです。たとえば、混雑した鉄道操車場での位置フィードバックに使用できます。このアプリケーションでは、ある線路の後ろに停車している列車は無視し、前を通過する列車は認識するようにセンサを設定できます。
まとめ
レーダセンサは、さまざまな屋外環境や過酷な環境でも動作するユニークなセンサです。レーダ技術の利点を最大限に引き出すには、アプリケーションの要件を分析し、適切な動作周波数とビームパターンなどの仕様を備えたセンサを選択することが不可欠です。適切に選択されたレーダがあれば、多くの困難なリモートセンシングアプリケーションに対応することができます。
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