産業用オートメーションのケーブル接続用のコネクタ、グランド、グリップのオプション
DigiKeyの北米担当編集者の提供
2021-05-27
産業用オートメーションで使用されるケーブルや部品を接続するコネクタには様々なものがあります。これらのコネクタは、ケーブル上を流れるすべての電力とデータ信号ストリームを伝送しなければならないだけでなく、ケーブルをしっかりと接続・保護してケーブルを終端する必要があります。課題は、産業用オートメーションに関連する機器が、汚れた、高温の、移動可能な、電気的ノイズの多い環境に配置されることが多いことです。このため、産業用ケーブルコネクタには、他のアプリケーションでは必要とされないレベルの堅牢性と信頼性が求められます。
まず、産業用コネクタの基本を考えてみましょう。コネクタには、2本のケーブルを接続するカプラに分類される部品と、コネクタアセンブリのプラグとソケット(またはレセプタクル)の両方を含むシステムがあります。コネクタは、ケーブルグランドとも呼ばれ、筐体の中を通過する終端部であり、多くの場合、自由に回転するサブコンポーネントがケーブルエンドの周りのOリングシールを圧縮して、化学物質、炎、汚れ、外部電流から遮断する役割を果たしています。
産業用ケーブルコネクタは通常、前面および背面に取り付けられた機器のレセプタクルでケーブルを結合します。すべてのコネクタやケーブルグランドは、汚れや湿気に対する耐性を数値化した、IEC 60529に規定された侵入保護(IP)定格を有しています。この定格は、部品の筐体や産業用機器の筐体の耐久性を表す定格と同じです。IPコードは2桁の数字で、値が大きいほど両者の保護レベルが高いことを示しています。
IP定格の1桁目は、埃などの固形物からの保護レベルを示しており、0が無防備、6が防塵シーリングとなっています。
IP定格の2桁目は、流体に対する保護レベルを示しており、0は無防備、8は水深1mの水を継続的に防ぐことができます。
図1:IEC 60529の様々なIP定格の内容を図解しています。ケーブルコネクタのIP定格は非常に重要です。(画像提供:connectortips.com)
オートメーション用EthernetコネクタとしてのRJとM12の比較
IEEE 802.3に規定されているEthernetは、世界で最も広く使用されているローカルエリアネットワーク(LAN)技術であり続けています。産業用オートメーション向けのEthernetベースの通信規格としては、ModbusTCP/IP、EtherCAT、Ethernet/IP、Profinetもあります。Ethernetケーブルでよく使用されるコネクタは、RJ(Registered Jack)コネクタです。ほとんどのRJコネクタにはシンプルなプラスチック製のタブを持つプラグがあり、このプラグをRJソケットの相手側の形状にぴったりはめることで、両者をしっかりと固定します。このプラグとソケットはケーブルに簡単に装着できます。設置作業者は専用の圧着工具を使って、プラグの固定と電気的コンタクトの作成を同時に行うことができます。圧着端子を使用することで、現場で取り付けるので信頼性が高いと判断できるカスタムカットのケーブルを構築することができます。このような現場での設置を想定して設計されたプラグのサブコンポーネントは通常、それらの使用を開始する前に設置担当者がすべての内部コンタクトを検査できるよう、ボディが透明になっています。とはいえ、工場で組み立てられたケーブルの信頼性は他社の追随を許さないものです。
図2:これはTL2253-NDハンドクリンパツールであり、長さに合わせてカットされた4、6、8線式EthernetケーブルのRJプラグ終端処理を現場で行うことができます。このツールのブレードをひと押しするだけで、Cat5eやCat6の平たい部分や丸い部分を剥がし、コネクタ本体を固定することができます。(画像提供:Tripp Lite)
RJコネクタでは堅牢性に欠ける産業環境では、M12コネクタの方が適している可能性があります。それは、M12コネクタが、より安定性が高く物理的に堅牢な接続を可能にするとともに、埃や液体の侵入を防ぐという利点があるからです。
図3:Ethernetケーブルで最も一般的に使われているコネクタは、ここに示すようなRJコネクタです。しかし、Ethernetケーブルには他のタイプのコネクタも使用できます。(画像提供:Getty Images)
IEEE 802.3で規定されているPoE(Power over Ethernet)は、1本のケーブルでデータと電力の両方を得ることができる便利な方法です。PoE Alternative A(通称:モードA)は、データと電力の両方を同じ2本のツイストペアで伝送するため、芯数の少ないケーブルを使用することができ、帯域幅は100Mbps(100BASE-TX)に制限されています。PoE Alternative B(通称:モードB)では、Cat5のEthernetケーブルを使用し、データ伝送用の2ペアと電力伝送用の2ペアの計4本のツイストペアを使用します。これにより、データに利用できる帯域幅が狭くなり、ギガビットEthernetに対応したケーブルであっても、データレートは100Mbpsに制限されます。
4PPoEまたは4ペアケーブルで使用できるケーブルとは、4本の撚り線ツイストペアを持ち、それらの全ペアが電力とデータの両方を伝送するケーブルです。これは、より高いデータレート(ギガビットEthernet以上のデータレート)と電流がサポートされるということです。PoEによる電力供給を受ける機器は、付属しているモードAまたはモードBを受け入れるように設定する必要があります。とはいえ、それらの機器では、ワイヤペア全体で固定抵抗または交流抵抗を使用することで、互換性を指定したり特定の電源構成を要求したりすることもできます。もちろん、システムのPoEモードを実際に決定するのは、PoE電源(PoE給電装置またはPSE)です。
図4:コネクタの設計は、それが終端処理するケーブルによって大きく左右されます。ここで紹介しているようなM12 Ethernetケーブル用コネクタは、一般的にRJコネクタよりも堅牢であり、メーカーによってはPoEの導体配置やモードとの互換性を示すために色分けされています。(画像提供:Lumberg Automation)
Mシリーズ コネクタは、導電性のピン配列にネジ式のメススリーブ(オスのレセプタクルに取り付け)を巻き付けた丸型の嵌合コネクタであり、データケーブルや電源ケーブル(および、産業用Ethernet、PROFINET、フィールドバスなどのネットワークケーブル)を終端処理するものです。M8(8mm)やM12(12mm)ネジが最もよく知られていますが、M5、M16、M23などもおなじみの規格です。Mシリーズのコネクタは、ポジティブ(ネジ込み式)クロージャにより、洗浄を行う環境や腐食性の環境でよく見られる環境ゴミから保護すると同時に、信号の断続性を最小限に抑える、非常に安定した接続を実現しています。Mシリーズのコネクタが、産業オートメーションのアクチュエータ、PLC、センサ、スイッチ、制御装置などの標準ケーブルとして最上位に位置しているのも不思議ではありません。
M8およびM12コネクタには2、3、4、5、8、または12のピン(別称:極)があります。センサや電源には通常、3~4本のピンが必要です。EthernetやPROFINETケーブルの端部に取り付けるMシリーズ コネクタには、4ピンまたは8ピンが必要です。一方、フィールドバス、CANバス、DeviceNetのデータを伝送するケーブルの端部には通常、4〜5本のピンが付いています。もちろん、複数のデータや電力のストリームを伝送するケーブルは、12ピンすべてを持つMシリーズ コネクタで終端処理する必要があります。
図5:このBrad Ultra-Lock 120108直角マウントコネクタは、M12コネクタの設計を独自にアレンジして信頼性を高めたものです。(提供元:Molex)
実際、業界で一般的なコネクタとレセプタクルの関連デザインは、ピン配列とソケットのペアであり、当初、Molexによって導入されたため、俗に「Molex相互接続システム」と呼ばれることもあります。MolexプロプライエタリのBradシリーズ コネクタは、M12コネクタをベースにしたものですが、ネジ付きスリーブをより便利で信頼性の高いプッシュトゥロックシステムに置き換えています。このロックは、ネジを締めるのにオペレータに依存していないため、安定性があり、信号が断続的に発生するリスクを最小限に抑えることができます。Bradコネクタのバリエーションには以下があります。
- BradマイクロプッシュM12コネクタ — IP65保護を定格とするプッシュオン/プルオフコネクタ
- IP65保護を提供するBrad MX-PTL M12プッシュトゥロックコネクタ
- IP67保護を提供するBrad Micro-Change M12ネジ式コネクタ
- 完全なIP69Kレベルの侵入保護を提供するBrad Ultra-LockおよびUltra-Lock EX M12コネクタ。プッシュトゥロック式のフィッティングとOリングを備えています。
高周波信号用同軸コネクタ
同軸ケーブル(同軸コネクタ付き)は、産業用オートメーションにおいて、高周波信号の伝送、特に振動監視やアナログ信号の伝送にも使用されています。規格には様々なものがあります。
BNCコネクタは、1/4回転で着脱が可能なバヨネット締め具です。対応する周波数は、12GHzを超えていますが、場合によっては18GHzが上限になります。DIN 0.4~2.5のコネクタは、3GHzまでの周波数に適する超小型の押し込み式コネクタです。これに対し、DIN 1.0/2.3のコネクタは、デジタル通信に広く使われている小型の押し込み式高周波コネクタです。
自動化された機械用に普及しているモジュラーケーブルやカスタムケーブル
従来のシステムインテグレーションによるアプローチでは、自動化された機器を設置する際に、現場でケーブルを測定、切断、終端処理するという「メークアップ」を行っていました。つまり、現場の電気技術者が必要な長さにケーブルを切断し、導体の繊細な被覆をすべて剥ぎ取り、手元の部品を接続するためのコネクタをケーブルに取り付けるということです(通常)。このような現場でのケーブル準備は時間がかかるため、接続品質のばらつきにつながります。そのため、現在のトレンドは、標準ケーブルと工場出荷時に取り付けるコネクタで構成される、モジュラーケーブル&コネクタのシステムを調達することです。必要なケーブルの長さは設計時に決定されているため、すぐに設置できる状態で供給されます。
モジュラーケーブルは、現場での設置時間を60%から70%短縮しながら電気接続の安定性を向上させるという試算もあります。
ケーブルグランドの特殊事例
ケーブルが筐体の中を通る際にはいつも、グランドと呼ばれるケーブルコネクタが使用されます。グランドは、ケーブルの固定、ケーブルの摩耗防止、およびケーブルの周囲を密封して筐体内部の部品を環境ゴミから守るという3つの目的に使用されます。ケーブルグランドは、ケーブルを固定することで、引っ張りなどの障害による電気的コンタクトの損傷を防ぐことができます。また、筐体の切り欠き部分の鋭いシートメタルのエッジにケーブルが擦れてしまうこともありません。シートメタルはケーブルの被覆を簡単に切り裂くことができ、ついにはケーブルの芯がショートしてしまうからです。
要求度の低いアプリケーションでは通常、ケーブルの周囲を固定する複数のフィンガーを持つラメラグランドが使用されます。このタイプのグランドは安価ではありますが、浸入保護を維持するのに定期的な締め直しが必要になります。高品質のグランドでは、連続したシールを使用してケーブルの周囲を固定しています。このタイプのグランドは、時間が経っても緩みにくいのが特徴です。
今日の産業用電源コネクタの構造
産業用オートメーションに使用される機器には通常、有線の電源が必要になるだけでなく、データ接続も必要になります。先に述べた比較的新しい技術であるPoEは、ケーブル配線が非常にシンプルになるため、できれば使用することをお勧めします。しかし、オートメーション関連のコンポーネントやシステムの大半は、従来の電源コードを必要としています。
民生用やオフィス用、産業用の電源ケーブルでは、国際電気標準会議(IEC)で標準化されたコネクタが一般的です。IECでは、電圧250V、電流16A以下の一連のノンロック式コネクタをIEC 60320規格として定めています。ここで、C13/C14コネクタは、コンピュータ電源を含む電子機器に一般的に使用されています。より大きなC19/C20カプラは、サーバの筐体に含まれるケーブルなど、より大きな電流が流れるケーブルの端部に使用されています。
図6:汎用電源ケーブルには、IECなどの規格のコネクタが各種用意されています。(画像提供:Getty Images)
より重要で要求の厳しいアプリケーションには、IEC 60309コネクタが好まれます。これらのプラグ、ソケット、カプラは、産業用として明示的に設計されており、最大で1,000V、800A、500Hzの電圧、電流、周波数を伝送することができます。これらのコネクタは、いずれもある程度の耐水性を備えています。IP44コネクタは防滴仕様、IP67コネクタは防水仕様であり、IP66/67コネクタは加圧されたウォータージェットを受けても確実に浸水を防ぐことができます。また、電源を切らないとプラグが抜けないようになっていたり、プラグを差し込まないとコンセントが通電しないようになっていたりと、コンセントはインターロックされています。
図7:この大電力ケーブル用コネクタの色分け(IEC 60309準拠)に注目してください。(画像提供:Railway Tech)
IEC 60309コネクタは、定格電流ごとに異なるサイズが使用されます。また、コネクタには電圧と周波数の範囲を示すキーイングと色分けが施されています。
- 黄色は50Hz~60Hzde100V~130Vが掛かることを示します。
- 青色は50Hz~60Hzde200V~250Vが掛かることを示します。
- 赤色は通常、三相構成において、50Hz~60Hzで380V~480Vが掛かることを示します。
まとめ
産業用オートメーション向けのコネクタとグランドを選定する際には、形状と統合に関する多くの選択肢があります。自動化された機械に使用するケーブルの仕様を決める際、設計者が最初に検討しなければならないのは、ケーブルの芯数と芯のゲージです。その次に重要な検討事項は、侵入保護と、信号の断続的発生を防ぐためのポジティブロックの必要性です。

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